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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
さぁ…観光へ、ようこそ!
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村の暴動鎮圧

前回のあらすじ

ザグエリ王国で、凄く恨まれている事実を知ってしまったワド。

お墓の意味が分からなくて、それを酷く気にしているようです。

(何がKYだったんだろう?)


 なんだか釈然としないまま、僕の国に帰宅。

 深夜の線路作りまでは濡れ濡れのお仕事と、国民からの相談相手をして過ごしたよ。

 夜が深くなった頃に線路作りに向かう。


「おう、遅かったなにゃん。200kmほどは進んでるぞにゃん」

「う、うん」

「ワドワド、なんかあったのかにゃん?」


 僕が今日あった色んな事を相談したんだけど、ガトーは興味を無くしたかのように作業に戻っている。


「あ、あれ?ちゃんと聞いてた?」

「聞いてたぞにゃん。何も気にする必要無いにゃん」


 ガトーが言うには、僕が突撃訪問した時点で受け入れる流れになる事くらい、ルクルは予測しているだろうって話だった。

 それで、墓の事は気にする必要がないそうだ。


「受け入れはそうかもだけど、お墓はやっぱり知らなくちゃいけないよね?」

「なぜだにゃん?ハッキリと『わからにゃん』と言うべきだにゃん。知ったかはワドの悪い癖だぞにゃん」


 ハッキリ言えちゃうガトーは凄い。僕にはとてもマネできないよ。だって僕だけ違うみたいで、何か変なのかなって思ってしまうから。

 ガトーは続ける。

 そもそも親がいないから、親の話に本当の意味で共感できる訳が無いと。

 神界で肉体を持たずにいた僕達に、遺体を埋葬し、まるでそこに魂があるかの様に振る舞う人の営みが、理解できる訳が無いと。


(ガトーのいう事も分かるけど……僕、ヤだな)


 僕は心にモヤモヤを抱えて作業をしていた。

 ガトーの予言通り、ルクルからのお咎めは特になかったし、「お墓の必要性を理解できなかったかー」と軽く流されたりもしたな。

 僕は続く激務の中で、次第にお墓が分からない事の不安を忘れていく。


 季節が天秤節に移ろうかという時期へ差し掛かった時に、事態は急変し始める。


 問題が大きくなってきているのに、僕とガトーだけずっとハブにされているから突撃訪問する事にした。

 ガトーと一緒にルクルの執務室へやってきたけど、またも鍵がかけられている。

 でも、力尽くで……えい!


 ガチャ!バキッ!ドゴーーン!


「ルクルルクル、各地で起こってる暴動について聞きたいんだけど!?」

「ちょちょちょーー!新しく強固な鍵を用意したのに、いきなり壊すなよなー」

「こんな鍵を幾つ付けても同じだにゃん。少しは学習した方がよいぞにゃん?」


 ルクルは「少しだけ待っててー、キリの良いとこまでやっちゃうからー」と言って作業をしている。

 仕方が無いのでガトーと一緒に、寛ぎながら部屋で待つ事にした。

 部屋の中には、とてもお腹が空く香りが漂う。


「ねぇ、これってシナモンの香りかな?なんだかお腹が空くよね」

「確かに……アップルパイが食べたくなるぞにゃん」

「だよね、今度ラザの所でリクエストしよーよ」


 僕は辺りをキョロキョロと見回す。

 香りの発生源を見つけて、僕は納得した。


「あ、この置きパスタが良い香りするんだね?」

「リードディフューザーな」

「置きパスタは良い香りだにゃん。吾輩も欲しいから寄越せにゃん」

「だからディフューザーな。あとで用意させとく」


 執務中でもツッコミを忘れないルクル。だけど忙しいのか、口調が固いな。邪魔しない様にクンカクンカだけしとこ。

 ガトーと一緒に香りを楽しんでいたら、「お前らほんと残念神様ズなのなー」とルクルに言われた。


(少し、先っちょを鼻に入れて嗅いでただけだよ?)


