無自覚ドラゴンのやらかし・前編
前回のあらすじ
猫魔族の国で、猫魔族のカルカンと合流したワド達。
港町モンアードを目指して、鉄道のある港町を目指します。
「カルカン君は妹さんと毛の色が違うんだねー」
「あ、はい。魂の色に染まるので遺伝ではなくて、個人で違いますにゃ!」
毛の色はカルカンが紺青色で、妹ちゃんが葡萄茶色と、兄妹で色違いだった。国王の毛の色は真っ白だったね。
瞳の色はカルカンが秘色色で、妹ちゃんが杏色。ちなみに国王は薄桜色。
前回は妹ちゃんに会わなかったし、兄妹がいるとも聞いてはいなかった。なんで紹介してくれなかったんだろう?
とりあえず、僕は猫魔族国王の予想を話した。
「僕が思うに国王殿は白髪だよね?」
「はい、老いると魂の色が薄くなるので白くなっていきますにゃ!若い頃は紫系だったらしいです!あ、にゃ!」
僕は老いるというのが、いまいち実感出来ないのでわからないけど、ケタの頃に見せてもらったおじいさんキャラなのかなと思ったな。
カーネルサソダーヌとかサソタクローヌとかね。
「魂の色って何で決まるのかなー?」
「それは分からないです……にゃ」
「ん?どの眷属神から影響を受けてるかだよ」
なんか、ルクルとカルカンが口開けて驚いている。なんともマヌケ面だなぁ。
「ワドー、詳しく説明ー!」
「と、言われても……ルクルの瞳が金色なのは、僕が力を与えたからだよ」
ルクルの髪色がアンバー色なのは複数の眷属神の影響が混ざっているからだし、眷属神から意図的に干渉された場合は瞳の色に強く出るんだ。
「ワドさぁー、先に教えといてよー」
「え?説明したけど?」
どうやら、ケタの頃に説明した事が、ちらほらと記憶から抜けているみたい。
改めて、僕が魂に強力な加護を与えたと説明する。
「強力な治癒の加護……だと?」
「そうそう。ちょっとした傷ならすぐ治るし、手で触れると、強制治癒させる強力な加護だよ」
「お前のせいかーーーー!」
「なんでキレるの!?」
詳しく話を聞いてみると、幼い頃に怪我が勝手に治ったり、触れた植物がすぐ咲いて枯れたりしていたんだそうだ。
それを不気味に思った父親から「呪われた子だ!母親を殺したのもお前の呪いだ!」と言われ奴隷に売られたんだとさ。
良かれと思った加護が逆効果だったとはね、ちょっと予想外。全く僕は悪くないね。
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猫魔族の国を出てから、徒歩で既に半月近くかかっている。旅中でルクルとカルカンも、かなり仲良くなっていたよ。
向かうは往路で9番目に訪れた港町【ホッドケット】へ。
僕が飛べば1日でつくのに「空の旅は絶対嫌だ!」とルクルが駄々を言って徒歩の旅だ。
「空の方が早いのに、ルクルがごねるから……もう半月だよ?」
「無理だってばー!あんな空の旅は二度とごめんだね!」
「空の旅で何があったのですか?……にゃ!」
「聞いてくれよー、カルカン君」
それから怒涛の勢いで、ルクルが愚痴を語りだした。
(そ、そんなにトラウマだったのか……)
僕的には気軽で快適な旅だったのにな。
「それは酷いですにゃ!」
「でしょー?」
丸2日間の強行軍はあり得ないとの事。
でもでも、早くつくようにスピードあげようとしたら「これ以上は無理!」って止めたのはルクルなのに!
ルクルってば根性ないよね。たった48時間の空の旅で、うだうだうだうだ文句ばっかり。
「スピードあげれば1日で済んだのに」
「ワドー、本気で言ってるー?」
「北の大陸から、2日で来るのも異常ですにゃ!」
カルカンに見せてもらった世界地図で、ルクルが各都市間の移動時間から推測し、距離を算出していた。
その計算だと、最低でも3000kmを超えているらしい。だけど、僕は数字で言われてもイマイチ分からない。そこそこ遠いなぁぐらいの感覚だよ?
「え?……でもさ、異世界の飛行機なら、もっと早いとおもうけど?」
「ワド、あのさー」
風圧を感じない飛行機と一緒にするな、と言われてもねぇ。
単に怖かっただけじゃない?
