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ドラゴンの人生探求  作者: 元毛玉
ドラゴン学院
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閑話:港町と海産物

前回のあらすじ

ドラゴン学院生の遠足に、研修旅行として参加する事になったテトサ。

水産省大臣のテトサが、研修旅行とそこで得たもの、それを国の為に取り込みます。

ep.「船舶コンテスト」〜 ep.「留学生と副担任」までのテトサ視点です。

 ウチは水産省大臣のテトサ。


 ギルドマスターのルクル様から、研修旅行に行くように命じられたの。

 ウチは、ポロッサ村とワールドン王国から出た事が無いから、本物の港町に期待が膨らんでいた。


「これって凄い贅沢な事だよね?」

「うん。ウチもそう思う」


 双子のポポロが、背後から声を掛けてきた。

 こんな贅沢な旅行は無い。旅費を全額お貴族様が出してくれるし、ガトー様が守ってくれるから護衛費も要らない。しかも、旅先が南半球にある島だというから凄い。平民ができる旅行じゃまずあり得ないと思える貴重な体験だ。

 しっかり経験を、糧にしないといけないと思う。


 港町モンアードは都会だ。

 ポロッサ村は、ダフ村やフウカナット村に比べると、街と呼べる規模だったけれど、井の中の蛙だと気付かされる。

 港町は高い建物が多くて活気も全然違うし、至る所に屋台が出ていたり、様々なお店もある。

 何よりも人が多い。

 カール先生が言うには、人口が約20万人だというの。ポロッサ村と比べて単純に数百倍の規模でもあるし、観光客も多いから、それ以上だよ。


「……凄いね」

「うん。ポロッサ村が田舎だって思い知らされた。テトサ、屋台に行ってみない?」


 ポポロに誘われて、屋台で買い食いをしてみた。

 魚の焼けた香りが、食欲を凄く刺激する。


「美味しい……でも、川魚と全然違う」

「カルカン様が海産物と川魚は違うって言ってたのが本当だって良く分かるね」

「うん。ウチこんなに違うと思わなかった」


 これまでも出汁用の海産物は輸入していたけれど、新鮮な海の魚の味を知らなかった。

 ウチは「こんなにも違うんだ」と感心し、水産省大臣としてもっと川魚以外を知らないといけない気がしていた。


「臭いからさっさと船に案内しろにゃん!」

「こちらですぞ、ガトー様」

「まずは船内をご覧ください」


 ガトー様が急かすので、買い食いはすぐに終わらせて船に向かった。


(凄く、大きい)


 港も、噂に聞いていた規模より大きい……いや、船のサイズをウチが勘違いしていただけで、15隻の船が停泊している。

 船は川下りで使うようなサイズじゃなくて、どの船も80~200人は乗れる大きな船だった。


(ウチって、何も知らなかったんだなぁ)


 ガトー様は伯爵様達の船を乗り比べて、どちらに乗るかを真剣に選んでいた。

 ウチは船の高級な質感に気後れしているし、物凄く手触りが良いことからも高いのは分かった。


(この革張りとか、あっちの高級木材は幾ら?)


 傷付けて弁償とかになったらと思うと、怖くてあんまり気軽に触れられない。

 そう思って触るのを止めたら、伯爵様から声を掛けられた。


「どうしました?テトサ様?もっと触ってご確認下さいませ」

「あの、ノサト伯爵様……ウチ……いえ、私は平民ですので」

「関係ありませんよ。ワールドン王国の水産省大臣ではありませんか。私にとっては、敬語で対応するに値するお客様ですよ」


 ……そうだった。

 ウチは国の代表としてここにいるのだから、もっと堂々としなくちゃワールドン様に顔向けできない。

 その後は、割り切って普段通りに行動した。


「ノサト様、こちらの椅子はお幾らですか?」

「そちらは28000カロリですな」

「……そ、そうですか。傷をつけた場合は国に請求になるのですか?」

「請求など致しません。仮に船を全損させられても、1カロリすら請求しませんのでご安心下さい」


 マナ鉱石で、既に10億カロリ相当を受け取っている事を聞いた。ワールドン様やガトー様のマナ鉱石を普段使いしていたけど、それって考えられないくらいに贅沢な事だと教えて貰う。