 仕事を一段落させたルクルが諸々説明を始める。

 事の発端は港町ナーハでの暴動。

 だけど、時を置かずとして新王都以外の全ての村と港町で一斉に暴動が始まり、カルカン、エリーゼ、勇者パーティーやホリター暗部までもが対応にかかりっきりだそうだ。

 原因が全く分からなくて困っているらしい。


 暴動の鎮圧。原因の調査。お薬の確保。

 それらのいずれもが、お互いに足を引っ張ってうまく機能していない。原因についてはカービル帝国の裏工作だろうという予測だけで止まっている状況だ。


 相変わらずの薬不足だけど、そんな中で暴動の沈静化に薬が使われている状況。鎮静剤や麻酔薬の不足がより深刻化しているとの事。

 猫魔族のクシマが、ホリター家のお薬を解析して量産する研究に入ったってさ。睡眠薬を解析した研究がうまくいけば、鎮静剤や麻酔薬を量産できるかも?って話だ。

 それ以外は、苦くて敬遠されるような服用薬も処方し始めているんだと。


「いやー、背に腹は代えられない状況なんだよなー。そんな感じで飛行船の開発も止まっててさー」

「苦いお薬も、料理に混ぜて美味しく食べれたらいいのにね!」

「だにゃん」

「……それだーーー!」


 急に大声をだしたルクルに、ガトーも驚いていた。

 なんだか食料庫に向かうと言っているので、僕とガトーもついていく事にしたよ。

 ホバーバイクを飛ばして、フウカナット村まで移動する。

 僕が駄々をこねて運転をルクルに代わって貰ったんで、ルクルがガトーのドラフトモードで相乗りをしている。

 移動する間に、ルクルが今回の真相の推測を話してくれた。


 薬不足に陥っている国の状況。その状況で敢えて、薬投与の奸計を仕掛けてくるという発想を見落としたと言っている。

 また、薬不足の最前線である港町にばかり意識が向けられた事も、要因の一つであるようだ。

 一連の騒動が始まる直前に、フウカナット村の食料庫の担当者の入れ替えが行われている。その僅かな隙を、狙われたと見ているルクルの表情は険しい。

 その表情を見ていると僕も気分が暗くなる。

 せっかく代わって貰ったのに、運転が全く楽しく思えないままフウカナット村へと到着した。


 クラッツに挨拶されて、食料庫へと足を向ける。

 その間に近況を尋ねてみたけど、フウカナット村では特に大きな問題は出ていないそうだ。

 そんなこんなで食料庫へ着き、容疑者とご対面だよ。

 食料庫に新しく赴任した担当者。

 彼の弁明では食材の追加納品があって、痛む前に直ぐに出すようにと上から指示があったと。

 追加の食材は、港町や新しい村へ優先するようにって指示もついていたようだ。


「彼は嘘をついてなかったよ」

「吾輩も伝心で確認したから間違いないぞにゃん」

「まあねー、指示したっていう存在しない上(・・・・・・)の存在が問題だよねー。これについてもやられたなー」


 カービル帝国の奸計を危惧して、フウカナット村への直接の接触はさせないように手配をしていた。

 それなのに問題は起こってしまっている。

 意識の隙をつく巧妙な手口で、ザグエリ側の民衆と裏で繋がっているんだと。そっちからの関与は「意識の外にあったからやられた」とルクルは言う。

 僕を恨んでいるザグエリ民衆を、うまいこと唆して協力者に仕立て上げたようだ。


(僕、やっぱりドウエン将軍は嫌いだな)


