港町巡り・前編
前回のあらすじ
人形態は女神認定されてしまいました。女神布教が行われていきます。
ここまでの港町巡りを、少し振り返ります。
エリーゼと出会ってからの港町巡りは、波乱万丈の日々だった。とはいえ出会う前が平穏だったかと聞かれると、回答が難しいかな。
『こんにちは、僕はドラゴンのワールドン。敵意は無いから、町に入ってもいいかな?』
「ひぃぃぃぃぃーーー!お、お助け!」
『大丈夫、落ち着いて。深呼吸だよ。ほらヒッヒッフー。ヒッヒッフー!』
「ひぃぃぃ!ひぃぃ!ふぅあぁぁああ!」
『そうそう』
最初の方の港町では、こんな感じだった。
敵意無いと伝えても、門番の人は混乱しているし、何か非常警報出されるし、暫くすると衛兵100人ぐらいに囲まれて「何用だ!?」と威嚇されるしで、困った困った。
一日中、説得を行って「緊急会議を行うので少し待って頂きたい!」と言われて3日間も待たされて、やっと入れるかどうかが分かる感じ。
でも、ドラゴンの姿のままだと、どこも町には入れてくれないんだよね。
「ドラゴン様を受け入れられるスペースが御座いません。誠に申し訳ありません」
『海に浮いてる感じでいいから、町の人と話せる機会が設けられると嬉しいな』
「き、緊急会議を行いますので、今しばらくお待ちください!」
うん。こんな感じで、また待つ事3日って感じ。
まぁ待っている間、僕に話しかけられ続ける門番の人は、ずっと青ざめた顔をしていたけど。
人の言葉を勉強したくても、中々うまくいかないなぁ。それにお金も稼いでいかないとね。
『人の言葉を勉強したいんだ。教えてくれる人いるかな?』
「ぜ、全力で手配させて頂きます!」
『あと、お金が欲しいので、冒険者ギルドとかあったら登録したいんだ』
「冒険者?ギルド?何で御座いましょうか!?申し訳ありません。検討させて下さい!」
冒険者の存在自体が無かったよ。
ギルドの存在自体が無かったよ。
事前に勉強していた、異世界知識が全く役に立たないんだけど、なんで?
どうやら、役場が近い形になっていて、仕事の斡旋をしてくれるらしい。
登録は、生まれた頃にマナを登録して住民登録を行うので、僕では無理だとさ。
(な、なんだってー!?)
国を移動するにも、住民マナ登録が身分証明書になるらしい。奴隷とかアウトローな盗賊とか以外は、住民マナ登録を全員しているとの事。
ちなみに、登録させて欲しいと【土下座】をしてみた。でも、登録は出来なかった。
いや、許可は降りたんだよ。土下座パワーにはまいったな。どこの港町でも許可は降りた。だけど、登録メダルにマナを注ぐと、破裂しちゃうんだよね。
僕のマナが強力すぎて、登録メダルが耐えられないってさ。
(切ない)
役場から直接仕事を受けられないけど、商会や傭兵団などのクランに所属して、クランから仕事を回してもらう事も出来るらしい。
でも、各クランは町に所属しているような感じなので、別の町に移動する際に脱退して、新しい町で入れてくれるクランを探さないといけないそうだ。
……ネットワーク無いんかい!
