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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン外交
162/389

シンデレラ開演

前回のあらすじ

世界各国のトップが続々とワールドン王国を訪れた大晦日。

明日の新年祭へと期待が膨らむ中、ルクルはお怒りモード?

『どしたん?ルクル?』

『どしたん?じゃねーよ!ワドお前、どんな風に各国の首脳を誘ってきたんだよー!?』


 なんだかルクルがお冠だから【伝心】(    )で誘った時の状況・内容を共有した。それを受け取ったルクルは暫く目を閉じて天を仰いでいたよ。


「なぁ、ワールドン様。俺、なんか変な事言った?」

「ん?なんで?」

「ルクル殿は俺の挨拶に反応もしてくれないけど?」


 僕は慌てて【伝心】(    )でルクルに、コン君に挨拶しないのは常識が無さすぎると説教した。

 だけど、説教返しが待っていたよ。トホホ。


「サトウ様、大変失礼いたしました。うちの国王が誠に申し訳ないです。ゼイノフル連合国では何かやらかしてますでしょうか?」

「何もやらかしてないぜ」

「だ、だよね!」

「来ないと天罰だって脅されたくらいかな?」


(え?)


 僕はそのセリフで思いっきりコン君の方へ振り返った。後頭部に刺さるルクルの視線が痛い。

 ルクルはコン君の案内をポポロに押し付けると、僕を逮捕・連行した。弁護人はいない。お説教モードのルクルと部屋に入った瞬間に、僕は平謝りした。


「あのね、僕は悪くないんだけど、ごめんね!」

「……ちなみに俺が何に怒ってるか分かってるー?」

「収穫祭で食べ過ぎた事?」


 ルクルは大きなため息をついた後に大声で怒鳴る。


「お前が各国の首脳を脅して招集したことだよー!」

「な、なんだってー!?」


 どうやら、どの国も僕が行う新年祭に来ないと、ガトーから天罰があると脅された認識のようだ。

 確かに、軽いドラゴンジョークで「来なかったらインビジブルドラゴンの天罰するから」と伝えたけど、冗談なのにね。僕、悪くない!

 ルクルは新年に来訪できる国があるのなら程度で、僕が誘うのを許可したみたい。脅したとなると大きく話が変わってくるそうだ。

 ちょっとだけ、反省。


「俺は尻ぬぐいするから余計なことすんなよー」

「リコーちゃんとナイトパレード見たいんだけど?」

「……パウス女王は今ボンとお楽しみ中みたいだからそっとしといて、ラザを構ってあげてくれるー?」

「おけおけ!」


 遊園地のナイトパレードは残念だけど、僕は辞退してリゼと一緒にラザの所に訪問した。ラザのテーブルマナーを教育するのにリゼが一番頑張っていたね。

 ナイトパレードはカルカンの技術力が高評価だったそうだよ。感動の声が続々なんだってー!

 【いるみねーしょんの魔術具】には僕の力もふんだんに使っているし、当然だよね!(ドヤァ)


─────────────────────


「じゃちょっとお留守番しててね」

『う~?ワド~、リゼ~いかないで~』

「大丈夫ですの。すぐに戻ってくるから……」


 マナ制御に問題があるラザはお留守番させて、リゼとガトーと3人で初日の出を見に行く。エリーゼからのお願いでもあったから、リゼと一緒に見るんだ。

 ガトー専用ホバーバイクに乗せて貰って、去年と同じ初日の出スポットに来た。ちらりとリゼを盗み見たら、涙を浮かべて嬉しそうにしていたな。

 ん?あそこにいるのってテトサ夫妻か。いいネタ仕入れたよ。次の女子会が楽しみ!(ニヤリ)

 見届けた後に遊園地へと向かい、新設された大広間で新年の挨拶をした。


「今年もよろしくね!乾杯~!」

「「「乾杯~!」」」


 来賓の皆も今年新作のお酒に舌鼓を打っているね。

 朝からかなり出来上がっているけど、昼からのカラオケ大会や夜のシンデレラ公演まで持つのか心配になるペースだよ。

 カラオケ大会。

 曲数も大幅に増えた。なんと1024曲も入っている。いずれは異世界の全てのアニソンを入れる予定だよ!

