名前をゲットだぜ!
前回のあらすじ
異世界から来た存在と、出会って人に興味を持ったドラゴン。一人称と二人称の知識を新たに得ました。
『僕はドラゴン。君はタカヤマケイタ』
「そうそう!合っているよ!やっぱりドラゴンって知能が高いんだねー」
一人称と二人称は説明を受けて理解できた。これからは積極的に使っていこうと思う。
『しかし、タカヤマケイタという種族は不思議な知識を多く持つのだな』
「え!?違うよ!高山慶太は名前であって種族名じゃないよー!種族は人間だよー」
それを聞いて眉をひそめた。
タカヤマケイタは【名前】だという。【名前】という概念は馴染みがなかった。これまで【ドラゴン】または【エターナルドラゴン】と呼ばれ、それで十分だったからだ。名前の必要性を感じたこともないし、他のドラゴンと呼び合う時も名前を使う習慣はない。
「エターナルドラゴンって種族名なのー?友達のドラゴンからはどう呼ばれてるのー?」
『どうも何も「おい」とか「よぅ」とかだな。要件を直接伝えて終わりだ』
「えぇぇ、それって友達なの?」
『知人の中では最上級だから友達のはずだ。皆、最強種のドラゴンだぞ』
「……うん。ま、いっかー!」
え?友達の定義合っているよな?さっきちゃんと確認した定義に沿っているぞ?
どうやら人の世界は友達の中でも序列があるらしく、最上級の友達だと【あだ名】で呼び合うそうだ。
(序列があったのか……どう決めるのだろうか?)
種族名は知らないが、ひとまず知っている事を伝えていく。
『種族名はよく分からん。神から光を司る一柱としてのドラゴンと聞いている』
「エターナルドラゴンは人が呼び始めたんだよねー?光の一柱なの?神様からー?」
神からドラゴンである事や太古の知識は、深く教えて貰っている。だが、人の知識に関しては教えて貰っていない。
そもそも神から知識を授かった時点では、人がこの世に生まれてもいなかった。
『そうだ。だから名前では無いぞ。友達の名前も分からん』
「そっかぁー、じゃあさ僕が君に名前を付けてもいいかなー?」
暫くタカヤマケイタは考え込んでいた。
どうやら名前を付けてくれるみたいだ。初めての名前なので結構嬉しく思う。
そういえば【ケタ】と呼んで欲しいと言っていたし、もう最上級の友達だな!
どんな名前になるのかと待っている間に、期待は青天井に膨れ上がっていた。
「君の名前は【ワールドン】でどうかな。世界で最強種的な感じなんてねー」
その言葉が響いた瞬間、心の奥底に小さな衝撃が走っていく。新しく【ワールドン】に変わることで、世界の全てが変わり始めるような気がした。
『素晴らしい!とても嬉しい!凄く気に入った!意味は全く分からないが響きが良い!』
(名前だ!初めて手に入れた。とても嬉しい)
「え……っと、ワールドとドンを掛け合わせた感じなんだけど気に入ったのー?ほんとにー?」
『勿論だ!初めての名前!ふふふ、僕の名前はワールドン!ワールドン!』
するとケタが変な表情をしている。【伝心】で読み取ると、どうやら不満があるみたいだぞ?という事はこれは不満の表情だ。
何故だろう?
名前を貰うことが喜びではないのか?
だけど名前を初めて貰ったので本当に嬉しい。ついでに友達の証も貰おうと思い、行動に移す。
「えー…………ま、いっかー」
『で、あだ名は?』
「ふぇ?ふぁ?あだ名ー?」
『あだ名とは友達が呼ぶときの呼称だと認識した。ケタは最上級の友達だから必要』
今更何を言っているのだ?そもそも君が「ケタで良いよ」と言っていたのではないか。最上級の友達だろう?
「友達認定頂きましたー!距離の詰め方が急だねー!(ヤケクソ)……じゃあ、ワドで」
『僕の名前はワールドン!友達になったらワドって呼んでいいよ!これで完璧!』
名前と、友達からのあだ名も同時に手に入れてしまった。古い知り合いにも早く自慢したい。
最上級の友達も得られて大満足。
「ワドって変なスイッチ入るねー。不思議ー」
『不思議存在ケタには言われたくないかな?』
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それから、疑問を片っ端から解消していった。
【異世界】というのは、この世界では無い別の世界だと言う。ケタはそこから来たとの事。色んな情報を教えて貰うのが凄く楽しい。1つ質問すると、そこから知りたい事が3~4つに増えて無限に聞きたい事が増えていく。
(楽しい。人の世界を知るのが本当に)
どんどん人の知識を得ていく。
(こんなに楽しい事を、知らなかったとは……)
今まで寝て過ごした日々と比較にならない。本当に楽しくて楽しくて、夢中で質問を続けていたんだ。
陽が昇って沈むのを13回程繰り返す中、ひたすらに情報交換をした。
更に延長しようとしたらケタから「流石に勘弁して」と言われたな。
では次の陽が昇るまで休憩した後に延長戦だ!全てを知るまで逃しはしないよ。
(それにしても、ケタが不満の表情なのは何故?)
ドラゴンは名前とあだ名を、生まれて初めて得る事ができました。怒涛の勢いで質問されるケタは割と大変です。
この時点でのオタク知識習熟度:★☆☆☆☆
エターナルドラゴン ☞ ネームドドラゴン
次回は「異世界からの来訪者は意識体」です。