ドラゴン探索クエスト
前回のあらすじ
思わぬ敵襲がありましたが、エリーゼ将軍の初陣にて一撃で粉砕されました。
ルクルとの賭けに負けたワドとガトー。
赤、青、銀の最高品質のマナ鉱石を探す羽目になります。
やっぱり、【伝心】はオフにしているよなぁ。
「吾輩、赤がいいぞにゃん!」
「そんなの、僕だって赤がいいよ!」
ルクルからの依頼は凄く難しい。
だって、僕らは【伝心】を基本オフにしているんだ。
異世界だと、ブロックとかミュートになるんかな?
とにかく、僕らは届かない様にする事が出来るんだよ。
常に届くとか、うざいし、うるさいし、プライベートは大事だしさ、オフにしているのが当たり前なんだ。ほんでもって、マナも抑えて隠している。だから、近くまで行かなきゃ分かんないの。
僕とガトーは、どっちがどの色に会いに行くかで、揉めに揉めていた。
「勝負して決めるぞにゃん!」
「なんの勝負するのさ?」
「カルカンにどっちが赤に相応しいか、ジャッジさせるぞにゃん」
(ん?なんでカルカン?あ、ズルいぞガトー!)
「ダメに決まってるでしょ!?妹のフリして猫撫で声であざとく演技するんでしょ!」
「チッ……バレたかにゃん。でも、どうすんだにゃん?」
「ぶっちゃけ、これだけはイヤってのを先にすり合わせしよーよ」
多分、結果は分かっているけどさ……念の為ね。
「「いっせーの……」」
「「青!」」
「だよなーにゃん」
「デスヨネー」
僕は青だけは嫌だ。別に本人の匂いは良いんだけどさ、海底を探し続けるなんて苦行だよ。
ガトーは元々、青が嫌いだしなぁ。青、本人は自分自身の香りに気づいて無いけど、ぶっちゃけ磯臭いんだ。
んで、ガトーは磯臭いのが嫌いなんだよね。なので海の上にすら基本は行かないんだ。海の上なら煙も無いけど、潮の香りが苦手だから山脈で暮らしていたんだし。
「アイツ、磯臭いから嫌だぞにゃん?」
「僕だって海底はヤだよ、そこで相談なんだけど……」
「何だ?言ってみろにゃん?」
「白に押し付けちゃえの案はどう?」
トスィーテちゃんの見た目のガトーが、めちゃ笑顔になった。うーん……見た目だけは可愛い。
「ワド、お前天才にゃん!」
「そ、そう?まぁね!(ドヤァ)」
「で、白はどうやって探すんだにゃん?」
「任せて!秘密兵器あるから!」
僕らはキャッキャキャッキャと、夜中いっぱい騒いでいた。トスィーテちゃんに、女子会オールで怒られたのを思い出すなぁ。
「今回の作戦名は、ズバリ!ドラゴン探索クエストだよ!」
「おぉー!でも、クエストってなんだにゃん?」
「探求みたいな意味だよ?多分……」
「良くわからんで使ってるの良くないぞにゃん?」
僕は、ガトーをジト目でみた。君にだけは言われたく無いかな。
「長いから略すにゃん、ドラク……」
「待て待てーい!」
「なんだにゃん?」
「その略し方は色々とよくないんだよ!」
厳正な協議の結果、【ドラ探】になったよ。
そして、早朝から白の居そうな空域に、飛んで行くことになった。帰宅を放課後アニメタイムには、間に合わせないといけない。
(でも、次のアニメはどうしようかな?)
今日の放課後アニメタイムで、バスケットボールのアニメは全話終わるんだ。子供達からもスポーツ物をリクエストされている。
次のアニメを何にするか凄く悩むなぁ。あのアニメはジャンプが凄すぎて、子供たちじゃ動きが再現できないし……意外に考える事が多いな。
(どれが一番受け入れられ易いんだろう?)
そんな事を考えていて、夜が明ける。さてと、早朝だけど生憎の雨だよ。しかも豪雨。
「ガトー、やっちゃってよ?」
「仕方ないなーにゃん。吾輩、クライマックスにゃん!……あ、服持ってて」
「おい、語尾忘れてるぞにゃん?あ、持つよ持つ持つ。全然持つから!」
物凄い轟音と暴風が天空を吹き荒れる。
雨雲は爆散したよ。ふぅ……これでスッキリして旅立てるよね。
(いくよ!)
「エターナルウィング!」
「インビジブルフォーム!にゃん!」
(……到着っと!)