 来賓たちにも知っている曲を歌って貰うことに。

 ミレール女王は音痴だった。でも誰も言えなくて忖度した褒め言葉が飛び交っていたな。カルカンだけが「ちょっと音程がヘンにゃ、リズムもおかしいにゃ」とツッコミを入れ、周りに総出で止められていた。


(やっぱりカルカンよりは僕KYじゃないね!)


 宴は続き、日没が訪れる。外は小雨が降り出したようだ。雨音が緊張感を高めてくる。


「僕、緊張してきた」

「ワールドン様!わたくしがついてますわ!」


 カラオケ大会からバトンタッチしたエリーゼが励ましてくれる。一緒に部隊に立つんで心強い。王子役のマイティはやっぱりイケメンだね。

 主役のアンがめっちゃ緊張でガチガチだったな。


「わ、わわわ、ワールドン様、わわた、わたし……」

「アン、もちつけ!」

「ワールドン様!こちらお餅ですわ!」


 僕のジョークに、エリーゼが素で反応してくるから困る。ガチガチのアンは本当に顔色が悪い。それに演技指導してくれたストローがいないんだ。


(まだ里帰りなの?ほんと早く帰ってきてよね)


「アン氏、緊張をほぐす為にとっておきの話を聞かせるにゃ」

「あ……いえ、結構です。お気持ちだけで」


 カルカンが声をかけたら、アンは一瞬で落ち着いたみたい。カルカンのとっておきは怖い話だからね。僕も聞きたくない。

 んで、今回の公演の配役を発表するよ。


─────────────────────

・シンデレラ役:アン

・母親役:僕

・上姉役:ガトー

・下姉役:エリーゼ

・魔法使い:カルカン

・王子様役:マイティ

・モブ役:ドラゴン学院生徒

─────────────────────


 配役が決まった頃、リッツはやさぐれていた時期だったから辞退していたんだよね。それでアンが主演女優になったって訳。

 演技指導のストローが舞台演出も担当だったんだけど、長期不在でいない状態。代わりにガトーが演技指導している。ちなみに結構スパルタだよ。

 でも、ここまで来たらなるようになるしか無いよね!

