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鏡写しの幻想世界(ファンタジーワールド)  作者: 蒼榛(あおはる)
帝都編
24/35

アンリの家

どうも蒼榛です!久しぶりの投稿となり申し訳ございません。次回こそはもっと早く……投稿するようにします。はい。

では、ぜひ読んでいってください!

 実を言うと、()()()()()()()()()()()

 アンリの対となっていると思う安部麗奈は、巷では結構有名な富豪だったのだ。この世界と自分がいた世界で、対になっている人物が同じ裕福さであるという確証はなかったが、なんとなくそうなっているのではないかと考えがあった。


 ……でも、さすがに本とかでしか見たことないような西洋風の城を目の前で見ることになるとは思ってもみなかったな……


「家まで着いちゃいましたけど……」


 私たち二人は言葉を失って、半分口を開けている状態だ。それを見てどう声かけようか迷っているのが見て取れる。


「えーと、では私はここで……」


 そう言って、一人で(いや正確には二人だが)少し寂しそうな顔をして視界では全容を見ることが出来ない建物へと向かっていく。


 「あ……」


 遠ざかっていく背中に声をかけようとするが、上手く声が出ない。

 そんな自分が情けないと思い始めた時、自然と前に出していた右手が誰かの両手に包まれる。勢いよく振り向くとそこにはレイミーがいた。それから、しばらく見つめ合った後、私たちは同時にうなずく。その間に言葉も通信魔法もいらない。彼女のその笑顔が、私に全てを物語っている。私たちは軽くステップを踏むような足取りで左右からアンリの背中を追い越した。


「「ねえ、一緒に中に入ってもいい?」」


 見事に二つの声が重なった。私の心が何か暖かいもので満ちていく。

 振り返ったアンリの顔は笑顔だった。


「……はい!って、ちょっと待ってください……一応、大丈夫かどうか聞いてきます!」


 そう言って、駆け足で一人中へと入っていく姿を見て、さっきの行動は間違ってなかったのかなと思えた。


「っておい、待て」


 先ほどまで何も喋らずにとぼとぼととアンリの後ろを歩いていたケイオスさんが、呼び止めるが、その声が彼女に届くことはなかった。

 そして、無情にも扉は一人の少女だけ中に入れて閉まってしまう。


「あいつ……」


 如何にも恨みがましい声が聞こえてくる。しばらくの間扉を見つめていたが、どうやら諦めたようで軽くため息を付いてこちらへと振り返る。


「というわけで締め出しをくらったわけだが、私はどうすればいい?」

「えーと、後追いはしないんですか?」


見た感じ、扉に鍵はかかっていない。開けようとすれば開くはずだ。


「嫌だね。あそこから一人で入りたくない」

「はあ……」


まあ、確かに言われてみれば彼女も部外者だ。一人で入るのは気が引けるのだろう。


「じゃあ、待つしかないんじゃないですか?」

「そうだな、しかし……ただ待つだけって言うのも癪だな。てことで君、美玲だったか?何か面白い話をしてくれ」


 突如として向けられた会話の矛先。知ってる、世の中ではこれを無茶ぶりというのだ。


「突然そんなこと言われても……」

「だろうな。じゃあ、話題を決めよう。こういうのはどうだ?貴様が過ごしていた世界について話すというのは」

「うーん……まあ、それなら少しは……」


 それから、私は私が過ごしてきた世界の話をした。……極力暗い部分は避けて


「ほうほう、貴様の世界には、魔法が無い代わりに科学というものが発展していると」

「はい、それで電話……じゃなくて、通信魔法みたいなことが出来る手のひらサイズの機械とか、空を飛ぶ乗り物を作ったりしてました」

「ほうほう、それは実に興味深い。一体どういう仕組みで動いているのか気になるな……と、そろそろ扉が開きそうだな」


 そう言われて扉の方に目線を向けると、大きな扉がゴゴゴという低い音を立てながら、徐々に動き始めていた。

 

「ただいまアンリ、戻りました!お母さまに聞いたところ、入っても大丈夫ってことだったので、どうぞ入ってください!……って、ケイオスはなんでまだここにいるんですか?」


 ハイテンションで扉から出てきたアンリはどうやらケイオスさんのことを忘れていたようだ。


「お前が先走って中に入るからだろう……まあ、いい。結構面白い話聞けたからな」

「なんですか面白い話って!?」

「こいつの世界についての話だよ」


 私を右手親指で指さしながら、ケイオスさんそう答える。


「え、それ私も聞きたい!」

「いや、私を締め出したような奴なんかに話す義理なんてない。そうだよな?美玲よ」

「え、えーと……はい」


 否定しようと思ったが、ケイオスさんの視線がそれをさせてくれなかった。


「そ、そんなぁ……」


 本気で落ち込んでいる姿を見て、次二人きりになった時があればひっそりと話してあげようかなって思ったのであった。



 

「では、扉開けますね……」


 ゆっくりと重そうな二つの板が、もう一度左右へと開く。


 そして、アンリ、ケイオス、レイミー、私の順番で建物の中に入っていった。

 

「うわぁ……」

 

 中に入ってから、思わず小さな声が漏れてしまう。


 高過ぎて気が遠くなるかのように感じる天井、よく見ると彫刻で模様が彫ってあるようだ。広く長い廊下は左右に沢山あるシャンデリアで明るく照らされている。まあ、なんというか……お金がかかっているって感じが凄い。


「えーと……まずは応接間に案内しますね」


 そうやって、一番近くにあった左の扉を開ける。その中には如何にも豪華っていう感じのテーブルと椅子が部屋の中心に置いてあった。

 周りを見渡すと、部屋の右端と左端に一人ずつメイド服のようなものを着ている背の高い女性が立っている。……使用人だろうか?


