ドラゴンコスプレ大会
前回のあらすじ
ついにリゼが復帰。二人は新たな約束を二つ行いました。
そして第2回GWWが始まります。
「わ~りゅどんしゃま?キャッキャッ!」
「これ食べれるかな?甘くておいしいよ!」
第2回GWW。
大盛況な屋台をリベラさんとビットと一緒に回る。
リッツ達、ドラゴン学院生徒も屋台を出店しているらしいので後で寄ってみようっと。
まだ2歳だけどちょっとワンパクなビットは、初めてのチョコバナナをお口いっぱいに頬張っているね。
「衣装が借りられるから、リベラさんもオシャレしようよ!」
「ウチがオシャレやなんて、似合わんと思いますわ」
「そんな事ないよ!ほら、行こう」
遠慮しがちなリベラさんの両肩に手を乗せて、ぐいぐいと押しやる。すると観念したのかリベラさんも歩みを進めてくれたよ。
そんで、衣装貸出ブースにやってきた。
元々は浴衣の貸出だけの予定だったんだけど、リアロッテ王国と共同開発した衣装が大量に出来上がっているんだ。
ここの所は立て込んでいたからすっかり忘れていたけど、僕が依頼していたアニメ衣装も大量なんだよ!
ブースの端っこを見ると、なんだかライダーな特撮衣装が紛れ込んでいる。
(ちゃっかり差し込んだのかよ、ガトー……)
僕は呆れつつも、リベラさんのお召替えをマイティに依頼して、僕自身は着替える候補を見繕う。
エリーゼは有名な某ロボットアニメの宇宙服なスーツを選んだ。マイティにも君主命令で指示を出しといたけど、無難にチャイナ服を選んでいたな。
「これ、似合いますかニャン?」
護衛でついてきたアマミちゃんが、魔法少女っぽい衣装を身に纏っていた。
ってか護衛任務をほっぽって着替えているのはどうなん?
あ、僕も早く選ばなきゃ。
リベラさんは初めての浴衣がとても似合っていたし、ビットのハッピも可愛い。
「ふぅーーー!最高ですわ!素敵ですわ!」
「……ほんに独特な個性やから、よう言えへん……」
「流石は画伯です」
「ワールドン様って露出狂ニャン?」
ふぁ?なんだかアマミちゃんから露出狂認定されて、大変遺憾なんだけど?
なんだったら遺憾砲をまとめて連射する勢いだよ?
お祭りなんだし、「折角だから金の衣装を選ぶよ」と派手な金色のサンバ衣装にしたんだ。
ちゃんと大事な所はしっかり隠れているのに、露出狂だなんてどうかしているよね!
僕らの装いを発見したルクルが「マジでカオス」と評したのは、分からないでも無いけどさ。
でも、こんなに色んな衣装が出来ているのなら、「去年のコスプレ大会の雪辱を果たせるかも?」と考えて、君主命令で突発的な大会を指示したんだ。
ポポロはその対応でテンパッていて、ルクルからは「お前あとでおぼえてろよー」って恨み節を言われたかな。でも二日目はリゼとイチャイチャしていいんだから、今日くらいは頑張ってよね。
サンバ衣装で練り歩いていたら、エリーゼ以外から「一緒に歩くの恥ずかしい」と言われてしまい、黄色系の魔法少女の衣装に再度着替えてみた。
んで「本人がええなら」「……及第点ですね」「センス無さすぎニャン?」という辛口評価だったけど、アマミちゃんは余計な口を滑らせてしまったから、ここにはもういない。
だってエリーゼが「特別指導ですわ!」って連れていったから……護衛が0人になっちゃったよ。
(ま、僕がリベラさん達を守るからいいけどね)
カービル帝国からの細々とした嫌がらせは続いている。
だから、街のあちこちに護衛の人達を配置しているんだ。
僕が「アマミちゃんをリベラさんの護衛に!」って要望出して、そう配置されていたんだよ。エリーゼが連れていってしまったから、全く意味なかったね。
それから、ドラゴン学院生徒の屋台を訪問。
アンとリッツが呼び込みをやっているけど、アンの衣装……すごいな。
あれ(シンデレラ公演)から吹っ切れたのかな?
通行人は全員がアンのお胸に釘付けだよ。露出は全くないといって過言ではない。ベースはロングスカートのメイド服だし。問題はお胸のデザイン。
屋台の内容とあわせて、タコ焼きをモチーフにしたデザインになっていた。まん丸、まん丸。2つね。
「あいよ!ワールドン様!1パックおまけ!」
コビスから、タコ焼きを3パック受け取る。
海が無いからタコは無かったけど、バンナ村でも粉もんは郷土料理だったそうだ。リベラさんが悲し気な表情でタコ焼きを頬張っていたよ。
「村長達は残念だったよね。でも、いずれまた会えるから!」
「ほんにワールドン様はええことゆうわ。いつか会えると思ってきばりますわ」
輪廻の女神が魂の循環をさせるのに、大体300年くらいだから、そんなのちょっと寝てれば直ぐだよ!僕は明るくリベラさんを励ました。
落ち着いたら里帰りしたい、と言っているリベラさんの要望を、何とか叶えてあげたいなと思いながら、試合会場へと足を運ぶ。
「うわ!凄い熱気だよ」
「お、やっと来たにゃん!猫魔族とシードの試合が始まるぞにゃん!ん?アマミはいないのかにゃん?」
ガトーが最前列に陣取っていた。ボン、クラッツ、ストローも一緒に観戦している。
僕もリベラさんを連れて皆の元に向かったよ。
「腕の調子はどうです?あっしに言ってくれればすぐ調整しやすんで」
「おおきに。なんの不自由も無く暮らしてますわ」
リベラさんの義手は、僕の国の技術の粋を集めた傑作だ。ガトーが羨ましがったのだから、相当な代物って事だよ。
全ての色のマナ鉱石を使っている。まるで生きている腕のようだった。それを見たサブロワ君がめっちゃ制作意欲を燃やしていたみたい。僕も興奮して、サブロワ君と「一緒に凄い魔術具を作ろう」って約束をしたんだ。
僕の理想を語ったら、ボンには「無理っす」カルカンには「頭悪いのにゃー」と言われたけど、サブロワ君だけは「夢があって素晴らしいです!絶対に叶えましょう!」って賛同してくれたんだ。
(サブロワ君とのタッグで、絶対に見返してやるんだから!)