 ドラゴン学院生徒がバタバタと大道具を運ぶ。


「幕開けるよ!用意はいい?」

「リッツ!声が大きい!聞こえてるから!」


 コビスの声の方が大きいな……と皆内心で思っていた。

 アンが立ち位置につき、いよいよ幕があがる。


ーーーワールドン王国シンデレラ公演VTRーーー

「シンデレラ!ちゃんと掃除が出来てないよ!」

「そうだぞにゃん。この埃をみよぉ?」


 緑色の猫魔族の姉は、指で埃をかき集めてこれ見よがしに見せつける。金髪で金色の瞳の母親も掃除の不備を細かく突きつけていた。

 雑巾を絞っていた手を止めて、二人に頭を下げるオレンジ色の髪の少女は、貧相な恰好とは裏腹にとても凄い物をそのお胸に持っていた。


「すみません……すぐにやり直します……」

「お母様!お姉様!シンデレラなんか放っておいて、今夜の舞踏会ですわ!全力ですわ!」


 両手にドレスを大量に抱えた黒髪ショートの姉が、母親と姉を誘ってお召し替えで奥の部屋へと向かう。


「お前に着れるサイズの服はありませんわ!」

「そうよシンデレラ!そんな大きな胸のサイズのドレスは我が家にないのよ!(シクシク)」

「あーコルセットきついにゃん。シンデレラは着れないだろにゃん?」


 母親と姉は、いびっているのか羨ましがっているのかよく分からない態度をシンデレラに向けていた。そんな扱いでもシンデレラは耐える。ただひたすらに。

 大道具の書割が暗めの色に差し換えられ、梟の鳴き声SEが会場に響く。ドレスへと着替えた母と姉二人は高笑いをしながらまたもシンデレラをいびり出す。


「シンデレラ、貴女もパーティーに行きたいのなら恋バナの10や20は仕入れて置く事ね!」

「ふっ……今夜はパッドメガ盛りだからお前にも負けてないぞにゃん?」

「ふぅーーー!お母様!お姉様!ドレスが素敵ですわ!最高ですわ!」


 怒涛の嵐のような3人が去って、辺りは静寂に包まれる。オレンジの髪の少女は一人呟いた。


「私もパーティーに出てみたいな……」

「話は聞かせて貰ったのにゃ!魔法をかけてやるのにゃ!だからこの契約書に今すぐサインするにゃ」


 どこからともなく現れた猫魔族は、自称魔法使いだと名乗った。魔法という荒唐無稽な事象を起こせると豪語している。とても痛い中二病患者なのだ。


「あの……この契約書の必要項目でスリーサイズってのがあるんですけど……必要なんですか?」

「ドレスを用意してやるから必要なのにゃ!」

「ビデオへの出演の許可ってのは?」

「それは大人の事情なのにゃ!うだうだ言わないでさっさとサインするにゃ!」


 こうして魔法使いに強引に契約させられたシンデレラ。ハロウィン仕様のホバーバイクに乗って王宮へ。

 注意事項は契約書に書いてあると告げる魔法使い。

 シンデレラは注意事項を見直す。だが……


「あの、魔法使い様。この注意事項の文字が小さすぎて読めません!」

「ん?それは鬼畜仕様の契約書なのにゃ。大事な事は読めないくらい小さな文字で書いてるのにゃ」

「内容を教えて下さい!」

「時間に気を付けるにゃ。では私は行くのにゃ!」


 結局、具体的な事は何も聞けずに終わる。素敵なドレスを身にまとったシンデレラは一抹の不安を抱えながらパーティーへと参加するのだった。

 パーティー会場の観客達からは次々に褒め言葉があがる。今夜の彼女は特別だった。そこへやってきた超イケメンの王子様。


「美しいお嬢さん。私と一曲踊ってくれない?」

「ええ、喜んで」


 王子のリードで激しいダンスに興じるシンデレラだが、時計の針が日付を跨ぐ時に事件は起こる。


 パーーーン!


「え!?ちょ……これ聞いてない!」


 シンデレラは驚きを隠せない。まるで演技ではないような真剣そのものの迫真のそれは見る者の視線を釘付けにした。

 日付が変わるのと同時に破裂したドレスの胸元。

 シンデレラはそれを必死に隠しつつ、顔を赤面させながら外へと駆け出した。


「ふふふ、ドッキリ成功にゃん」

「一応、注意事項に書いといたけど読めないよね!」

「あ!そのドッキリは御二人にも仕掛けてますわ!」

「「え!?」」


 パーーーン!


 金色の母親と緑の猫魔族は泣きながら舞台袖に引っ込んだのだった。

ーーーワールドン王国シンデレラ公演ENDーーー


(ちょ!?マジ聞いてないんだけど!)



 会場は笑い声に包まれて終演した。

シンデレラ最大の見せ場が丸ごとカットされた公演

シンデレラである意味とは?

まぁ…ワド達がやる公演がまともになる訳もなくw


次回は「民族衣装の提案」です。

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 お邪魔しています。  シンデレラを迎えに来た魔法使いが、また、胡散臭いですね。変な契約書なんか書かせて、後で利用したりしないでしょうね(笑)
悲劇のお話が喜劇になってしまいましたね〜w、あれ?緑の猫魔族の後ろに…誰か…いる?
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