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第2話  ぽち の るなちゃん・・・ぼく、飛ぶ・・・ね。

「あれえ。」 


ぽちもマリ姉も困ってしまった。


「行き止まりだ。」


川はそこで終わっていた。


川の先にあったのは小さな滝つぼで、見上げるととても高い崖から水がどんどん流れ落ちてくる。


「うーん。地図には滝の絵なんて書いてないんだけど・・・。」


マリ姉は、自分達の正面でごうごうと音をたてながら流れおちる滝とじんじいからもらった地図をなんども見比べて困ったような顔をしてつぶやいた。


「どうしよう?」


マリ姉とぼくはしばらく滝の前に立ったまま、ごうごうと流れ落ちる水を見つめ続けた。


「マリ姉ちゃん。ぼく、進んでみるよ。」


「え?でもぽちちゃん。行き止まりなのよ。」


「うん。でも、ほら、あそこに岩がみえるでしょ?」


ぼくは滝つぼの中に点々と見え隠れしている大小色々な岩たちを見て思ったんだ。


「ここにいても何も変わらないから。

ぼく、とにかく前に進みたい。あの岩を飛んで前に進んでみるよ。」


「分かったわ。行きましょう。」


マリ姉さんがぼくの首にしっかり捕まって、準備OK。


ぼくは飛んだ。思い切り飛んだ。


ぴょん、ぴょーん、ぴょぴょーん。


滝つぼに散らばる岩と岩の間をスピードをつけて飛ぶ。


流れ落ちる滝の水しぶきでぼくとマリ姉ちゃんはびしょ濡れになったけど、シャワーみたいでかえって気持ち良かった。


そしてぼくは滝つぼの中の一番奥の岩を思い切り蹴って、少しだけ高い場所に見えた最後の岩に飛んだ。


その最後の岩に飛んだ瞬間、ぼくは自分が滝つぼの真っただ中に飛び込んだんだって気付いた。


「マリ姉。ぼくにしっかり捕まって!」


滝の流れの真ん中に飛び込んだ僕達は滝のその流れの勢いの強さに流されて滝つぼに弾き落とされそうな気がしたけど、ぼくはぎゅっと目をつむって、身体全体に思い切り力を込めて岩にしがみつく位ふんばった。


痛い位ぼく達を打っていた水の流れが急に消えた気がして、ぼくはそっと目を開いた。




「まああ。」


マリ姉ちゃんの驚いたような声が響く。


そこは頭の上も足の下も自分達のまわりも、全部が岩でできた小さな部屋のように見えた。


ぼく達がたっている真後ろには今、飛び込んできたばかりの滝の水がカーテンのようにごうごうと流れ落ちている。


「ぽちちゃん・・・。」


マリ姉ちゃんの声が興奮していようかのように甲高く響く。


マリ姉ちゃんが指さした方を目をこらしてじっと見ると、ぼくたちの正面にたちふさがっているかのように見えた大きな岩の壁の奥には、暗闇の中でうっすらと階段が続いているように見えたのだった。


「昇ってみよう。」


マリ姉ちゃんぼくはゆっくりと階段を昇り始めた。


岩の階段を昇っていくと十段くらい昇った所で道が二つに分かれていた。


「どうしよう。どっちに進む?」


マリ姉ちゃんは地図を見ようとしたけれど、暗くて見えない。


「えっとね。確か、あの地図には・・・。」


マリ姉ちゃんは一生懸命地図を思い出そうとがんばってくれた。


「確かね・・。川沿いの大きな岩の先は左!うん。左に道が進んでたはずよ。」


「分かった。」


ぼくたちは左の階段を進んだ。


その階段は昇ったり降りたりが何度も続いて、僕たちはもう自分達がどの位階段の道にいるのか、どのくらい進んでいるのかさえ分からなくなっていた。


ぼくはだんだん足が疲れて前に進むのがつらくなってきた。


その時、マリ姉ちゃんが言った。


「ぽちちゃん。見て。」


光!うっすらとだが、階段の先に光のようなものが見えた。ぼくはその光に向かって思い切り走った。





「まあ・・・」


マリ姉ちゃんの大きな驚きの声がぼくの耳に響く。


ぼく達はそこに立ち尽くしていた。


階段を走り降りたその先にあったのは、楕円形の小さな広場のような場所だった。


ぼくたちは広場を見渡した、というよりその広場につながっている何本もの道を前にしてぼくとマリ姉ちゃんはただもう驚きの気持ちでずっとそこに立っていたんだ。


しばらくして、マリ姉ちゃんが言った。


「どの道に進めばいいのかしらね。

一、二・・・道が六つあるわ・・・。地図、そう地図よね。」


マリ姉ちゃんは広場のうっすらとした光の中でじんじいのくれた地図を広げて見た。


「マリ姉ちゃん・・・どの道か分かった?」


「・・・・・」


「マリ姉ちゃん?」


「ぽちちゃん。地図にはもう道は書いてないわ。」


「え?」


「この地図はここ、この広場で終わりになってる。」


「え?でも、じんじいさんは、『虹の谷』って言ったよね。じゃあ、ここがそうなの?でも、ここには、何もないよ。るなちゃんのお薬は?」


ぼくはもうどうしていいのか分からなくて、困ってしまって、そしてお薬を見つけれないと思うと悲しくなった。


「ぽちちゃん。あのね。私にもよく分からないんだけど。地図にはこう書いてあるのよ。


~『虹の谷』へ続く道は、自分が選ぶ道である。


自分の心に従ってその道を進むがよい。


その先に『虹の谷』はあるであろう。~」



「マリ姉ちゃん。難しいよ。

ぼく、分かんないよ。」


ぼくはなんだか泣きたくなってきた。


「うんとね、つまり。ぽちちゃんが自分でどの道に進むかを決めなさいってこと。そうしたら、虹の谷に行けるって書いてあるの。」


「ぼくが?ぼく、ぼく、どの道が正しいかなんて分かんないよ。」


「そうねえ。ぽちちゃん。分からないよね。

でも、ここにずっと居ても、虹の谷には行けないし、そうしたら、あなたの大好きなるなちゃんのお薬も手に入らない。そうよね?」


「う、うん・・・。」



「じゃあ。とにかく前に進みましょう。


あなたがどの道を選んでも、私は一緒に行くわ。

あなたを信じてる。二人で前に進みましょう。


もし、選んだ道が違っていても、またここに戻って、また別の道をいけばいいわ。


道は六つしかないんだもの。何度でもやりなおせるわ。たった六回ここに戻ってくればいいだけよ。必ずあなたの道は見つかるわ。


なんとかなるって!ね?」


ぼくを励ますように言ってくれるマリ姉ちゃんの笑顔がぼくに勇気をくれた。


「うん。」


ぼくはおそるおそるだけれど、一歩足を、前に踏み出した。






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