いざ、決戦!
どうも、蒼榛です。今回でまた一区切りつく感じになります。ぜひ、読んでいってください。
「ただいまーって言っても反応なんてないか」
玄関を抜けるがどうも暗くてどうなっているのか見えづらい。前を向くと、左側から光がこぼれているのが見える。とりあえずそこに向かおうとすると、何かにその進行を妨げられた。
(何だドアか)
近くで目を凝らしてみると、ちょうど目線の下くらいに突起物があるのがわかった。長さはちょうど私の両手が乗るくらいで、太さはさほどなく握りやすい大きさだ。
(これはちょっといつものと違うけど、多分こうすれば……!)
取っ手を勢いよく両手で下げると、ガチャっといってドアが開いた。
「おっとっと」
体重が思わず前の方に移動したため、危うくバランスを崩しかける。何とか片足で三歩動いたところで止まる。周りを見渡すと、キッチンとみられるところに誰か立っていた。
「あら、こんな夜遅くに帰ってくるなんて、とんだ不良少女ね」
と嫌味ったらしく言う声が聞こえる。この人が多分美玲の義母なのだろう。
「そんなこと言わずに、まずは心配するのが親としての筋ってもんじゃない?」
その言葉に、とても驚いた表情を見せたのは、多分こんな態度を取られるとは思っていなかったからだろう。
「ふーん??言うようになったじゃない。さては、今の間に本当に不良にでも会ってたりしたんじゃないかしら?」
これでも心配の言葉や一つも出て来やしないのか、このおばさんは。
「……かもしれないね」
私は、少しニヤッとしながらそう言うと、義母はキリっとした目でこちらを睨んできたかと思うと、私の方に歩いてきた。
次に瞬間、左ほほに大きな衝撃が走る。
(!?)
どうやら、左頬をビンタされたらしい。やってくれるなあこのやろう。
やり返してやろうかと思ったが、それは違うとどこかで声がした。
「いい加減にしなさい。ほら、さっさと部屋に戻りなさい」
そう言い捨てる彼女に私は問う。
「ねえ、あんたは私がいなくなった方がいいと思ってる?」
一瞬ピクっと驚くような反応を見せたが、直ぐに毅然とした態度に戻る。
「当たり前でしょ。あんたなんて本当は私、引き取りたくなかったのよ」
よし、言質取った。
「そう、ならお望み通り消えてやるわ」
「……はい?あなたにはそんなこと出来るはずないと思うけど」
少し血色が変わったのがわかる。そこで私はここぞとばかりに言葉を連ねる。
「出来んのよ、それが。そもそも私が、あんたの知る私だと思ってる時点で間違いなのよ」
「……さっきからあなたは何言ってるの」
完全に変な人を見る目でこっちを見ている。いいね、その視線を私に向けることはある意味正解だよ。
「私は、美玲とは別人。そう言ったらわかるかな?」
「はあ?あなたどう見ても……」
「で、そんな他人である私から言わせてもらうんだけどさ」
相手に喋らせる暇を与えず、私はさらに畳みかける。
「あんた、今のような態度をそのまま続けるつもり?だとしたら、ほんと美玲が可哀そうだよ?」
「美玲がって何自分のことを他人のように……」
「だから、他人なんだってば。何回言えばわかるの。でさ、提案なんだけど、私が美玲引き取るよ。あん
たもいらないって言うし、彼女もそれを望んでる」
「ふん、好きにしなさい」
そう言って、さっと後ろを向いてキッチンの方へと戻ろうとする。いやいや、こんなんで終わらせるつもりなんて毛頭ないから。
「本気でそれ言ってる?いなくなるんだよ?あんたのせいで、一人の人間がこの家から」
後ろ姿に疑問をぶつける。すると、顔だけこちらに向けて、
「……知らないわよ。そんなこと。そもそも美玲の方が生意気な態度を取るからいけないのよ」
と吐き捨てるように言った。
「本当に生意気な態度を取っていたのか、自分の心に問いかけてみたら?多分、そんな態度取ってなかったと思うけど」
「あなたに何が……いえ、なんでもないわ」
また後ろを向いてしまうが、私は続ける。
「私にさっき最初に言った言葉覚えてる?不良に会ってたんじゃないとか言ってたでしょ?裏を返せば、美玲はこんな態度を今までに取ったことはなかったってことじゃないの?ただ、怯えてて言いたいことも言えないような状況だったんじゃないの?」
「……そういう態度が生意気だって言うのよ」
「その態度を取らせてたのは、あんた自身でしょ?そんな高圧的な態度取ってたら誰だってそうなると思うけど」
そろそろ頃合いだろうか。私は、本題……つまり、私がここでこの人に望むもの。それを口にする決意を固める。
