二
少年を林で発見してから数日が経った。しかし、彼は依然として目を覚さないでいる。二人は戻ってからすぐ、村の医者に少年を診てもらったが、気を失っているだけだからそのうち意識は回復するということで、ひとまずはヤドの家で彼を引き取ることになった。郷はどうにも心配なようで、連日ヤドの家に押しかけては、少年の側でずっと見守っている。
その日も朝から郷はやってきて、すぐに彼が眠る部屋へと直行した。ヤドはなんだか嫉妬めいたモヤついた感情が心に渦巻いたが、そうは言っても自分自身、彼のことが気になるので、いつものように二人分の飲み物を持って郷の後を追いかけた。
部屋の中は静かなもので、時折外から小鳥の鳴く音と風のさざめきがかすかに聞こえてくる。郷はものも言わずにただただ少年の横顔をじっと見ているのみだった。
「ほら、なんか飲まないと郷が体調崩すぞ。」
「うん。ありがと。」
差し出された飲み物を受け取る。ヤドは近くにあった台を取り出して郷の横に座った。彼もまた何一つ言わなかったが、どこか落ち着かないように郷の顔を覗いたりしている。いろいろ心配させてしまっていることだけが分かって郷は申し訳ない気持ちになった。
それでも、なぜだか彼のことが気になってしまう。あの林にはこの村の人ではないと辿り着けないはずなのだ。それなのに、なぜ彼はあの場所で倒れていたのか。それに、彼の周りが輝いていたのは一体なんだったのだろう。
眠っている少年はいつまでも返事をくれはしない。君はどこから来たの、何者なの。心の中でそっと問いかける。答えを出さない彼の顔は普通のようで、泣き出しそうにも見えた。郷はため息混じりにヤドから貰った水をそっと飲む。冷たさが身体中に伝っていく。沈黙が広がる部屋の外で再び小鳥がのんびりと鳴き始めた。