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夏の自転車

作者: 緑咲季 宏
掲載日:2025/12/24

夏の風物詩『盆踊り』。8月15日の今日は毎年恒例の駅前の盆踊りがある。毎年親と参加していたが中学3年の今年は行かない。受験勉強もあるし親と行くのもなんか…。

夕方になり親が盆踊りに行き私は机に向かい勉強に励む。

「カラカラカラ」「カラカラカラ」

何の音だろう。外から音がする。

「カラカラカラ」「カラカラカラ」

2階の窓から外を覗くと自転車置き場に浴衣を着た女の子がいる。

私が小さい頃に乗っていた子供用の自転車に女の子が跨りペダルを後ろに回している。

まぁイタズラしなければ大丈夫だけど。人の敷地内に入ってくるのはちょっとな。

「カラカラカラ」「カラカラカラ」

やっぱり気になり自転車置き場へ行き女の子に声をかけてみることにした。

「こんにちは」

「…」

女の子はびっくりした様子でこちらを見て何も喋らない。自転車には跨ったままだ。歳は幼稚園生位だろうか。

「自転車に乗ってみたいの?」

女の子は首を縦に振った。

「それじゃ乗ってみようか。お姉ちゃんが押してあげる」

女の子はにっこり笑う。

補助輪付きだからゆっくり走れば倒れる心配もない。

幸い自転車も普通に動く。

私は自転車の荷台部分をしっかり掴み押してあげた。

「わぁ!」女の子は初めて自転車に乗るのか興奮してる様子だ。

家の庭を行ったり来たり2往復した。

すると女の子が家の門の方を振り向いた。そこには浴衣姿の女の子のお母さんと思われる女性が立っている。

女の子が自転車から降り女性の元へ向かう。女性はこちらへ軽く会釈をし2人で歩き去って行った。


次の日、また夕方になると。

「カラカラカラ」「カラカラカラ」

2階から下を覗くとまた昨日の女の子が自転車置き場にいる。

私は自転車置き場へ行き昨日と同じように荷台を押して自転車に乗せてあげた。

「ハハハハ!もっと押して!もっと!」

3往復した所で休憩し聞いてみた。

「名前はなんていうの?」

「ミツ!」

「可愛い名前ね。この辺りに住んでるの?」

「うん!」

すると女の子が家の門の方を振り向いた。今日も昨日と同じ女性が立っている。女の子は女性の方へ走って行き、途中で止まり、こちらを振り向いた。

「また来てもいい?」

「うん、またいつでも来ていいから」

女の子はにっこり笑い女性の元へ走る。

ミツちゃんとお母さん今日も浴衣だったな。


次の日から女の子はまったく来なくなった。


1年後のお盆入りの8月13日夕方。

私が2階の部屋に居ると。

「カラカラカラ」「カラカラカラ」











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― 新着の感想 ―
美しい「怪談?・童話?」で、想像の広がるお話でした。 この後、幽霊に執着されるホラーになるのか、或は定石通り、小さな幸せをもたらしてくれるのか? 楽しませて貰いました
夏の日常風景から始まる物語が、読み終わった後に全く違う意味を持って立ち上がってくる...そんな静かな怖さに引き込まれました。 浴衣を着た母子、毎日同じ時間、お盆の時期...読み返すと伏線がたくさん散…
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