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鏡写しの幻想世界(ファンタジーワールド)  作者: 蒼榛(あおはる)
帝都編
20/35

もう二人?の主人公

どうも蒼榛です!

予定より早いですが、早いに越したことはないので更新します!

今回登場する新キャラは、元々別作品で出す予定だったキャラです。

その作品は没となったのですが、こうやって出すことが出来て嬉しいです!

ぜひ、読んでいってください!

「さて、これからどうする?」


 レイミーがベンチに腰かけて足を振りながら、そう私に尋ねる。


「……とりあえず、頼りになりそうな人を探そうか」


 お金を稼ぐ以前の問題で、初めて来るところに私たち二人ではさすがに心もとない。それにレイミーは必死に隠してるが不安な気持ちが隠しきれていない。それが私にとって、行動せざるを得ないという気持ちにさせてくれる原動力ともなっている。


 レイミーが座る右隣に座って、街を歩く人たちをボーっと眺める。老若男女様々な人たちが街を前後左右に動き回っている。その人の量は、よくテレビで見かけてた交差点とかと比べると少ないけど、私が住む街よりは断然多い。みんな楽しそうに会話してて、この帝都という場所が居心地のいいところだと物語っているようだ。街並みはきちんとしていて、屋台もかなり活気がある感じでほんとに街が元気だって印象を持てる。空気もどこか高揚感に満ちているように感じた。


「……あ」


 小一時間くらい体感的に人の流れを眺めていた。その時、ふと目に留まる人影があった。


(あれは……安部麗奈……??)


 安部麗奈、それは私が現実世界で行っていた学校で、クラスの中心を担っていた人物だ。身長は私と同じくらいで、特徴としては、小さく丸みを帯びた顔立ちと艶やかな黒髪を後ろで少しだけリボンでまとめている髪形といったところか。誰とも仲良く話せるその気さくさは自然と彼女のもとに人が集まっていくほどだった。人当たりも良く、そのくせ嫌味もない。私からすれば本当に羨ましい限りだった。


 しかし、目の前にいるこの人物は別人物で間違いないだろう。正確に言えばこちらの世界の安部麗奈だと思われる。なので、ここでは一旦、別麗奈って呼んでおこう。今までの経験からするとこの世界での現実世界で見かけたことのある住民は、性格が反対である可能性が高い。ということは、つまりだ。


(別麗奈は、超絶コミュ障、すまわち同類であるに違いない……!)


「どうしたの、さっきから一点を見つめて」


 私の視線が止まったことを気にしてか、レイミーに声をかけられる。よし、これはチャンスかもしれない。


「えーと、あそこに見れる二人組いるでしょ」


 ……って、あれ?彼女には姉妹はいなかったはずなのだが。まあ、細かいことは気にしないでおこう。


「うん、いるね。あの二人がどうしたの?」

「あっち側の人、実は前の世界で認識があって」


 正確に言えば、容姿がそっくりなだけで同一人物ではないんだけど。ていうか、よく見たら隣にいる人も髪色が違うだけで容姿そっくりだな。 


「ほうほう、それで?」

「……多分、彼女のあっちの世界での性格を考えると……」


 ちょっと彼女には、失礼かもしれないが言わせてもらう。


「押せばいけると思う!」

「オッケー!話かけに行ってみよう!」


 それを掛け声として、私たちは一目散に二人で彼女のもとへと近寄っていった。

 

「こんにちは!」


 レイミーは、いつも通り何の抵抗もなさそうに彼女に声をかける。


「ひぃ!何か御用でしょうか!?」


 おっと、これは思ってた以上に深刻そうに見える。だが、そんなことレイミーの前では関係ない。


「えーとね、私たち今日初めて帝都に来たんだけど、ぜんっぜんどこに何があるのかわからなくて、ちょっと道案内して貰えないかな?」

「え、わ……私にですか!?」

「うん、あなたにお願いしてるの。……ダメ?」


 手を軽く前で重ねて、上目遣いで懇願する。レイミーのこういう時のあざといとまで言える態度は一体どこで学んだのだろうか。


「えーっと……その……」


 おー、目が泳いでる泳いでる。レイミーの交渉が上手いのもあるかもしれないが、やはりもう少し押せば行けそうだ。ここで、私は軽く通信魔法でアドバイスを送る。


『自己紹介とかした方がいいのでは?』

『……そうかもね。じゃあ美玲、隣まで来て』

 

