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鏡写しの幻想世界(ファンタジーワールド)  作者: 蒼榛(あおはる)
帝都編
23/35

アンリとケイオスの出会いについて

どうも蒼榛です!結局、投稿が遅くなってしまいました。すみません……

では、今回もぜひ読んでいってくださいませ!

「おーい、どうした美玲?おーい」


 目の前で手をブンブンと上下に振られている。返答しようと試みるが、どうにも口が動かない。

 本を読んだことない、ましてや見たことすらない人がいるなんて思ってもみなかった。やはり、ここは自分が住んでいた世界とは違うのだということを改めて思い知らされた感じだ。おかげで見ての通り、思考停止中だ。


「うーん……あ、そうだ!」


 返事のない私を見て、何か思いついたようで。さて、何を……って


「ちょ……ちょっと!!レイミー!!待って!!」


 私は、近づいてくるレイミーの顔を両手で制止する。さっきまで出る気配のなかった声が彼女が顔が目の前まで近づいているとわかった途端、これである。


「あ、やっと反応してくれた!もう、突然どうしたのよ美玲」


 その態度を見て、私は安心した。彼女は本を見たことがなかったということに負の感情のようなものを感じていないようだ。


「な……なんでもないよ!ただ……本を見たことないってことに驚いただけ」

「ふーん?それにしてはかなり動揺してるように見えたけど」


 それについてはしょうがない面もあると思う。だって、自分の中にある常識というものが覆されたのだから。けど、今それについて口に出すのはやめておく。


「ど……どうですか……??お気に入り本とか見つかりました……??」


 本を拾い直したところで、離れた場所で本を漁っていたアンリがこちらに戻ってきた。


「えーと、実は……」


 ここで素直に私たちが字を読めないということを告げる。


「ああ、そういえば美玲さんって別世界から来たって言ってましたもんね……。それとレイミーは、雪の丘で育ちだって話だし……。普通に話せているから、気づきませんでした……」


「そうなんだよね。普通に話せてるから、私も読めると思ったんだけど……」


 言葉は理解できるが、文字は理解できないというのはなかなかに奇妙な感じだ。


「なるほど、別世界では文字が読めてたんですね。だ……だったら、案外直ぐ覚えられるかもしれませんね!」


 多分、励ましのつもりでそう言っているのだろうが、実際そうなので間違いではない。少し教えてもらえれば何とかなりそうな気がする。


「じゃあ、とりあえずここにいる意味がなくなってしまったので……、早速ですが、私のお家にでも行きますか……」


 名残惜しそうな様子を見せるアンリに少し申し訳ない気持ちが芽生えて、何か声をかけようか悩んでいると、


「あ、そういえばケイオスと出会ったのもここだったんだよね?」


 っと私よりも前にレイミーが口を開く。


「はい、そうですよー。場所は確か……」


 そう言うと、そそくさと二階へと向かっていき、どんどんと奥へ奥へと進んでいく。


(本当に広いなぁここ)


 玄関付近は吹き抜けになっていたため、ある程度奥を見ることは出来ていたが、その時に見えていたものが、ほんの一部だったということが実際に二階へと登ることで明らかとなる。建物の形自体はシンプルなため、最初に軽く左に曲がったら端まで見ることが出来るのだが、それ先が軽く霞む程度には長い道となっていた。

 さて、だいぶ長い時間歩いたが、まだ着かないのだろうか。もうかなり歩いてあんなに遠く感じていた角がもう目の前だ。


 そろそろまだなのかって尋ねようと思ったところで、アンリの足が止まる。


「あ、ここだ。うん、間違いない」


 行き止まりの少し手前まで来たところで、下から二段目の本棚を指さす。そこには一つ本が抜かれたかのように本と本との間に間隔が開いているところがあった。どうやら、ここに魔導書があったようだ。


「えーと、一週間ほど前かな?ここら辺で適当に面白そうな本を探してたら、突然頭に声が響いてね……」


 頭に声が響いたということは通信魔法の類だと推測できる。それで、彼女と接触を図ったということなのだろう。


「で、その声の指示に従ってここにあった本を手に取ったんだけど……」


 アンリの目線が横へと移動する。そこにはケイオスが立っていた。


「ああ、それが私だな。しかしまあ、まさかあの後自分が本じゃない存在になるとはな」


(それはつまり……本人に人になりたいという意思はなかったということ?)


「えーと、それはどういう……?」


 私は、ケイオスさんを指さしてそう尋ねる。


「ああ、それがな……」

「コホン!その事情は後で私の方から説明しますので!」


 慌てて会話をアンリが遮る。


「ん?なんだ、聞かれたくないのか?」

「当たり前でしょ!?それにあの願いによってこんなことになるなんて思ってもいなかったんですから!!」


 ……話が見えない。つまりは、アンリが魔導書に何かを願ったことにより、魔導書が人型に変化したということなのだろうか?いや、しかし……


「すみません、願いって魔導書が叶えることが出来るものなんですか?」


 二人がまだ何か言いあっていたが、それに無理やり割り込んで質問を投げかけると、二人の目線が私へと注がれた。


「ああ、そうか。まずはそこから説明しないとな。あのな、魔導書ってのは契約する際に一つ大きな魔法を使うことが出来るんだ。言うなら一度だけ使える不可能を可能にする力ってやつ。そこで俺は『願いを一つだけ叶えることができる』ってこいつに話しかけたんだ。で、こいつはその時なんて言ったと思う?」

「うーん……」


 彼女の性格だ。多分、世界を征服したいとかそういうものではないだろう。それに、そういう願いでは魔導書が人のようになることはないように思う。つまり……


「話し相手が欲しい……とか?」

「惜しいな。正解は『友達が欲しい』だ」

「ああ、なるほど」


 友達が欲しいという願いを聞いて、自分が友達になるために人になったってことか。なんというか、回りくどいやり方な気もするがそういうことなのだろう。


「ってなんで言っちゃうんですか!」

「いいじゃねーか、そんな減るもんじゃねーし」

「減りますよ!私のメンタルが!!」

 

 そうやって、言い合いしているのを見て、確かにその選択は間違っていなかったんだなと密かに感心するのであった。


 


 ……さて、それから特に寄り道をすることなく、アンリの家へとたどり着いたわけなのですが。


「……」


 うん、なんて言えばいいんだろう。そう……デカいって言葉しか思いつかない。先ほど行った図書館も大きいと感じたが、それよりもさらに大きなとんでもない屋敷が目の前に拡がっていた。


「……え?」


 やっとのことで口から出た言葉は、その一言であった。

読んでいただきありがとうございます。

次回も一か月後くらいに投稿出来たらいいなと思ってます。

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