ドラ猫レターの宅急便
前回のあらすじ
ストローが俳優デビューしました。
それからカルカンの研究に協力した事で、むうびいの魔術具が完成しました。
教材に使われていくようです。
「ガトー様!これお願いしますにゃ!」
「お、任されたぞにゃん!」
むうびいの魔術具を使って、カルカンがトスィーテちゃんへのビデオレターを用意していた。
僕がモンアード君向けのビデオレター、アルがルマンド君向けのビデオレターを用意した。ストローとガトーのコンビが配達役だよ。
ストローがめっちゃヨイショするから、ガトーは最近調子に乗っているんだよな。
「吾輩、クライマックスにゃん!」
早速、配達に向かったみたい。
と、言うかさ、ガトーってクライマックスの意味知らないで使っていると思うな。実は、僕もなんとなくでしか知らないけどさ。
今回の魔術具、映像に関しては格段に進歩した。
カラオケの魔術具はスライドショーみたいな感じだったけど、これは完全に動画だったよ。
それにカラオケの魔術具は、新年祭の午後の部で壊れたらしいんだ。今回は、耐用年数と小型化が重視されている。だから、使っている素材がどれも高価で、1台辺り13億カロリもするんだって。
「ワールドン様!わたくし、むうびいの魔術具を1つお譲り頂きたいですわ!」
「え?これ超高額らしいけど?」
「お金なら実家の資金から横流ししますわ!」
「そ、それはダメだよ?」
エリーゼはとても切実な表情で、手を前で組み祈り縋るようにお願いしている。なんでそんなに必死なんだろ?
「エリーゼ、何に使うの?」
「わたくし、もう一人のわたくしと、ビデオレターをしてみたいですわ!」
リゼとビデオレターしたかったみたい。でも、2人はいつもやり取り出来ているよね?
(必要性が感じられないけど?)
「うーん、不必要な所に回す余裕は、無いと思うよ?」
「では、一度だけ!一度だけお貸し頂きたいですわ!」
「うーん、ルクルが良いって言うなら……」
「わたくし全力でルクルの許可をもぎ取りますわ!」
ドドドドドドドド……!
エリーゼは爆音響かせ去っていった。
あの気合いの入れようだと、ルクルは逆らえないだろうな。許可に何の条件をつけられるかだけが心配だよ。
(どうか、僕に飛び火しませんように!)
僕は心配しながらも、学院へと足を運ぶ。念願の体育館が出来たのを見に来たよ!
お昼休みに子供達が体育館に集まって来ている。
ふふふ、バスケットボールのアニメはもう60話まで【伝心】済みで子供達はバスケットボールに夢中なのさ!メタボで体型が似ているカール先生は、子供達から「バスケがしたいです」と言われて困惑していたよ。
僕も便乗して、更に困らせたったよ(ドヤァ)
……キュッキュッ、キュッキュッ……
あー、コレコレ!この音だよ。僕はマナ力場の調整が、難しくて出来なかった。子供達はピボットやダッシュストップをちゃんとやれている。羨ましいなと眺めていたら、子供達が僕に気付いて駆け寄ってきた。
「ワールドン様!アニメの続き見せて!」
「俺も早く見たい!」
「ダメだよ?放課後に4話ずつなんだからね?」
「ワールドン様!モップとタバコが欲しいよ!再現したい!」
「そっちはマネしちゃダメだよ?僕も怒るからね?」
タバコはともかくモップは必要だよな。でも木製だと折れちゃうし、危ないよね?
ストローの演技騙され役が、お役御免になったコウカちゃんのおじいさん。彼は今、用具員のおじいさんをやっている。おじいさんにもモップについて、相談してみる事にしたよ。
「やあ!用具員おじいさん。仕事は慣れた?」
「はい。慣れましたですじゃ。それにコウカの元気な顔が見れて、幸せですじゃ……」
おじいさんは人族としては高齢らしいんだ。
だから、あまり力仕事はさせられないと、ルクルが言っていた。モップ掛けって出来るんだろうか?
「体育館のモップ掛けをどうするか聞いてる?」
「ルクル様からは『回転モップクリーナー』という魔術具を、近々届けると聞いてますじゃ」
「……僕、初耳なんだけど?」
「え?秘密だったのでしょうか?余計な事してすみませんですじゃ……」
……ドドドドドドドド!
あ、マズイ!エリーゼを止めないと!って思ったら体育館の前で止まった。
「ワールドン様!ルクルの説得完了ですわ!」
「体育館に入らないのは、ルクルから言われてたの?」
「わたくし、学院では決して走るな、と言われましたわ!」
「デスヨネー」
エリーゼが走ったら体育館の床がベキベキバキバキにされちゃうからね。ん?良く見たら張り紙に「廊下は走るな」「エリーゼは学院の中で決して走るな」って後者が個人宛ての注意喚起だったよ!
「それで交換条件は何かな?」
「カルカンとボンを、回転?なんとかの為に、限界まで追い込むように言われましたわ!」
「良かった~!今回の被害者はカルカンとボンか!」
「ワールドン様も全力で協力させるようにとの事でしたわ!」
「……え?」
ギャーーー!やっぱり飛び火した!なんかそうなる予感というか、フラグが立った音がした気がしていたんだよ!
