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異世界行ったら門前払い食らいました  作者: 矢代大介
Chapter2 旅路の仲間たち
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第8話 弱くても役に立ちたい

魔法学校の中には、案外すんなりと入ることができた。今日は休校日ということで、授業が行われていないときには一般にも解放されているらしい。

「失礼します」

そんな魔法学校に入り、教員の個室に通されて、カノン越しに見えた人影に、俺は少しばかり驚いた。

幼き日のカノンを引き取って育てたというからてっきり老人だとばかり思っていたが、その教師は妙齢の女性だったのである。つややかな黒い髪をまっすぐ下ろし、カノンのものと色違いのケープを羽織っているその下は、いわゆるスーツ姿。えらく分厚い胸部装甲が惜しげもなく強調された姿は、愛好家にはたまらない――と思う。俺もちょっと鼻高々。

そんな女教師の顔が、カノンを見るなりほころんだ。あえて表現するなら親バカの母親みたいな顔で、近寄ったカノンに笑いかける。

「よく来たね。……奴は来なかったかい?」

「うん……彼が協力してくれる、って申し出てくれたの」

カノンにだけ向けられていた注意が、いきなり俺に向いた。なぜかとんでもない威圧感を放っていたので、反射的に背筋を伸ばす。立ち上がった女教師はこちらに歩み寄り、俺の姿をざっと一瞥した。身長差的に見下ろされる格好になっているので、眼光がどうしても鋭く感じて怖いですカノンさんどうにかしてください。

「……あなた、名前は?」

「あ……た、タクトです。タクト・カドミヤ」

外国式のこの名乗り方は、アレグリア王国を発つ前にミリアさんから教わったものだ。そのまま名乗っては角宮かどみやが名前として通ってしまうため……と教えられた。

すでに懐かしく感じるミリアさんの笑顔を思い出していると、不意に女教師がカノンのほうを向く。

「ずいぶんと頼りなさそうだけど、あなたはこの人が大丈夫だって思うの?」

「ええ。できる限りを尽くしてくれる、と言ってくれたわ。……それに、対価を求めなかったのが、少し気になって」

カノンの言葉を受けて、再び威圧的な眼光が俺をまっすぐに射抜いた。三割増しの鋭さが痛い。

「……対価を求めない、といったわね、カドミヤさん。あなた、何か別の目的があるのでは?」

たとえるなら、戦闘態勢に入ったオオカミみたいな瞳だった。どうやったらそんな怖い顔になれるんだと思う反面、彼女もまたカノンの身を案じてこの問いをぶつけてきたのだろうと察する。

自分の子供のように育てているのなら、その気持ちはわかる気がした。どこの馬の骨とも知れない俺に、娘であるカノンを任せるのは心配でしょうがないのだろう。

「……俺は、守ってほしいと頼まれました。こんな身元も知れない俺を頼ってくれたなら、その期待に応えたいって思っただけです」

だから、俺も正直に思ったことを話す。彼女の心配を、解消するために。

「――カノン、お前というやつはどういう神経をしているんだ!知り合いならともかく、どこの馬の骨とも知れない奴に護衛を任せるなど、どう考えたらそうなる!」

――――と思ったのだが、どうやら逆効果だったらしい。これなら知り合いとして嘘をついたほうがよかったかなと軽く後悔しながら、どうやって助け舟を出そうか悩んでいると。

「……タクトさんは一人で旅をしていたわ。野盗や凶暴なモンスターに囲まれたこの場所まで単身でくるのは、普通の人には難しいはず。だから、私はタクトさんを選んだの!」

――あれ、そんなに危険な場所なのかここレブルクは?たしかに単身で旅をしているのはしていたが、それはいささか買いかぶりすぎじゃなかろうか。

いや、男に二言はない。俺が守るといった手前、こんなところで引いたら彼女の面目も立たない。

という俺の胸中をよそに、女教師は数秒考え込んではぁとため息をついた。

「……まぁ、お前が選んだならこれ以上追及はしないけどな。これで退けられなかったら、お前の責任だぞ」

「ええ、わかってる。……タクトさん」

「……ん、えっあ、はい?」

突然カノンに声をかけられて、俺は若干どもりつつ返事した。それに返ってきたのは、華やかな笑み。

「というわけなので、よろしくお願いしますね」

――その笑顔を、無性に守りたくてたまらなくなった。あれだ、俗にいう一目ぼれってヤツ?

