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相魔使いの美少女世直し漫遊記  作者: 茶寮サスケ
2/7

第2話: 正当防衛・・・よね

(第3者視点)


それは4刻ほど前のこと


「ねぇ、そろそろ出てきてくれないかしら?」

エリス・コーネリアスは少し大き目の声で周囲に声を響かせた。


長く伸びた亜麻色の髪には木の葉が乗り、

長く森の中を歩いてきたために所々木の枝に引っかかったのか髪の毛が跳ねたところをを片手でいじりながら周囲からの反応を待つ。


森の中といっても、今いる場所は少し開けた 正確に言えば明らかに人為的に木々が伐採されて無くなってる場所だ。

ここまでの道のりは、膝まで伸びた草を踏みしめながらの獣道に近い状況であったことから

明らかに景色が変わった状況だ。


「さっきからずっと、わたしのことをジロジロ見てたようだけ、

 ここにわたしが来ちゃったら、もう隠れる必要も無いんじゃないの?」


エリスは森の広場の入口付近の木を背に、顔は広場の中央に向けて再び周囲に向けて語りかける


「わたしみたいな美少女に見とれるのは仕方ないにしても、そろそろ姿を出してくれないとストーカー容疑で憲兵に引き渡すわよ」

「覗き見趣味のストーカーさんがお相手でも、寛大なわたしは"お話”くらいはしてあげても良くてよ!」


エリスの挑発的な物言いに、周囲にイラっとした雰囲気が広がるのが感じた時、


広場のちょうど反対側からゴソゴソと音を立てながら一人の音が姿を見せた。



「あー、別にストーカーしてたわけじゃないが、こんなところにわざわざ来るあんたもそれなりだと思うがな?」

不機嫌そうな物言いを隠さずに話す男は、エリスを値踏みするように見ながら言う

男の顔には大きな傷跡があり、こちらを見る眼つきと併せて凄みを感じさせる様相だ。


「こちとらなるべく穏便に済ませたいんでね、嬢ちゃんはここにはたまたま迷い込んだだけ ってことで、

すぐにおうちに返ってくれるのなら何もしねえよ。」」


「もちろん誰かに会ったとか何を見たとか言うのも無しだがね」


男の話し方からは言っていることは本当の様にエリスには聞こえる。

よく言えば正直、悪く言えば単純なのだろうと思いつつも、警戒は続ける。

「随分とお優しいストーカーさんネ。でも、そのまま返ったとして森を出る前に後ろから襲われない保証はあるのかしら?」

「さっきもわざわざ音を出して自分に注目させようとしてたけど、あなた以外にも周りに何人かいるわよね?」


右後ろの木を一瞥し、男の方に改めて向き合う


「随分と感の良い嬢ちゃんだな。確かに俺のほかにも何人かいるが、俺らはそんなことしねえよ」

「信じてくれ無くてもよいが、俺らは嬢ちゃんに構ってる暇はねえしな」


相変わらず嘘を言っているようには見えないが、早くこの場を収めたいのだろう、強制的に出て行けという圧が表情からうかがえる


エリスとしても、普通の街中であれば、相手から嫌がられてまで居座るほど厚かましくはないつもりだが、

森の中を獣道をわざわざ抜けてきたのにはちゃんと理由がある。

「まぁ、とりあえず貴方たちがあたしに用があろうがなかろうがどっちでもいいわ、

 でも、あたしには大事な用があるの」


一呼吸おいて、目の前の男以外にも聞こえるように声を大きくする。


「あたしはある人を探す依頼を受けてわざわざここまで来たの。その人は攫われて森の方へ連れ去られたらしいの」

「で、それっぽい所を探してたら、貴方たちが私の美貌に惹かれてふらふらと出てきたってわけよ」

「ついでに後ろめたい気持ちも少しはあったのかしらね」


「と、いうわけだからさっさと貴方たちのアジトに案内してもらおうかしら!」



こういった場面は初めてではないのだろう、

有無を言わせない態度で相手に要求するその姿は、なかなか堂に入っている。

男の方はというと、仲間と合わせてこちらの方が明らかに人数も多い状況での態度に対応を迷っていると


「とはいっても、どうせ簡単には案内してくれないのでしょうから・・・」

「とりあえず、これでどうかしら!」


エリスはいうが早いか、男に向かって手を伸ばし言葉を放つ


「緑の戒め!」


「な、相魔使いか!?」

男はとっさに動こうとするが、既に体の周りに見えない風の渦に捕らわれて身動きが取れない


男の方が動けないのを確認しエリスは一気に男との距離を縮め、腰の小剣を抜いて男に向ける。


「いきなり何の真似だ!」

男からは先ほどの穏便さは完全に消え、怒りの表情を浮かべて叫ぶ

「こっちはてめぇの探している奴なんて知らねえよ!、っていうか俺の答えも何もまだ聞いてないだろ コラ!!」


「あー、そういう言い訳はいいから。 あなたのお仲間に言ってくれるかしら?

