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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン外交
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総合ギルドの設立

前回のあらすじ

リベラ&ビットの捜索隊が結成されました。

目立つからとお留守番を命じられたワドは、極度の不安からホリター媚薬に逃げて、薬に溺れていきます。

中間報告で戻ってくる捜索隊を迎えに来たところです。

「ノワール君、全然役に立ってなかったね!所でさ、ストローとガトーは?」


 僕がそう声をかけると「そりゃ無いっすよ」と言っている。

 ここからでは聞こえなかったけど、一応敵の反撃の初動を伝えて、サポートしたと本人は主張しているね。多分、他3人は聞いて無いから、やっぱり役に立っていないよね!


 今、戦っていた相手は「嫌がらせの追手だと思う」とルクルが言っていた。ノワール君も同意している。

 レオ達は「俺らの陽動が巧かったから食いついた」と自画自賛だよ。これって陽動がバレていたけど、好きにやらせすぎずに適度に陽動が効いているフリの為の追手じゃないかな?

 ふふん、僕にも分かったのだ!(ドヤァ)


 少しして、巨大なマナが大気を震わせた。

 マナ感知を高めると、不可視の状態でのガトーが近寄ってきているのが分かる。空気圧の調整で見えなくしているようだね。無事に皆と合流できたよ。


「お待たせやで」

「あー、早くスイーツが食べたいぞにゃん」

「お帰りだよ!捜索はどうだったん?」


 ボンとマイティが合流チームへホットミルクを配っている。

 ここ最近は雪が続いていたし、冷えた体を温めながら彼らが進捗報告をしてくれたよ。


「せや、村人は二人救出できましたやん」

「ビットの所在候補までは掴んだが、ダミーを仕込んでて、特定が難しかったぞにゃん」

「リベラはんは所在不明ですわ。でもやからこそ、絞り込めるんやけどな」


 クラッツは二人救出できた成果を誇っている。

 けど、肝心のリベラさんとビットがまだだよ。

 ガトーから詳しく聞いてみたら、赤子に近いマナの所在候補は6か所あって、そのうち3か所は押さえたそうだ。その1つに捕えられていたのが、今回救出した村人2名との事。なので、残りの3か所のいずれかだろうってのがガトーの見立てだ。

 ガトーには、すんごいドヤられたよ。


 ストローの推察だと、リベラさんが僕にとっての重要人物だとバレているので、牢や収監施設ではなく、ミカド王の周辺に捕えられているだろうとの事だった。

 重要人物とバレている理由は、ストローが前回の交渉の際に持って行った似顔絵だ。

 リベラさんの顔を知らないストローは、ボンに頼んで似顔絵を書いてもらっていたそうだ。転写の魔術具じゃなかろうかって超クオリティの絵だよ。

 僕もあんな風にうまくなりたいなぁ。(遠い目)

 それは置いといて、そんな絵を持って来て減刑を頼むくらいだから、よほど人質の価値が高いと判断されて、特別厳重に確保されているだろうってさ。


「まー、概ねそうだろうねー」

「ルクル、どう救出するん?」


 ルクルは直ぐには答えず「んー、戻ってからなー」と答えをはぐらかした。確かに日没までには戻っておきたいから、早めに撤収する事になったよ。

 でも今回は王都に戻らず温泉宿の方に直行した。

 救出した二人は憔悴していたので、温泉宿の方で暫く療養しながら暮らしてもらう予定。碌に食事が与えられて無かったのか、物凄く痩せていたね。


(ミカド……思ってた以上に僕は頭にきてるよ!)


