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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
育児はトラブルの連続
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良い知らせと大嵐

前回のあらすじ

誘拐されていた人達に事情聴取をしていた際に、テトサが食事を吐き戻してしまいました。

心配したワドは、マイティに連れ出された後を追います。

「おめでとうございます。ご懐妊ですよ」


 二人を追って女子トイレまでやってきたら、ふいにマイティがテトサにそう告げた。

 僕は目を丸くしているし、後ろから追ってきたリッツは驚きの声をあげている。


「ウチ……ウチ……嬉しい……」

「「えーーーーーー!」」


 本当に驚いた。でも、結婚しているのだから子供ができる事もあるのかも知れない。

 僕とリッツも口々にお祝いを述べたよ。

 テトサは少し照れたように目を伏せがちだったけど、その様子は喜びを噛みしめている風でもあったかな。


(僕も嬉しいよ!)


 最近は立て続けに悪いニュースばかりだったから、おめでたい話が一際嬉しく思える。

 マイティが暫くは安静にした方が良いとアドバイスをしていたので、僕は君主命令でテトサに休養を命じたよ。


(そうだ!産休制度と育休制度を取り入れなきゃ)


 ルクルとリゼに相談しようと心に決めて、残りの被害者への事情聴取を完了させる。後の警備をエリーゼに任せ、僕とリッツは先に仕事を切り上げて温泉へと向かった。


「ワールドン様でもテトサさんの事、気づかなかったの?」

「うん、ここの所はリベラさんの事とかで頭がいっぱいで、他の恋バナとか考える余裕無かったから……」


 一緒に温泉につかりながらも話題は終始テトサの妊娠についてだよ。平時だったら根掘り葉掘りテトサに事情を聞いていたと思う。


「そっかぁ~、テトサさんは質問攻めにあわずに命拾いしたよね」

「でも、どうやって子供って出来たんだろうね?リッツは知ってる?」

「え……?」


 リッツの笑顔は固まっていたなぁ。なんでだろ?

 リゼに教えて貰ったらしいけど、僕がリゼに聞いても「ワドは性別が無いから、コウノトリが運んでくれるかもなの?」と、まともに教えてくれないんだ。

 ケタに見せて貰っていたアニメでも、具体的にどういう事をすれば子供ができるのかの部分はボカされていたし?

 僕が知っているのは「お父さんとお母さんがプロレスごっこをしたら子供ができる事がある」って事ぐらいだよ?


「ワールドン様は17歳で未成年だから、まだ知らなくていいよ!」

「え?でもリッツも知ってるんでしょ?教えてよ!」


 そっからはいくら聞いても「ふぃ~サウナ暑いね」と言って会話をはぐらかされていた。僕に性別が無いのは仕方ないけど、なんか仲間外れで寂しいな。


 仕事の方は破壊されたインフラの修復と、王都再建の事業に追われていたし、ボンが気合いを入れている。モノ作りの力を発揮出来て嬉しいんだって!


(流石、ボンだよ。頼もしいね!)


 港町からも大量に応援を呼んで、物凄い勢いで建設事業が進んでいるんだ。僕も重機としてBlack FridayじゃなくてBlack Every Dayを頑張っていたよ。

 カービル帝国への対策については、一旦保留となっている。ルクルは色々な理由をあげていた。けれど、あの様子だと、何か今じゃない狙いがあるんだろうなと思う。

 計画通りに物事を進めている時の表情をしていたから、僕でも気づいたよ。ルクルは相変わらずの秘密主義なのが困りものだよね。


 翌日もせっせと重機のお仕事に勤しんでいたら、大工の仕事をしているおじさん達からお昼に誘われたよ。

 僕、こんな風に誘われたの初めてでとても嬉しい。


「ねぇねぇ、皆はいつもどんな話をしてるの?恋バナとかする?」

「いやぁ、流石に恋バナはしねぇなぁ」

「そうだな~、ワールドン王国で働くようになってからは話題が変わったのは確かだな」

「それ、もっと詳しく!」


 以前は「体のどこどこが痛い」とか「疲れてて仕事が辛い」とかの話題ばかりだったそうだ。でも、黄金聖水を飲んで仕事をするようになってからは、体の不調や疲れは一切無いので話題が変化したとの事。

 仕事に関しては、どうすればより良い仕事ができるかや、効率をあげられるかの話題が増えたそうだ。大量の仕事があるし、成果を出せば正しく評価される。他の国では中抜きなどもあってやる気が出ないけど、僕の国では頑張った分が見返りになる。

 だから、皆はやる気に満ち溢れているんだ。


 それから、趣味の話題。

 絵画や演奏だけではなく様々な趣味が育ってきている。趣味で俳優を目指したり、映画監督を目指している人もいるんだ。

 結局の所、黄金聖水の存在が大きいみたい。

 バリバリ仕事をしても、完全に疲労が消えるので、アフターを趣味にガンガン充てられるし、睡眠時間も短時間で済む。1日で労働と趣味に、全振りしたように時間を費やせるんだ。

 黄金聖水への感謝を、めちゃ述べられたね。


(それに関しては、とても嬉しい……けれど)


 ブラック培養の実体を知っているから、僕としては申し訳ない気持ちもあって、乾いた笑いを浮かべながら皆の話を聞いていたよ。

 あと、最近の話題としてはザグエリ方面で、ずっと嵐が続いているってのが多いらしい。

 確かにずっと厚い雲が鎮座していて、暴風が荒れ狂っている。

 けど……あれってガトーの仕業じゃないのかな?