 少し後方に立っていた私は、レイミーの指示通り隣へと移動する。その瞬間、別麗奈の隣にいた髪色だけ反転した感じのそっくりさんが眉をピクッと動かしたのが横目で見えた。


「そういえば、自己紹介がまだだったわね。私は、レイミー=ミラー。で、こっちが」


 そんなことを気にする時間もなく、レイミーから挨拶をするようにアイコンタクトが送られる。私はそれに頷いてから口を開く。


「鏡野美玲って言います。よろしくお願いします。」


 ゆっくりと丁寧にお辞儀をする。いつもなら、もっと落ち着きのない感じになるけど、彼女のおどおどした様子を見てると妙に冷静になれた。


「あ、え、えと、わ、私は!アンリ!アンリ=ベアって言います!よ、よろしくお願いします!」


 そのアンリと名乗る彼女は、ほんとに焦った様子で時々声を裏返しながらも自己紹介をした。それに、私は思わずクスっと笑ってしまう。


「おいおい、笑われてるぞ。アンリ=ベア。っと、この流れだと私も自己紹介した方がよさそうだな」


 そう言って会話に入ってきたその子は、先ほども言ったように容姿はアンリこと別麗奈と髪色を反転、つまり黒髪が白髪になっているだけで他はそっくりだが、口調に関してはとても堅苦しく紳士的な喋り方をしており、どこか違和感を感じざるを得なかった。それに、現実世界では安部麗奈には姉妹はいないので、彼女の存在は本当に異質だ。まあ、それの正体は次の自己紹介で明らかになったわけだけど。


「私はケイオス。()()()()である」

「うん、よろし……」


 ……ん?今、何か聞き捨てならない言葉が聞こえたような……?


「元魔導書!??」

「ああ、ついこの間まで魔導書をやっていたものだ。こいつの願いを叶えるために魔導書を辞めてやった」

「願い……??魔導書を辞める……??」


 思いがけない言葉の連続に頭が混乱する。願いを叶える魔導書というのはまだわかる。しかし、願いを叶えるために人に化ける魔導書など、今までに聞いたことがない。


「そ……それは、この世界ではよくあることなのですか……??」


 思わず、そう質問してしまう。今思えばこれは完全に失言だった。


「ほう。その言い方だと、まるで貴様が別の世界から来た人間だと言っているようではないか。さて、質問の答えだが、それはノーだ。魔導書が人間の姿に変わることなど私以外で聞いたことがない」


 よかった。そんなことが日常的に行われている世界だったら、何を信じればいいかわからなくなってしまう。などと、安堵感を感じていたのも束の間、


「では、こちらからも質問させてもらう。貴様らは一体どこから来た?」


 それを聞いて思わず背筋が伸びてしまう。私は、レイミーの方に視線を向ける。


『正直に話す?どうする?』

『とりあえず、レイミーの出身地から話そう。その反応次第』


 ここで、話さずに済むのならいいのだが、どうもそうならない気がしてならない。


「私は、ここから歩いて三日程かかる所にある雪の里出身だよ」

「ふむ、ではそちらは?」


 ここで少し悩んでしまう。悩んだ時点でこれはもう負けだった。


「ゆ……雪の里出身です」

「嘘だな。本当の出身地はどこだ?」

「……日本って場所です。ここじゃない別の世界にある」


 誤魔化しきれないと察して、素直に答えてしまう。


「ははは!面白い!気に入ったぞ!帝都でも滅多に使われない通信魔法の類の使い手というだけでなく、別世界の住民と来たか!なあ、アンリよ。この二人の要望に答えてやらないか?私としてもこの二人に興味がある」


 見た目からは信じられない口調で、まくし立てるように喋る所を見ると、本当にその姿は仮の姿であり、本来は魔導書だったのだろうと思わせられる。しかし、魔導書はそもそも喋らないのでは?というか、通信魔法ってそんなに珍しい魔法だったの!?


「えー!本気で言ってるんですか!?相手は、見ず知らずの怪しい二人組ですよ!?」

「それ、貴様が言えた義理か。似た者同士仲良くやっていけると私は思うが」

「た……確かに言われてみれば……。わかりました。で、では!案内させていただきます!お二人とも私に付いてきてください!」


 ここでわかったことが一つ。アンリという人物は直ぐに相手の意見に乗せられるということだ。


「え?案内してくれるの?そっかー。ありがとう!」


 レイミーですら、その切り替えの早さに返事がワンテンポ遅れるほどの急展開だ。まあ、過程はどうあれアンリ達?が私たちのことを案内してくれることになりそうだ。これでほっと一安心と言ったところか。そうして、新たに四人となった私たちは一歩踏みだ……


「で、魔導書って何?」


 レイミーのその言葉に、私たち三人は思わずに前にずっこけそうになったのであった。

 

読んでいただきありがとうございます!

次回も二週間後に投稿予定です!

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