自分のために、あたしをあなた達のアジトの場所を教えてくれるように って」

「あたしも乱暴ごとは好きじゃないの、分かってくれるわよね」


「言っていることとやっていることが違えだろ!」

体の自由を奪われ、剣を突きつけられた男が反駁する


「おい、お前ら出てきてこいつを何とかしろ!」

男が叫ぶと同時に、周囲にあった気配がはっきりと形になって現れる。

全員で男が4人、囲むように姿を見せた。


「予想通りの人数ね」

エリスは剣をガゼルに向けたまま現れた男たちを見渡す。

「あ、後ろのあなた、もう少し気配を消す練習した方がいいわよ」

「もう、バレバレったらないからね」


言われた男は顔を真っ赤にしてエリスの言葉に反応する

「う、うるせえ! それよりも早くガゼルの兄貴を離しやがれ! さもねえと痛い目みせるぞ!」


ガゼルと呼ばれて動けない男以外、それぞれが手に棍棒や剣など武器を持っている。


「ほーらね、こういった相手とあたしみたいな美少女が話をしようと思ったら大体こういう状況になるのよね。」

「あたしがあなた達が攫った人と同じように簡単に行くとは思わないことね」


エリスの言うことを聞いて、再びガゼルが声を上げる

「だから、俺たちは何も知らねえって言ってるだろうが!」

「あんまりおいたが過ぎると、こっちも黙って返すわけにはいかねぇぞ!」

「おい、お前ら、俺に構わずこの嬢ちゃんを何とかしてやれ!」


剣を向けられても怯むことなく仲間に言う男に仲間の顔には戸惑いが浮かぶ。

「随分と余裕じゃない? 私の風の戒めで身動き取れないのでしょう?」

「さぁ、この男を無事に返してほしかったら、さっさとアジトの場所を教えることね!」


繰り返し同じ問答で状況が膠着したなか、

ガゼルが何とか手を動かし懐から何かを取り出す。

「封魔!」

ガゼルの言葉とともに、その身を拘束していた風が弱くなるのを感じるやすぐに突きつけられた剣から即座に距離を取る。


「あれ、封魔石まで持ってるなんてやっぱりあなたたち ただの怖いお兄さん ってわけじゃなさそうね」

「やっぱりあたしの勘は合っていたようね」


大事な人質に逃げられたエリスだが特に焦るわけでもなく納得した顔だ。


それに対して、ガゼルの方は先ほどまでの焦りは消え優位に立ったものの余裕を見せ始めている


「さぁ、これで形勢逆転だ嬢ちゃん。 改めて言うが、このまま何も知らなかったってことで帰る気は無いか?」

ガゼルも自分の武器を取出し、構えてはないもののいつでも手に掛けられる状態でエリスを見ている。


「やだやだ、女の子一人に大の男が5人で寄ってたかって」

「まぁ気持ちはわからなくもないけどね、こんな美少女見つけたらストーカして何なら力ずくであーんなことをしたくなるって、」

「イヤー、助けてー憲兵さーん!」

剣を持ったまま、体をくねらせながら言う姿に男達はイラつきを隠せず、

エリスの軽い声とは裏腹に更に緊迫した雰囲気が周囲に広がる


「ちっ、俺は何度も言ったぜ。 仕方ねぇ、とりあえず痛い目見てもらった後で街まで送ってやるぜ」

ガゼルはとうとう剣を構えて仲間に呼びかける

「あい、お前ぇら分かってるだろうな、殺しは無しだ。」

「だが、こいつはこんななりだが相魔使いだ、油断はするなよ!」


そう言いながら5人はエリスを等間隔で囲むように位置取りし始める。

「嬢ちゃん、悪いがそういうわけだ。ちょっと痛いかもしれんが、命までは取らねぇから安心しな。」


そういうや否や気配を消すのが下手だと言われた男がエリスに向かって剣を振り上げながら向かってくる。

ほかの男たちはすぐに近づこうとせずこちらの様子を伺っている様子に、エリスは少し感心する。


「へぇ、思ったよりもちゃんと戦えるんじゃない、ただの盗賊だと思ってたけど」

ほかの4人はエリスが進めば挟み撃ち、退けば一気に囲いこむつもりなのだろう

普通の相手ならば既に積んでいる状況だが、エリスの表情にはまだまだ余裕が見える。

「でも、これならこっちも手加減はしなくて良さそうね!」


エリスは向かってきた男の方へ相手よりも更に速く動き、一気に剣が届く距離まで近づく、

「は、速ぇ!」

相手は突然の接近にすぐに対応できてはいないが、振り上げた剣の腹をすぐにエリスに向かって振り下ろす

「遅いよ!」

エリスはその剣を横に体をずらすだけで難なく躱し、


相手のに向かって手を伸ばし相魔を放つ


「緑の風壁!」

エリスの声とともに、向かってきた男は見えない壁に弾き返されたように反対方向へ吹き飛び

囲まれていた状況から一瞬にしてエリスと他の男たちの集団が向かい合うように位置が入れ替わる


吹き飛ばされた男がうめき声をあげながら起き上がりつつ、

ガゼルらはエリスに向かって改めて囲もうと動き出すが、エリスの次の行動はそれよりも早かった


「だから遅いって!」

エリスは男を吹き飛ばした直後から準備していた相魔を男たちに向けて放つ

「風魔乱舞!!」


ゴォォォ!!!!

