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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
過去の大戦と新世代
302/389

天才鍛冶師

前回のあらすじ

リッツの所を訪れて、ワドは荷物持ちなどの仕事に勤しんでいました。

小さな民主主義の芽吹きを感じ取り、再会を約束して国へと戻ります。


・主な登場キャラ紹介

サブロワ:ブールボン王国出身の天才鍛冶師。

ホールン:ダフ村出身のマナ鍛冶師。

ヘーゼル:ダフ村出身のマナ回路技術者。

メル:サブロワの恋人。

シーナ:メルの姉。

「ついにサブロワ君の成人だよ!」

「あの計画を前に進めましょう!」


 サブロワ君が成人を迎えた。

 僕とホールンは長年に渡り、天才のサブロワ君を更に凄い鍛冶師にすべく英才教育を施してきた。

 サブロワ君はお父さんとの約束があってこれまでは鍛冶場に立たなかったけれど、今後は鍛冶師としての活躍が期待されていた。


「サブロワ君!成人&メルとの婚約おめでとう!」

「「「おめでとー!」」」

「皆さん、ありがとうございます!」


 今日は盛大に成人をお祝いしつつ、メルとの婚約もお祝いをした。

 メルもサブロワ君育成計画に少しだけ関わっているし、僕とホールンの協力者の一人なのだ。


「ワールドン様、今夜はサブロワを貸すけど、明日以降の夜はメルと二人で甘い生活なんだからね」

「わかってるってば、っていうかそういう行為は結婚してからにしてよね!」


 僕とメルが内緒のサブロワ君レンタル話をしていると、メルの姉であるシーナがサブロワ君にプレゼントを渡している所が見えた。


「サブロワ君、成人おめでとう。これからは義理の姉となるのだから、シーナ姉とでも呼んでね」

「シーナ姉さん……なんだか凄く照れますね」


 サブロワ君はずっとシーナに理想の姉を重ね、憧れていたそうなので実際に姉となった今は戸惑っているようだ。

 ちなみにメルがサブロワ君を口説き落したのも「シーナを姉にするにはメルと結ばれるのが一番」って方面で攻めたらしい。

 一度関係を持ってしまえば、真面目なサブロワ君からは「結婚を前提にお付き合い」という話になって今に至るって感じだよ。


「じゃあ二次会にいこーか!」

「はい。ホールンさんの鍛冶工房でしたよね?」


 女子たちはメルの婚約を祝う女子会オールへと向かい、サブロワ君は僕とホールンだけの秘密の二次会へとやってきた。

 ホールンの鍛冶場につくなり、外に声が漏れないように窓などを徹底的にテープで塞ぐ。

 こういった作業も極秘任務感があって僕は大好きだし、二人もノリノリでやっていた。


「では、第一回、万能の魔術具を作るには?会議を始めるよ!」

「うぉぉぉ!ついにこの日が!」

「はい!頑張りましょう!」


 僕は、どんな願いでも叶えてくれるような万能の魔術具を作りたい、という想いを8年も抱えていたんだ。

 カルカンやヘーゼルを始めとしたマナ技術者たちには心底呆れられたし、ルクルにはできっこないと馬鹿にもされた。アルからはそういった無謀な事は止めるようにと諭されもした。

 この計画を進めようとすると皆が止めるので、極秘任務として皆にバレないようにコッソリ進めている。

 だからここでの内容は秘密だ。


(僕は諦めないからね!)


 僕の夢に最初に賛同してくれたのはサブロワ君。

 彼は「ワールドン様らしい素敵な夢です!僕が叶えます!」と言ってくれて本当に嬉しかったんだ。

 次の賛同者はホールン。

 ホールンも最初は出来るわけが無いという否定派だったけれど、サブロワ君が提示する新理論の数々や、天才と呼べる鍛冶職人の片鱗を見てきた事により、「サブロワ君ができるいうのなら夢じゃない」と賛同者になった。


(メルも応援してくれてるしね!)


 二人の賛同者に加え、メルも協力者に抱きこんだ。メルはメルなりの打算が働いたみたいで協力してくれている。

 なんでも「サブロワが歴史的な偉業を達成してくれた方が妻になるメルの株があがる」という計算高い理由だったけれども、協力者には変わりがない。


「では、新理論である神のマナを掛け合わせる事で、さらに上位の神の力を疑似的に再現する方法を詰めていきましょう」

「7年分の検証データはこっちにまとめてある」

「おぉ!凄いね!これって僕の唾液の提供データ?」


 テーブルに積みあがった検証データの資料。他のドラゴンたちの体液各種も言葉巧みに誘導して手に入れてあり、ドラゴン以外の眷属神にも僕が直々にお願いにいって協力を要請している。

 そうした検証データを長年に渡り取っていたのだ。


「んで、これだけデータがあればすぐできる?」

「いえ、最低でも4年……実用化を考えるともっとかかりますね」

「そうだぜワールドン様。こんな難題、10年でも結果が出なくてもおかしくない。20年くらい見ないとな」

「なーんだ、すぐ出来るんだね!」


 僕のセリフを、二人は口を開けてぽかーんとした表情で聞いていた。


(あ、いけない!)


