表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鏡写しの幻想世界(ファンタジーワールド)  作者: 蒼榛(あおはる)
雪の里編
6/35

異界の食べ物

どうも蒼榛あおはるです!

すみません、予定より少し遅くなってしまいました。

まあ、それはそうと今回もぜひ読んでいってください!


「で、今日もまたなんでここに君たちがいるのかな」

「いいじゃんいいじゃん、どうせ暇でしょ?」

「いやいや、こう見えて結構忙しいんだから」

「あ、あの、お邪魔してすみません……」


さて、ここはどこでしょう?察しのいい皆ならもうわかってるはず。


「そういえばサリー、その右手に持ってるものは何?」


 私たちよりも後に別の扉からここ氷柱回廊アイシクルゲートに入ってきたサリーは、右手に白い小さな袋を持っていた。その袋は、私が今まで見たことのない素材で作られており、見るからに布ではなさそうだ。


「あ、これかい?これはね、おにぎりってもんだよ」


 袋から取り出したものは、透明なものに包まれた緑色をした三角の物体だった。


「あれはなんだい?妹よ」

「食べ物ですよ、姉さま。じゃなかったお姉ちゃん」


 何だか一瞬堅苦しい言い方で呼ばれた気がしたのはひとまず置いていて、どうやらあれは食べ物らしい。


「君たちいつから姉妹呼びになったんだい?っておっと」


 油断している隙に奪ってやろうとひそひそと近づいて手を伸ばしたのだが、間一髪のところで避けられてしまう。


「これはあげないよ?私の大事な食糧だからって、あ」

 

 一つ目のターゲットが奪えなければ、二つ目のターゲットを狙うまでだ。ということで、袋の方を回収することに成功する。


「お、もう一つあるじゃん。ラッキー」


 袋の中を覗くと、そこには先ほど見せてもらったものと同じようなものが入っていた。


「ちょっと、返しなよって言っても聞かなそうだな」


 サリーは、もうあきらめムードである。まあ、実際返すつもりはない。


「ねえ美玲、これってどうやって食べるの?」


 おむすびとやらを美玲に見せると、彼女はそれを手に取り何かをつぶやきながら手を動かし始めた。


「えーと、確かこの番号が書いてある順にこのビニールを……」

 

 よくわからないが、とりあえず待ってみる。このぎこちなさを見ると彼女もあまりこの食べ物について知らなさそうだ。


「もしかして、美玲もこれ食べたことないの?」

「いや、一回だけ食べたことある。一回だけだけど」


 何か事情があるような言い方だが、今はそのことはどうでもいい。


「うん、これで食べれると思う」

「そう、じゃあ私に一口。あーん」


 透明な袋を何とか取り除くことが出来たことを確認して、私は口を開ける。すると、一瞬体を後ろに引いて躊躇するのが見えたが、直ぐに私の口までそのおにぎりとやらを運んでくれた。


「あむっ」


 そして私は、それを口にする。


「え、何これうまい」


 食べたことのない味だ。外の緑色の皮みたいなものはとてもパリッとしていて噛んだ時の食感が最高だ。それと、中身のもっちりとした甘いものは噛めば噛むほど甘みが出てくる感じだ。端的に言うと、めっちゃうまい。


「これは、美玲も一口食べたほうがいいよ!」

「いや、私はだいじょう…んむ!?」


 私は美玲の手を押して、彼女の口の中へおにぎりを放り込む。


「あ、ほんとだ、おいしい」

「だよね!美玲の世界ではこんなおいしいもの売ってるんだねー」


 美玲の手の中にまだいるそれに私はかぶりつく。彼女は少しびっくりした顔をしたけど、拒絶はない。なんなら、残りを私の口に入れてくれた。


「君たちの仲の進展の早さにはほんと驚かされるよ……」

「そう?これくらい普通でしょ。でもまあ、確かに別の世界の自分なんだから、相性が良かったのはあるかも」


 先ほどは普通と言ったが、正直言うと自分でも驚くくらい美玲とは、すぐに仲良くなれた。ほんとに昔から知り合いだったような気さえする。


「いやぁ、大抵自分そっくりな人と会うとあまりいい感情を抱かないと思うんだけどなぁ」

「ふうん。ねえ、美玲はどうだった?」


隣に座っている美玲に尋ねると、両手の人差し指を付けたり離したりしながら


「うーん……私は別にそういう感情は抱かなかったかな……むしろ憧れたというか……」


と答えた。そう言えば、前も同じような質問した記憶がある。あの時も羨ましかったとか言っていたような。


「私、そんな魅力的だった?」

「うん、少なくとも私にはそう映ったよ」

「なにそれ嬉しい。抱きついていい?」

「え、」


 美玲の反応を待たずに、私は彼女の身体を正面から包み込む。ちょっと目線を下に向けて恥ずかしそうではあったが、満更でもなさそうでもあった。


「そういえば、サリーはもう一人の自分と会ったりしたの?」


 美玲を抱擁することに飽きた頃、私はサリーにそう尋ねた。


「……会ったよ」

 

