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うちの猫が強すぎる!  作者: シンカワ ジュン
第四章 お猫様とご主人さま
53/66

お猫様は、いけ好かないオスと対峙する【ΦωΦ】

     ΦωΦ


 アタシの目の前に突然現れたのは、アタシとおんなじ目の色をしたあのいけ好かないオスだった。

 そのオスはアタシに馴れ馴れしく話しかけてきたんだけど、気に入らないから無視してやったの。そしたらおのオスは今度は無遠慮にアタシの首根っこを掴んだの!

 もう本当に暴れてやりたっかんだけど、首根っこを掴まれるとどうしても体から力が抜けちゃうから、咄嗟に手が出せなかったの。


 そうしてちょっと情けない格好になっている時に、ご主人さまがやってきた。

 ご主人さまはアタシを捕まえているオスと何か話しているけれど、なんだか毛が逆立ってしまうようなピリピリ感がある。これがケンアクはフンイキとかいうやつなのかしら。アタシやジャルと話しているときは全然こんなことはないから、ちょっぴりシンセンな感じがするわ。


それからしばらくすると、オスが笑い出した。オスが笑うたびにアタシの体が揺れる。このオス、ただでさえアタシの扱いがぞんざいで首根っこの掴み方も下手くそだから、気持ちが悪いったらないわ。

 もう、なんだかイライラしちゃう。ご主人さまもこのオスのことは嫌いみたいだし、アタシもガマンする必要なんてないわよね。


 アタシはふん、と鼻を鳴らして、この嫌な感じのするオスを威嚇してやる。そうするとアタシも気合いが入って、力が溜められるわ。

 力を溜めすぎてちょっぴり声が漏れちゃったけど、このオスはアタシのことは気にしていないみたいでこっちを全然見ていない。これはこれで腹が立つわね。

 アタシは怒りと力を溜めて溜めて、ここぞというタイミングを狙う。


 そしてその時はやってきた。


 アタシを捕まえているオスの力が弱まったの。

 アタシは体を捩ってオスの手から抜け出すと、すぐに振り向いて体勢を整える。

 溜めに溜めた力と気合い、そして怒りの全部を右前足に乗せた。


 こうして全力で繰り出したアタシ自慢の猫パンチは、目の前のオスの足に見事に命中した。

 この猫パンチは、自分で言うのもなんだけど惚れ惚れするくらいに素晴らしいものだったわ。アタシの猫生で一番と言っても過言でもないくらいに。


 だけど、この猫パンチはオスには全然効いていなかった。いつもなら……サディとかいうメスとか、アタシにしつこく構ってくるヤツらは吹っ飛んでいくのに。


 どうしてこのオスはなんでもないの?


 想像していたようなことが起こらなくて、アタシはびっくりして体が固まってしまう。この隙を突かれて、アタシはまたオスに首根っこを掴まれてしまった。

 もうっ、油断してしまったわ。猫パンチが効かないなら自慢の爪で引っ掻いてやったのに。最近は爪切りしてないから、とっても鋭くて強いのよ。


 フゥフゥと息を吐いて少し気持ちを落ち着かせてから、オスが怯むように全力で威嚇する。だけどやっぱりこのオスはアタシのことを気にしてないみたいで、本当に腹が立った。

 いけ好かないオスがご主人さまに向かってサラウとかユウカイとか言っている。ご主人さまはその言葉に驚いてるみたいだけど、いったいどういう意味なの?


 そんなことを考えていたのがいけなかったのかしら。

 オスがアタシの体を勢い良く振り上げて、そのままパッと手を離した。


 これがただ手を離しただけなら、アタシだって華麗に着地できたはず。でもそうじゃなかったから、アタシの体は宙を舞った。


 どんどんご主人さまと離されていく。あのオスがご主人さまに近寄る姿が見えたかと思った次の瞬間には、アタシの視界から二人が消えた。


 ご主人さま!


 叫んだけれど、それで何かが解決するわけでもなく。

 アタシはそのまま海に落ちてしまった。


 どうしよう、アタシ水が苦手なのに!


 必死にもがいて水面から顔を出す。バシャバシャという音を出しているのは自分だということは分かっているけれど、それでも耳障りだ。


「ニャアァ!」


 ジャル、ダニー、ご主人さまがいなくなっちゃったの! アタシも海に落ちちゃったから早く助けて!


 アタシは声を上げた。ご主人さまを守れなかったことが悔しくて、必死に鳴いた。

 でもこの海っていうのはすごく広いから、アタシの声は水面や波に吸い込まれてしまう。これじゃあ船に乗ってるダニーにも、シンジュウとかいうのを倒しに行ったジャルにも聞こえないわ。


 どうしよう、と不安になって、アタシの声もだんだん小さくなっていく。体温もどんどん下がっていっていることが自覚できたあたりから、水をかく前足の動きもゆっくりになった。


 ――いやよ、このまま死ぬなんて。ご主人さまを助けるまでは、絶対に死ねないわ。あと、あのいけ好かないオスをこれでもかと引っ掻いてやるまでは。


「ゥゥウニャアアアアァ!」


 声を張り上げる。アタシはここよ。誰か、アタシをここから助け出して。


 そんな願いが届いたのかしら。


「おまえ、大丈夫か!?」


 いけ好かないオスによく似ているけれどずいぶんと小さいオスが、アタシの体を抱き上げた。

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