偶然にして必然の出会い
どうも、お久しぶりです!蒼榛です!
今回は以前挙げた過去編の「新しい世界が出来るまで」の続きとなります!
ですので、割り込みという形で投稿させていただいております。
では、ぜひ読んでいってください!
意気揚々と自分が創造した世界へと旅立った戸羽菜々は、なんと!……死にかけていた。
「食べ物……食べ物をくれ……」
それもそのはず。突然知らない(いや、知ってはいるけど)世界の草原の中に一人放り込まれたらそりゃー、困るに決まっている。もちろん、私が考えた世界なんだから何があるかは知ってる。けど、ここがどこなのかまでは残念ながらわからん。いやだって、辺り一面クソ緑なんだよ!?草原があるとは書いたけど、こんなに壮大なんて聞いてないんだけど!?
というわけで、三日三晩ひたすら歩いているだけってことになる。何か目印のようなものを探したが特になく、一人大草原を駆け回っている。私は馬かなにかか!人として生かさせてくれ!
と、いいつつ今歩いているのは草原じゃなくて岩場なんだけど。
長かった草原をやっとのこさ越えた先にあったのは禿山で、見るに誰かが通れるように山を切り崩して道を作っているようなところだった。つまり、ここで待ってれば人が来る可能性が高い。というわけで、最近はここら辺を散策してるんだけどなかなか誰もやってこない。
「そろそろ移動しようかな……って、おや?」
遠くから物音が聞こえた気がする。私は岩陰にひっそりと隠れて耳をすませる。
「人の足音?いや違うな……この高い足音は、馬か!」
どうやら、本物の馬がお出ましのようだ。さーて、どうしようか。
って考えていると、栄養不足のため一瞬意識が飛んでしまう。
「しまっ……」
思いっきり、道筋にどてんと転ぶ。ああ、やってしまった。
「誰だ、貴様!?」
おっと、護衛までいるのかよ。どんだけ高貴な人が乗ってんのこれ。
見上げると、馬の後ろに立派な建造物が付いていた。ああ、よく文献とかに載ってる馬車ってやつだな。私の想像通りだ。
って、それどころじゃないな。さて、この場面をどうやって乗り切るか……て、なんかすごいジロジロ見られてる……??
「貴様、なぜ殿下と同じ顔をしている……??」
……どうやら、私はとんでもなく幸運に恵まれているようだ。さっすが私の世界!
「ちょっと!なんで止まってるの!?説明しなさい!……って」
馬車から降りてきたいかにも高貴なお嬢様は、やはり私と同じ顔をしていた。
ちなみに彼女は、この世界の次期王女に当たる人で私の対をなす存在である。あ、そうだ。その前にこの世界の住民について説明しないとね。
まず、この世界の住民は私の生きていた世界の住民を元にしているの。ただ、まったく同じだとつまんないから、性格は正反対にしてある。人の数については特に書かなかったけど、この世界の規模的に私のいる地方の住人プラスαくらいなんじゃないかな。
あと、この世界の中心には帝都っていうものがあって、そこは王族によって統治されてて、その次期王女は私!ってことにしたかったけど、それはさすがに無理があると思ったので……こちら世界の私ってことにしたのよね。妥協案だったけどこれはしょうがない。
そしたら、まさかの当人登場!っていうね。いやー、ほんと私はツイてるね!
