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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン革命の黎明期
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軍隊いらないから貴族いらないよ

前回のあらすじ

リッツは思い切って自作の歌で自分の想いをルクルに届けました。前を向いて進むようです。

その変化をワドは応援したいと考えています。

そして、カルカンの幸せは、ガトーによって叩き壊されました。

「嫌にゃ!離すのにゃ!」

「待って!待ってよカルカン!落ち着こう!」


 水泳大会が終わってからは、カルカンがアルに続いて失踪しようとしているのを止める日々だ。

 今はその収支報告の会議なんだけど、さっきからカルカンがガトーと顔を会わせたくないと騒いでいる。


「そうだぞ。まずは落ち着けにゃん!」

「………………(ジー)」

「わ、吾輩が全面的に悪かったと何度も謝ってるだろにゃん?いい加減許してくれにゃん」


 あれから、ガトーが謝り続けているのは自業自得だし、擁護できないね。でも、お酒をチラつかせても効かないくらい、カルカンは今回の件でお怒りのようだよ。

 そんなやり取りが続いていたら、テトサはカルカンを宥める案を提案してきた。


「カルカン様はお魚が好物ですから、今年の収穫祭では魚料理を多数出してはどうでしょう?」

「テトサ、お貴族様は収穫祭には出ないから……」


 収穫祭は悪くない案だと思ったら、ヴェストが甘い空気を醸し出して、テトサの手を取って窘めていた。なんか結婚してからは二人は隠そうとしなくなって、隙あらば激甘な雰囲気をダダ漏れでいちゃついている。


「そうや、お貴族様に出てもらうのは困るわ」

「あっしも去年の収穫祭にお呼ばれして、ダメな理由を教えてもらいやした」


 クラッツが貴族に参加されるのは困ると言って、ボンがそれに同意している。


(……って、僕、お呼ばれしてないんだけど!?)


 ボンが端的に説明してくれた。

 元々、漁師や農民が集まって始めたのが収穫祭らしくて、売りに出せない不格好な食材を持ち寄って始めたというのが始まりだとさ。


 今では漁師や農民だけじゃなくて平民全体で楽しんでいるけど、貴族は呼んでいない。そもそもが貴族に対する反骨精神で始まったからだそうだ。

 聞くと「お貴族様は見目麗しい食材だけをお召し上がりになるが、不格好でも立派なんだ」って想いと、税金が高い事への不満の発散の場なんだと。だから基本的に貴族は呼ばれないのが慣例って事。


 勿論、例外もある。

 観光のお忍びだったり、カイナ諸島みたいに貴族と平民の距離が近い所では、一緒に祝う文化もある。だけど、一般的じゃないんだそうだ。


(それは分かったんだけど……っていうか!)


「ねぇ、ボン。僕が去年外交の外回りをしている時、そんな楽しい事にお呼ばれしてたの?どうして教えてくれなかったの?僕、ハブられてるの?」

「む、吾輩も誘われてないぞにゃん?」

「あ、ガトー様はいなかったんで。あっしは誘った方が良いと言ったんです。でも、旦那に止められて」


 ボンがとても良い情報を教えてくれた。ルクルはこの事を知りながら、僕に伏せていたという新事実を。

 僕はニコりと笑顔でルクルを睨んだ。

 すると、何か察したのか先に言い訳をしてきたよ。


「あのなーワド。元々は平民のお祭りなんだぞー。それにさー、ワドが来るって事はエリーゼ様がセットで来るって事だろー?大変な事になるじゃんー?」


 確かに筋は通る。だけどさ、それならリゼの日にすれば良いと思うんだ。それを言おうとしたら機先を制されたよ。


「俺らの都合でさ、祭りの日取りを変更させる訳にもいかないじゃんー?二日間開催にしないとワドもヤだろー?」


 そう言われて納得はした。

 それは僕だって嫌だから……でも、僕が仲間外れにされた事はモヤモヤする。


「うん、わかっ……」

「吾輩は納得してないぞにゃん?吾輩達は神であって貴族では無いぞにゃん。だから呼ばれる資格があるぞにゃん。呼ぶにゃん呼ぶにゃん!」


 僕が無理やり納得しようとしたら、それを遮るガトー。

 ガトーは相変わらずの我儘フリーダムだ。去年は居なかった時期に開催したお詫びにガトー専用収穫祭を開けと騒いでいる。ほんと、こういうメンタルは強くて羨ましいな。

 そんな事を考えていたら、ふと気になる事があったので疑問を口にした。


「ねぇ、貴族ってなんで必要なの?」


 よほどの爆弾発言だったのか、暫く場がフリーズしたよ。ストローとバラン君が慌てて説明を始める。

 説明を聞いて分かった事。

 政治や軍事、法を定めるのに貴族が必要らしい。国によっては領主にある程度の自治権が認められていて、自領の中でのみの法を施行していたりするんだと。

 モンアード領の孤児引き取り推奨制度等が、まさにそれだった。


 彼らの話を聞いて分かったのだけれど、僕の国はかなり特殊らしい。領主を置かず、基本的に国民に自治を任せている。

 法は民衆が争い無く自治できるようにするものばかりで、政治も権力を得たり、権力を誇示するものでなく、民の暮らしを良くする為だけに行っていた。極めて稀な例で他に類を見ないそうだ。

 法が平民向けに作られていて自治が機能しているので、軍事面くらいしかワールドン王国では必要ないかもというのが二人の見解だった。


「えとえと、まとめると領地を守る軍隊を率いるくらいしか貴族が不要かもって事?」

「そうです」

「さいですな」

「んんん?僕とガトー、あとエリーゼもいるから要らなくない?軍隊」


 僕の発言にまたも空気が固まったよ。


(そんなに常識外れな事言ってるのかな?やっぱりアルが常識を正してくれないと困るなぁ)


