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異世界行ったら門前払い食らいました  作者: 矢代大介
Chapter4 襲いくる脅威
28/79

第23話 砂漠突入

今回から数話の間、「うなにゃぎ兄妹」氏作成の小説「デイブレイク」に登場するキャラクター「アイザック」「フィーア」「エレン」の三名がゲスト出演となります!

設定などの都合上少し性格などが変更になっております故、予めご了承ください。

うなにゃぎ兄妹様、出演の快諾誠に感謝いたします!

「……おーいサラー、期限直してくれぇー」

「嫌。なんで変態相手に期限直さなきゃいけないのよ」

ルゥを購入し、宿での「いいもの」の事件から数日後。メインストリートをあるく俺の後ろで、情けない声のゴーシュがサラにあしらわれていた。理由はもちろん、宿の一件だ。

当たり前だが、後々バレた。俺のほうもこってり絞られた――理不尽だとは思ってない。決して、断じて思っていない――のだが、どうしたものかゴーシュのほうはあれ以来サラに遠巻きに扱われているらしい。実害がなかったとはいえ、もし覗きの被害を自分が受けていたらたまったものではないだろう。そう考えると、サラのほうに同情したくもなる。

ちなみにカノンのほうは比較的早く許してくれた。むろん、二度とそんなことをしないようにという釘差し付だったが、それでも許してくれただけありがたい。

「まぁまぁ……ゴーシュさんももうしない、って言ってるんだし、ね?」

「いいえ。無理やりつき合わされてたタクトはともかく、あのエロ親父のことよ。絶対またやるに違いないわ」

否定はしない。今でこそ情けない声で懇願しているゴーシュだが、絞られている間は反省の色を見せず、のらりくらりと追及をかわしていたのだ。あの時の態度から反省していなかったのだろうが、サラの対応を見て態度を変えたのだろう。まったく、げんきんな人だ。

「……ん?」

そんなことを考えながら歩いていると、ふと前方から難しい顔で歩いてくる人がいた。鋭い目つきと背丈から男性と分かる彼の格好は、一般的にいう「金髪碧眼」に相当するものだった。くすんだ黄金色の髪の毛の下で輝く青い瞳が、不意にこちらを見つける。

「……お、よぉあんた達か」

その人は、風呂場で出会ったお客さんだった。銀髪と黒髪の男性、という特徴が分かりやすかったのか、向こうもすぐに思い出したらしく駆け寄ってくる。

「ども」

「おう。……なんだ、まだ許してもらってないのか」

苦笑気味にゴーシュのほうを見やる青年の反応から見て、彼も仲間に絞られていたのだろう。若干の憐れみが、瞳にこもっている。

「あっちは、ですけどね。……まぁ、反省しないほうが悪いというか」

「もっともだ。……あぁそうだ、お前らならちょうどいいかもな」

突然、青年がそんなことを口走った。「何がですか?」と聞き返すと、青年が全員に聞こえるよう説明してくれる。

「……実はな、俺たちはこの先のハーマリア砂漠を超えてアルネイト公国に向かうキャラバンの護衛をすることになってるんだ。それで人手を探しているんだが……お前ら、砂漠を抜けるんならついてこないか?報酬も出してくれる、ってキャラバンのおっさんが言ってたぜ」

それは、願ってもない話だった。確かに俺たちはハーマリア砂漠を抜け、アルネイト公国へと向かう人間だ。この先の地理に詳しくない以上誰かを伴って突破しようとしていたのだが、こんなおいしい話は受けるほかないだろう。後ろの三人もそう思っていたようで、俺が振り向くと同時に三々五々にうなずいてくれた。あっけなく成立である。

「おっしゃ、きまりだな。じゃ、おっさんのとこに行こうぜ」

「はい。……あの、名前は?」

「ん、あぁ言ってなかったな。俺は『アイザック・シュヴァルツ』、ザックとでも呼んでくれ。あと敬語はやめてくれ、疲れるんだ」

そういって、青年――アイザックは踵を返してストリートを歩き始めた。彼の背中では、身の丈を超える片刃の大剣が煌めいている。

強力な戦力になりそうだと感じつつ、俺たちはアイザックの後に続いて歩き出した。



***



「おーいおっさーん!頼みの連中連れてきてやったぞー!」

数分後、町の出口あたりについたところで、アイザックが馬車の前で腕を組んで立っている男性にむけて手を振った。男性も気づいたらしく、小さく手を降り返す。

「来たかザック。……そいつらが護衛人か?」

「おうよ。ほれ、自己紹介」

「っと……えと、タクト・カドミヤです。至らないかもですが、よろしくです」

「おう。ワシは『エンボロス』だ。チャキチャキ働けよ、若造」

ゼックやディモルフォセカとは違い、落ち着いた壮年の雰囲気を漂わせている。ワイルドな茶色い髭と子供のように輝く瞳からは、彼の情熱が伝わってくるような、そんな気がする。

「……あれ、そういえば二人は?」

ふと思い出したように、アイザックが周囲を見回した。まだ人がいるらしく、その人たちを探しているようだが、残念ながらそれらしき人は周囲にはいなかった。彼の心配を察したのか、アイザックの肩に手を置いてエンボロスが口を開く。