「高所恐怖症だから早いの怖かったんだよね?素直になろうよw」
「高山病とか、体感温度とか分かるー?」
高山病って何だろ?そもそも山には登って無いよ?
気温に関しては、確かに空だと真夏にしてはちょっと肌寒いかな?
ルクルが「富士山の山頂ぐらいの高度をバイク80km/hで走った感じ」と言っているけど、僕もカルカンも全然ピンときていない。
「つまりなんなん?要件まとめよろ」
「富士山?バイク?なんですにゃ?」
「死ぬほど寒いんだよー!夏用の薄着だしー!」
最初からそう言えよって思った。前置きがなげーよ。ガタガタ震えていたのは恐怖だけじゃ無かったみたい。
(だから地表に戻った時、涙流して喜んでいたのか)
かなり認識に違いがあったみたいだね。
ま、そんな感じの愚痴を延々と聞きながら、徒歩の旅を続けてようやく目的の港町が見えてきた。
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(ふぅ、やっと着いたよ)
徒歩での長旅の終わりに、少し安堵したのも束の間、港町ホッドケットの門番の1人が大声をあげる。
「あ、あれは去年の変質者!」
こちらに気づいた門番達が、何やら騒ぎはじめた。
まだ覚えていたのか。時効にして欲しいな。忘れたい僕の黒歴史だよ。
「ワドー?何をやらかしたのかなー?説明してくれるかなー?」
「何もしてないよ?」
「あ、ワールドン様。シーツ借りに来た時の事じゃないかと思いますにゃ!」
「へい、カルカン君、もっと詳しくー」
あ、カルカンが僕の全裸徘徊を全部バラした。勝手に喋るのは酷い。
港町の入口近くの道の脇には大きなくぼみがあり、ゴツゴツとした岩が、すり鉢状に潰されツルツルになっているね。
「あそこに見えるクレーター……土下座の跡に見えるけど、カルカン君はどう思うかなー?」
「あのサイズと地面の割れ具合は間違い無くワールドン様の土下座現場ですにゃ!」
「異議あり!あれは仕方なくて……」
「ワド、ギルティー!」
それから、門番に謝罪して町に入ったけれども、宿に入るなり尋問の時間が始まった。
なんとか矛先を反らそうと色々頑張ってみたけど、結果的にルクルの圧力に負けてしまい、尋問の流れになってしまったよ。
(僕は悪くないのに……どうして?)
港町ホッドケットに、最初入るのを断られて土下座した事。
港が小さく混んでいるから、僕のサイズでは海でさえも無理と追い返された事。
僕は「どうしようか?」と悩んでいたが、人のサイズならOKかもと思いついた。
そして、噂に聞いていた猫魔族の国が近かったから、先に猫魔族の国へ向かい、人への変化を習った事。
人に変化して再度港町へ向かったら、全裸だったから不審者扱いされて追い返された事。
やむを得ず猫魔族の所に戻り、カルカンに頼みこんでシーツを借りた事。
まぁ、この港町でのトラブルはこんな所だね。
説明は終えたのに、何故か追求はここで終わらなかった。
「シーツは返すと仰られてましたけど、そのまま差し上げるつもりでした。……にゃ!」
「カルカン君、猫魔族の国でワドがやらかした事をもっと詳しくー」
「はい、ですにゃ」
結界の破壊と、治癒の代償で寿命が短くなる事、語尾強要で揉めた相手を再起不能にした事が暴露された。
他にも余罪があるとか濡れ衣をかけられて、今までの事を逐一報告させられている。
弁護士を要求したい。
「濡れ衣?余罪がボロボロ出てませんー?」
「ワールドン様、これ……弁護は無理ですにゃ」
「僕は悪くないし、弁護人を要求するよ!」
発覚したのは以下の内容。
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・様々な町での土下座。
・猫魔族の寿命削減。
・UMA全裸徘徊。
・宿屋や飲食店の破壊。
・メイジー王国の使者の船撃沈。
・収穫祭の屋台食べ尽くし。
・料理人拉致問題。
・鉄道運行妨害でのダイヤ混乱。
・ラコア将軍撃破。
・定期船の運休。
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い、言い訳をさせてほしい。7割はエリーゼによるものだよ!
やらかしは土下座だけじゃない事が発覚。
かなりやらかしているのがバレましたw
次回は「無自覚ドラゴンのやらかし・後編」です。