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うちの猫が強すぎる!  作者: シンカワ ジュン
第二章 田舎娘とお猫様の初めての都会
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田舎娘は、初仕事をする

「わあっ、綺麗なママト! こっちはチッケの肉とガラだ。こっちは綺麗な赤身肉だなぁ、なんの肉だろう? あ、ベーコンとハムも美味しそう! こっちにはお魚か。バターもミルクも卵もチーズも豊富にあるね。根菜類もいっぱい。マシュレ、ペルニの茸類も綺麗だし、葉物野菜も全然しおれてない」


 一つ目の冷蔵庫の中には、実家とは比べものにならないくらいに様々な食材が並んでいた。ママトという、前世でいうところのトマトを一つ手に取ってみると、ひんやりとはしているけれど冷たすぎない。もしかしたらこれは冷蔵庫というより、時間などに作用する魔導具なのだろうか。

 こちらの冷蔵庫だけでも十分なくらいに食材が詰め込まれているのに、更にもう一つある。


「隣の冷蔵庫は何が入ってるんだろう」


 そう呟きながら開けてみると、そこには実家で使用していたものよりもはるかに上質なエルブ粉や、同じエルブ粉でもいわゆる全粒粉もあった。他には少し黄色味がかっているマイサ粉もある。棚の上の方には、そこそこの大きさのパンが鎮座していた。

 他には、封の開いていないお酒やビネガー、ピクルス、塩、胡椒、砂糖などが並んでいる。他には様々なハーブだ。どうやらこちらは穀物や保存食、調味料類を保管しているようだ。


「うん? この袋の中身はなんだろう」


 粉類が入っているものとはどこか作りの違う袋が、冷蔵庫の奥にある。気になって中身を確認したら、そこには今世ではお目に掛かることができなかった私の大好物が入っていた。


「お米だ!」


 私は嬉しくて思わずはしゃいでしまった。確かに、名前は違えど前世と似たような食材はたくさんあるから、お米だって存在していてもおかしくはない。だけど、今の今まで見たことがなかったから、この世界にはないのだとばかり思っていたのだ。

 早速お米を何粒か手に取って観察する。ううむ、見た感じ粒が大きい。日本米というよりはイタリア米に近いタイプだろうか。そう考えると、白飯として食べるのには向かないかもしれない。


「うーん、夕食までは時間があるし、試しに少し炊いてみよう」


 そうと決まれば善は急げというものだ。

 ジャル様の専属シェフになる話を受けた後に準備してもらったエプロンを身に着け気合いを入れる。その後、調理器具を置いてあるところからお米を炊くのに使えそうな小鍋を取り出し、それで先ほどのお米を少量研いで、少し多めの水に浸けた。


「ひとまず十分くらい置いてから炊き始めよう」


 それまでにできることをやってしまおう。

 まず、夕食のメニュー決めだ。

 今日は、ジャル様とリオン様に夕食を振る舞うことになっている。ジャル様は好き嫌いはないようだし、むしろなんでも美味しいと言って食べているところしか見たことがないから、どんなメニューを出しても大丈夫だろう。


「……リオン様の食の好み、聞くの忘れてた」


 なんという失態だ。やっちまったとしか言いようがない。


「とりあえず、神王国の方も食に関してはタブー視されているものはなかったはずだから、ちゃんと食べられるものなら問題ないはず」


 呟いて、うんうん唸る。食材自体はよりどりみどりだから、どんなものでも作れるだろう。

 しばらく冷蔵庫の中身を穴が空くほどに見つめながら脳内会議を繰り広げ、よし、と私は一つ頷いた。


「お子様ランチにしよう!」


 夕食に出すのにランチとは、これ如何に。




 さて、お子様ランチの定番と言えば、チキンライスとハンバーグ、エビフライ、あとデザートのプリンなどだろう。今日はせっかくだから、チキンライスはオムライスにしよう。エビフライは材料がなくて作れそうにないから、魚のフライにしようか。


 ある程度頭の中で段取りを整えたので、早速調理開始だ。


 まずはチッケのガラを綺麗に洗ってから、大きな寸胴鍋にどさどさと入れる。そこに皮を剥いて適当に切ったジンジン、オリヨンもどっさり、ついでにクガリンも何かけか入れた。

