閑話:ドラゴンエンカウント
前回のあらすじ
ワールドン(ワド)はケタに出会って、人やその文化に興味を持ちました。
ケタの転生体を探す為の旅にでます。
この閑話は、ケタ視点でのワールドンとの出会いです。
僕は高山慶太。
いや、正確には高山慶太だった存在だろうか。
僕はファンタジーをこよなく愛する、ごく普通のオタクだ。ごく普通のオタクって、なんやねん?
……ってツッコミありそうだけれどさ。
「念願の異世界を手に入れたぞー!」
と、歓喜するぐらいには、はしゃいでいたよ。最初だけはね。
だって、ファーストコンタクトはドラゴンだよ!?
そりゃはしゃぐなってのは無理だよね。
金色の巨躯に、美しい鱗がほんのり光っている。
全長は100m~120mぐらいだろうか?
目算なので大まかな目安でしか無いけど。
そんな巨大ドラゴンと会話が出来る事に最初は興奮が止まらなかった。
(だけどね……このドラゴン!)
めちゃくちゃ世間知らずで無知なんだよ!
しかもさ、こちらの情報は根掘り葉掘り質問してくるんだ。
13日間連続徹夜で、休憩なし&ノンストップの質問攻めだったから。さすがに休みの日をいれる事で合意したよ。14連続徹夜はブラック過ぎる。
今は転生までの繋ぎとしての意識体という状態なので、飲まず食わず眠らずで大丈夫だけど、精神衛生上どうしても譲れなかったんだ。
ドラゴンの住処はかなり広かった。
見た目は洞窟のような感じだ。ゴツゴツした岩が多い。
高さは350mぐらいあるんじゃなかろうか?
東京タワーを下から見上げた時の感覚に近い。奥行きは2kmぐらいはありそう。
(まぁ、正確には測れないから勘だけど)
幅はだいたい100mかな。
ドラゴンが、方向転換する際に窮屈そうにしていたから。頭から尾までの、全長よりは少し狭い。
けど、尻尾や首の向きで工夫すれば、向きを変える事はできるぐらいの幅だった。
ドラゴンは西洋竜の見た目だけど、手のサイズが、一般的なイメージよりは長くて大きいかな。
特に爪。
左右で4本ずつだけど、それぞれ長さ10m強くらいもある。幅・高さはおよそ2.5mぐらいだろうか。腕を伸ばしたら30mぐらい届きそう。1本は親指なのだろうか。長さ4mぐらいだ。
左右を目いっぱい伸ばしたら、直径100mは攻撃範囲になりそうだったな。狭い住処の中でも器用に扱えている。
翼は6つだ。
折りたたんでいる所しか見ていない。広げたらどのぐらいになるのだろうか?
目が合った時に瞳の色を確認できたけど、吸い込まれるような透明感のある金色だった。薄暗い中でも、不思議と存在感があったね。
住処は洞窟っぽいんだけど、その辺の岩は発光しているので普通の岩じゃなさそうだ。
ドラゴンに聞いたら「マナを含んでいる石だから光るのは当たり前」と言われたよ。
そんな「常識だろ?」みたいな言い方されても知らんし。
マナというのは、日本人のイメージからすると魔力みたいな感じのものらしい。
大気中にも存在しているし、生物も体内に保有していて、保有量が多い生物は上位種だという事を聞いた。初遭遇のドラゴンは、とても上位の存在らしい事は会話から察せられたよ。
(とはいえ、とはいえだよ……)
ドラゴンの話は聞いていて面白いんだけどさ。とにかくすっごいアバウト!
そんでもって世間の知識が無い!
異世界文化交流だと最初ははしゃいでいたけど、なんか一方通行な会話だったなぁ。
なんだかんだあって友達にはなったよ。
でも、なんか悔しいから、日本の異世界ファンタジーの常識で染めてやろうと思ったんだ。
いや振り返って考えると、まだテンション高かったんだな。冷静になって止めておけば……
(ま、いっかー)
色々考えても、やっちゃったのは仕方ない。
過ぎた事を悔やんでもしょうがないしー?
神様に与えられたこの異世界転生をエンジョイしなくちゃねー。って感じで開き直ったね。
今はまだ意識体だけど、待っていれば神様が転生体の候補を探してくれるらしい。
意識体はマナが薄い所では活動できないので、このドラゴンの住処から動けない地縛霊みたいな状況。
(不便だから、早く転生したいなー)
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この時に欲望のまま、異世界情報を教え過ぎた事を、後に大きく後悔する事になるとは、この時点では考えもしなかった。
(うん。自重は大事。未来の僕、ごめんよー)
本編のワールドン視点だと、ドラゴンのサイズ感が分からない為にこのエピソードを用意しました。
ケタ視点で、どのぐらいの大きさかに触れています。
人とサイズ感が異なる為、細かい種族をワールドンは気にしていない傾向にあります。
次回から新章「転生者を探す旅」になります。
次回は「世間知らずドラゴンの奮闘の旅」です。