レイミーの選択
どうも、蒼榛です!
今回から、帝都編となります!
主にレイミーの内面を描けていけたらなぁって思ってます。
ぜひ、読んでいってください!
私とレイミーが何の繋がりもない赤の他人ではないと感じることがある。それは、特に寝起きの時だ。私が目を覚ますときには、必ずその直近または直後に目を覚ます。多少の誤差が出るときもあったが、だいたい一緒に目を覚ます。まあ、一緒に暮らしてるからそうなっているって可能性も否定できないけど。
で、なんでそんなことをいきなり言い出したのかというと、さっき意識が覚醒した時からレイミーが私の横でそわそわ動いている音がするからだ。多分ほんの少し前に起きたと思われる彼女は、私が薄っすら目を開けた時には、私の顔の下部分をじーっと見つめていた。それで思わず目を開けるのを躊躇ってしまったのは、どうしようもない私のミスだ。おかげでずっと起きれずにいる。
っと、ここでさっきまでの物音が突然消える。何が起こったのか気になって、また薄目を開けると、
「ひゃあ!?」
直ぐ近くに、ほんともう触れてしまうんじゃないかってくらい彼女の顔が目の前に合った。それに驚いて思わず悲鳴をあげて後ろに飛んでしまった。
「うおっ、びっくりしたー。やっぱ起きてんじゃん。おはよう美玲」
普通にいつも通りのレイミーだ。
「って、今キスしようとしてなかった!?」
「え?いや、してないよ。ただ、起きてるのかなって顔覗いてただけ」
「あ、そう。そうなんだ。へ、へぇ……」
その反応を見るからに、言っていることは本当のようだ。彼女ならこういう言い方の場合、嘘ではないとなんとなくわかる。
「なに?キスして欲しかったの?」
ちょっといたずらごころを覗かせるようにニヤニヤして、そう聞いてくる。
私は直ぐに否定の言葉を言おうとした。しかし、返答しようと開いた口からは直ぐに言葉は出てこなかった。
「そ……そんなこと……ない……よ……?」
少し時間を置いてから否定の言葉を口にしてみるが、これではもう「して欲しい」と言っているようなものである。
ここで私は、心の奥底では彼女とのキスを望んでいるのではないかと思い始める。実際、あの時の感触をもう一度味わいたいという気持ちは私の中にもないかと心に問うてみれば、ないと強く否定することは出来なかった。はて、彼女への感情は本当に敬意なのか。なんか怪しくなってきたな……。
「もう、そうならそう言ってよー。てっきりしたいのは私だけかと」
やはり、レイミーは私がして欲しいと思っていると解釈したようだ。後半の方で少し声が小さかったのは照れもあるのだろうかとか考えている間に、軽く彼女の唇が私の唇に触れた。
「うん、やっぱり柔らかい。じゃあ、起きて支度しよっか」
……なんか思ってたよりあっさりしたキスにちょっとだけ物足りなさを感じてしまう自分がいた。……いや、ほんとにちょっとだけね?
その後支度している時に、なぜか服を逆に着てしまうレイミーにはクスっと笑ってしまうのであった。
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「帝都に残りたい……だとぉ!?」
食糧など必要な物品を大体買い終わった後、レイミーが突然言い出したことに思わずグルースが啞然とする。
「ええ、私ちょっとここで済ませたい用事があってね。それが終わったら直ぐ帰るから」
「……それってどれくらいかかるんだ?」
「わからない。もしかしたら、一生かかるかも」
「おいおい……」
グルースは、今にもため息を付きそうな顔でおでこに手を置き、下を向いてしまう。まあ、それもそのはずだ。彼女はまだ、私と同じ年齢だとすると13歳なのだから。
「お金とかはどうするんだ?」
「え、お金って?」
「さっき、物を買った時に使ったこれだよ」
そう言って、腰に付けている茶色い小銭袋から小さな金色のメダルを取り出す。この世界では、これをマニーと言って物を買ったりする時に使っているみたいだ。
「ああ、それね。で、それがどうしたのよ」
「これがないと帝都にいても野垂死にするだけだぞ」
……確かに言われてみればそうかもしれない。この帝都という町は、今まで見た限りかなり商業が発展している街だ。先ほど物品を購入する際もそうだが、宿泊するのにも遠目ではあったがマニーを出しているように見えた。つまり、お金がないと野宿しなければならず、食糧も手に入らない。これでは完全に詰みだ。