 温泉宿の一室。捜索メンバーと今後について協議する事になって、僕は開口一番に告げた。


「今すぐビットを助けに行こうよ!それにさ、リベラさんもミカド王の近くにいるんでしょ?」

「ワドワド、まずはお酒飲んで落ち着くにゃん?」

「にゃっにゃにゃっにゃ」


 猫魔族ズはもう飲んでいた。

 ルクルからも「まずは成果を労って、次の算段はそれからだよー」と諭されて仕方なく僕もお酒を飲む。

 ストローは更にやつれていて、クラッツもお疲れのようだ。暗部の面々はあまり喋らないが、疲弊しているのだと思う。勇者パーティーは比較的元気そうね。

 僕はマイティに目配せする。直ぐに汲み取ってくれて、黄金聖水を皆に配っていたよ。皆も頑張っていたんだから、今日くらいは飲んで休まるのも仕方ないよね。


(何事にもメリハリは大事。うん、学習したよ)


 ある程度お酒が進んだ所で、ルクルから双魚節に改めて交渉の場を設ける提案がなされた。

 交渉での成果に自信をなくしていたストローが反論したけど、ルクルが交渉の全容を語るにつれて反論は消え失せる。


「なんっってーか、やり方が汚くて俺は嫌だな!」

「……卑怯」

「え?自分はルクルさんのやり方、凄く良いと思いましたよ?」


 潔癖症なフシがあるレオには不評だ。だけどストローを始めとした面々は「さすがペテン師の親玉」と納得している。

 ルクルの作戦は、表向きは交渉を仕掛けておいて、裏で急襲して人質を解放するといったものだ。ついでに交渉の場にやってきたミカド王の身柄を、ガトーの力で捕らえてしまう……という騙し打ちだよ。

 人質交換の形でリベラさんを救出するんだ。確かに確度が高そうな案だね。ザグエリ側にメリットが大きい交渉条件も予め突きつけておけば、それを検討している間は余計な事を起こさせない効果も見込めるとの事だ。


「ぼ、僕としてはもっと早く助けたいんだけど?」

「前にも言ったけどさー、ワドはさー、リベラさんとビットを救出した後の事をちゃんと考えておいてくれるー?」

「どゆこと?」


 ルクルからは、リベラさんとビットを救出して受け入れた後の準備を進めるように言われたよ。赤ちゃん向けのおもちゃが何も無いから、ビットの為に何か作れとも言われた。

 助ける方向で役に立つことが出来無いのは凄く悔しい。でも、いま僕にできることを一生懸命やるんだ。

 そこまで考えて、ふとギルドへの国民不満を思い出す。リベラさん達を受け入れた後に、少しでも過ごしやすくしておきたいよね!


「分かった。僕やるよ!ボンは協力をヨロ!」

「あっしに任せて下せえ!急ピッチで仕上げやす」


 力こぶを作ったボンが応じる。


「んで、ルクルにも宿題だよ!」

「はぁー?なんで俺にもあるんー?」

「ギルドへの国民不満を解消してよね!君主命令」


 僕はルクルをビシッと指さして、言い切った。

 何か反論くるかなと思っていたら、何も言い返さずに黙って頷いていたよ。

 ん?隣をみると笑顔のエリーゼが何やら凄いオーラを放っていた。


(そっか、だから反論できなかったんだな……)


 反論されない内に、色々と決めていく。

 第二回マラソン大会は、自粛中止とする事になったよ。一部のファンからは「とても残念です」と、お便りを貰ったし、僕もリベンジに燃えていただけに悔しい気持ちでいっぱいだった。けど、今はリベラさんとビットの救出に「全力ですわ!」だよ!

 エリーゼの誕生節のお祝いは、双魚節にカルカンと合同で開催する事にしたよ。ガトーからやや不満があがったけど「トスィーテちゃん」の単語をチラつかせて黙らせたった!(ドヤァ)


(それはそうと、最近、ピコラが変)


 ピコラってカルカンというか、猫が好きだったんだなぁと初めて知ったよ。ずっとカルカンにお酌していたし、何となく今までもカルカンにさりげなくお酒の好みを合わせたりしていたし。

 今日はどさくさに紛れて、肉球をぷにぷにしたり、顔を後頭部に埋めてクンカクンカしていた。だらしない表情で「えへへ、カルカンさんすごくいい香り」と言っているし、この姿はリッツに見せられないよ。


「ふはぁ~旨いにゃーしみるにゃー!うぃっく」


 全く気づいていない流石のKYを他所に、その日の夜は更けていった。


─────────────────────


 それから数日が過ぎて、双魚節の交渉が近づいてきている。

 ボンと協力して子供用の積み木とレゴなブロックを完成させたし、ビットの受け入れ体制は万全!