(困った)
事前に、ケタから仕入れていた情報だと「一回、登録すればどこの町でも大丈夫」といった話の前提だったから、町縛りはキツイ。
他にお金を得る事が出来ないか【土下座】してお願いしてみた。そうしたら、兵士長の人が「こちら、上納金で御座います!」と涙目で渡してきたよ。
あれ多分……ポケットマネーだったんだろうな。悪い事をしたな。
(すまぬ)
3番目の港町。名前はモンアードという港町だ。領主と町の名前が同じだから覚え易い。
他の港町の名前はうろ覚えだけど、この港町の名前だけは覚えている。元王族が領主をやっているので、割と大きな町だった。そこで領主相手に、それまでの愚痴を零していたんだ。
「ワールドン様。他の町へ商人を介して、情報を流してみては如何でしょうか?」
『情報を流すと、どうなるの?』
「町に入る時の審査などが不要になります。周辺諸国にも、情報を流せる様に手配致します」
敵対しなければ、友好的な対応を取るドラゴンなので、仲よくした方が良いと情報を流してくれるとさ。
審査といって待たせると、怒らせる可能性があるぞって脅しの噂も流すらしい。
そんな事はしないと伝えたけど、その方が待たされる事なく、スムーズに入れると言われて納得した。
その港町は大きくて、人も多くて賑やかだったな。それでも、僕が立ち寄れるような陸地は無いらしく、海にぷかぷか浮かんでいたんだけどさ。
レンガの建物が多い。高い建物は20mぐらいあるので、割と建築技術も高いのではないか?まぁ僕の1/5ぐらいなので、入れないのは納得なんだけれども。
「コトバ、ベンキョウチュウ……」
『どう?合ってる?』
「おぉ、素晴らしいです。ワールドン様。この短期間で見違えました」
なんか領主が、僕の勉強にも付き合ってくれたよ。
その特訓の間も常にニコニコしていたかな。
異世界知識からの偏見かも知れないけど、やたら親切にする貴族は裏があるっていうし、ちょっと聞いてみる事にした。
『それで、何を企んでいる?』
「企み?何の事で御座いましょうか?」
『しらばっくれてもネタはあがってるんだ!』
「何かご不明な点が御座いましたか?」
はぐらかされているのかな?と思って更に聞いてみたんだけど、どうも何かに利用しようとかそういうのは無いらしい。
最高位のドラゴンと、知己を得られるだけでも、大きな財産だと言っていた。そっかそっか。
それで他の高位の魔獣や、それらの知識についての話題へと移っていき、領主から提案があった。
「では、猫魔族と交流を持ってみては如何でしょうか?宜しければ紹介状を用意します」
『ほんとう?それはとても助かる』
交流を持っている魔獣はいないのかをぶっちゃけて聞いてみたら、猫魔族と交易があるって情報を手に入れる。
人の言葉でやり取り出来るし、書面なども問題ないらしい。噂が広まるまでの期間に、訪れた猫魔族と会う機会が得られた。
二足歩行で喋る猫って感じだった。ケタにイメージ共有してもらったケットシーみたいだと思ったね。
そこで猫魔族の高位の存在は、人に変化する事が出来る事を聞いた。マナ制御が得意だと変化も得意らしいよ。
初対面では、凄く緊張されたなぁ……
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『そんな便利な魔術があるのか』
「はい!あの!魔術具!も!必要!で!御座います!ははーーーーー!」
『そんなに緊張しなくていいよ』
「ああああ、あり、ありがとうごじゃいますぅぅ!」
魔獣なだけあって、上位の存在の僕に超ビビりまくっていた。中々会話がスムーズに行かなかったなぁ。
その猫魔族はずっと直立不動だったよ。
予定順路の途中に猫魔族の国があるから、寄ってみる事にした。
教えてくれるといいんだけど、魔術具がとても高額らしい。
まぁ、いざとなったら万能の【土下座】で何とかしよう。
猫魔族の国で色々あり、人に変化する事を習得し、言語も猫魔族に教えて貰った。
……苦労したよ。
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その後、10番目の町でとある青年に出会った。
「アルフォート、色々と助けてくれてありがとう」
「はい。ワールドン様。是非とも旅にご同行させて下さい」
彼の名前はアルフォート。
人の年齢は良く分からない。ライトブラウンの髪で、髪型をポニーテールにしている。
瞳の色はサファイアブルー。身長は普通よりちょっと低め?
従者っぽい20人ぐらいの中で、一番低かった。
隣の港町にいる、姉に会いに行く途中との事。
アルフォートは、普通に話の分かる好青年だったから、僕は姉についてあまり深く考えて無かったんだ。
……運命のエンカウントまであと3日。
時系列としては、以下の順になります。
・9番目の港町で入れて貰えない
・猫魔族から人への変化を習う
・9番目の港町へ再挑戦と再々挑戦
・10番目の港町でアルフォートに出会う
・11番目の港町で……アルフォートの姉?
次回は「港町巡り・後編」です。