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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
約束の帰路
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二重人格

前回のあらすじ

久しぶりに再会したエリーゼは、別人になっていました。

二重人格になってしまったエリーゼの対応案を相談しています。

 目が覚めたエリーゼは、元のエリーゼだった。


(こっちのほうが安心するよ!)


 布教活動が迷惑なだけで、色欲エリーゼよりは幾分気が楽だよ。

 混乱気味のエリーゼが声をあげた。


「わ、わたくし何をしていたのでしょう?あ、ワールドン様!お会いしたかったですわ!」

「エリーゼ、久しぶり」


 僕の挨拶途中で、エリーゼと初対面に近いカルカンが割って入ってきた。


「なんだか全然雰囲気が違いますにゃ」

「この猫魔族は何でしょうか!?ワールドン様の近くに獣臭いのを寄せてはなりませんわ!」

「ひ、酷いにゃ!」


 慌ててカルカンの紹介をしたよ。主にルクルが。

 カルカンは臭いって言われた事にヘコんで、自分の身体をクンクンしている。


(そこまで匂わないよ?)


 エリーゼ達と、ここまでの旅について情報交換をした。

 帰りも白が船旅で手助けしたようだ。


「白様をお呼びして、ワールドン様のお傍に早く行きたいとお願いしましたわ!」


 おぉう、名指しで白を呼び出しているよ。

 白は、あの海路の上空に住みついているみたい。

 こちらの大陸に戻ってからは、鉄道で一気にここまで来たとの事。

 一通りの説明を受けた後、ルクルが町での合流に驚いた事を語りだす。


「エリーゼ様、この町だとよく分かりましたねー」

「わたくしには当然ですわ!ワールドン様の事なら何でも分かりますわ!」


 従者が補足説明をしてくれた。

 この大陸の北側はワールドン信者で連絡網ができている上、鉄道関係者も全員買収済みとの事。

 鉄道の各駅は到着後に荷下ろしや補給で少し滞在する為、その時間に僕が来ていないか確認していたとの事だった。


「身体を洗ってきますにゃ……」


 カルカンがうなだれながら水浴びに向かった。町に入る直前にも、川でルクルと水浴びしていたのにマメだなぁ。

 改めてエリーゼが活動報告をしてきたよ。


「北の大陸も布教は万全ですわ!白様の事と合わせて、船員達がワールドン様の素晴らしさを広めてますわ!」


(うん、知ってる。予想してたから)


「わたくし、まだワールドン様の素晴らしさを知らない人々へ、素晴らしさを広める為に全力を尽くしますわ!」

「あ、エリーゼ。向かうのは港町モンアードの予定だよ」


 スルーしたらエリーゼが勝手に行き先を決めそうだったので、先に釘を刺す。

 行き先についてはルクルからツッコミが入る。


「そういや、モンアードって遠いんだよねー?どうしてそこなんー?」

「ちょっと約束があってね」


 確かに遠い。ここ、ホッドケットはメイジー王国の最東端、モンアードは最西端、国の端と端だ。

 無事に探し人と合流できたら、紹介しに必ず戻るって、領主モンアードと約束していた。あの地の領主はとても物腰が柔らかく、気さくでいい人だった。


「あの領主は話が分かる人だよ」

「わたくしも、悪い噂を聞いた事がありませんわ。とても温厚な人らしいですわ」

「そーなんだー、ちょっと楽しみー!」


 各港町の話をしていたら、カルカンが戻ってきた。


(水浴びすると、別人みたいにほっそり体型になるのいつ見てもウケるw)


「どうですかにゃ?」

「カルカン君。大丈夫、匂わないよー」

「獣臭くて堪らないですわ!」


(ちょっ……エリーゼがカルカンに厳しいなぁ)


 カルカンは肩を落として見るからにしょんぼりしていて、それをルクルが必死にフォロー中。


(仕方ない、僕もフォローするか……)


「エリーゼ、カルカンは僕の友達だから仲良くね」

「はい!ワールドン様!全力で仲良くしますわ!」


 相変わらずの手のひらドリルは凄いな。

 もう、行動に移っている。お気に入りのローズの香りの石鹸をプレゼントしているみたいだ。

 ま、カルカン的には「鼻が曲がりそうにゃ」と好きじゃなさそうだったけど。

 昼食の頃にはすっかり打ち解けていた。

 エリーゼが全額持ちのご馳走で、カルカンはアッサリと買収されていたよ。カルカンちょろいなぁ。

 逆にルクルは警戒している。なんで?


