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うちの猫が強すぎる!  作者: シンカワ ジュン
第四章 お猫様とご主人さま
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お猫様は、次元を移動する【ΦωΦ】

「それでは行きましょう」


 ジャルの決意のこもった静かな声が広場に響き渡る。その言葉を聞いて、アタシを抱き上げてるダニー、そしていつもはちゃらんぽらんなサディも気を引き締めたのか真面目な表情を浮かべた。


「ボクらも用意はできてるよ。あとリオンにも連絡済み」

「俺も魔力強化薬を飲んできたからな、ウォルフの攻撃をいくらか防ぐくらいはできるぜ」

「え、あの魔力強化薬を飲んだんですか!?」

「おう。非常事態ってヤツだからな。副作用くらい安いもんだろ」

「……戻りましたら十分な休暇を取ってください」

「そいつはありがてぇな」


 ジャルとダニーが軽口を叩き合っている。魔力強化薬とかいうものだけど、それがあんまりいいものじゃないのかしら? 副作用っていうのはそういうものよね? ご主人さまも合わない薬っていうのがあって、何度か病院に通っていたような記憶があるわ。その時はとても辛そうにしてたから、きっとダニーもこれから辛くなるのかしら。ちょっと気の毒だから、今度思う存分ふかふかさせてあげましょ。


 アタシがそんなことを考えている間に、ジャルは何やら呟いて右手を掲げる。すると彼の手から赤い光が伸びて、空に不思議な紋様を描き出した。よく見たら、同じ模様が地面にも広がっている。


「転移陣、完成しました」

「相変わらずえっげつねぇ速度で転移魔法完成させるな、お前」

「褒め言葉として受け取っておきますよ。さて、全員陣の中に入っていますね? 場所が場所です、少々衝撃があるでしょうから身構えておいてください」


 ジャルの言葉を受けてダニーの腕に力がこもる。ちょっと苦しいけれど、衝撃があるのならしょうがないわね。アタシもいつでも動けるように周囲を警戒しておかなくちゃ。

 アタシたちの準備が整ったことを確認して、ジャルがまたも小さく何やら呟く。すると足元と空の模様がいっそう強く光り輝いた。


 その時、ちょっと、というジャルの焦ったような声が聞こえてきた。


「ダニー、マロンちゃんまで連れて行く気ですか!?」

「あ、やっべ、忘れてた」


 ダニーの間の抜けた声が聞こえたと思った次の瞬間、前にポータルとかいうのを使った時に感じたような浮遊感にひどい横揺れを追加したような衝撃が襲ってきた。

 なるほど、これがジャルが言っていたやつね。




 少し気持ちが悪い気もするけれど、衝撃とやらはすぐにおさまったわ。

 アタシはほんの少し力が緩んだダニーの腕から抜け出してから軽く辺りの気配を探る。どうやら近くにご主人様とウォルフはいないみたいだから、体調を整えるためにググッと伸びをした。


 それにしても、ここはどこなのかしら。見た感じ何もない殺風景な部屋ね。灰色の壁は冷たくて、これはたぶん金属なんじゃないかしら。SF映画とかいうやつで見たことがあるようなきがするもの。

 部屋の中をうろついてみようかと考えたその時、アタシの体を大きな手が抱き上げた。


「マロンちゃん! こんな得体の知れない所に連れてきてしまってすみません!」


 慌てているみたいだけれど、手つきはいつも通り優しいわ。うんうん、抱っこされるならやっぱりジャルね。

 でも、ちょっと気になることを言ったわね? もしかしてあなたたち、アタシを置いてご主人さまを助けに行くつもりだったの? ちょっと、アタシだってウォルフをぶっ飛ばしたいし引っ掻きたいんだから、それは許さないわ。まあ、ちゃんと連れてきてくれたからそれについては不問にしてあげる。


「ニャ」


 短く鳴いてからジャルの腕を尻尾で軽く撫でてあげる。ジャルはこうされるのが結構好きだからお礼みたいなものね。その証拠に、ジャルってば一瞬悶えてたわ。ちなみになんか痛いほど視線を感じるけど、これはたぶんサディね。サディ、あなたもアタシの気持ちを察してほどほどに構ってくれるのなら猫パンチをお見舞いしたりしないのに。まあ、面白いからやめないけど。


「まあまあ、連れてきちまったもんはしょうがねえだろう。ひとまずお嬢ちゃんとウォルフの野郎を探そうぜ」

「……! え、ええ、そうですね。何よりもまずはアイラさんの身の安全が優先です。あの性悪がアイラさんに何もしていないことを祈るばかりですが、もし手を出していようものなら……」


 ジャルの声が後半になるにつれ、なんだか全身の毛が逆立つような響きを持ち始める。これはあれね、ちょっぴりこわいわ。


「ニャン」


 とりあえずジャルのことを落ち着かせるために彼の腕から抜け出して、足にスリスリしてあげる。そうすると、ジャルの体から発せられていた威圧感が少し和らいだわ。サディとダニーも露骨にホッと息をついている。あなたたちも緊張していたのね。


「まったく、アイラのこととなるとある意味で魔王らしくなるよね、キミ」

「俺はあのお嬢ちゃんと会ってからそんなに時間が経ってないからよく知らないんだが、ジャルとお嬢ちゃんってまさかそういう関係なのか?」

「うーん? どっちかっていうとジャルの片思いじゃない? だってジャルって魔王だよ?」

「あー、うんそりゃそうだな」

「ちょっとあなたたち!」


 なんの話をしているのかしら? アタシにはよく分からないわねぇ。

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