「私と瓜二つなんて……生かしておけないわね」
前言撤回、大ピンチだこれ。
「ちょ……ちょっと待って!私が死んだらあんたも死ぬよ!?」
ちなみにこれはとっさに出た嘘とかではなく、事実なのでご了承いただきたい。
「何?それはどういう意味よ?」
「そのまんまの意味だって。私の命イコールあんたの命ってこと」
「愚民風情が戯言を。どうせ、殺されたくないからそんなこと言ってるんでしょ?」
心底あきれたような表情を私に見せてくる。うーん、私ってこんな顔出来るんだな。自分なら絶対しない。
「だったら、試してみる?言っとくけど、本当に後悔するよ?」
私は、その表情に怖気づかずに強気な言葉を並べる。多分、彼女は私と違って押しには弱いはずだ。
「……興ざめしたわ。命は取らないであげるから、さっさとここから去りなさい」
ほらね?と言いたいところだが、このまま立ち去られるのは少々困るのでもう少し粘らせていただく。
「うーん……残念ながら、そうもいかないんだよね」
「……どういうことですの」
「だって、今私、餓死寸前ですもん。この状態で放置されたら、私どっちみち死んじゃうよ?」
「確かにあなた、やせ細ってますわね。ですが、それでも私にはあなたを助ける義理はありません」
「ほんとにそうかな?このまま私を餓死させたら君の人生もジ・エンドだぜ」
「ジ・エンドって……。なんですのその言い方」
「え、かっこよくない?」
「全くですわ!ったく、あなたと話してると調子狂いますわね……」
おでこに手を当てて首を何回か振る。私はその間ずっと心配そうな目線を送り続ける。さらにチラッとこちらを見てきた際には懇願するような目で圧を送ったりすると、呆れたように彼女がため息をついた。
「わかりましたわ。馬車に乗ることを許可します。ただし……」
「わーい!ありがとね、お嬢様!!」
両手を広げて大きくジャンプした後に、抱きつこうかなとか思ったけどさすがにマズいと思ったので、下から顔を覗き込んで満面の笑みを浮かべた。
「最後まで話をお聞きなさい!ほんと子供じゃないですから。いいですか?馬車の中では決しておかしな行動を取らないこと。もし、少しでも怪しい行動を取るようなら、お付けのものに頼んでその場で直ぐに降ろしますからね」
「はいはい。わかりましたっと」
そうして、無事帝都までの移動手段を手に入れることに成功した。これでとりあえず何とか生き延びていく目途が経ちそうだ。
それにしても、私を護衛の人の近くではなく自分の向かい側に座らせるのは、高貴ゆえの礼儀正しさなのだろうか。
「それで、あなたはいったい何者ですの?」
私を真正面に座らせ、馬車が動き始めたと同時に彼女は口を開く。
「それに答える前に、君の名前を教えてくれないかな?えーと、あれだ。人のことを聞く前に自分のことを名乗るのは礼儀でしょ?」
今の発言で、護衛の人たちの視線が私に向けられる。痛い痛い。目線が痛い。
「……それもそうでしたわね。私は、現王ケビン・ウィードの一人娘、ナナ・ウィードと申しますわ」
うむ、やはりその立ち位置でしたか。
「私は、戸羽奈々。えーと、簡単に言えばこの世界の創造主だよ。よろしくね」
何のためらいもなく流れるように私はそう言うと、ナナという私と同じ名前を持った次期王女様は、またかと呆れた顔をした。
「あなたという人は……どうしてそう冗談を息を吸うようにいうのかしら」
「私はさっきから一つも冗談は言ってないんだけどなぁ」
私自身、まだ信じてもらえるとは思っていない。だけど、言うことに意味がある。
「でしたら、なんでその創造主があんなところで野垂れ死にそうになっていたのですの?」
「それには深いわけが……あるわけではなく、単純明快に言うとこの世界が出来た瞬間に草原のど真ん中に飛ばされたからかな」
「はあ……。って、その言い分ですとわたくし、まだ生まれたばかりということになりませんこと?」
「そうだね。ただ、この世界はもっと昔からあったということになってるし、人々の記憶も生まれた時から今までの記憶がある。私がそうなるように書いたからね」
「……あなたと話してると頭がおかしくなりそうですわ」
そう言って、とうとう頭を抱え始めてしまったナナ。う~ん、これはちょっと話の方向転換が必要かな……。
「あ、そうだ」
「……今度はなんなんですの?」
「こっちの世界って、『謎の疫病』ってやつ流行ってたりする?」
あからさまに驚いた表情を見せるナナ。
「……ええ。たまに話は耳にします。突然、今まで元気だった人が体調を崩し、それ以降回復することなくお亡くなりになるという病気のことですよね」
