逝らっしゃいませ
●深夜のコンビニ
態度の悪い店員、ガムを噛みながらレジに立っている。
店員、スマートフォンで彼女と通話している。
店員「ああ、来週? 全然いけるいける! バイト? 別に休めばいいっしょ。ここの店長、怒っても怖くねえし……」
店員、笑いながら通話する。
その時、入店音と共に自動扉が開く。
店員、面倒そうに彼女に告げる。
店員「ごめん、客来たから切るわ」
スマートフォンを仕舞った店員、見向きもせずに呼びかける。
店員「らっしゃっせー」
店員、ガムを噛みながら面倒そうに立っている。
その時、商品棚の陰に見切れるように幽霊のような人影が佇む。
店員、ハッとして視線を向けるが誰もいない。
不思議に思いつつ視線を戻すと、レジの前におにぎりが置かれている。
店員「……は?」
店員、周囲を見回すが誰もいない。
眉間に皺を寄せた店員、おにぎりを持って軽く呼びかける。
店員「おい、誰かいるのか」
呼びかけに反応はない。
店員、おにぎりを前に見て舌打ちする。
店員「くそが、ふざけやがって……」
店員、苛立った様子で店内を巡回し、おにぎりを置いた人間を探す。
商品棚を巡り、しきりに周囲を見回して探すが、誰もいない。
店員がレジに戻ると、おにぎりの他にお茶やお菓子も置かれている。
それを見た店員、激怒する。
店員「ふざけんじゃねぇぞ、コラ! 俺を舐めんじゃねぇ!」
店員、走って店内を回り始める。
乱暴に商品を吹っ飛ばしながら探すが、またもや誰も見つからない。
レジに戻った店員、置かれた商品のバーコードを乱暴に読み込む。
そして大声で会計を述べる。
店員「お待たせしました、お会計1120円でーす!」
店員、おにぎりを開封し、これ見よがしに貪り食う。
さらにお茶も開けて一気飲みする。
店員、室内を睨んで大声で告げる。
店員「誰だか知らねぇけどよ、てめぇなんか怖くねえんだよ!」
店員が叫んだ直後、店内が停電する。
店内が真っ暗になり、静寂に包まれる。
店員、戸惑う。
店員「は? 意味わかんねえって。どうなってんだよ……」
店員、不安そうにきょろきょろと見回す。
やがて、あちこちから謎の声や音が聞こえてくる。
店員、怪奇現象に怯えながらも、強がって怒鳴る。
店員「うるせぇな! 脅かそうたってそうはいかねぇぞ! 正々堂々かかってこいや!」
店員、スマートフォンのライトで店内を照らす。
背後で足音が聞こえて、咄嗟に振り返って照らすが誰もいない。
店員、意を決して走り出し、店内を片っ端から照らしていく。
店員「出て来い! 卑怯だぞ、クソが!」
店員、店の奥で息を切らす。
店員、不安と恐怖で弱り切っている。
店員「もういいって。こんな仕事やめてやる……」
その時、入り口から入店音が聞こえてくる。
さらに入店音が凄まじい勢いで壊れたように連発する。
ほぼ同時に大量の足音が店員に迫ってくる。
店員、腰を抜かして尻餅をつく。
店員「なんだぁっ!?」
商品棚がガタガタと揺れる。
足音がどんどん近付いてくる。
店員、すっかり怯えてしまい、屈んで頭を抱えて目を閉じる。
店員「うわああああああああぁっ!!」
足音がぴたりと止まり、店内が静寂に包まれる。
店内の明かりが復旧し、店員は恐る恐る目を開ける。
店員、顔の見えない無数の幽霊に囲まれている。
店員が叫ぼうとした瞬間、その顔に無数の手がへばりついて遮る。
●朝のコンビニ
制服姿の二人の女子高生、コンビニの前を通りかかる。
一人がコンビニを指差して、思い出したように言う。
女子高生A「ここのコンビニ、心霊スポットらしいよ」
女子高生B「えっ、何それ。聞いたことないんだけど」
女子高生A「なんか霊の通り道みたいな感じなんだって。それで怪奇現象が起きたり、店員とか客が消えちゃうんだとか」
女子高生B「うっわ! 怖いやつじゃん!」
女子高生たち、ニヤニヤと笑い合う。
話題を出した一人、試すように提案する。
女子高生A「ねぇ、入ってみようよ」
女子高生B「ええー、本当に?」
女子高生A「怖いの?」
ニヤニヤ笑う一人。
もう一人、面倒くさそうに応じる。
女子高生B「別にそういうわけじゃないけどさ」
女子高生A「じゃあ決定ね!」
女子高生B「まったくもう……」
女子高生たち、コンビニへと近付く。
入店音に合わせて自動ドアが開く。
店内から抑揚のない掠れた声が聞こえてくる。
店員「いらっ……しゃいませ……」
女子高生たち、怪訝そうに店内を覗き込む。
次の瞬間、何かに気付いて悲鳴を上げながら外へ逃げ出す。
店内では、首を吊った店員が揺れながら、虚ろな目で挨拶を繰り返している。
店員「いらっしゃいませ……いらっしゃいませ……いらっしゃいませ……」
店員の首がミチミチと音を立てながら周り、顔がカメラ目線になる。
店員「いらっしゃいませ」