「ここが、お客さんとかが来た時にまず通す場所です。で、左に立ってるのがエリ、右に立ってるのがミア。二人とも私の身の回りの世話をしてくれる人です。挨拶お願いしていい?」

「はい、お嬢様。私はエリ。そして、」

「私がミアです。よろしくお願いします」


 二人は息ぴったりに挨拶をする。お辞儀も完璧に揃っている。


「といっても……」


 少しの間、綺麗な仕草に見とれていると徐に先に挨拶をした方、つまりエリさんが口を開いた。


「まさか、あのお嬢様がこんな数日間の間に3人も人をお連れしてくるとは……」

「本当ですよね……私涙が出てきそうです……」


 使用人二人が感極まった様子である。


「ちょっと二人とも!?おおお落ち着いてください!」


 そういうアンリが一番落ち着いてない。


「だって、学校に通っているときですら一人も来なかったんですから……それを考えると天地がひっくり返ったような思いです……というか本当にひっくり返ったんでしょうか」

「大丈夫だから!ひっくり返ってないから!!というか、私のことはもういいから、二人を案内して!」


 どこか遠くを見るような目線だった二人がその言葉を聞いて目に光が宿る。


「承知しました。お嬢様」

「……切り替え早くて逆に怖いっ」


 それから、私たちは使用人の案内のもと、この城と呼べる家を見学していった。


 一つ一つの部屋には、金色の装飾が施されているドレッサーなどの家具が置いてあって、部屋には大小はあるけど必ずシャンデリアの照明が付いていて、壁も天井も所々金色に光ってたり、大理石のような光沢があるところがあって、私が住んでた家みたいに平坦でザラザラした壁はどこにも見当たらない。こうやって家を回っているだけで一種の観光気分を味わえる。それほどの魅力がこの家には詰まっていた。


「さて、これくらいかしら。後は、現在使っている部屋となりますので、お見せすることが出来ません」

「……それってつまり、今まで見た部屋は全て使ってないってことですか!?」


 私たちが見た部屋の数はざっと記憶している物でも10はあったと思う。


「はい、そうですが?」


 さも当たり前の事のような反応をする使用人のエリさん。多分、この人の中での常識が私とはかけ離れているのだろう。


「では、そろそろ戻りましょうか。お嬢様も退屈しておられると思いますので」

「……わかりました」


 言おうとしたことがあった。けど、それを言うのは今じゃない、そんな気がした。


「ただいま戻りました」

「あ、お帰り!あ、今ちょうどミアがお菓子作ってくれたところなの!」


 そう、実は案内をしてくれた使用人はエリ一人で、もう一人はそそくさと別のところに行ってしまっていた。なるほど、そういうことだったのか。


「美玲達の分もあるよ!さあ、食べて食べて!」


 正直、お腹が空いていたので助かる。ってよく考えたら昼過ぎてるのに私たち朝から何も食べてないな。

 

「……おいしい」


 隣にいるレイミーもそれを聞いてお菓子を手に取り、口に入れる。すると、表情がパァっと明るくなって手が進み始めた。ただ、先ほどからほとんど喋っていないところが気になる。いつもの美玲ならもっと大声で感想を言ってもいいはずなのに。緊張でもしているのだろうか。


 その後、クッキーとビスケットなど一通り頂いて、食後に紅茶まで頂いてしまった。


「ごちそうさまでした。本当に美味しかったです」 

「ふふっ、ありがとうございます。あなた本当にいい子ね」

「いえ、そんなことは……」


 実際、私は家を飛び出してきた身だ。いい子ではない。


「ううん、充分いい子よ。そうやって、ちゃんとお礼が言えるなんて」

 

 そう言われて考える。そういえば私、今まで義母さんにお礼を言ったことがあったっけ?……なかったかもしれない。


「ありがとうございます。……でも、こういう言葉を言えるようになったのはほんと最近のことなんです」

「そうなの?」

「はい、少し前までは、私は誰にも感謝なんて出来ない生活を過ごしていました。けど……」


 隣を見る。


「彼女が、レイミーがそんな私を連れ出してくれたんです。そのことに今はすごく感謝してます」


 レイミーと会えたから、レイミーがこの世界で一緒にいてくれるから。今の私はある。そんな彼女は、ポカンとした顔でこちらを見ていたが、意味を理解したのか一気に顔が真っ赤になる。


「や、そんな。えと、そんなこと言ったら私の方だって……一緒にいてくれて感謝してるんだから」


 こう喋る間にも表情とかコロコロ変わったり、手元が落ちつきがなかったりしていて、そういう慌てた姿のレイミーは新鮮で、可愛かった。

 それを横で微笑みを浮かべて見ているエリさんが楽しそうな声色で


「なんか、人が多いと嬉しいわね。いっそのことあなたたちもここに住んじゃう?」


 そうなんちゃってって感じで言った。……今だ。このタイミングしかない。


「それなんですが……」


 私はエリさんの目を真っ直ぐに見つめる。


「私たちをここでしばらくの間、居候させていただけないでしょうか」

読んでいただきありがとうございます。

次回は、一応一か月後くらいに投稿する予定です。

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