「ええ、私が悪かったところがあったのは確かよ。でもね」
体ごとこちらに振り向いたのを確認し、言葉を遮り短く強くそしてはっきりと私は言った。
「言い訳は不要。美玲に謝って。ここで。今すぐに。」
突然の謝罪要求にちょっと面食らう様子を見せる。
「あなた、美玲じゃないんでしょう?だったら、謝っても」
「いいの、あんたが彼女に謝ったという事実が大事なんだから。それと、きっとその声は彼女に届くはずよ」
そう、なんでなのかはわからないが、間違いなく私の傍に美玲はいて、この話を聞いている。そんな気がするんだ。
「なんで私が」
「いいから、さっさと謝りなさい。悪かったとは思ってるんでしょ?」
さらにまくし立てる。ここで引く理由はない。
「確かにそう言ったけど……はあ、わかったわよ。……ごめんなさい。これでいいかしら?」
大きなため息をついたのち、一言謝罪の言葉を口にして少し頭を下げた。ちなみに私はというとその間、はよ言えオーラを出しまくっていたのは言うまでもない。
「う~ん……出来ればもっとちゃんとした謝罪を要求したいところだけど、今回は許す!じゃあ、目的を果たしたんで私はこれで」
と言ってさっさと帰ろうとすると
「待ちなさい」
呼び止められてしまった。
「何?邪魔な娘さんがさっさととんずら決めようとしてるのに」
「あなたは、本当に何者なの?」
おっと、とうとうこの人も私を別人と認めたか。
「私はレイミー。別世界で生きるもう一人の美玲みたいなものさ」
「別世界ねえ……にわかには信じられないんだけど」
「信じるか信じないかはあんた次第よ。じゃあね」
立ち去る際に、美玲のことをよろしくと聞こえたのは、多分気のせいだろう。
外に出ると、車というものの後ろからゆっくりと体を起こして出てきた美玲と目が合う。彼女の目は赤く充血しているように見えた。
「ごめん、お待たせ!って大丈夫?なんか目にゴミでも入った??」
「ううん、大丈夫」
「……そう、ならさっさと帰るわよ。もうお腹が減ってしょうがないんだから。っとその前に」
私は、美玲の家に向き直り。
「二度とこんな家来るかバーカ!」
と叫んでから、あっかんべーする。
「さあさあ、美玲も」
「わ……私はいいよ」
「そう言わずに、ほらほら」
美玲を腕を引っ張って私の前に持ってくる。彼女は少しの間躊躇ってたが、暫くして意を決したらしく大きく息を吸った。
「ば……バーカ!お母さんのバーカ!!もう知らないんだからねー!!!」
お、結構大きな声出るじゃん。ってこれ注目浴びちゃうのでは??
「じゃあ、急いでこの場から立ち去ろうか」
騒ぎになる前にね。
走りながら、美玲はしきりにありがとうと私に伝えてきたのはちょっとむず痒かったが、悪くない気分だった。
……どれくらい走っただろうか。この森を抜けるまでに。
私たちは、あの後急いで森の中の門へと向かったのだが、途中で体力が尽きて歩く羽目になっていた。五、六時間前の私は無我夢中だったとしても凄かったんだなって今となっては思う。正直、この距離を走り切るとか正気の沙汰じゃない。
でもまあ今回は無事着けたのでよしとしよう。というわけで今、門への入り口にレイミーと二人で立っている。
「やっっっっと着いたああああああ!!!」
レイミーが何かに開放されたかの如く大きな声を出す。ちなみに道中でも「疲れた~」、「まだ~?」とか散々言ってきており、それをなだめるのは少しだけ手間だった。
「まだだよレイミー。家に着くまでが遠足だよ」
よく小学生の時に担任の先生に言われた言葉を口にする。
「え~何それ?」
「家に着くまで気を抜いたらいけないってこと」
「ふ~ん?まあ、いいけど」
ほんとさっき私の家で見せた態度が嘘のように子供っぽい反応である。え、なんでそんなこと知ってるかって?それはまた後ほど
「じゃあ、入ろっか」
「うん」
彼女の言葉に私は短く頷く。
「ただいまー!」
扉を開けながらそう言い放つのは、彼女の癖か何かなのだろうか。
「お、もう戻ってきたのか。思いのほか早い帰還じゃないか。どうだい、ちゃんと話せたかい?」
「おうよ、それはもう完膚なきまでに叩きのめしてやったわよ」
「いや、そんなことにはなってなかったよ!?」
自信満々に片手でガッツポーズをするレイミーに思わずツッコミを入れた。ちなみにこれが人生初のツッコミである。
「そう?まあ、目的はちゃんと果たせたからもうこっちに用はないよ」