僕は慌てて抗議に向かった。
「ルクル!回転モップクリーナーの件は僕、聞いてないよ!それにエリーゼのお願いで、なんで僕が被害者になるのさ!」
「へぇー?ワドはエリーゼ様のお願いを断るんだー?」
「そうだよ!」
「なら、エリーゼ様に今からダメって言ってくればー?きっと泣いちゃうよー?」
「……う……」
き、鬼畜!外道!この悪魔!そんな可哀想な事、僕に出来る訳ないじゃん!でもこの流れだけは変えると決意して、交渉する内容を考える。せめて納期の緩和だけでももぎ取るぞ!
「僕も最近はお疲れだからさ、総集編とか挟んで、余力を回復させる必要があると思うんだ!」
「へぇー?疲労を教えてとか言ってたワドが?お疲れなんだー?本当かなあー?」
「ほ、本当だよ?」
(なんかヤバい!めっちゃ黒い笑顔してるぅぅぅ!)
「本当かどうか伝心でやり取りしよーかー」
「すみませんでした!出来心でした!もう二度としません!」
僕はペコペコと、何度も頭を下げて平謝りしたよ。
土下座禁止令が出ていなければ、焼き土下座した勢いだよ。
そしたら、急にルクルが優しい笑顔になった。
「ま、俺も最近はワドに無理ばかり言って、悪かったと思ったからさー、許すよ」
「ルクル!マジ感謝!」
「マナ回路の方は免除して、ちょっと空旅で気分転換とかしてくるのはどうかなー?」
お、空旅いいね!なんか今日のルクルはめっちゃ優しいな!
「って訳でさー、空旅のついでに白の最高品質のマナ鉱石を、1000個は入手してきてねー」
「何言ってるの!そんなに無理だよ!」
「白と会って来なよー?まぁ、個数は50個にまけてやるかー。ワドのご褒美旅行だしねー」
「そ、それなら……なんとか」
ふぅ空旅の休暇が貰えたよ。白のマナ鉱石も、50個なら何とかなるかな?なるよね?
僕はアルに休暇を告げに行った。
「ワールドン様、それは……」
「ん?休暇を取るのダメだった?」
「いえ、ワールドン様が納得されているのでしたら、良いのです」
「じゃ、よろしくね!」
僕は久しぶりにドラゴン形態に変化して、全速力で白の居そうな空域にやってきた。でも、見つからない。丸一日探しても見つからなかった。
(ぐぬぅ、放課後アニメタイムをサボっちゃった)
子供達から怒られるだろうなぁ……あ、そうだそうだ!見つからない時に、使うよう渡された魔術具が合ったんだよ!
これって録音の魔術具だよね?
改良版で、緑の最高品質マナ鉱石が使われているみたいだけどさ……
早速、再生してみた。ポチっとな。
「ワールドン様!一日でも早くお傍にまいりますわ!あぁ神様!どうか一日でも早く!」
うわ!エリーゼの声が、超特大の大音量で繰り返し流れ出した。
……ん?なんか雷雲が……
ゴロゴロ、ゴロゴロ……
『エリーゼかと思ったら、ワールドンではないか。どうした?』
『白!会いたかったよ!』
『一先ず、それを止めてくれるか?』
(いつの間にエリーゼの名前覚えたんだろ?)
僕は事情を説明して、マナ鉱石を譲って欲しい話をしたよ。そしたら持って無いって言われたんだ。僕、困るのに!
『そんなに困ってるのなら、素材を持ってくればマナ鉱石化してやるぞ』
『マジ感謝!今すぐ取ってくる!』
僕は必死で周辺エリアから、マナ鉱石の素材によさそうなのをかき集めた。それを持っていったら、白がぱぱっと最高品質にしてくれた。
(さす白!カッコイイよ!)
『では、またな。エリーゼにもよろしく言ってくれ』
『あのさ……エリーゼに力与えた?』
『ああ、ワールドンの役に立てる様に、もっと力が欲しいと請われてな』
『……やっぱりね!』
絶対にそうだと思っていた。白はなんかエリーゼを気に入っているみたいだよ。
予定より遅れたから僕は必死になって帰った。夜になったから、二日分のアニメサボっちゃったな……
「た、ただいま~。アル遅くなってごめんね」
「ワールドン様、休暇は堪能できましたか?」
「…………してない……あれぇ?」
「そ、そうですか……そんな気はしてました」
騙されてんじゃん僕。これ特急おつかいクエストじゃん。納期切られていないけど、子供達とのアニメ約束あるから、必然的に納期が限定されてんじゃん。
やられた……でも、文句言いに行くと別の仕事が積まれるはずだよ。
(僕、学んだのさ……)
部屋に戻ると、リゼが泣きながら魔術具の映像を見ていた。エリーゼが用意した、むうびいの魔術具かな?
「リゼ、ただいま。それ、僕も見ていい?」
「ん……ワド、おかえり。見たいの?」
「うん。僕も大変だったから、見る権利あるかなーって思うんだ」
「ふふっ、リゼ宛てだけど、ワドなら見ていいの」
早速、エリーゼからのビデオレターを見せて貰う事になった。どんな内容なのかとても楽しみだよ!
ビデオレターで伝えたい内容が、気になっていたんだ。
そしてその映像を見て、僕も色々と思う事があったよ。
(感謝と、素直なプレゼントのおねだりか……)
ちなみにワドは、疲労物質が貯まらないので肉体的には一切疲れません。
休暇と思ったら休暇じゃなかったはブラック会社あるあるですね(苦笑)
でも、飛び火はカルカンとボンの方だと思うのです。
ドラゴンサイズでの50個(人サイズでの1000個以上に相当)を手に入れたルクルはご機嫌です。
次回は「誕生節のおねだり」です。