「うん、それ。というか、何で他人事のように話すの。君の両親はその疫病で……ってあれ?おかしいな」
ナナの顔から色が落ちていくのが見て取れる。
「君の父親、もう一年以上前に亡くなってるはずだよね?さっき自己紹介で」
「お待ちなさい。何故あなたがそのような情報を知っておられるの?」
先ほどまでとは語気の強さが違う。
「だから、私がこの世界の創造主だか……」
「真面目に答えなさい!」
おっと、怒られてしまった。
「私はずっと真面目に答えてるよ。嘘は一つも言ってない。冗談のように聞こえるかもしれないけど、全部事実なんだ。……あ、もしかして父親の死って機密事項だった?」
真剣モードでいこうと試みたけど、どうやら私には向いていなかったみたい。
「機密事項も何もわたくしは王家の親戚にあたるため、父親がお亡くなりになられた時に養子として王家に引き取られましたの」
「そして、ちょうど王様には子供がいなかったので、養子の君が次期王女ってことになるんだよね。うん、私のシナリオ通りだ」
かなり強引だけど、これしか落としどころがなかったのでしょうがない。
「本当にあなた、その主張がまかり通るとお思いで?」
「逆に聞くけど、王家の親戚って理由が都合よすぎだと思わないの?」
「そんなこと一切思いませんわ。わたくし結構昔から王様に気に入られてましてよ」
「そう、君がそう思うならそういうことにしておこうか」
そう三段活用……なんちゃって
「あんたねぇ……、もし、もしもですけどあなたがこの世界の創造主というのなら、『謎の疫病』とやらの正体も知ってますわよね?」
「ああ、もちろん」
「でしたら……!!」
「まあ、ちょっと待ちなさい。そうだね……一つヒントを与えよう」
食い気味に来るララを左手で制して後、右手の人差し指を立てウインクする。
「ヒント……ですの?」
思いもしなかった言葉だったんだろう、少し気の抜けた顔をするナナ。
「うん、ヒント。実はね、自分も結構前に両親を亡くしてるんだよね」
「そ……それは、ご愁傷様ですわ。……って、また話を上手く逸らそうとしてませんこと!?」
一瞬、相手を憂うような表情を見せたけど、直ぐにハッとしてこっちに懐疑的な目線を向けてくる。
「まあまあ、最後まで聞いて?で、母親が死んだ時が10年程前で、父親が死んだのが3年前なんだよね」
「はあ……って、それだとわたくしの両親がお亡くなりになられた時期と一緒……」
「お、そこに気づくとは、さすがお嬢様。さて、ここで質問です。この私の両親が死んだのとあなたのご両親が『謎の疫病』で死んだ時期が被っているのは、ただの偶然なのでしょうか。それとも?」
一瞬、彼女の顔がハッと驚いたような表情となり、目と目の間を手を置いて考えるような素振りを見せる。そして、数秒後にその手を外した時には、今まで見せたことのない神妙な面持ちとなっていた。……どうやら、勘付いたようだ。
「……まだ完全に信じたわけでありませんが、あなたが最初の方で言っていたことの意味がようやくわかりましたわ」
「お、そこまで理解できたならもう答えは出ているようなものだね。ということで、これからよろしくね。お嬢様」
私がさも当たり前のようにそう言うと、
「よろしくねって……まさか、私の城へと一緒においでになるおつもりで!?」
ナナは、ちゃんと私の意図を汲み取ってくれる。
「え?だって、今の話を聞いて君が私のことを放っておくことなんて出来ないよね?それに、性格的に君は気になるものは目に映るところに置いておきたい質でしょ?」
私がそうじゃないからというよりも、今まで話して見た感じそんな気がした。ちなみに、私は気になるものとはなるべく距離を置きたいタイプだ。だって、それにしか目がいかなくなるんだもん。
「知ったような口を……。まあ、その通りですけど」
「というわけで、改めてこれからよろしくね!」
ニカって笑みを浮かべてナナを見つめると、彼女は口元をわなわなさせて首を横に向けながら口を開く。
「言っておきますけど!あなたのことを信頼したわけではありませんから!もし、何かお父様に失礼があれば、直ぐに国から追放いたしますから、覚悟しておきなさい!!」
途中からは私を睨みつけ、最後には指さしながらの渾身の捨て台詞である。それに対して私は「はーい」と生返事で答えておいた。
何はともあれ、これで何とか宿は確保出来そうだ。さて、この先どうやってこの世界で過ごしていこうか。……楽しい時間はこれからだ。
読んでいただきありがとうございます。
次回は、どこかの日常会を投稿したいと今のところは思ってます。
では、また逢う日まで