元魔導書から聞く魔導書の話
どうも蒼榛です!すみません、三か月近く開いちゃいました。
新キャラの設定とか魔導書についての考えが浅くて、いろいろ考えてたら遅くなってしまいました。
まだまだ更新していく予定なので、これからもよろしくお願いします!!
「魔導書っていうのは、えーと……魔法を補助する本のことで……って、これはあくまで私の世界で読んだ本の知識での話だけど……」
アンリが街の案内をしてくれるということなので、それに付いていきながら私はレイミーに魔導書とは何かを説明することにした。
しかし、いざ説明するとなると、意外と私も魔導書についての知識がないことを実感する。まあ、ちょっと本でかじった程度なのでそれもそうっていえばそうなんだけど。これは、二人と一緒にずっこけそうになってる場合じゃなかったかもしれない……
「確か魔導書には呪文が載っていて……それを唱えると強力な魔法が撃てるって感じだったかな……」
うろ覚えの知識をふり絞りながら話すが、やはり言葉が上手く続かない。次に話すことを必死に考えるが、どうも思いつかず黙り込んでしまう。
「ふーん……ねえ、元魔導書のケイオスさん。そこらへんどうなの?」
レイミーがそんな私への配慮か、少し前の方を歩いている元魔導書だと自称するケイオスと名乗る白髪の少女に声をかける。
「なんだ?あまり真面目に聞いてなかったので、答えようがないのだが」
顔だけをこちらに向けて、素っ気ない口調で歩きながら返答するケイオスさん。しかしこの男っぽく強きな口調、何というか……違和感がすごい。
「うーんと……簡単に説明すると魔導書って呪文が書いてある本ってことでいいかってこと」
「その認識は間違いない。ただ……」
「ただ?」
「呪文が書いてあるってだけじゃ魔導書とは言えない」
それはつまり、呪文以外にも何か書いてあるのだろうか。とか考えていると、私の方をケイオスさんは指さした。
「そこ、今呪文以外に何が書いてあるんだろうって顔してるな。残念ながらその考え方は間違っているぞ」
心が読まれてしまった。というか、自分ってもしかしてとてもわかりやすい……?
「えーっと……つまり?」
「書いてあることはあくまで呪文だ。しかし、それが重要なんだ。言わば呪文は引き金の役目を持つ」
「引き金?それって何の……?」
それを聞いてとても嬉しそうにニヤリと笑って立ち止まり、体ごとこちらを向いた。
「もちろん魔法のだよ。それも普通では撃てないような強力な魔法さ」
「はあ……」
話を整理すると、つまり呪文を唱えることで強力な魔法を撃つことが可能になるのが魔導書というものなのだろう。……だとすると、
「それって、一回呪文を覚えたらもう魔導書必要ないとかありますか?」
薄っすらと笑みを浮かべ、自信ありげな顔をしていたケイオスさんが私の質問を聞くや否や真顔になり、その後軽くため息をついた。
「いいや、ないね。魔導書に書いてある呪文はあくまで魔導書を通すことで意味を成すものだ。言わば魔導書は触媒。つまり精霊の働きを強くする力を秘めている」
「……つまり、周りの精霊を活性化させることでその呪文が撃てるようになるってこと?」
「逆だ。その呪文を言うことで精霊が活性化する。先ほども言ったが呪文があくまでトリガーだ」
「……わかりました。ちなみに」
「ちょ、ちょっと待って!」
突如、横で静かに話を聞いていたレイミーが話に割って入った。
「私を置いて勝手に話進めないでよ」
横を見ると、不機嫌そうに頬を膨らましているレイミーがいた。そうか、元はと言えば彼女に魔導書について教えるつもりだったんだった。気が付いたら、自分が魔導書を学ぶ感じになってしまっていた。
「いいだろう、別に。貴様も隣で聞いてたじゃないか」
ケイオスさんは、なぜレイミーが不満そうにしているのかわからないようで。と言ってる私もそこまで不機嫌になる理由があまり見当たらない。
「いや、そうだけど……。でもなんか……モヤモヤする!」
モヤモヤ……??抽象的な表現でわかりずらいが、つまり自分からもっと話したいということだろうか……??
「ああ、なるほど。そういうことなら、私はこの会話から退散するよ」
何かを察したようで、一人先々と歩いているアンリの方へと駆けていってしまった。
「えーと、とりあえず私たちも置いてかれないようについていこうか」
「うん!」
心の底から嬉しそうな声で返事をする彼女は、いつもより幼く見えた。
「そうだ、美玲の世界にいたアンリってどんな人だったの?」
二人の後ろ姿が近くに見えるところまで軽く駆け足した後に、レイミーがそう口を開いた。
「ああ、安部さんのことか。彼女は……ほんとに活発で性格も良くて……。本当にいい人だった」
彼女……安部麗奈には、いつも誰かが近くにいた。彼女の周りには自然と人が集まっていく。まさにそんな感じで、人当たりも良く、優しくて、顔もいい。私からしてみれば、天と地くらい差があると思うくらい住んでいる世界が違う人だった。
「へぇー、ちょっと会ってみたいかも」
「確かに、レイミーとは気が合うかもしれないね」
「それはどうかなー?実際に会ってみたら、直ぐ喧嘩しちゃうかもよ?」
「えー?二人が喧嘩するなんて私には考えられないよ」
そんな感じで適当な雑談を繰り返していたら、前の二人の足が止まった。
顔を上げると、そこにはとっても大きなレンガ造りの建物が視界に広がっていた。その大きさは、今いるところからでは全容が見えないくらいの大きさだった。
「はい、到着です!」
アンリがとても満面の笑みでこちらに振り向く。それほど、楽しいところなのだろう。
「ここが私の行きつけの図書館……です!」
読んでいただきありがとうございます。次回は、また2,3週間後に投稿予定です。