「そうかい。実際何があったのか知らないけど、ちゃんと解決したならよかった。……美玲もなんだか前会ったときより元気そうだし」
私の顔ををのぞき込みながら、そう言った。
確かに初めて会ったときは酷い顔してただろうなあって思う。
「あ、そういえば美玲。あの時、私の近くにいたりした?」
「え?」
私はキョトンとする。彼女の近くにはいなかったからだ。
「いやー、なんかすっごい美玲の気配を感じたんだけど、あれは気のせいだったのかな?」
「ううん、多分それ気のせいではないと思うよ」
「と、いうと?」
「だって、あの時私、レイミーが見てる景色を一緒に見て、聞いてたから」
詳しく説明すると、当時レイミーに言われた通り私は、車の後ろから彼女に念を送っていたのだ。目をつぶって、両手を前に出しながら(うまくいきますように、うまくいきますように……)って。そしたら突然真っ暗だった視界がぼんやりと色がついてきて、どこかを映し出し始めた。それが私の家のキッチンで目の前に義母がいるということに気づいたのはそれから数秒経ってからのことだった。
「それは、五感共有だね」
サリーがそう答える。
「五感共有?」
「そうそう、五感って言うのは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を指すんだけど、これらを共有することが出来る能力ってこと。一人の身体の中に二人が入ってるって言った方がわかりやすいかな?」
「へぇ~……ってそれ凄いことじゃないですか!?」
ほんとサリーは、さらっととんでもないことを言う。一体どうやったらそんな思考になるのだろうか。それはそうとあの時のことを思い返す。確かに彼女が見るもの、聞くものは感じ取れた。しかし、
「あれ、触覚まではわからなかったかも」
そう、彼女は義母にビンタされていたが、その時私は痛みを感じなかったのだ。
「じゃあ、まだ完全に使いこなせてはいないってことだね」
「ふーん、……ちなみにこれって誰でも出来るものなんですか?」
「出来ないね。私も出来なかったし。君たちだけだと思う」
なるほど、これは言わゆる異世界転生でよくあるチート能力とやらでは?いや、そんなに大層な能力ではないか。むしろ冷静に考えてレイミーとの間でしか使えないのなら、使いどころあまりない気がする。
「じゃあ、私は?」
レイミーが隣に立って自分を指さしながらそう質問する。
「私は、君たちと言ったよ?つまり、そういうことさ」
「??それは使えるってことでいいのよね?」
「さあ、どうだろうね。いや~、しかしここを出る前に聞いた話でもしかしたら、とは思ったけど、まさか実際にやってくるとは思わなかったね、ほんと素晴らしいよ君たち」
すると、レイミーと二人横に並んでいるところの真ん中近くまで歩いて来て、二人同時に頭をわしわししてきた。
「わ、やめてください」
「ちょ、やめて、ぶっ飛ばすわよ」
二人同時に拒否反応を示したため、直ぐに腕を離した。
「つれないねぇ……。まあ、いいけどさ」
それを言うと、少し真面目な顔になる。
「で、結局二人はこれからどうするんだい?」
どうするか、そんなの決まっている。
私は、レイミーの方に視線を向ける。すると彼女はその視線を見て頷いた。
「もちろん、一緒に暮らすに決まってるじゃない」
それを聞いて、サリーは優しく微笑んだ。
「そう。それが二人の決断なんだね。……君たちなら……」
口ごもるように最後の方に何かつぶやいた。
「え?今なんて」
「なんでもないなんでもない。そうそう、もう時間も遅いし親兄弟が心配してると思うからさっさと帰った方がいいんじゃない?」
レイミーに視線を向けながら、慌てたように帰るよう促す。
「それもそうね。もう正直これ以上お腹が減ると動けなくなりそうだし。じゃあ、行くわ」
「うん、いってらっしゃい。おっと、服装は戻しとくよ」
そう言って杖を振ると、私たちの服装は幻想世界にいたときの服装になった。
なんか別れ際にしては、あっさりしてるなーとか思ったり、いやこれくらいが普通なのかもしれないと思い返したりしながら、私はこういう場面にあまり慣れてないということに気づく。
「何ボーっとしてんのよ、さっさと行くわよ」
「……はい!あ、今までお世話になりました。」
一応感謝の意を示すためにお辞儀をした。
私は、先に走りだしたもう一人の私を追いかける。これから先、様々な出会いや別れを繰り返しながら、成長していけると信じて。
読んでいただきありがとうございました!次回は、また来週中に更新予定です!