断罪イベント365ー第31回 「王子、断罪日を忘れる」
断罪イベントで365編の短編が書けるか、実験中。
婚約破棄・ざまぁの王道テンプレから始まり、
断罪の先にどこまで広げられるか挑戦しています。
断罪当日・・・
「……あれ? 王子、来てないわよ?」
その日、断罪場に集まった観衆は、ざわめき始めていた。
玉座には誰も座っておらず、いつもの輝く断罪帳も、
壇上の上でぽつんと光っている。
その時、元婚約者令嬢、クラリスが動いた。
「お待たせしました。本日の断罪イベントを――」
観衆がざわっと振り返る。
まさか王子が来たのか?と思った瞬間。
壇上に上がったのは――**クラリス本人だった**。
「本日の断罪イベントを、開始いたします」
堂々とした声。静まり返る会場。
ヴィオレッタの顔が、ぴくりと引きつった。
「ちょ、ちょっと、何を勝手に……!」
「王子が来ないのなら、私が代行しますわ。
令嬢として、正式な立場でね」
そう言って、クラリスは断罪帳をぺらりと開く。
断罪帳が素直に反応して光を放ったことに、会場がざわつく。
「断罪帳が……クラリスさまに反応した……?」
「まさか、王子が来ないと開かないんじゃ?」
クラリスは構わず、優雅に一礼しながらこう告げる。
「では。今日の“ざまぁ”の幕を開けましょう
――ヴィオレッタ様」
「くっ……!」
壇上には、王子の姿はない。
でもそこには、“被告”と“原告”のふたりがいた。
観衆(ざまぁ民)がざわざわと興奮し始める。
「これは新しい展開…!」
「女子会ざまぁだ!」
「むしろ王子がいない方がスムーズなのでは…?」
ヴィオレッタは苛立ちを隠せず叫ぶ。
「断罪は、王子の宣言がなければ無効よ!」
「その王子が、**断罪を忘れた**。
それこそが、この事件の本質です」
「なっ……!」
クラリスの一言で、会場の空気が変わった。
「令嬢の罪状を読み上げ、
罰を宣言するのは確かに王子のお役目です。
でも王子がその役目を忘れたなら
――この断罪は、**形だけの儀式**だったということになりますわ」
静かな怒りを含んだ口調。
ヴィオレッタが何かを言い返すより先に、
クラリスは魔道映像の力を展開する。
そこに浮かんだのは、
王子の寝坊したままの姿だった。
**「ん〜…今日って…何かあったっけ…?」**
会場:
「…………」
「…………」
「………………ざまぁぁぁぁぁあああああああ!!!」
爆笑。歓声。
まさかの**寝坊記録魔道映像**に、
会場がざまぁの嵐に包まれる。
ヴィオレッタがぐぬぬと歯ぎしりをする。
「そ、その映像が何よ! 私はちゃんとここに来て、真実を――」
「真実なら、こちらにありますわ」
クラリスが次に展開したのは、
**王子とヴィオレッタがこそこそ話す映像**。
ヴィオレッタ「王子、クラリスには飽きたって
おっしゃってたじゃない」
王子 「うん、そうなんだけど・・・」
ヴィオレッタ「王子♡私に任せて♡」
映し出された映像に、一同凍り付く。
その瞬間、遅れて王子が走り込んできた。
「はぁっ……はぁっ……ま、間に合った……?」
クラリスは彼に向かって、にっこりと微笑んだ。
「いいえ。**もう終わりましたわ**」
「えっ……」
「あなたが来なかったことで、断罪の本質が露わになりました。
そして今日、王子の“寝坊”が、最大のざまぁになったのです」
ー会場が拍手でわいた。
王子、次は
魔道具 目覚ましセットしておきましょう。
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