「この小さい魚の刺し身、物凄く美味しいです!あ、にゃ!」

「カルカン。当然、分かってますわね?」

「ワールドン様の素晴らしさを広めますにゃ!」

「…………」


 浮かない顔のルクルに【伝心】(    )でやりとりする。


『どしたん?ルクル?』

『いや、この食事代に匹敵する見返りを求められるのが怖くて……』


 あー納得。エリーゼはお金使い荒いけど、目的の為に金額度外視なだけだからなぁ。

 今のエリーゼは僕の布教に全力だし、それの片棒を担がされるくらいは覚悟が必要だ。


(カルカンの取り込まれ具合は、もう手遅れだよ)


 食事を終えた僕らは宿に戻り、これからの方針を相談した。


「モンアードの後はそんなに考えてないけど、一度は住処に戻ろうかと思ってる」

「ワールドン様!住処にはわたくしも早く行きたいですわ!」


 ここで肯定しようが拒否しようが、ついてくる結果に変わりないので、華麗にスルー。

 ん?なんか従者が物言いたげに一歩前に出て片膝をついて一礼した。


「お話し中に失礼致します。ココ伯爵家の件はいかが致しますか?」


(忘れてた!宿題!どうしよ!?)


 いや、ここは相談する流れが、ビッグウェーブが来ている!乗るしかない!


「ルクル、ココとかいう貴族にも約束あるんだけど」

「めんどくさー……えーと、エリーゼ様に金銭で解決して貰えないの?」

「ワールドン様の寵愛をお金で買うのは無理ですわ」

「ワドー?どゆことー?」


 僕に認められた方が、正当な本家の血筋って事になったからね。勝手にエリーゼが決めたんだけどね!

 後の細かい予定はモンアードの後で考えることになり、鉄道でモンアードまで移動する予定を立てた。

 夕食後に今日は解散となったよ。カルカンは買収による取り込まれ具合が、ヤバい感じだったな。


─────────────────────


 翌日、エリーゼが色欲バージョンになっていた。


「リゼね、ワドに早く会いたくなってきちゃった」

「うん、まだ早朝だから待っててね。それから抱きつかないでくれる?」

「ふふふ、やーだ」


 めちゃくちゃベタベタしてくる。僕が指摘しても「友達の普通のスキンシップですの」と言ってやめてくれない。

 困った。信者エリーゼに[気合い]で、徹夜して貰えば良かったと後悔している。


(ルクル、カルカン!ヘルプミー!)


「べ、別人すぎますにゃ」

「まー、ワド以外に実害ないから予定通り駅にいこー」

「ぼ、僕も行くよ!」


 抱きついて離さないエリーゼをお姫様抱っこして慌てて追いかける。二人きりにならないよう僕は必死だ。


「ワドったら情熱的ね。リゼも興奮してきちゃったの」


 首に回された腕はガッチリホールドされているし、仕方ないから抱き上げただけだよ!

 なにか通行人から2度見されているな。なんかデジャヴ……これは?


「ねぇルクル、カルカン。……往来でお姫様抱っこってNGだったりする?」

「NGでは無いけど、お目にかかれるものでは無いねー」

「普通では無いですにゃ!初めて見ましたにゃ!」


(やっぱりかーーーー!)


 必死にエリーゼを説得したけど、やっぱりダメだった。

 というか相手するとエロいレスポンスが帰ってくるだけなので無視する事にしたよ。大丈夫、NGで無いなら全裸徘徊よりはダメージ少ないはず!

 駅は、なにやらトラブルのようで混んでいた。


「何かあったのかにゃー?」

「ジャックさんが今聞き込みに行ってるよー」


 カルカンがルクルに対し、タメ口になっていた。

 この町へ来て2日で更に打ち解けたみたい。僕に対してもタメ口でいいんだけどなぁ。

 暫くして、筆頭従者から状況報告があった。


「魔獣が出てメイジー方面の汽車が運行停止しているとの事です。魔獣退治の緊急依頼も出ていました」


 普通は魔獣が入らないけど、空の魔獣が墜落して線路に落ちたらしい。

 飛べず動けないからか、気が立っていてかなり攻撃的らしく、討伐隊が編成される最中だった。


「ワドがチャチャっと行って駆除できない?」

「空の旅でよければ」


 僕の回答を聞いたルクルは、両手で頭を抱えて唸り出した。

 それよりも討伐隊の隊長に、見覚えがあるから隠れたいんですけど?



(割と本気で会うのヤなんですけど?)

街の中をお姫様抱っこで疾走しているので、めちゃくちゃ目立っています。

通行人が全員ガン見するレベルですw


次回は「人助けの旅路・前編」です。


※色でのキャラ呼称の補足

本作の最高位ドラゴンの7柱は色で呼ばれています。

金、銀、白、黒、赤、緑、青、となります。

特にドラゴン達は敬称も付けずに色で呼び合っているので、唐突に色だけの呼称で出てくる事もあります。

分かりづらくて申し訳ないです。

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― 新着の感想 ―
あらあら、二重人格のエリーゼに振り回されるワールドン様www 何故か幸せそうに感じちゃうのですよね~♪
 洗ったのに獣臭いと言われるカルカンさん・・・。  次回がとっても楽しみです。
エリーゼさんがややこしいことになっている…! ルクル…苦労するなぁ…。 そしてカルカン君がチョロかわいい…。私も刺身で釣りたい!
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