「そうね。……あの子がいるのだから軍隊は不要ね」


 今まで事の成り行きを見守っていたリゼが肯定してくれた。ガトーはドヤ顔しながら何度も頷いている。

 だけど一人、納得していない。


「ワールドン様、待ってください!貴族は必要です」

「んと、必要な事をプレゼンしてくれる?」


 バラン君は必要だと主張している。ストローは貴族である事にそんなにこだわりは無いっぽい。

 リゼとエリーゼは、僕の意見を全肯定だろうしさ。


「私の事情は、話せば長くなりますが……」

「あ、それはカットでOK。長くなるならお茶入れ替えて貰おうよ」

「吾輩とカルカンはお酒がいいぞにゃん。なぁカルカン?」

「ガトー様のご機嫌取りにはごまかされないにゃ」


 マイティとリッツがお茶を入れ替えてくれた。

 アップルティーの良い香りが部屋に広がっていく。

 職場復帰したリッツは、防護服をもう着ないと言っていた。今までは人である事以上に、ルクルからのプレゼントを脱ぐって選択肢が無かったみたいだね。


(少しずつ、関係性も変わってきてるんだな……)


 それから、バラン君の長々とした話を聞いた。

 彼の家系には、盗品の濡れ衣で領地没収された過去がある。

 ブールボン王国では既に領地が割り当てられていて、他の貴族が不祥事を起こすか戦争などで激減しない限り、彼の家系が領地を得る事は無いそうだ。


 その境遇に手を差し伸べたのがルマンド君だ。ブールボンでは領地が得られ無いが、ワールドン王国なら努力次第で領地を与えられる可能性があると提案されて、それに賭けてここに来た。

 祖父は既に亡くなっているが、せめて父が存命の間に、大願の領地を手に入れたいという話だった。


(ってこれ、バラン君が領地欲しいだけじゃん)


「ふむふむ。つまりバラン君はカーボス家の為に、領地を手に入れたいって認識で合ってる?」

「ざっくりまとめるとそうです」

「それってさ、今と何が違うの?」

「え?」


 僕は持論を述べようとしたけど、上手く説明できない。

 困った僕はいつものように丸投げをした。


「ルクル!僕の考えをまとめて言語化ヨロ!」

「えー、俺を便利家電みたいに扱うなよなー」

「喜べルクル。ワドがこんな風に頼るのはお前と白だけだぞにゃん」


 ぐぬ、否定できない。僕は自分だけではどうしようも無い時、いつも白を巻き込んでいたから。

 ルクルが代弁してくれた内容は、凄く分かり易い。

 領地を持っているかどうかではなく、領民と一緒に豊かになっていくのが重要だという話だった。領地が国土に変わってもそれは同じだと。

 ワールドン王国は、大臣と平民の距離が近い。バラン君も経済産業省大臣として、国民に頼られながら、日々の公務に当たっている。それは領土を持った領主が領民に頼られながら共に歩むのと変わらないと。


 そのように説明を終えると、バラン君は暫く考え込んでいた。


「ワドー、初年度の建国祭や新年祭を伝心で共有してくれるー」

「おけおけ、任せてよ!」


 僕が国民と一緒に過ごした大切な日々を共有した。

 僕の考えも漏れちゃうので、恥ずかしいけど、分かってもらいたくて丁寧に丁寧に。


「ワールドン王国が富む本当の理由を知りました。こんなに大切に思ってもらえる国民達は幸せですな」

「あぁ!ワールドン様についてきて本当に良かったって俺は実感してる!」

「ウチ……ウチ、感動しました!」

「だから言ったでしょテトサ。ポロッサ村の皆を説得したのは私じゃなくて、ワールドン様の真心!」


 バラン君の言葉に、堰を切ったようにヴェスト・テトサ夫妻が続いた。ポポロが言っている事はよく分かんないけど、僕の真心が凄いらしいよ!(ドヤァ)

 他の皆も口々に僕へ感謝を述べ始めた。

 ちょっと恥ずかしくて戸惑ったけど、気持ちが伝わるのって……嬉しいな。


「私は今日、はじめてこの国の一員になれた気がします。領地は要りません。この国の民の為、誠心誠意公務を務めて行きたいと思います」

「うん。よろしくね」


 それからは、ワールドン王国内での貴族制度の廃止について協議したよ。

 平民でも家名を持てるようにする方向で話が纏まった。

 新設した【婚活ギルド】で、家名の申請・授与を行えるようにしたんだ。なお、このギルドは結婚相談所や離婚調停まで行うギルドになっている。僕たっての要望で、恋愛相談まで受け付けるんだなこれが。

 まぁ、ルクルからギルドマスターの業務範囲が多すぎと苦情が入ったので、他の大臣に分散させる事も今後の課題ではあるんだけどね。

 なんとか話がまとまったなと思っていたら、ストローがやけに重い表情をしながら、ルクルに語り掛けていた。



「ルクル様、折り入ってご相談がありますわ。この後少しお時間頂けるやろうか……」



(ストローどうしたの?何かあった?)



ワドは飲み会でハブられ気味です。

酔うと誰が誰を好きだとか、どういった進展があるとかの恋愛絡みの話ばかりをするから……。

最近、飲み会に呼ばれない事に、少しずつ勘づいているようですw


次回は「税金撤廃と夏コミ」です。

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