「そうなんだ、で、これってどうやったら手に入るの」
「さあな。俺らが貰ったこの金だって、元はと言えば、ばあさんから貰ったもんだ。俺たちで手に入れたものじゃない」
「ふーん……。ねえ、美玲はなんか知ってる?」
「……え?私?」
まさか、自分に振られるとは思ってなかったので、反応がワンテンポ遅れてしまった。
「うん、前いた世界での知識でもいいから、何かない?」
前いた世界……。そういえば、あっちでも私はお金が無くて苦労してたな。……これ以上追想するのは精神的に良くないな、うん。お金のことだけ考えよう。
「お金を稼ぐ方法……。私たちの年齢だったら、誰かの家事のお手伝いとか、客引きを手伝ったりするくらいかな……?」
「へぇ、それでお金貰えるんだ!」
「多分……、実際にもらったことはないし、そもそもこの世界でもそうなのかは私にはわからないけど……」
「確かに。そこらへんどうなの?ルドー」
今までグルースの後ろの方で黙って聞いていたルドーにレイミーは話を振る。もしかしたら、いい方法を考えていたかもしれないとでも思ったのだろう。
「確か、実際に俺たちが住んでいた里でも、手伝いをして稼いでた人はいたはずだ。……そうだな、他人の手伝いをするというのはなかなかいい手段かもしれない。お金が貰えなくとも、最悪居候という形を取らせて貰える可能性がある」
「つまり、宿は確保できるってことね。じゃあ、とりあえずその方針で頑張ってみようかな。どう、美玲?」
話が私が残る前提で進んでいる気がする。別にそのつもりだからいいけど。
「悪くはないと思うけど……。どういう人がいいか見極めれるかな……??」
「それはまあ、実際にやってみてから考えよう!」
彼女のいいところはこういう後先考えずに実行に移せる行動力にあると思う。ちょっと物事を楽観的に見すぎているところはあるかもしれないけど、そこは私がフォローしていけばいいだけの話である。それが出来るかどうかは、また別の問題だが。
さて、先ほどから会話に入ってきていないグルースはというと、ずっと「うーん……」と唸りながら腕を組んでいた。
その肩にルドーが手をそって置くと、唸り声が止まった。
「もういいだろう。あいつは言い出したら引き下がらないから諦めろ」
「ルドー……いやでも……そうだな」
一瞬だけ、顔をあげて反論しようとしたが、どうやら諦めたようだ。そして、ルドーから視線をレイミーに切り替えて、相手の目をしっかり見ながら話しかける。
「レイミー、お前は美玲と一緒に帝都に残る。そして、俺たちは今日里へと帰る。ここに残るのはお前たち二人だけになるが、本当にそれでいいんだな?」
多分、これが最終忠告だ。ここで了承をすれば、私たちはもうしばらくの間は里の方には帰ることは出来ないだろう。
レイミーのことだから、「もちろん!」とか言って直ぐに返事をする…と思いきや、静寂な時間が続く短い時が流れた。それは私に妙に違和感を感じさせる間だった。
「うん!それでいいよ!大丈夫!私たちは二人でいれば最強なんだから!!」
数秒ほど経ってから出たその返事は、いつもより大きくどこか自分を鼓舞しているかのような声だった。
その言葉を聞き遂げたグルースがゆっくりと近づいてきて、私に耳打ちをする。
「美玲には、これを渡しておく。これっぽっちだけしかないが、有効活用してくれ」
そうして私の手の中に10枚程の硬貨を優しく包み込むように置いた。
「え、あ、ありがとうございます」
驚いてグルースの顔を見上げると、とても優しい笑顔でこちらを見ていた。私は、思わず一歩下がって深々とお辞儀をしてしまう。
お辞儀をし終えると、私はそそくさとレイミーの隣へと移動する。すると、彼女はすぐさま私の左腕に抱きついてきた。
「じゃあ、俺らはほんとに帰るからな?寂しくなって泣きじゃくるんじゃねぇぞ?」
「大丈夫よ、美玲がいるんだから。じゃあ、また!いつになるかわかんないけど!」
私の腕にしがみつきながら、そう答えるレイミーは少しだけ震えているようだった。
読んでいただきありがとうございます!
次回は、また二週間後くらいに更新出来たらなって思ってます。
では、また会う日まで