「落ち着けザック。アリスたちなら買い物さ、ここにいればそのうち戻ってくる。……それよりも、護衛が見つかったならなるべく早くこの街を出たい。若造ども、すぐに発つことになるだろうから、町で準備を済ませて来てくれ。夜には出るぞ」

「早っ……ちょお、俺まだ薬かってねぇっつのー」

ぼやきながら走っていくアイザックに倣い、俺たちも準備を始める。今足りないのは薬と砥石、あとは砂塵を防ぐためのマントか。少ないから早めにすみそうだな。そう考えて、俺はカノンたちよりも一足早く街へと駆け出した。



***



「戻りました軍曹!」

「誰が軍曹だ……まぁいい。これで全員だな」

アイザックが買い出しを済ませて戻ってきたのは、わずかに空が赤みがかったころだった。ちなみにこちらのパーティは、ゴーシュ(買い足すものがそもそもなかった)、カノン(マントのみ)、サラ(薬のみ)、俺の順番で戻ってきたらしい。もう少し滞在する予定だったので、買い出しに行くのが予想外だったのが最後になった原因らしい。ちょっと悔しかったが、そもそも勝負じゃないことを思い出して自重しておいた。

俺たちの横には、アイザックのほか見慣れない少女が二人立っている。確か、名前はアイザックから聞いていた。エメラルドグリーンの髪を再度でまとめ、不思議な服に身を包んだ少女が「フィーア・ヴァイス」。真っ白い紙と真紅の瞳をフードでおおい、使い古されたぼろぼろのローブをまとっているのが「エレン」だったか。どちらも整った顔立ちであり、俺のいた世界ならば芸能界からスカウトなりなんなり来てもおかしくないと思わせる。まぁ、こっちの世界ではそんなこともなさそうだが。

「よし、それでは今回の移動の概要を説明する。……今回向かうのは、ここから南東に位置する『アルネイト公国』だ。諸君ら護衛陣には、道中の『ハーマリア砂漠』をはじめとして出没する魔物たちの撃退、並びにキャラバンの護衛を行ってもらう。ここまではいいな」

エンボロスの言葉に、俺やアイザックをはじめとした冒険者軍団――実はほかにも数人ほど別の冒険者も交じっていた――が一斉にうなずく。俺たちの動きを確認したエンボロスが、続いて自分の馬車の扉をあけ放った。何をしているのかという疑問は、直後にその馬車から出てきた人影で霧散する。

馬車の中から出てきたのは、少女だった。後頭部で結わえた桜色の髪がふわりとなびき、その少女の優美な動作を引き立てる。服装は普通の冒険者の服だったが、身のこなしや顔立ちの整い方、立ち振る舞いなどから、その女の子が只者ではない感じを漂わせていた。そしてそんな少女の姿を見た冒険者の一人が、仰天したように叫ぶ。

「……――まっ、まさか、『アリス・ルミネイト』!?」

アリス・ルミネイト。その名前を俺は知らないが、あれだけ驚いて叫ぶんだからその知名度はうかがい知れる。知らない、といった表情の俺をはじめとした数人の冒険者の様子を見たエンボロスが、苦笑しながら説明を始めた。

「そう。アルネイトの踊り子『アリス・ルミネイト』。二つ名を……えーと、なんだったか?」

エンボロスが少女――アリスに問いかける。問われた本人は、苦笑しながら柔らかい声で名を告げた。

「『舞踏の魔女』だったと思います。そんなたいそうなあだ名を頂くのは、私に不釣合いだと思うんですけどね」

困ったように微笑む、その姿さえ彼女の魅力を引き立てるような気がする。ガラにもなく見とれていると、横にいたカノンが俺に気付いたのか指で小突いてきた。慌ててそちらを見ると、何やらカノンの表情がご機嫌そうだ。

「あの人、この前の人だかりを作ってた人なんだよ。このハーメルンでも有名な人らしくって、ああいう姿を見れるのは貴重なんだって」

そういえば、カノンはああ見えてけっこうミーハーな性格だったな。彼女の助言を聞きながら、再度話し始めたエンボロスの言葉を聞く。

「諸君らには、ワシらのキャラバンのほかにこのお姫様の護衛を依頼する。傷物にすれば、その時は砂漠に捨てられると思ってくれ。以上、これより移動を開始するぞ!」

おーっ、という唱和とともに、四両編成のキャラバンがあわただしく動き出した。三々五々に護衛位置へと付いていく。明確なポジションは指定されていないので、俺は四人分の荷物を背負ったルゥを伴って――さすがに重いかと思ったら喜んで担いでいた――、キャラバン中ほどで周囲を警戒することにした。



眼前には、どこまでも続く地平線と真っ赤に染まっていく空。

この先に待っているのは、平和な旅路か、はたまた地獄への遊歩道か。行く先は、砂塵のみぞ知る。

ひゃ、ひゃ、ひゃ、100ポイントオォォォォォォ!?

まさか総合評価点が3ケタに届くとは思ってもみませんでした!これも日ごろから応援してくださっている皆様のおかげです!

これからも皆様の期待にこたえられるよう誠心誠意頑張りますので、どうかよろしくお願いいたします!!

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