 ルクルから時間感覚が違うという指摘を受けていた事を思い出し、それを慌てて説明する。

 僕にとっての24年が、人にとっての1日相当だと説明したら二人とも納得の表情へと変わった。


「道理でコウカのおじいさんが亡くなった時もたった300年って励ましてたんですね。ワールドン様にとっては二週間くらいの感覚な事を聞いて納得です」

「毎年17歳って言っておられるのも、1時間おきくらいに宣言してる感じなのか。そら年齢変わらんなぁ」

「うんうん。相互理解が深まって何よりだよ!」


 僕はドラゴン。皆とは常識や感覚が違うかも知れない。だけど、皆が楽しく幸せになるのを願っているのは変わらない。

 今もこうして言葉を尽くせば、違う事を認識してその溝を埋めていける。

 だから、キーちゃんやリッツに言われたような、僕の考え方が間違っているという事は無いはずで、ちゃんと話し合えば大丈夫。僕はそう信じている。


(そして、この魔術具が僕らの架け橋になるんだ!)


 僕らは万能の魔術具にかける思いを語らい合った。

 僕は理想の幸せを実現、サブロワ君は可能なイメージを持ったのでその難題への挑戦、ホールンは歴史的な偉業を見てみたい、と理由は三者三様だ。

 ちゃんとそこは定期的に話し合って相互理解を深めながら進める予定。その理解を中途半端に長期プロジェクトを進めると、空中分解する事が多いってのを漫画の知識で得たし、実際に仲たがい原因の大半は思い込みやすれ違いだから。


「それでサブロワ君。四大神の力の分析はどこまで進んでいるのだ?」

「それはワールドン様からの伝心のおかげで大分進みましたよ」

「ふむふむ。つまり僕のおかげだよね!(ドヤァ)」


 サブロワ君も苦笑い気味に「そうです」と僕の貢献が大きい事を認めてくれた。

 僕らが作ろうとしている万能の魔術具が目指すのは、顕現している眷属神では再現できない上位の事象の再現だ。つまりは四大神の御力。その神の力に挑むという凄いプロジェクト。


「まず四大神というのは……」


─────────────────────

・万物の男神。

・法則の男神。

・輪廻の女神。

・虚無の女神。

─────────────────────


 僕からみると上位の存在で、居るのが当たり前だったのだけれど、顕現していないため人族からは遠い存在らしい。

 顕現している眷属神がそれぞれの力を司っている。サブロワ君が言うには四大神は力というより概念そのものという感じらしい。

 だから四大神の力を模した魔術具が実現できた場合、新たな神になると話している。


「えっと、難しすぎて僕には理解できてないけど?」

「力という枠組みの考え方をまずやめましょう」

「ううぅ、ホールン。ヘルプー!」

「まぁ、ワールドン様は技術的な事を知らなくても、御力を提供してくれればいいですよ」


 僕は考えすぎて知恵熱を出してしまった。

 一応、わかる範囲で汲み取れたのは、以下。


・この世に存在しない新しい物質を生み出した時、新たな神の力となり、その概念は万物の男神に取り込まれる。

・物理法則やマナ法則など既に存在している法則とは違う法則を生み出した時、新たな神の力となり、その概念は法則の男神に取り込まれる。


 うーん、理解しようと頑張ると頭が痛くなる。ここはホールンが言うようにサブロワ君にお任せしよう。

 こうして僕らの【万能の魔術具】を作る研究は本格的にスタートした。


─────────────────────


 それから新年に入り、今年も様々な慶事があった。

 特筆すべきはリゼの出産だろう。

 新たに生まれた男の子にはラガーという名が付けられ、ルクルも大変喜んでいた。

 ダミアちゃんは昨年に出産を済ませていて、クリスももうすぐ出産。ワールドン王国はベビーブームを迎えている。

 僕も盛大にお祝いしてあげたけれど、空気を読んで必要以上は騒がないようにし、家族だけの時間を大切にしてあげた。


(でも、気になるから伝心でコッソリとね!)


 ルクルの1人だけど実質2人の妻は、競うように3人目を作ろうと充実した日々を送っている。

 その事をからかったらプライベート保護法案を持ち出してきて、僕が罰せられてしまったのは誠に遺憾だよ。


─────────────────────


「さてと、忘れ物無いよね?」


 サブロワ君とホールンに加え、カルカンとヘーゼルの5人で、モナリーガ王国へ短期留学する事になった。

 モナリーガ王国は銀のマナ鉱石を使った文化が発展していて、見るだけでも勉強になるというカルカンの発言が発端で企画された。

 ボチョール国王へ短期留学の相談を持ち掛けたら「マナ鉱石と竜鱗で手を打つ」との回答だったので即合意に至っている。


「ワールドン様?メルとの約束忘れてない?」

「えー?なんの事かなぁー?僕、わかんなーい」


 2人の同棲生活を邪魔するなと釘を刺されていたけど、これはサブロワ君のステップアップに必要な留学なんだから見逃して欲しい。

 すっとぼけ作戦はうまくいかず、メルには飲食店のタダ券99枚プレゼントで納得して貰った。


「遠距離恋愛も経験だよね。メルに毎日連絡してよね」

「うん。留学している間は毎日連絡するから待ってて」


 メルとサブロワ君は熱い抱擁を交わしていた。

 見送りに来ているシーナは興奮しているけども、漫画になる頃にはメルが男の子に性転換させられてそうで怖いな。


「じゃあ、新しい発見を求めて留学だよ!」

「はいっ!」

「モナリーガの新しいお酒が待ってるのにゃー!」



 カルカンだけ主旨が何かズレているけど、僕らは一路モナリーガ王国を目指した。

サブロワが成人した事によりワドの夢が動き始めます。


次回は「引退した元勇者」です。

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 お邪魔しています。  あちこちカップル(新婚さん)も増え、新しい命の誕生もあり、とてもめでたいですね。  サブロワ君の成人とともに始まったワド君の野望は、どうなるのかな? ちょっと心配なところが…
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