 って思っていたら、ガトーに指摘されて作り直しになったよ。金色に光り輝く積み木は目に悪いんだと。


(トホホ……)


 皆のアイデアを持ち寄って、アクリル絵の具を使ってカラフルにしておいた。それにさ、マイティからも「なんでもかんでも金色にすれば良い訳じゃない」と説教を受けたよ。ラザの全身コーディネートの時に、帽子から靴まで金色で纏めた事をまたチクチク言われた。


(僕、画伯じゃないし!?)


 今日はルクルからギルドの発表があると言われて、僕も冒険者ギルドにやってきたよ。新たに冒険者になった国民や勇者パーティーの衆目に晒されながら、ルクルは高らかに宣言する。


「えー、これからは細かいギルドを統合して、総合ギルドに一本化するよー!」

「えー?何言ってんのルクル!?」


 驚いているのは、どうやら僕だけのようだ。皆の雰囲気は「何となくそうなると思った」って感じだよ。続けざまにルクルが右手を高々とあげて、人差し指で天を指し、追加の爆弾発言をする。


「総合ギルドの名称はねー、ズバリ!役場だよー」

「ちょ!?それ元に戻ってるから!」


 冒険者ギルドすら無くなって役場に集約されちゃったよ。原点回帰とはこのことだね。


 でも、統合した役場ギルドにする事で、国民の不満の多くは解消したんだ。めちゃめちゃ感謝されたよ。分散していた機能を集約させただけだから、僕としては納得がいかないけどね。

 国民からは「どこに行けば良いのか迷わずに済む」と好評だった。

 そもそも不満の大半が、たらい回しだったみたい。

 話を聞くと「それをやるには~~ギルドで」とか「その場合は~~ギルドに行って下さい」とか、振り回されていたんだって。

 もう、なんでギルドのロマンが伝わらないのかな?

 とても残念だけど、致し方無く役場を受け入れたよ。


 個別のギルドを全て廃止して総合・役場ギルドが爆誕。

 でも、ギルドが統一された事で予算を国で一元管理でき、大量の国費を投じて身代金を用意する事ができた。

 当然ながら、国民には国費を投じる説明を行ったよ。皆は「ワールドン様の御心のままに」と理解してくれた。本当に感謝している。


(皆……僕の我儘の為に、ありがとう……)



 交渉の材料は揃ったし、救出部隊の準備も整った!



(助けるから待っててね!リベラさん!ビット!)

12章「ドラゴン外交」の本編はここまで。

今回の別キャラ視点の閑話は5話予定です。


・必死の交渉を続けるベコウ・ストロー視点

・迷いつつ勅命に従うプリマッツ・トト視点

・ギャンブル施設に入りびたる勇者レオ視点

・スイーツをご褒美にラザ特訓をガトー視点

・熱血指導を受ける事になったカルカン視点


となります。


前の2話が重い話となっています。

バランスを取る為に後半3話はギャグ寄りの内容です。


一応、重い話も初稿よりは大分マイルドにしました。

ただ、重いは重いので、苦手な人はごめんなさい。


次回はベコウ・ストロー視点の「閑話:失われた右腕」です。

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 お邪魔しています。  情勢が目まぐるしく動いているような感じですね。ワドは、とっても心配していますが、いろいろな心配が重なってきているような気がします。  なんとか、それらの心配が繋がればいいのでし…
そろそろ二人を助けれそうですね~! ルクル凄い卑怯ですねw
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