表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界行ったら門前払い食らいました  作者: 矢代大介
Chapter7 集う6つのエレメント
64/79

第56話 望まぬ決闘

すぐに更新するとか言いながら一週間以上も遅れてしまい申し訳ありませんでした!!

久しぶりにスランプに陥ったようで、今回の文章力には期待しないでください…

か、隔週更新宣言してたからまだセーフだし(震え声

「くっ!」

飛来した矢じりを、すんでのところで引き抜いた剣で弾く。想像よりもはるかに重い矢の一撃は、たしかな痺れを俺の手に刻んだ。なんて重みだ、と考えるその間にも、獲物を狩るために瞳を輝かせるサラの弓が引き絞られ、二発目の矢が放たれる。

正直、完全に予想の範疇を超えていた。よもや仲間内に敵の刺客がいたなど、誰が予想したか。その証拠に、サラを連れてきたゴーシュでさえ困惑し、どうしようかを決めあぐねている。

今この場で動いているのは、俺とサラ、そして――

「……この、腐れ外道があぁぁぁぁぁ!!」

憤怒を紅蓮の炎に変え、オーディンめがけて弾丸の如く飛び出した、レヴァンテのみ。

俺とサラの真上を飛び越え、オーディンの脳天めがけて大剣を振り下ろす――その直前で、結界と思しき光に阻まれたらしい。音響と光芒を撒き散らし、レヴァンテの身体が中空で静止した。が、構うものかと彼女は口を開く。

「テメェ、自分が何してるのか分かってんのかよ!」

「あぁ、分かっているさ。これは、我らが主のために身命を賭して遂行しているのだ。裏切り者如きに邪魔立てされる筋合いはない!」

「何にも分かってねぇじゃねえか!アベルがどういう状況か知らねえクセして、どの口がんなことほざきやがる!!」

「分かっていないのは貴様のほうだろうに?我らが主の言いつけに背いたのはおろか、よもや神龍の騎士に肩入れするなど、愚かとしか言いようがない!」

向こうは向こうでヒートアップしているらしく、俺たちにはわからない問答を繰り広げていた。ともかく、向こうの心配はしなくても良さそうだ。なら、俺は目の前のサラに集中するべき。

「サラ、いい加減目ぇ覚ませ!俺はお前を斬りたくないんだよ!」

緑色の髪の女性めがけて、俺は叫んだ。が、サラはお構いなしに矢をつがえ、俺を貫かんと弓の弦を引き絞る。

放たれた矢は、右手に握っていた剣で叩き折った。そのままサラめがけて走り、接近戦をしかける。

さすがに、弓の名手たるサラも接近戦では厳しい。得意の弓を全く使えない状態ならば、こちらに有利なはずだ。

しかし、弓を折ろうと剣を振りおろした直後、サラの右手が腰の護身用ナイフを抜き、俺の剣に叩きつけてくる。信じられないことに、その太刀筋はかなりの精度と威力を持っていた。ギィン!!という鉄同士のぶつかる大音響が響き、周囲の音を一瞬かき消す。

しばしつばぜり合いを続けていたが、さすがに腕力は俺のほうが上だった。初撃で押し込めた勢いそのままに、華奢な身体を床に押し倒す。そのまま剣を傍らに突き立て、サラの両手首を握った。行動を起こさせないためだ。

「サラ、頼むから目を覚ませよ!いつもみたいに、俺たちの隣に並んで立ってくれよ!!」

手首を握る手に、力がこもる。あまり締めすぎては鬱血してしまうことはわかっていたが、感情に駆られた今はコントロールなどできるはずがなかった。

対して、サラはどこまでも冷静で、冷徹な表情をしていた。足を縮め、腕を抑えている俺の下へと滑り込ませると、その足を上に向けて――つまり俺の腹めがけて撃ち込む。細い足からは想像もつかない威力の蹴りを受けて、思わず振り払われてしまった。その隙を逃さずに、サラは床を転がって弓を回収、すかさず俺めがけて矢を射る。

すんでのところで横に転がって回避し、こちらも突き立てられていた剣を引き抜いて後退。矢をつがえるサラを睨みながら、すっと腰を落とした。

正直、彼女の腕前は想像以上だ。矢の狙いも

精確だし、短剣の扱いも並みのものではない。それに、こちらが相手に傷をつけることをためらっているのが、あの強さに拍車をかけている。

さすがに本気で斬りかかるべきか――と考えていると、不意にゴーシュが隣に立った。その手には、既に得物であるハルバードが握られている。

「……何する気だ、ゴーシュ」

ドスを効かせた俺の言葉に、肩をすくめて受け流したゴーシュが答えを返す。

「なに、ちょっとあいつを正気に戻そうと思ってな」

そして、その言葉に驚いたのは俺だった。

「出来るのか?」

「確証はないけどな。……でもまぁ、なんだかんだあいつとは長い付き合いなんだよ。お前よりも一カ月くらいは長いし……なにより」

そこでゴーシュは言葉を切り、ハルバードを振るって見得を切る。

「あいつを巻き込んだ俺にも責任がある。だから、今回くらい任してくれ」

彼の声色は、少しだけ悔しさをにじませたものだった。同時に、ある種の確信めいたものも含まれている。

「……なら、任せた。正直、俺には気が重い」という俺の言葉に帰ってきたのは、

「任せとけ」という一言だけだった。その直後、痺れを切らしたかのようにサラの矢が放たれる。しかしゴーシュはその矢を一瞥すると、ハルバードの一振りを持って――矢を叩き折った。