「じゃ、午後も頑張りましょう!」

「ワールドン様、きっと復興はすぐですよ!」

「うん、頑張ろうね!」


 夜には会議を開く連絡が来たので、今日は早めに作業を切り上げる。新規オープンしたカール先生のビアバーで会議やるってさ。王都復興で有志の人達が切望したから、ドラゴン学院校舎よりも先に建てられたってのが、まぁ僕の国らしいっちゃらしいよね。


 パン!パン!パパン!パン!


 ビアバーに足を踏み入れると、クラッカーが幾つも鳴らされたよ。僕が目を白黒させていたら、カルカンが自慢げに語りだす。

 どうやらお目出たい事があったので祝う為に僕を待っていたらしいよ?

 テトサの妊娠の件かな?

 奥からストローとガトーが出てきた。その後ろから現れたのはリベラさんだった。


「……リベラさん」

「ワールドン様、この度はお救い下さり、ほんまにありがとう。おかげさまで、ビットをまた抱く事が出来ましたわ」


 僕は言葉に詰まって、うまく返事出来なかったよ。

 とにかく嬉しくて、涙が止まらないよ。久しぶりに見たビットは大きくなっていて、「お母さん」ってリベラさんを呼んでいた。その抱きかかえられている所をみてハッとする。


(右腕が……)


 リベラさんの右腕は肘から下が無くなっていた。

 左腕だけでビットを抱いている。僕の顔色が急変したのを察したルクルが、慌てて口を挟んだ。


「ボンに義手を作って貰うから安心しろよなー」

「そうですわ!ボンが全力で作りますわ!」

「お嬢と旦那に言われたら……いや、ワールドン様の為に、不眠不休で頑張りやすよ、あっしは!」


 皆が気を遣って明るく振る舞っているし、その空気を壊す訳にはいかないから、僕も笑ったよ。

 それからカルカンとエリーゼの誕生節のお祝いも一緒にやる事になったんだ。

 乾杯の音頭を取ろうとしたんだけど、フライング呑兵衛が複数もいる。


「ふはぁ~旨いにゃーしみるにゃー」

「お、カール先生。このおつまみ旨いにゃん!」


 猫魔族ズは既に出来上がっていたな。

 仕切り直して乾杯をし、皆でリベラさん達の無事と、カルカン&エリーゼの誕生節のお祝いをする。

 話題が盛り上がっているので、どのようにリベラさんを助けたのか聞いてみた。


「私が助けたも同然なのですにゃー、うぃっく」

「吾輩が助けたんだぞにゃん。褒めろにゃん!」


 ここ最近のザグエリ方面の大嵐。やっぱりガトーの仕業だったっぽい。「利己的な行動で、世界を危険に晒した」と、ガトーが神罰を与えたそうだ。

 風速95m/sの暴風に晒され続けて、せっかく復興していたザグエリ王都も壊滅状態だってさ。それでザグエリ王国側は交渉条件を取り下げたんだ。

 カルカンは、ミカド王の説得に貢献したらしい。

 具体的な報告内容は、酔っぱらっていて何だか良く分からなかったけど、ミカド王が矛先を納める物を提示したらしいよ。たまにはKYも役に立つんだね!


「二人ともありがとね」

「んにゃー?当然なのにゃー」

「吾輩、ご褒美には新遊園地のデザイン権と、立て直す駅の命名権が欲しいぞにゃん!」

「ふふっ、ガトーはお願いを一つにしてよね」


(本当に、ありがとう)


 僕は……僕には僕を支えてくれる多くの人がいる。

 今回の件でそれを学んだよ。皆が支えてくれて今の僕があるんだ。その事を忘れないようにしようと心に強く思ったよ。


(そうだ。ラザにも謝らないと……)


 褒めてとねだるラザを褒めてあげられなかった事が胸にトゲとなって刺さっている。今なら素直に感謝を述べられそうだ。早く会いたいな。


「ほんならウチはそろそろ失礼しますわ」


 ビットがもうお眠なようで、リベラさんがお暇の挨拶をしにきたよ。僕はビットを優しく撫でてあげてからリベラさんに謝罪の言葉を伝える。


「勿体ないお言葉ですわ。お会いできんかったけど、リゼ様にもお礼を申し上げたかったわ」

「うん、僕から伝えておくね」


 本当に……本当に良かった。

 僕はまたも涙が止まらなくなったよ。リゼの誕生節のお祝いもしなきゃだし、リゼにも謝りたいなと思ってエリーゼに声をかけると、なんだか様子が変だ。


「あの、いえ……もう一人のわたくしは……」

「どうしたの?明日はリゼのお祝いだよね?」


 どうにもエリーゼの言葉の歯切れは悪いし、普段のエリーゼからは考えられないような自信の無さげな表情をしていたよ。

 どういう事なのか聞いても答えてくれない。

 マイティに視線を送ったら、そっと目を反らされた。こういう時、何も考えずにポロリしてくれるカルカンに詰め寄ったよ。


「んー、なんらーワールドン様が二人に見えるにゃ。アル氏が帰ってきたのにゃ?うぃっく!」

「カルカン酔い過ぎだよ!それでリゼの事なんだけど、何か知ってる!?」

「リゼ氏には暫く会えないのにゃー。ミカド王の件でリゼ氏への借金はチャラにされて嬉しいのにゃー」


 僕は「そこんとこ詳しく!」って更に詰め寄ったけど、酔ったカルカンの説明は要領を得ない。

 なので、ルクルへと質問と不満をぶつけたよ。


「リゼは今、自主謹慎中だからさー仕方ないよー」



(ふぇ?何言ってるん?)

マイティの診断には、ホリター家の薬で妊娠判別薬を使っていますよ。


次回は「自主謹慎は現実逃避」です。

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