 ちなみに、ジンジン、オリヨン、クガリンは、前世でいうところの人参、玉ねぎ、にんにくだ。この使い勝手が良すぎる野菜が普通に流通していて、私はとても嬉しい。

 さて、これ以外にもリロスも何本か入れよう。これはいわゆるセロリだ。あとは適当にハーブを突っ込んで、まだ挽いていない胡椒の粒も何粒か投入する。

 これから私が作ろうとしているもの、それはブイヨンだ。前世では顆粒や固形のもので済ませていたけれど、実際に作ってみること自体には興味があったから、頭の片隅に知識として残っていて助かった。


「おっきな寸胴鍋はあるし、食材もいっぱいあるし、お水だって苦労せず汲めるし!」


 寸胴鍋を背の低いコンロにセットしてから、別の鍋に水を溜めてそれを移していく。ひたひたに水を張ってから、早速火に掛けた。


「今日のところは即席ブイヨンみたいな形になるだろうけど、これからどんどん育てていけるのが楽しみ!」


 あと気を付けるべきはグラグラ沸騰させないことと、アクをまめに取ることくらいかな。

 さて、ブイヨンを取っている間に他の食材の下拵えとお試しの炊飯を済ませつつ、今日のメニューで大事な要素になるケチャップを作ってしまおう。


「……えーと、ケチャップの材料って……まずはママトでしょ? 甘味もあったから砂糖は確定として、酸味は酢かな……? もちろん塩味もあって……」


 必死に味の記憶を辿る。あとパッケージの原材料を思い出す。


「こういう調味料って、だいたいハーブやらスパイスやらも入っているし、あと旨味を引き出すために他の野菜も入ったりしてるはずだから……」


 しばらく悩んでみたけれど、最終的に私は諦めた。


「もういいや。味見しながらそれっぽいもの作ろう。悩んでる時間がもったいないし」


 適当にやっても、よほどのことがない限りそれなりのものができるでしょ。


 この快適な調理空間にいつもよりも気分が高揚してしまったのか、私は普段では考えられないくらいに楽観的になっていた。


「よーし、まずはママトを湯剥きして……」


 段取りを理解するために、私は声を出しながら調理する。ママトを湯剥きし、砂糖や塩、酢などの豊富な調味料を目分量で入れ、火に掛けた。


「あとは味見しながら足りないものを足していこう」


 ソース類も火に掛けて様子を見るというものが多いから、他のことができていいね。


「ハンバーグと魚のフライも作らなきゃ。うわあ、ミンチにするのは骨が折れるなぁ。パン粉も作りたいから、パンも取り出して乾燥させておかないと。魚も捌いて、余裕があったら小骨も取らなきゃ」


 やることが山積みだ。鍋の様子も気にしながらやらなきゃいけないし、これはなかなかに忙しいぞ。


「でも、やりがいはあるなぁ」


 前世では気付かなかったけれど、私、料理好きだったんだな。




 どうにかこうにか、ハンバーグと魚のフライの二つは、あとは火を通すだけという状態まで持っていけた。ブイヨンも順調にいい出汁が出ている。ケチャップは思っていたものとは違うけれど、それなりに形にはなった。

 ちなみにお米だけれど、これは想像していた通り白飯として食べるには不向きなものだった。やはりリゾットなどの味の付いたものにした方がいいだろう。そう考えると、今回のオムライスという選択はなかなか良かった。


「炊いてから味付けしてもいいけど、今回はもう全部混ぜて炊いてしまおう」


 適度な大きさに切ったチッケ肉とみじん切りにしたオリヨンを軽く炒めてから、研いで鍋に入れたお米と混ぜる。そこになんちゃってケチャップを入れて、味を調えるために塩胡椒を振る。最後に煮出し途中のブイヨンをちょうどよい分量注ぎ入れれば準備完了だ。


「あとはコンロで火に掛ける! 上手くできるといいな、炊き込みチキンライス」


 面倒くさいと言って炊飯器でまとめて作っていた前世の経験が役に立った。他にもお塩だけ入れて時短塩むすびとかもやってたっけ。

 若干ズボラだった過去を思い出し、一瞬だけ気分が落ち込んでしまったのは内緒だ。

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