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魔王争奪戦

大変ふざけております。

過度な期待はやめてください。恥ずかしいです。

とある魔王城に3人の魔王候補がいました。

1人は屈強な身体にいかつい顔。手には宝剣『ダークインフェルノ』が握られています。以下、屈強な候補。

1人はヒョロリとした体躯にイケメンな顔。手には月をあしらった宝石が付いた杖『ポロラマロッカ』が握られています。以下、ヒョロリ候補。

1人は少しキツめの目が印象的なナイスバデーな女性。手には何も握られていない。以下、女性の候補。

そんな3人は、現魔王が遺言で遺した『次の魔王は話し合いで決めるのじゃ』というものによって、王国全土から厳しい選挙を勝ち抜いて選ばれたのだった。

そして最後は話し合いとなった。


「初にお目にかかる! 俺はこの自慢の屈強な身体でここまで生きてきた! 一番大事なのは武力だ! 力だ!」

「初めまして。僕は魔術が得意です。どんな力も距離を取って戦う魔術には絶対に敵いません」

「ふんっ。私は武力も魔術もそこまで得意じゃないわ。でも王に必要なのは人心把握術よ。人を動かす能力よ」


初対面での自己紹介は、全員の警戒レベルをグーンと上げるだけのものだった。

3人とも目指す魔王像が違うため、意見も全然違うものでした。


「あんたさ、力でなんでも解決するとか言ってたけど、もし食べ物が無くなったらどうするの?」

「王国民はそんなことではへこたれぬ!」

「この人、脳筋でしたか」


ボソッと呟いたヒョロリ候補に、屈強な候補が立ち上がって机を大きく叩く。

ヒョロリ候補は、身体をビクッとさせた。


「脳筋とはなんだ貴様! そこは魔王がどうこうするところではないだろう! 部下に命じてやってもらえばよかろうなのだ!」


自慢げに他人任せ発言をしたところで女性の候補が小さく笑う。

それを見た屈強な候補は額に血管を浮き上がらせた。


「貴様、女性だからと図に乗っておるのか?」

「私は力も魔力もそこまで得意じゃないの。だからこの場での戦闘は避けたいわ」

「これだから女は…」

「男女差別は違反よ」

「男女差別ではない。貴様を批判しているだけだ」

「大体、なんなの? ここは話し合いの場でしょ? なのに2人してそんな危なっかしいもの持ってきちゃって。最後は戦いで決めるつもり?」

「僕は万が一に備えてですね」

「俺は力の象徴として持ってきただけだ。これを見れば俺が魔王だとわかりやすいだろう」


ふんっと自慢げに2人の前に宝剣を見せびらかす屈強な候補。

それを見て、ヒョロリと女性のそれぞれ候補はため息をつく。


「だからどうしたんですか?」

「どういうことだ?」

「その剣を持っていれば魔王っぽいんですか?」

「力こそ強さの象徴だろう」

「これだから脳筋は…」

「貴様、1度ならず2度まで俺を脳筋扱いしおったな…」


ピクピクと額に血管を浮かべるムキムキ。血管ビキビキ。


「見ておれ」


そう言うとムキムキは、宝剣『ダークインフェルノ』をブンと壁に向かって叩きつけた。

そこにあった壁は激しい音と共に砕け散った。


「僕は魔術が得意です。それゆえに見た目では弱そうと思うかもしれませんが、この『ポロラマロッカ』があれば誰にも負ける気はしません」

「えっ? 今なんて言ったの? ポポララポッカ?」

「『ポロラマロッカ』です」

「ポロララ…ごめん、もう一回いいか?」

「『ポロラマロッカ』!」


額に血管を浮かべながらそう叫ぶヒョロリ。血管ビキビキ。


「とにかく、僕は負けたことはありません」

「そんなわかりにくい名前の武器持ってるだけでなんか胡散臭いわね」

「身体も貧相だし」

「あんたら言いたい放題ですね。ではこれを見ててください」


そう言って『ポロらなんとか』を壁に向けてクイっと振ると、その先にあった壁が大きな音をたてて爆発した。