(神様にお仕えしてるって実感、湧いたなぁ)


 その神様の国の代表なんだ。いつまでも気後れしている訳にはいかない。ウチは超高級品の椅子にドカッと座った。女は度胸なのよ。


「な!?テトサ!?それ高級な椅子だよ?」

「それが何?ウチは、ワールドン様から認められた代表だよ?」

「ハハハ!テトサ様の仰る通りです。ポポロ様も気軽に使ってお試し下さい」


 ポポロはいつまで経っても勇気が出ないみたい。

 頼りなくて心配だから、結婚とか当面は無理だなぁ。ヴェストさんへの返事は待って貰わなきゃだよ。

 一通りの設備を確認して、桟橋に戻った。

 カール先生が、乗る船の割り振りを説明し始める。


「ガトー様がお選びになった船を、女子の船とします。帰りは船を変えるので、どちらも楽しめますよ」


 子供達は、どっちの船が気に入ったのかを語りだして、とても賑やかだ。

 ノサト様の船は、船内の内装が凝っていたし、凄く豪華だった。

 ノヤマ様の船は、デッキが充実している。望遠鏡や水中を見る為の魔術具、船の揺れを低減する為の魔術具などが充実していた。


「結局、ガトー様次第だね」

「私は、胃が痛い……もう帰りたい」

「まだ出港もしてないのに。それでも観光省大臣なの?ちゃんと頑張ろうよ」

「プレッシャーかけないでよ、テトサ」


 ガトー様は、ノサト様の船を選んだ。

 ウチを含めた女子組は、ノサト様の船で往路を旅する事になった。


「テトサさん!よろしくね!」

「ウチこんな船、初めてだから見知った顔のリッツがいると安心するよ」

「え!?船旅は初めてなの?じゃあ、あたしが色々と教えてあげる!」


 リッツは、ワールドン様のお部屋でよく会う。

 彼女は役職についていないけど、ワールドン様の側仕えとして準幹部だ。男の子達の憧れの対象なんだけど、本人はルクル様に夢中で気付かない。


「旅は長いから、夜は女子会だね。恋バナしよう?ルクル様との関係とか?」

「あー、そう言う事いうんだ?じゃあ、テトサさんとヴェストさんの進展も教えてね!」


(あ、あれ?ウチ、隠してたのにバレてる?)


 こうして、船旅は毎日が驚きの連続だった。

 旅行先の南の島についてからは、ポポロが暴走したから止めるのに奔走もしたし、まさかカール先生まで暴走するとは思わなかったので、宿に戻ってからは2人をこってり絞っておく。


(皆、浮かれるのは分かるけどさ)


 本当はウチもはしゃぎたいけれど「ワールドン様の名代として来ているんだから」って我慢しているのに男子組がはしゃぎ過ぎて、逆に冷静になっちゃうよ。


 せめて、夜の女子会はウチも羽目外そうっと。

 ……そう思っていたけど、ウチが集中砲火された。


(ワールドン様が、発信源だったなんて!)


 どうやら、ワールドン様がウチの心を読み取って、ヴェストさんと恋仲なのを皆に言いふらしているみたい。

 これじゃいくら否定しても無駄だよ。


「吾輩はデリカシーで無いと、忠告したんだぞにゃん?」

「ガトー様は、恋バナとか興味無いから疑って無いよ。ワールドン様は……ゴシップ好きだから」

「ねぇねぇ!テトサさん!湖畔のデートはどうだったの?プロポーズされたんだよね?」


 あぁ、リゼ様にお願いして、プライバシー保護法案を通して貰おう。ルクル様が提唱していた法案の重要性を今、完全に理解した。


(あの法案は絶対に必要だよ!)