ともかく、彼女を守るという契約は一応の元成立したようだ。カノンに答えるため、俺も「ああ」と力強く返す。それと同時に、女教師が胸を張ってどこか穏やかな顔でこちらを向いた。先ほどの威圧感は失せて、今のところスタイルのいい女教師だ。

「そういうことだ、カノンを頼む。……私はこのレブルク魔法学校所属、火炎魔法科統轄の『リラ・コーネリアス』だ。

このヒヨっ子の養母であり、師匠でもある」

そう言いつつ、カノンより頭一つ分身長の高い女教師――リラの手が、ぽすっとカノンの頭に置かれた。

「この護衛任務はカノンの頼みでもあり、私の頼みでもある。……カノンは卒業試験が五日後に迫っていてな。その間にこいつに何かあったら、私としては非常に困るんだ」

「……困る、って部分と、誰から守ってほしいかってところを、よければ教えてもらっても?」

ここまで話を進めておいて、俺はようやくこの依頼の目的を聞いていないことを思い出した。慌ててそう告げると、カノンとリラさんが目を合わせてこくりとうなずく。

「長話になる。かけてくれ」

そう言いつつ示された木製のテーブルとイスにカノンが座ったのを確認して、俺はカノンの斜め前――つまりリラさんの前に着席した。下心があるというわけではなく、あくまで真面目に彼女から話を聞くためだ。たぶん。



差し出されたコーヒーを受け取って一口飲むと、リラさんの話が始まった。

「……事の発端は、一か月前にさかのぼる。当時はうちの科の主席に、アグニという男子生徒がいたんだ」

当時を懐かしむような、憎むような複雑な瞳の色を輝かせながら、リラさんは虚空に呟くように話す。

「そのアグニって生徒、これがたいそう素行の悪い男でな。他人を見下した不遜な態度、主席であるために講じた非道な手段などで、彼の周りにはトラブルが絶えなかった。……見るに見かねたほかの生徒や、別の教師たちの判断によって、彼を退学処分にすることになったんだが、当然アグニは反発。統轄である私を倒したら退学を取り消せ、などとほざいたんだ」

額を覆いつつ、手に取ったカップに入っていたコーヒーを一気に飲み干す。ふぅと一つ息をついた後、テーブルの上で手を組んで、今度は俺を見て話を再開した。

「むろん、主席といってもしょせんはまだ学生レベル。総轄に勝とうなどと無茶を言いながら、アグニは私に大敗したよ。反発に反発を重ね、最終的には物理的に学校から追い出して、事件は終息したはずだった」

そこまで到達して、横にいたカノンが顔を伏せた。その状態から見るに、とても聞きたくない話なのかもしれない。

「……カノン、気が向かないなら聞いてる必要はないぞ?」

俺の言葉に、カノンの肩がぴくりと震える。直後、「失礼します」とだけ言い残して、カノンは足早に部屋を出ていった。その光景を見つめつつ、リラさんがため息をつく。

「気を遣わせてすまないな」

「いえ。……続けてください」

俺の言葉に頷いて、リラさんは続きを話し始める。その表情は、わが身のごとく深刻なものだった。

「……状況が変わったのは二週間前だ。私はカノンから、ストーカー紛い……それ以上といってもいいくらいの、執拗な嫌がらせを受けていることを聞いた。犯人を追いつめるために正体を調べたところ、どうやら退学にされたアグニがその犯人だったんだよ。……はた迷惑な話さ。自業自得で退学になったクセに、私が悪いなどとケチをつけ、あげく私の愛弟子であるカノンに怖い思いをさせるなんて」

つまりカノンが被っている被害は、完全な逆恨みによるとばっちりと言って差し支えないだろう。

――どんだけ思考停止なんだ、そのアグニとかいう生徒クソ。と考える俺をよそに、額を手で覆ったリラさんが話を続ける。

「無論どうにかしたいと私は考えたが、あいにくこの身分の都合上自由に動くことができなくてね。あの子も怖くて動くに動けず、困ったところで提案したのがこの依頼なんだ。……ここまではいいか?」

「はい」と小さくうなずき、リラさんの表情が幾分か柔らかくなったところで、表情で続きを促す。

「ここからが依頼の内容だ。……カドミヤくん、君には卒業試験終了までの五日間の間、カノンの護衛として付き添ってやってほしいんだ。四六時中付き添ってやってくれとは言わないが、せめてあの子が望むときには付き合ってやってほしい」

頼む、と懇願したリラさんの瞳は、悔しさの色に染まっていた。彼女は、自分の子を自分で守ってやれないことを、悔やんでいるのだろう。



「……お安いご用です。できるならそのアグニってヤツも、とっちめてきますよ」

だから、俺は――代わりに彼女を守るための付き人となる俺は、力強く返事を返した。

ホォエエェェェェなんだこの評価Pはあぁぁぁぁぁ!?((((゜Д゜;))))

こんな稚拙な作品に40p以上もの評価点がつくなど、恐縮で老けそうなレベルです……。

読んでいただいてる方に感謝感激雨あられ也ー(∩´∀`)∩ワーイ

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