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想憶の砂  作者: 凡
20/22

二十

本当にお久しぶりです。八月ギリギリになってしまい申し訳ありません。更新は不定期になりそうですが、できる限り頑張ります。


 静かな風が吹いていく。閃はカラと顔を見合わせる。モトはどこか気まずそうな表情で何も言わない。

 前にいるモルの目は真っ直ぐとしていた。その中には試すようなものはなく、ただ純粋に問いかけているだけだった。閃は少し考えるようにして、

「あ、うん。多分…?」

「そか。ならよかった」

 満面の笑みをすると遠くから彼を呼ぶ声がするので、モルは再び走っていった。閃は戸惑いを隠せないままで、ふとモトの方を向くと、彼の眉間に深いしわが刻み込まれていた。

「モトさん、あの…」

「息子が失礼しました。ここが私の家なので、今夜は泊ってってください。私はこれから所用があるので出かけますが、妻には話してあるので何かあったら彼女に声をかければ大丈夫です。では、のちほど」

 それ以上の発言は許さないような圧があり、閃は言葉を出せなかった。歩いて行った彼を見送りながら、閃はなんとなく落ち着かない感覚がする。いつのまにかやってきた雲に隠された太陽は、居心地が悪そうに弱々しい光を放っていた。


「なあ、カラ。怖くない人ってどういう意味かな」

 案内された部屋で寝ころびながら、閃は尋ねる。さっきのモルの言葉がやっぱり引っかかっていた。モトもなんだか難しい顔をしてこともあって、この村では何かあるのだろうかという疑念が少し浮かび上がってる。

 閃はちらりと彼の横顔を見る。カラは窓の外を見つめながら、お茶をすすっている。何かを考えているようだが、何も言ってくれない。

「無視すんなよ」

「ああ、悪い。最後にここに来たのは少し前だが、詳しいことは俺にもよく分からない。」

「そうなのか。どんくらい前?」

「八年前。お前も一緒だったぞ」

 少しじゃないだろう、と突っ込もうと思っていた閃は目を見開く。俺、ここに来たことあるのか。もしかしたらモトやあの海に見覚えがあったのもそれが原因か。いや、でもそれなら初めましてなんて言われないか。

 閃はどうにかその頃の記憶につながりそうな何かを頭の中で探す。目をギュッと瞑って頭の断片的な記憶を思い出す。が、それらしいものは見つからない。

「八年前ねー。ダメだ、全然思い出せない」

「そうか。やはりまだ記憶が完全ではないようだな。それに閃からしたらだいぶ昔の話だからより思い出すのには苦労するかもしれない」

 あー、と再び閃は寝ころぶ。思い出せそうで思い出せないことがもどかしい。目の前にあった霧が晴れかけたのに、進もうとした途端に曇ってしまった感覚だ。そうしてぼんやりしていると、

「あれ?」

「どうした」

「いやさ、俺たちここに来たことあるんだろ。何でみんな俺たちのこと覚えていないの」

 俺は記憶がないから思い出せないのも普通なのだが、八年くらい前なら大人は覚えているのではないだろうか。特にカラのような目立つ見た目をしている男のことを忘れるなんて思えない。カラは少し考えるような間をとって、

「お前に関しては見た目が変わっているから気づいていないのかもな。覚えている奴は覚えていてくれてたぞ。さっき声もかけられた」

「うそ、いつ?」

「お前が下向いてた時だ。俺がいろんなやつらに声かけられて、お前が一人で惨めになっていたとき」

 あの時か、と閃が納得しているとカラが不敵に笑う。閃は眉をひそめる。なんだか俺が笑われている気がするんだよな。

「なんだよ。ニヤついて」

「いいや、やはり閃は面白いと思ってな。モトも笑っていたじゃないか」

「笑ってたっつーか、笑われてたんだろ。正直恥ずかしい」

 周りのことなんか忘れて大声でいろいろ言ってしまった気がする。それにカラがかっこいいのは別に文句を言うことじゃないのに。顔が熱くなって閃はふいとそっぽを向く。なおもカラがからかっていると、モルがひょこりと姿を現した。閃はそれに気づくとカラから逃げるように彼に近づいて、

「やあ、モルくん。さっきぶりだね。今日はお邪魔します。悪いね」

「んん、いいよ。だってお兄さんこわくないもんね。いいひとなんでしょ」

 そう言われると自信がないが、閃は一応うなずいておく。純粋なモルはにこにこと笑っていて、周りが温かく見える。

「明日、僕がお兄さんを村の周りに案内するね。予定とかもないでしょ?」

「いいのか?俺の案内なんかしてもらって」

「お父さんがいろいろ見せてあげろって。それに、僕もお兄さんに見てもらいたいものがあるんだ!」

 目をキラキラさせながらモルはじっと閃を見る。まっすぐな子だな、と思いながら閃が了承すると、今から待ちきれないようなモルは鼻歌なんか歌い始める。穢れのない純粋さになんだか心が澄んでいく。

「カラも行くだろ?」

「俺は遠慮する。一度来たことがあるからな。少し気になる場所もあるしな」

 真面目な顔をしたカラの言葉に少し引っかかったが、閃は分かったと返事をする。空は少しずつ橙色(だいだいいろ)に染まっていった。


すみません。編集してしまいました。

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