 リッツを始めとした女子組から総攻撃を受けて、ウチはタジタジだった。ガトー様だけが味方だったな。

 すぐに帰りの船旅になったんだけど、ガトー様はノサト様の船から動かなかった。でも、男女は船を入れ替えて、帰路はノヤマ様の船になった。


「凄い!海の底にお魚がいっぱい!」

「ほんと!凄く綺麗!」

「テトサさんも一緒に見ようよ?あたしも悪ふざけが過ぎたから、もうイジらないよ?」


 ほんと他人事だからって、皆は容赦が無かった。

 ウチの子供の名前案まで出し始めた時は、恥ずかしくて逃げ出したよ。


(絶対に皆の恋バナの時は反撃すると決めたから!)


 気持ちを落ち着けてから、海底を見る魔術具を覗き込んだ。


(何これ?こんなに色んな魚がいるの!?)


 ウチは、ノヤマ様に魚の質問をたくさんした。

 どの海域でどういった魚が穫れるのか、種類や生態系など、詳しく教えて貰った。


「ノヤマ様、ありがとうございます。ウチ、知識足りてませんでした」

「いえいえ、海に接して無いと難しいですから」

「味が分からないのが、残念です」

「味わってみますか?」


 ノヤマ様が釣りを皆に教えてくれた。

 ウチも挑戦して1匹だけ釣り上げたし、皆もまずまずの釣果だった。


「新鮮だからできる料理を、料理人に作らせました。ご賞味下さいませ」

「ウチ、生で食べるの初めて……」


 ノヤマ様が刺し身という料理を振る舞った。

 生魚を恐る恐る、口へと運ぶ。


「な、なにこれ!?凄く美味しい!」

「「「美味しいー!」」」


 皆も口々に美味しいと言って頬張っている。

 ウチは真剣に、ノヤマ様から刺し身にできる魚と、そうじゃない魚を教えて貰った。


(温泉宿で出したら、この冷たい生魚は絶対に人気でる!どうにか入手したいよ!)


 ノヤマ様に聞いてみたけど、新鮮さが命だから、ワールドン王国では難しいかもって話だった。でも、青の高純度のマナ鉱石があれば、冷却の魔術具で新鮮なままに出来る事を聞いた。


 国に戻って、真っ先にルクル様にお願いしたよ。


「ウチ、刺し身を扱いたいです。青のマナ鉱石をどうにかして手に入れられませんか?」

「あー、なるほどねー。寿司も食べたいしいいかもー。ま、なんとかするよー」

「どうか、よろしくお願いします」


 ルクル様にも、ヴェストさんとの事をからかわれそうになったから、ウチの直感でカマをかけた。


(ふふっ、動揺してたから、当たりみたい)


 なんとか、躱して日々の業務に勤しんでいた。

 マラソン大会があって暫くしたら、領土に大きな変革がもたらされたんだ。


(港町と、青の最高品質のマナ鉱石だよ)


 まさか、最高品質のマナ鉱石が用意されるとは思わなかった。しかも、港町まで。


「水産省大臣として、頑張らなきゃ」

「テトサ!よくそんなに割り切れるね!?」


(ポポロは適応力が足りないよ?二柱の神様に仕えてるんだからさ、もっと柔軟にね?)



 こんな事にも狼狽えているポポロに、夏に結婚する話をしたら一体どうなるのかとても不安になったよ。



ワド対策に、プライバシー保護法案は必要ですねw

ヴェスト視点でのテトサとの関係も書きたいのですけど、需要が全く無さそうなので自重しておきます(苦笑)


次回はヤオシーサ・ドウエン視点の「閑話:手痛い逆襲」です。

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 お邪魔しています。船の旅は、実にのんびりしていていいですよね。  改めて思うのですが、マナ鉱石って凄いんですね。いろんな力があって、使い方次第なんでようかね。それに、それぞれのドラゴンに由来してい…
[良い点] ポポロは将来尻に轢かれそうですね〜 [一言] 当面って事はつまり…!
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