 そう答えるサリーの顔は心なしか少し険しい。


「え、どうだったどうだった?」

「そうだねぇ……変わってる人だったよ」

「え?サリーよりも!?」

「おい、その言い方だと私がとても変わり者みたいじゃないか」

「まさにその通りじゃない」

「……君は少し言葉を濁すということを覚えようか」


 言葉を濁す。はて、どういう意味なのだろうか。


「まあ私が変わり者かどうかはとりあえず置いといて、彼女は私とは全く別の世界に生きてた。いや、実際そうなんだけど。何って言えばいいのかなぁ、キラキラしてた」

「キラキラ……?」


 頭の上に疑問符が浮かび上がってきた時、


「あ、もしかして……田野理沙さん?」

 

 美玲が声をあげた。


「ああ、ほんとだ……!サリーさんの顔どこかで見たことある気はしてたけど、そういうことか……!!」


 一人で納得しているが、私にはさっぱりである。


「ちょっとちょっと美玲、どういうことか詳しく」


 私が彼女の耳元で囁くように尋ねる。すると、彼女も左手を頬に添えて少し小さめの声でしゃべり始める。


「えーとね、私の世界側の彼女はね、アイドル……って言ってもわからないか。えーと……つまり、かなり有名な人だったの」

「へぇ~、それはいい意味でってこと?」

「うん、だけど彼女は突然姿を消したの」

「……え?」

「もちろん世間は大騒ぎ。連日、ニュースで取り上げられた。人気絶頂の中突然の失踪ってね」


 そこで、美玲は小声で喋るのを辞めて、サリーの方を向いた。


「……もしかして、これサリーさん関わっていたりするんですか?」

「これって、いったい何の話?」


 すっとぼけているが絶対聞こえてたと思う。そんな声小さくなかったし。


「田野理沙さんの失踪事件のことです」


 美玲がこうはっきりと物事を言うのは私が見てきた限りでは初めてである。出会ってまだ一日ちょっと。まだまだ彼女の知らない面がありそうだ。


「まあ、関わっているといえば関わっているね」

「え、じゃあ今どこに……?もしかしてもう……」

「こっちにいるよ。詳しい場所まではわからないけど」

「こっちって、つまり幻想世界ファンタジーワールドってことですか?」

「そういうこと」


 どうやらその田野理沙という有名人?は、今私の住む世界にいるらしい。


「いやー、君たちを見ていると久しぶりに会いたくなってきたな。ちょっとここに連れてきてくれない?」

「何を無茶なことを……」


 思わず呆れたようにそう呟いてしまう。


「……わかりました」


 しかし、そこでまさかの反応を見せたのが美玲である。


「ちょっと、美玲!?」

「お姉ちゃん、まだ話には続きがあるから」


 彼女の目線はまだサリーの方を向いていた。私は、一旦押し黙ることにする。あと、お姉ちゃん呼びはうれしい。


「で、サリーさん。私たちにその要求をするということは、ある程度彼女の場所はわかっているんじゃないですか?」

「ああ、なんとなくだけど彼女は人が多くいるところに行けばいると私は思ってるよ。確証はないけど」

「なるほど……。じゃあ、この世界で一番人が多く住んでいるところは?」

「もちろん、帝都だね」

「帝都……」


 美玲が顎に手を当てて考え始める。帝都、それは私の世界の中心部と言っても過言ではない。最も多くの人たちが住んでおり、そこに行けば何でも手に入ると聞く。ちなみに私も言ったことないので詳しくは知らない。


「ねぇレイミー、この後近い将来に帝都に行く用事とかあったりする?」

「ふむ……」


 今度は、私が考える番だ。

(帝都に行く用事ね……)

 正直、ないわけではない。前回、義兄弟達が帝都に行ったのは約一か月ほど前だ。その時、食糧などを大量に買ってきたわけだが、もうそろそろ無くなってきたことに加え、美玲が一緒に暮らすこととなるので、食糧の減りが激しくなると予測出来る。つまり、帝都には近々行かねばならない。だが、私たちが同行する必要がないのも事実。


「私たちが行く用事はないよ」


 私は、それだけを伝える。帝都に行くのは危険を伴う。だから、極力ここは行かない方向で話を進めたかった。


「その言い方……」


 美玲がこちらの顔を窺う。私も彼女を見つめ返す。それだけで私たちには充分だった。


「私、帝都行ってみたい」


 どうやら、充分ではなかったようだ。


「……危ないよ?」

「でも、ずっとレイミーの家にいるのも悪いし、それにレイミーも退屈でしょ?」


 ああ、そういうことか。彼女は自分のことではなく私の、いや私たち家族のことを心配しているのだ。それを言われると正直弱い。


「ああもう、わかった。行こう帝都。ただし」


 喜びそうな顔をしそうになる彼女に釘をさす。


「行くのはサリーに魔法を教わってからね♪」

読んでいただきありがとうございます。次回は、10日後くらいに更新予定です!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