表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

春には桜が咲き、桜が散ります

作者: 今宮

桜が散り始めたから明日のお花見は中止になった。

もともと集まりもあんまり良くなかったらしいよ。連絡をくれたアキが誰となく文句を言うように教えてくれた。

卒業してから会える最初で最後のチャンスだったのに。ベットの上で小さく膝を抱えてケータイを握りしめる。思った以上に落胆した自分を自覚した。次会うときはお酒なんかの見ながら思い出話に花を咲かせるのかな。あの時、高校生の時ね、私吉田のこと好きだったんだよ。信じる?バレバレだったよって笑われるかもしれない。自分も好きだったなんてキセキみたいなことを言われるなんて思ってない、そんな期待はしてない。でも知らなかった、ってそう言われるただの想像が今の私の気分を一層重くさせた。

手持ち無沙汰に着信履歴を見返して、辿り着いた11ケタの数字を目で追う。忘れてほしくない。たまに、高校時代を思い出した時にふと一緒に頭に浮かぶだけでもいい。そういえばあんな奴いたなって、それだけで十分。高校時代最後の思い出に自分を刻みつけたいなんてとんでもない贅沢だった、そんなの後になってから思えばいい。

夜の空気に静かに響くバイクの音が静かに家の前を去っていく。唸り声をあげ、窓を揺らす春風が今も尚、絶えず桜の花びらを吹き飛ばしていることを考えると自然と目が細まった。

スケジュール帳に大きく書かれたお花見の文字。嬉々として記したそれを消そうと修正機を手にとったがふと考え直して筆箱に戻した。かわりに大きくバッテン印をつけた30日の枠を指先でなぞり、その指先をそのままタッチパネルでスライドさせた。


このコール中にも君のケータイ画面には私の名前が表示されているのだろうか。

心臓が激しく暴れた。ケータイを支えられないほどに手が震えた。

午前0時の3秒前、このコールがきれると同時に私は君との最初の思い出を歩む。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