エリスの相魔によって発生した竜巻にも似た暴風に男たちの体が宙に舞い上がっていく


ゴォォォ!!!!


暴風は更に周囲のモノも巻き込みながら舞い上がり続け、男たちを打ち付けられている


「ぐぁー、」

「た、助けてくれー!」


男たちの悲鳴が一しきり流れたのち、エリスは指をはじくと暴風がゆるくなり、

舞い上がっていたモノがバタバタと地面に落ちてくる。


男たちは地面にたたき落されたうえ、来ている服のあちこちが敗れた状態で横たわっている


「うん、まだみんな大丈夫そうね」


エリスは男たちを一瞥し、満足そうに言う。

地面に倒れ伏す男共を愉悦の症状で見るその姿は、第3者がこの場にいればどちらが悪者か判断に悩むところだろう。


確かに男たちは皆ボロボロの状態であるが、一様にうめき声をあげているところをみると命に別状はなさそうだ。


「これってなかなか手加減難しいんだよね、さっすがあたし!」


「ぐ、何が手加減だ! てめぇ!」


地面に倒れた状態でガゼルが言ってくるが、声は弱弱しい。

続けてまだ何か言おうとするが、エリスが言葉を被せる


「あら、だってあなたたちちゃんと生きてるじゃない。」

「これってふつうは人間くらい平気でミンチにするやつなのよ」

「ちょっと服が破れたくらいで文句言うなんて、男らしくないわねぇ」

「何ならもう一回飛んでみる?」


ガゼルはその物言いに反論しようとするが、

もう一度同じことをされたら、さすがに自分も仲間たちもただでは済まないことはさすがにわかるため、口を紡ぐしかなかった


「じゃぁ、ちゃっちゃと起きて、貴方たちのアジトに連れて行ってもらえるかしら?」


エリスはさも当然とばかりに言う。

言われた方としては、従うしかない状況なのはわかるのだが、納得いっていない部分も多々ある


「ぐ、俺たちは殺されないんだろうな?」

絞り出すような声で尋ねるガゼル、この状況で断ればどうされるのか、結局は始末されるのではないかとの心配が残る


それに対してエリスは、あっけらかんと答える

「え、最初から言ってるじゃない。あたしは人を探しているだけだって、貴方たちが何か知ってそうだからとりあえず相手しているだけだし。」

「あたしってそんなに物騒に見える? 一応貴方たちもあたしを殺そうとはしてなかったみたいだし、ストーカ止めて真人間になるなら許してあげるわよ」


「だからストーカじゃねぇっての」

そんな軽いやり取りに若干の気の緩みを感じつつ、ガゼルは自分を見下ろす少女の顔を凝視する。

見た目は確かにかわいいが、人をミンチにするといった相魔を使った後の表情としてはあまりに無邪気すぎる。

素なのか、相手をだますことに長けているのかは分からないが、これ以上自分たちから仕掛けなければ大丈夫だろうという勘が働く。

エリスは現状に満足しているようで、ガゼルの返答を急かすことなくこちらを待ってくれているようだ。


暫くして、何とか体を起こしながらガゼルは話しかける

「分かった、降参だ。俺らのアジトに連れて行ってやるよ」

「ただし、着いたとたんに後ろからさっきみたいのをドカン! ってのは無しにしてくれよ」

相手の事情が人探しであれば、そんなことはしないとは思うが念のための交渉はしておく。


「えー、あたしってそんなに物騒に見える? こんな美少女捕まえてその言い方は無いんじゃない?」

「どの口がほざきやがる!」

思わず突っ込んでしまうガゼルだが、現状立場が悪いのは自分たちだ。

言われた方のエリスは特に気にしている様子もない、それ以上の突っ込みは出てこない。


「あー、すまねぇ、ついな。」

「分かった、あんたを信用するよ。とりあえず仲間たちを起こしていいか?」

「なんなら武器もそっちに預けるか?」


こちらに反抗の意思がないことを示すのは、自分たちの身を守るためにも必要な対応だが

エリスはにべもなく断る


「いらない、そんな重いのをあたしに持たせる気?」

本気で嫌がっている顔だ。


「分かった、とりあえずひもで縛って誰か一人に持たせておくが、それでいいか?」

「えぇ、好きにして」


そんなやり取りをしていると、周りの男たちも起き上がってくる。

「おい、お前ぇら話は聞いていただろう、この場は命が惜しかったらこの嬢ちゃんに従っとけ!」


「だから、あたしはそんな物騒じゃないっての」

エリスは少し不満そうにつぶやくが、その呟きを聞いた男たちには全く納得の表情をしていない。


もぞもぞと起き上がる男たちに向かってエリスは声をかける。


「じゃぁ、ササっと行きましょうか!」


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