未知との遭遇
初執筆です。よろしくお願いします。
(なんだこれは?)
悠久の時を生きるドラゴンは、その長い生涯の中で、初めての事に遭遇していた。
何か生まれる?これは魂だろうか?
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!ド、ドラゴン!?」
突然目の前に生まれたそれは大声をあげた。
勝手に住処にやってきて大声をあげるとか、何の嫌がらせだろう?と訝しげに思うのだった。しかし不思議な存在だ。見た所は人のように見えるが……確実に生物では無い。
存在自体が虚ろ気だし、生物としてはあり得ない。
生物が死んだ直後に、わずかに感じる反応がより濃く出ている。
消去法で考えるとこれは「魂」という結論になるが、魂を実体として見たのは初めてだ。
『何者だ?』
「うわ!?頭の中に直接声が響いた!?えっ!?これはこのドラゴンの声なのー?」
『そう。伝心を使って語り掛けている。で、何者?』
「僕は高山慶太。友達からはケタっちとかケタたんって呼ばれてるからケタで良いよー!」
はっきり言って何言っているのか分からない。
言語に関しては問題ない。言語は理解できないが【伝心】で読み取れている。
ただ、内容が理解できない。どこから問うのが良いのか暫く考える。
『よく分からない事が非常に多いので、幾つか質問しても良いか?』
「うん!全然いいよー!ドラゴンって社交的なんだねー!ねぇ、君の名前は?年齢はー?」
おかしいな。質問したいと言ったら質問が返ってきた。そして分からない事が加速度的に増えた。
一気に質問しないと泥沼になる予感がしたので、矢継ぎ早に質問する事にする。
まずは【僕】とは何か?から始め、分からない事を片っ端から全部質問してみた。
「ちょ、ちょっとちょっと何か質問多いよ!ってドラゴンは人の事なんかわかんないかー」
ん?人の事なんか分からないとか、随分と失礼な言い草じゃないか。小指のサイズよりも小さいので、そんなに関心を持ってこなかっただけだ。
人の事は知っている。何か平地や川沿いに大きめの巣を作って、大勢で暮らしているな。
よく群れていて、たまに戦争という大きな戦いで数を減らしている。数を減らしている理由は良く分からないが、魔獣の縄張り争いと同じ感じなのだろう。
「僕っていうのはねー、日本での一人称の一つなんだよー!異世界では使わないかなー?他には俺とか私とか、儂とか色々だよー!」
おかしいな。回答しようとしているのは分かる。
だけど、更に疑問が増える。訳が分からない。
「次は……高山慶太っていうのは僕の名前だよー」
『いや、ちょっと待て』
「何かなー?」
『僕についてまだ納得できていない』
ちゃんとドラゴンにも分かる様に説明して欲しい。
「え、言葉が難しかった?やっぱり日本語だと伝わらないのかなー?」
『違う。伝心で伝えているし、言葉で伝えたい内容は、伝心で読み取っている』
【伝心】は思考を伝えたり、読み取ったりできる。その気になれば五感も共有可能だ。
『言語は理解できないが、伝えようとしている内容は伝わっているぞ』
「本当!?さすが異世界だねー!テレパシー完備なんだー!これは転生が楽しみだなー」
意思疎通をする度に、分からない事が増えていくな。ただ、少しだけ分かった事がある。
【異世界では使わないかな?】の情報。
追加情報から推測すると、ドラゴンが使うかどうかの問いなのでは無いか?という事は【異世界】とは【ドラゴンの伝心】の事では無いのだろうか?
ふふふ、抜かりなく推測できた。それでは答え合わせと行こう。
『一人称とは他にも存在するのだろう?ちなみにドラゴンの伝心では使わないぞ』
「おぉ!良くわかったねー!そうだよー!他にもあるよー!そっかぁドラゴンは使わないのかー」
完璧な回答をしてしまったようだな。ふふふ、やってやった達成感で満たされている!
ただ、一人称というのが分からない事を、先に片付けて置かないと困りそうだ。
『で、一人称とは何なんだ?なぜ使う?』
「ふぇ?一人称が無いと困らない?そもそも使わないから困らないのかー」
『使わなくても問題ない。だから使った事が無い。なので教えて欲しい』
それから小一時間程、一人称と二人称についての説明を受けた。かなり難解であったが、完全に理解した!賢すぎるから当然!
これまでは人があまりに小さすぎるので、大して興味を持っていなかった。だが、交流を持ってみると実に色んな知識を持っているようだ。
これをキッカケに、退屈だった世界に彩りを与える人という存在へ強く興味を持った。
今まで人に興味を持っていなかったドラゴン。
異世界から来た存在と、交流する事で興味を持ち始めました。
この時点でのオタク知識習熟度:☆☆☆☆☆
ぼっちドラゴン ☞ エターナルドラゴン
次回、エターナルドラゴンは名無しを卒業します!
次回は「名前をゲットだぜ!」です。