「フハハ、吾輩の勝ちだにゃん!」
「あーハイハイ、ガトーは早いね早いよ」
「なんか褒めるの雑だぞにゃん?」
「あーハイハイ、心から褒めてますぅ!」
で、早速、エリーゼの声を爆音で再生した。相変わらずウルサイな。爆音すぎて振動が凄いよ。
「なんだそれ!?うるさいぞにゃん!」
「これが秘密兵器なんだよ!」
「こんなんで探せる訳ねーだろにゃん?」
「お、それフラグだよ?」
……ゴロゴロ、ゴロゴロ……
ほーら、すぐに来たじゃんか。
雷鳴が鳴り響き、雷雲が集まってきて白がニョキっと顔を出した。辺りは一気に暗くなったね。
『エリーゼかと思って来てみれば、ワールドンと緑ではないか。緑は随分と久しいな』
『おぅ、吾輩は今はガトーという名前だぞにゃん!』
『さっきぶりだね、白』
『ガトー?まぁ、いいか。それでマナ鉱石がまた足りなくなったのか?』
僕とガトーは目配せして、予定のセリフに移る。
『白のも必要なんだけどさ、赤と青と銀のも必要になったんだ。僕は銀に会いにいく』
『吾輩が赤だにゃん!』
『って事で、白が青に会いに行くんだよ』
『何が「って事」なのか分からんが、何故、会いにいく必要がある?』
ここが踏ん張りどこ!
『マナ鉱石が必要なんだ。んで助け合いと行こうよ』
『そうだぞにゃん。白にも報酬として、変化の魔術具を教えるぞにゃん!』
『その変化の魔術具とはなんだ?』
僕とガトーはメタモルフォーゼをした。ふふふん、早着替えは僕の勝ちだね!(ドヤァ)
『こうやって小さくなれるんだ!』
『便利だろにゃん!』
『何故、小さくなる必要があるんだ?』
(え?変化に興味が……無い……だ……と?)
『狭い隙間とかに入れるぞにゃん。すみっコで暮らせるぞにゃん!』
『究極や至高のスイーツが食べれるよ?めちゃ美味しいよ?』
『さぁな、全く興味がないな』
(て、手強いぞ?どうする?)
僕らはそれからも色々なアピールをしてみたけど、白はどれにも興味を示さなかった。ひたすらお願いしたり、泣き落としまで使ったけど、全然効かない。困った。
『ヤダヤダヤダヤダ!お願い聞いてよ!』
『頼む!青は白にしか頼めないんだにゃん』
『どうせ、匂いが嫌なだけだろ?そろそろ帰る。まぁ、頑張れ』
白が帰ったら困る!あ、そうだこんな時こそコレだ!
『白が受けてくれないと、騒音ハラスメントするよ!』
『騒音ハラスメントとはなんだ?』
『吾輩も知らんぞにゃん?』
『ここでずっとエリーゼの声を再生する。白が依頼受けてくれるまで延々とね!』
(明らかに嫌がる顔したぞ?お、流れ変わったよ!)
『そ、それは困るな。やめてくれないか?』
『ふふん!青からマナ鉱石を貰ってくればやめたげるよ?』
『わかった。青からマナ鉱石を貰ってくるから、それだけはやめてくれ。迷惑だ』
近いうちに貰ってくれるとの事だよ。回収出来た段階で【伝心】するからオフにするなと言われた。全然OK!問題ナッシング!白は約束をしたら、そそくさと帰った。
(いやー、持つべきものは友達だよね!)
「ハラスメントすげーなにゃん!」
「まぁね!(ドヤァ)」
「どんな意味なんだにゃん?」
「嫌がらせって意味だよ?」
ガトーが久しぶりにドン引きした顔になった。トスィーテちゃんのドン引き顔は、精神的に結構クるものがあるなぁ。
「ワドよ、友達に嫌がらせは……流石にどうかと思うぞにゃん?」
「だって仕方ないじゃん!僕、悪くないよ!」
「そんな事ばかりしてるとルクルになるぞにゃん?」
「ハッ!」
そ、それは反省すべきだね。僕が悪かったかも知れないかな?
「それよりもこんな磯臭い所から早く帰るぞにゃん」
「そだね、戻ったらちょうど放課後アニメタイムの時間だし」
「ちなみに吾輩も観たいぞにゃん」
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そんで……最強の囮のバレーボールにしてみたよ。
ちなみに後日の話だけどさ、ガトーがリベロのキャラがカッコイイと真似たがって、大変な事になった。体育館で回転レシーブをやって、床をベキベキのバキバキにしていた。
体育館の張り紙には「ガトー様は体育館に決して入らないで下さい」が追加されていたな。
そうそう、白は仕事が早くて、依頼して3日後には『用意できたから取りに来い』って、連絡あったよ。いやーやっぱ、持つべきものは、有能で便利な友達だよね~!
(にしても、僕の銀探しが一番難航してるなぁ……)
なんだかんだでドラゴン達はとっても仲良しです。
次回は「アポなし伝心」です。