思わず、驚愕の声が漏れてしまう。そもそも自分に向けて飛来する矢を避けることさえ、ある程度の鍛錬と経験によって可能になるのだ。それをゴーシュは、一歩動くことさえせずに、ハルバードを振るっただけで。

「……まーた基本から教える必要がありそうだなァ、サラ?」

同時に彼の口から聞こえてきたのは、ヒロイックなセリフでも、労りの言葉でもない。例えるなら――

「さぁ撃ち込んでこい!最初からできないしないは許さんぞ!!この俺に一発でも当ててみせろこのヘタレがァァァ!!!」

例えるなら、鬼教官のそれだった。隣から恐る恐るゴーシュの顔を見てみたら、目が座っている。本気だこの人。

で、対峙しているサラもある種の気迫に当てられたらしい。一瞬すくんだが、次の瞬間には再び矢をつがえ、ゴーシュめがけて発射した……ちょっと涙目で。

対するゴーシュはハルバードを風車のように回転させて、それで矢を絡め取って破壊した。ベキッ!という快音が立て続けに響き、ゴーシュの周囲に折れた矢が音を立てて転がる。

「狙いが甘い!相手に当てるならまず防御されない環境を作り出せ!それが出来なければお前は今頃胴体をエグられてはらわた撒き散らしてるころだぞ、このウスノロめが!!」

普段のゴーシュからは想像もつかないセリフがいっぱい飛び出てくる。あんなオッサン俺知らないよ……と呆然としている間にも、サラとゴーシュの攻防は続いていた。いや、続いてはいたが、もう側から見れば何かの修行みたいな光景だった。

――そういえば、さっきゴーシュが「もう一度基本から教える必要がある」とか言っていた気がする。まさか、俺たちと出会う前はずっとこれをやってたんだろうか?

「……この、くらいぃっ!」

俺のささやかな疑問は、誰かの――というかサラの涙声で瞬時に解消される。あぁ、やっぱりそうだったんだなと。

「泣く暇あったら矢をつがえて撃てェ!!今ここで頭と身体おさらばさせるか腸まとめて床にブチまけるか選びたいのか貴様はァァ!!!」

「っ……い、言われなくたってえぇ!!」

一瞬青ざめてから、しかしサラは歯を食いしばって矢を放った。……なんというか、洗脳されているとはいえ、もうなんかサラがかわいそうになってくる。

しかし、サラのあの弓術はゴーシュの教えがあってこその賜物だったとは予想していなかった。だれか師匠がいるんだろうなとは考えたが、まさかその師匠がすぐ横でハルバードブン回してるとは誰が予想できたか。

一人得心し、こちらも納得がいったらしいカノンと苦笑いを交わしていたら、不意に床の絨毯に何かが落ちる音がした。いうまでもなく、サラがへたり込んだ音である。

ひーん、といった感じで顔を隠して泣くサラは、もう洗脳されていそうな感じがカケラも残っていなかった。洗脳から覚めるくらいのトラウマを植え付けるとは、ゴーシュ恐るべしと言うべきなのか、なんなのか。

「……ククク、我がサイボーグを退けるか。だがまぁ、今のはいわゆる前座に過ぎんということは理解しているだろう、神龍の騎士よ」

そんなことを考える俺に向けて、オーディンが殊勝げな笑みを向けてくる。まぁ、概ね想定の通りの言葉だ。

「当たり前だ。……というより」

そこで一旦言葉を切り、今度は掌中から6つの宝珠を揃えた魔剣「イーリスブレイド」を展開。刃なき刀身の切っ先を、まっすぐオーディンへと突きつける。

「アンタをぶった斬らないと、アンタのやったことに対する怒りで腸が煮えくりかえりそうなんでな!」

この世界にきて怒りを表したのは、何回だろうか。旅路の長さで覚えていないことに内心で苦笑しつつ、俺はおそらく怒りに燃えているだろう瞳をオーディンに向ける。

「そうか、そうか。……ならば、たんとぶつけさせてやろうじゃないか」

俺の胸中を察しているらしく、オーディンは笑みをさらに深めた――かと思うと、不意に玉座から立ち上がった。

「このオレが幾年もの歳月をかけて作り上げた、最強最大の魔装を破壊できたらの話だがな!!」

その言葉と同時に、玉座真横の壁が轟音と共に弾け飛んだ。生まれた大穴から顔を覗かせたのは――

「さぁ、かかってこい神龍の騎士!我こそアベル四天王が一人――『機巧きこうのオーディン』なり!!」

人のそれを模しながらも、人の背丈をゆうに超える、巨大な「機械の顔」だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