あぁ!女神様?
前回のあらすじ
ケタの魂が北の大陸に移動した為、北の大陸に移動してきました。
別大陸は言語・通貨・文化が異なる新世界でした。
「お呼びですか!?ワールドン様!」
「えっ!?」
あれ?おかしいな?
船旅だと後7日はかかる見込みのはずなのに。
しかもこの港町にいるのなんで分かったの?
しかも心の中の声に反応した!?怖いんですけど?
(いやマジで怖いんですけど?)
「エリーゼ、どうやって追い付いたの?」
「気合でお祈りしましたら、嵐が来て予定よりも早く進みましたわ!」
エリーゼがスカートの砂埃をパパっと払いながら、何でもないように謎ワードを語りだした。
「ど、どうしてここだと分かったの?」
「当然ですわ!ワールドン様のお好みは何でも分かりますわ!」
どうやら、以下の理由で特定したらしい。
前の大陸にいた時に、僕が魂の気配へ視線を向けていた先をマークしていたとの事。
その先にある港町は、候補3つだったとの事。
僕が鉄道好きだから、その3つの中で唯一鉄道が通っている港町を、選ぶと確信したとの事。
(こ、怖いんですけど。とても怖いんですけど?)
気合のお祈りとか謎ワード出て来ているし、嵐で進みが早くなったとか意味不明ですし、どこに逃げても捕まる気がするし【伝心】を使わずに、心の中を覗いてくるのマジで何なの?
港に着いてからここに全力ダッシュしてきたみたいで、ザザザッ!て、土煙があがっている。
結構、大きな港町なのに一発で位置特定出来ているのなんで?
これ以上は怖くて聞けないよ。
(エリーゼの走った跡は地面がめくれあがっているけど、気にしたら負けかなぁ……)
─────────────────────
とりあえず、エリーゼの謎パワーで合流を果たした。
エリーゼは7カ国語を習熟しているとの事で、改めて講師を依頼したよ。
「まぁ!任せて下さいませ!ワールドン様が覚えるまで何日でも徹夜して教えますわ!」
「いや、普通に寝ていいから……」
最初の頃、僕が寝なくても大丈夫と知った彼女は、ずっと夜起きて話し相手をしてくれた。途中で目が血走りながら「まだ大丈夫ですわ!まだいけますわ!」とブツブツ言い出して、人って寝ないとダメだって思い出したね。
そんな感じでエリーゼのおかげもあって、この世界の知識が凄く手に入ったよ。ちょっと質問したら、凄い勢いで教えてくれた。正直引くレベルだったな。さすがに、国家機密を詳細に教えるのは、僕もどうなのかと思うよ。
(ま、僕はドラゴンだし、国家機密を知っても役に立たないのは、間違いないね)
でも、装備品とか美術品や調度品の、目利きや適正価格のレクチャーは、とても勉強になった。最近は僕も目利きできるようになったし、ケタにドヤ顔できそうと喜んだよ。
いい娘なんだけど、なんだろう?
あぁ、あれだ。狂信者みたいな感じなんだ。
教えてもらった異世界知識が、こんな所で役に立つとは思わなかったな。
もうちょっと普通にして欲しいと伝えたけど……
「ワールドン様に対して、普通に接したらこうなっていますわ!」
「いや、他の人と同じようにして欲しいよ?」
「女神であられるワールドン様に、そんな事できませんわ!」
(うーん、どうやら方向修正失敗した模様)
そういえば、出会った時から「金の布のようなきめ細やかで美しく淡い金髪」「吸い込まれるような輝きを持つ金色の瞳」「透明感のある美しい白い肌」と褒めちぎっていた。
それに「20代前半に見える絶世の美女で、常に神々しい金色のマナを纏っておられます」と言っていて、勝手に僕を女神認定している。
そして、その日からエリーゼは……
(僕のストーカーにジョブチェンジなんだよ!)
一応、僕としては性別は無い。
最初に変化する際に、強くイメージした姿になるって猫魔族から教えて貰っていた。
そういう訳で僕は「ファンタジー世界にエルフは必要だろう?」と思って女エルフをイメージしたよ。
ちなみに、某島の戦記のエルフのイメージね。
でも、色々と納得できていないからクーリングオフさせて欲しかったんだけど、「そのお姿で世界に登録されております」と言われて変えられなかったんだ。
───納得できない点。
耳が尖がって無いの!
猫魔族が言うには「実際に見た事がある造形にしかなれない」って事らしい。
そりゃエルフは、イメージ共有でしか見せて貰っていないけど、耳ぐらいどうにかならないの?と、文句を言わせて頂きたい。
瞳の色も変えられなかった。
猫魔族は「髪や瞳の色は魂に基づく色となります」と言っていた。
魔獣の変化は色々と不便だ。
狐魔族が昔、変化で騙して多数の犯罪を犯していて、神から制限が強化されたらしい。
(僕、眷属神なのに全然知らなかったよ)
金色のマナを纏っている点に関しては、どうしてもやむを得ない理由があって、致し方なくそうなっているんだ。
うまく制御できない時には、ちょっとやらかしたりもした。
変化で見た目を変えても、質量・重量は変えられないんだよね。超圧縮した感じ?
そのままだと、僕の体重のままだから、道にズボって肩ぐらいまで埋まってしまう。
だから、常にマナの力場を発生させて、微妙にホバー状態にしている。浮きすぎて、空中を歩いているようになったり、ホバーのかけ方が甘くて、床を突き破ってしまって弁償騒ぎになったり……
最初の頃は失敗ばかりだったけれど、今は安定している。
この体重の微調整を行う為に、常にマナ色に光っているって訳。
仕方ないね。
そしてエリーゼは、金色に光るドローンのような姿を見て、僕を神様認定しちゃった。
ーーー初エンカウントVTRーーー
「ふぅーーー!女神様は僕っ娘でしたわ!」
ーーー初エンカウントENDーーー
もう訂正するのも面倒になって、今に至る感じ。
まぁ、常識や知識に関しては、今も助けて貰っている。当時、各地のトラブル続きで困っていた時に、ささっと大金を相手に渡して、マネーパワーでゴリ押し出来たのも助かった。
いや、高級宿を取らせたのもエリーゼだし、「高級宿は丈夫なベッドと床ですから大丈夫ですわ!」と言ったのもエリーゼだし、1階まで突き破って弁償騒ぎになったのは、僕のせいじゃない。僕、悪くない。
─────────────────────
今では、僕の立派な財布となったエリーゼ。
でも、港町のトラブルの大半は、エリーゼのせいだと思うんだ。ちょっと泣けてきた。
凄い綺麗な服を何着も買ってくれたのも、毎日の様に甘味で餌付けをしてきたのも、訪れる先々で女神布教していたのも、全部エリーゼ。
(最後の布教が余計なんだよ!)
エリーゼは謎パワーで合流を果たします。謎パワーについては、後ほど閑話で触れます。
エリーゼの布教活動は止められないようですw
次回は「港町巡り・前編」です。