 二重三重、それ以上かな?兎に角、色々と絡め手で且つそれらが相互作用するように仕掛けてきている。

 今回も人が狂暴化するお薬が食料に混ぜられていたんだけど、被害を広めつつ問題の発覚を遅らせるようにしている。

 人口が多い港町へ、優先的に回るようにしてあるんだ。


「んー、ちょっと線路とかそういう余裕が無くなったからさー、ドラゴン宅急便のお仕事をお願いしてもいいかなー」

「勿論だよ!各国の収穫祭も楽しみだし!」

「うむにゃん。線路作りはちょっと飽きて……いや、ドラゴン宅急便のお仕事は大事だにゃん!」


 収穫祭には参加しないよう、釘を刺された。

 だけど、久しぶりに濡れ濡れと線路以外のお仕事だよ!ガトーの言い分じゃないけど、実は僕も飽きていたんだよね、線路作り。


 で、お薬と関連する素材を僕らで運ぶ事になったんだけどさ、ガトーがいつものをやるって言って聞かないんだ。

 線路作りに比べたらブラックじゃないから、不要だと僕は諭したんだけどね。


「何言ってるんだワド?様式美だろにゃん?」

「でもでも、僕ら以外誰も見てないよ?あ、ボンがいるね」

「あっしの事はお構いなく」

「違うぞにゃん。勝負パンツはな……自分の気合いを入れる為に履くんだにゃん!」


 なんだか別の理論に、話すり替えられた気がしないでも無い。だけどガトーの協力は必要だし、テンションを高く保つ為にもここは従っておこう。

 という訳で、ガトーに付き合ってみる。


「ではいくぞにゃん!」

「え?もう始まるの?ってかセリフは重機バージョンでいいの!?」

「おー!パチパチ!って何が始まるんでやす?」


 ボンが気を遣って盛り上げてくれている。セリフが重機バージョンだけど、そのまま強行だ!


ーーー重機のお仕事変身バンクVTRーーー

「そこに重機のお仕事がある限り」

「即座に駆けつけちゃちゃっと解決にゃん」


 僕は自分を抱きしめ、ガトーはクルリと回る。


「どんな建築資材も運べちゃう」

「整地もドンと任せろにゃん」


 僕は両手を天に掲げ、ガトーは左右に手を広げる。

 二人で謎の振り付け(ガトー考案)を連続でスムーズに決めていく。


「華やかな光!金のブラック!」

「爽やかな風!緑のブラック!」

「「二人はブラドラ!」」


 渾身のドヤ顔と、光と風の演出を加えて完成だ!


「おー!パチパチ!ってこれもう何色だかわかんないっす」

ーーー重機のお仕事変身バンクENDーーー


(ちょっとちょっと、そのツッコミはもうとっくに旬を過ぎてるから。既にカルカンからさんざん言われてるし!)


 ボンの声を背に、僕らはそれぞれの目的地への往復を開始した。

 マナ鉱石を輸出して、お薬を輸入するんだ。

 陸路だと妨害工作があるけど、僕らだけの空旅ならその心配は皆無だしね。

 モナリーガ王国では銀の最高品質マナ鉱石を、凄く喜んでくれたな。一年前に比べてモナリーガ王都は復興していて、銀色の色合いが増えたように思う。

 国王のボチョールとも少しお話をしたけど、モナリーガ王都の再建の為にも銀のマナ鉱石は重宝しているそうだ。

 そんな訳で多めにお薬を貰えて僕も大満足。

 各国との行き来を繰り返す日々の中で、またも事態が急変し始める。



 ワールドン王国の国民が次々と倒れ始めたんだ。



ドウエン将軍の計略が幾重にも絡みつき始めたようです。

実力者ですが、実力者ゆえに帝国内でも煙たがれています。


次回は「感染症に右往左往」です。

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 お邪魔しています。  暴動のために薬を使うだなんて。本当に一筋縄では上手くいきませんね。  薬つながりで、最後のセリフが気になります。何か病気でしょうか? 次話を急いで読みます!
フォンじゃなくて不穏です!
最後どっとフォンになりましたね…! 何気ない一言って時により新たなインスピレーションを得れますよね〜!
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