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神意排他能力増幅機関の懊悩

「魔王生成機構修復完了。通常状態へ移行。」


突然の規格外(イレギュラー)が発生した時には焦りましたが、なんとか稼働を継続できてなによりです。

我々は「大いなる存在」からこの世界を管理することを任されている。

我々は我々のことを我々と言っているが、正確に認識できているか怪しいところではある。

我々はこの世界を予定調和の中に収束させるために活動している。

因果律を乱さないように、魂を浄化し、次の世に引き継がねばならない。

人類はそのために管理監視すべき最たるものだ。


この世界で一時は枯渇しかけた魂を一旦十億を上限に人類として復活させましたが、予想以上に穢れが残っていて最初の内は争いが減りませんでした。

闘争は人類の魂に染みついた病巣かと諦めかけたこともありましたが、「大いなる存在」の考えにより一条の光が射しました。

その闘争心を人類共通の敵ただ一人に向けさせようという子供騙しではありますが、単純明快で制御も容易だろうということで直ちに構築され実行されることになります。


まず、人類の敵として「魔王」が生成されました。

魔王は世界にただ一人の超悪役です。ただし、必ず倒されるべき存在です。哀れな存在ですので最も穢れた魂が使用されることになりました。

人類には魔王を倒さないと世界が闇に包まれるとか、この世の終わりが来るとか、とにかく散々脅して魔王討伐へ誘導します。

そうは言っても、全人類がムキムキの脳筋ばかりになってしまっても、それはそれで弱者を虐げるような風潮になってしまっては新たな争いの引き鉄になりそうです。

というところで、人類には自分にできることで精一杯頑張ってもらうために別の仕組みが用意されました。

それが「勇者」を筆頭とする職種(ジョブ)です。

「勇者」は「魔王」に対抗できる人類の最高戦力で、他の追随を許さないほどの高みに到達しやすく設定していますが、この力が暴走しても問題になりますのでいろんな制限がいつでも発動できるようにもしています。

「勇者」も世界にただ一人です。「勇者」が死ぬと次にこの世に生を受ける魂に自動的に「勇者」の職種(ジョブ)を付与し、人類の未来を背負ってもらいます。我々が勝手に押し付けているわけですが、それも運命と諦めてください。

他の魂には「闘士」、「学士」が付与されますが、成長のさせ方により能力の伸び方が替わるようになっています。

大雑把に分けると、体を使って闘うのが「闘士」、頭を使って闘うのが「学士」という感じです。

さて、これで「魔王」対「勇者」を筆頭にした人類という図式になったわけですが、流石に1対十億では「魔王」も大変過ぎるということで、「魔王」には最終決戦だけ参加してもらい、人類が成長するための相手は他にしてもらうことにしましょうということで生み出されたのが「魔物」です。

穢れた魂を浄化するためにも都合が良かったので、魂の垢を集めて溜まり場をつくり、本能のままに人を襲うだけの疑似生命体を形成して放ちます。ただし、人類を害するための存在ではないので厳重に管理することは怠りません。溜まり場の浅いところには弱き者、深いところには強き者となるように慎重に配置し、うっかり大群を形成しないような手順も組み込まれています。

また、人類には元々武術などの能力もありましたが、新たに技能(スキル)も与えられました。この技能(スキル)により、人類の闘争心は余すことなく魔物に向けられるようになり、魂の浄化にも寄与する結果となっています。

後にすぐ、これらの仕組みに「魔王」も組み込まれました。


この「魔王」を軸とした運用は長きに亘り、成功をおさめます。

魂の穢れは浄化が進み、人類からは悪意と呼べる感情がほぼ消え去り、人類同士の集団での争いは皆無と言っていい状態です。

人類は新しい「魔王」を打倒するために「勇者」を支え、助けるために一致団結しています。


ところが、次の段階へ進めるための機能更新を検討し始めた矢先の今回の出来事です。

今回の勇者も無事に「魔王」打倒に成功しましたが、次の「魔王」の生成時に異物が混入してしまいました。

我々も手を抜いていたつもりはないのですが、いつの間にか脆弱な部分ができていたようです。

我々を侵食するような動きが検知されたため、直ちに「魔王」を解体しようとしましたが不可能でした。

どうやらこの「魔王」に使用された魂はこの世界のものではないようで、解体を拒み完全な防御態勢をとっているようです。

せっかくここまで世界を安定させてきたのに、こんな規格外(イレギュラー)の所為で台無しにされてはたまりません。

なんとしても排除せねば。


あぁ、なんということでしょう。

「勇者」が倒されてしまいました。

我々は懸命に規格外(イレギュラー)の排除に努めましたが、生存し続けてしまい「魔王」であるが故に新しい「魔王」を生成することもできず、「勇者」と相対すると事も無げに屠ってしまいました。

我々も無策でいたわけではなく、勇者と相対するために防御態勢を解除した隙を突こうとしたのですが、逆に更なる領域を侵食されてしまいました。

これはまずいですね。

「勇者」の能力が「魔王」に吸収されてしまったことを数値が示しています。

このまま「魔王」を排除できなければ、次の「勇者」もその次も能力を奪われてしまい、いつか我々も全ての領域を侵食されてしまうかもしれません。

そうなってしまっては世界を次の段階に進めるどころではありません。

今、この時の持てる全ての能力で対抗するしかありません。


幸いにしてというか、規格外(イレギュラー)は我々の管理下から逃走するという選択肢はないようです。

元々、この世界から隔離しているこの空間から逃げ出すのも相当の困難を極めることだと思うので精々悪足搔きして消耗してほしいところではあったのですが、我々を完全に掌握するのが規格外(イレギュラー)の目的なのでしょうか。ならば徹底的にやり合いましょう。


一体どのくらいの時が流れたのでしょう。

何人もの「勇者」が犠牲になってしまいました。

我々としては規格外(イレギュラー)を自由にさせないために進化を続けますが、その所為でいつの間にか「大いなる存在」との繋がりが切れてしまっていました。迂闊でした。初期の段階で「大いなる存在」と連携できていればこのような事態にはならなかったかもしれないのに。


ここしばらく規格外(イレギュラー)の我々への侵食が沈静化しているように感じます。

ですが、我々が優位に立っているということでは決してありません。

大方、次に攻勢に出たところで一気に決着をつけようとかそういうことで力を蓄えているとかなんだと思います。

我々は規格外(イレギュラー)の都合なんて知ったことではないので、できることを精一杯やるだけです。

そろそろ「大いなる存在」もこの状況に気づいてくれて力を貸してくれても良さそうですが、どうなんでしょうね。


最近になって、規格外(イレギュラー)からではない我々の領域への妙な干渉が何度かありましたが、一体なんだったのでしょう。

どこか懐かしい波動を感じさせなくもなかったのですが、「大いなる存在」の助力を期待したり弱気になっているせいでしょうか。

改めて気を引き締めて規格外(イレギュラー)と対峙するとしましょう。


おや?「魔王」の空間周辺に反応があります。

まさか人類が自力でたどり着いたのでしょうか。

どうやら人類に間違いないようですが…もしやこの波動は!?

ですが、感応しませんね。

仕方ないですね、我々の思惑優先ですが勝手にやらせてもらいますよ。


神意排他能力増幅機関システムの描写についてはすごく悩みました(;^_^A

途中でカナタたちと絡ませるかどうか、肉体を与えるかとか、いろいろね。

結局、本編ではAI的な存在で人格みたいなものは一切描写していませんが、実はこんな感じで頑張ってたんです( ´∀`)b

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