競技の予選はシード撃破が相次ぐ意外な結果。
というのも映画館は港町にも作っていて、アニメの内容をむうびいの魔術具に込めて配布していた。
爆発的なヒットを記録していたね。
ほんでもって、競技人口が跳ね上がっていた訳だ。
ワールドン王都周辺の初期村出身の村人は、王都再建で練習不足ってのもあるけど、単純に港町の方が練習相手に困らないというのが大きかったみたい。
特にサッカーはレベチだった。
(村のお団子サッカーとは別物だね。こりゃ強い)
そうやって予選を観戦していたら、疲れたのかビットがお眠なので、リベラさんが暇の挨拶をする。
僕はビットのほっぺをツンツンしながらオヤスミを告げて、リベラさんを会場の外までエスコートする。
会場の外で警備に当たっていた、いっつも眠たい目をしているガシマにリベラさん達を任せて会場へと戻った。
試合はちょうど全ての一回戦が終わったとこだよ。
「ただいま。バレーとバスケの結果どうだった?」
「む?おかえりにゃん。どっちも流石に危なげなく勝ってたぞにゃん」
ほろ酔いのガトーがご機嫌で答え、ストローがカルカンの無双ぶりについて語る。
「バスケはカルカン様が相変わらずの3P無双しとりましたわ」
「あぁ、流石やったで」
「バレーはあっしの弟子が頑張ってやしたぜ」
クラッツも「さすカル」していて、ボンは弟子のシーナの活躍をプチドヤしていた。
(ボンの方はシーナをどう思ってるんだろ?)
僕がボンにちょっかい掛けようとしたら、被害者友の会のガトー&ストローがお酒片手にしみじみと語りだしたよ。リベラさん達の事を。
「本当に良かったな、ワドよ。これで一件落着だろにゃん?」
「ミカド陛下があない協力的に動かれるんは、信じられへんわ。ほんまカルカン様は凄いお人や」
ミカド王は解放したんだけど、手土産で収めた物を返却してくれたんだ。
なんでも【悠久の秘宝】ってのも返却してくれるって話なんだけど、僕そんなの知らないんだよなぁ。
ま、返してくれるのなら有難く受け取るけどね。
ここにいるメンバーは特に今回の件で頑張ってくれたから、僕は何度もお礼を伝えておく。裏方で必死に頑張っているバラン君にも後でお礼言わなきゃ。
ほっこりした空気になっていた所に、ポポロの声の会場アナウンスが鳴り響く。どうやらコスプレ大会が始まるみたい。突貫だったけど大丈夫かな?
会場のざわめきが次第に収まっていく。
「えー、この度は急遽コスプレ大会が開催される事となりました。衣装は既製品のみですが、メイクや仕草なども含めた総合ジャッジになりますので、皆様ふるってご参加下さい」
ふむふむ。再現度やなりきり度を含めての評価って事ね。
なんだかガトーが不敵な笑みを浮かべているな。
まさか参加するん?なんだか嫌な予感。
「優勝者には去年の料理コンテストの覇者である、マイティさんと一騎打ちの水着勝負を行えます。皆様、伝説の勇者へ果敢に挑んで下さい!」
「…………は?」
驚きのあまり、マイティがポポロを二度見したし、声も普段よりめちゃトーンが低くて別人だよ。
(怖いんですけど!とても怖いんですけど!?)
ガトーは「やっぱり参加はやめるにゃん」って手のひらドリル。他の3人は、マイティの水着姿を想像しているのか鼻の下を伸ばしていたね。
意外にも勇者に挑む者は大勢いたようで、なんと64名の参加者が集まっている。
マイティってファンクラブが幾つもあるし、実は人気なんだよね!
「ワールドン様、そのファンクラブについてもう少し詳しく教えて下さい」
あ、あれ?僕、声に出していたかな?
おかしいな。なんだかワケガワカラナイヨ状態なんだけど、根掘り葉掘り聞かれた上で、僕がマイティに叱られた。解せぬ。
ちなみに、僕は勇者を超える存在の扱いになっているらしい。
常人では辿り着けない勇気……では無くて、露出狂の変態&痴女扱いなん!
誠に遺憾だよ!全く持って遺憾だよ!
僕は心の中で「誠に遺憾砲、斉射三連!」しておいた。いやマジで遺憾だから。
アマミは…エリーゼと直接組手の指導だったようです。
暫くの間、皆がアマミに優しく接したらしいですよ?
次回は「3年目の17歳」です。