ムキムキと同じくらいの破壊具合に、少し自慢気なヒョロリ。


「どうです? これで力が全てじゃないってことが分かったでしょ?」

「ぐぬぬ…」

「はいはい。お城を破壊するのはここまでにしてちょうだい。力自慢はわかったから」


そう言って女性の候補は手で鎮まるようにとジェスチャーで表した。


「私は力もそうでもないし、魔術も微妙よ」

「じゃあ帰ればよいのでは?」

「なんでここにおるのだ?」

「最後まで話を聞きなさい。私には有能な部下が4人いるのよ。つまり四天王ね。いらっしゃい」

「「「「はっ」」」」


女性の候補の声の元に、音も無く現れた4人の人影。


「彼らは私のために忠実に動いてくれるわ。この4人にできないことなんて無いわ」


フフンと饒舌に語る女性に対し、ムキムキとヒョロリは眉間にシワを寄せて怪訝そうな顔をする。


「…何よ、その顔は」

「女性が魔王というのはちょっと…」

「俺も同意見だ」

「なんでよ」


ムキムキとヒョロリは顔を見合わせてからほぼ同時に答える。


「「だって生理のとき大変じゃん」」

「そこっ!? そこなの!? 問題はそこ!?」


大事なので3回聞きました。


「生理痛って痛いんだろ? そんな時に勇者が攻め込んできたらどうするのだ」

「聞いた話だと、男性の股間を思いきり蹴られたのと同じくらいの衝撃があるらしいですよ」

「なにっ!? そんな状態で戦えるわけがなかろう!」

「同意見です」

「同意見です、じゃないわよ! そんなの1週間も続かないわよ!」


その会話を聞いていた四天王の1人がボソリと呟いた。


「生理のとき、ちょっと機嫌悪いもんな…」

「今何か言ったやつ、前に出なさい!!」


四天王に向かって指をさしながら怒鳴る女性。

それを見ていたヒョロリが一言。


「今も生理なんですか?」

「違うわよっ!!」


バコーン!

そう怒鳴り散らした瞬間、魔王の部屋のドアが大きな音を立てて開かれた。というか壊された。


「キィェエエエエエイッ!!」


何者かが奇声と共に部屋に入ってきた。


「何奴!」

「冷奴!」

「キャァアア!!」


慌てふためく各候補を前に、侵入してきた人物はまず四天王の1人を掲げた剣で斬った。

みごとにまっぷたつに斬れた四天王の1人は、無残にも崩れ落ちていく。


「し、侵入者よ! 倒しなさい!」

「「「ハッ!」」」


四天王、改め三天王は果敢に侵入者に向かっていった。

しかし3人では本来の力を発揮することができず、サクサクと倒されてしまった。


「おいっ! 四天王弱いではないか!」

「三天王だったから本来の力を発揮できなかったのよ!」

「三天王って…ププッ」


何故かツボに入ってしまったらしく、顔を押さえて必死に笑いをこらえるヒョロリ。

そんな3人の掛け合いなど無用と言うが如く、侵入者はムキムキに向かって剣を振り上げた。

ムキムキは咄嗟に宝剣『ダークインフェルノ』を手に取ろうとするが、女性にツッコミをいれていたために、宝剣『ダークインフェルノ』を掴みそこねてしまい、手からスルリとこぼれ落ちてしまう。やむな素手で応戦するが、刃物に勝てるはずもなく、切れ味抜群の剣によって縦まっぷたつに斬られてしまった。


「ダークインフェルノ使えねぇ!!」

「ブハッ!」


ムキムキが宝剣『ダークインフェルノ』を滑り落としたのを見たヒョロリの腹筋はついに崩壊してしまい、片手で顔を、もう片方の手で腹を押さえると、すでに立っているのが精一杯だった。

そんなヒョロリに侵入者の剣が優しく尻から突き刺さった。

そして倒れ込むヒョロリ。

残るは女性ただ一人。


「や、やめてよ。私は何も出来ないの。で、でもあなたの言うことならなんでも聞くわ! エッチなこともなんでも」

「黙れババア」


そう言って侵入者は、剣を振り上げた。

勇者編に続く。

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