一抹の困惑と新たなる了得
どうも、久しぶりです!蒼榛です!
一か月以上更新しなくてすみません!次は、もって早く投稿できよう頑張ります!
では、良ければ読んでいってください!
帝都まで無事たどり着いた後、レイミーとの再会を果たした私は、早速頭を悩ませていた。何にかと聞かれると先ほど彼女の問いかけに対して自分が発した言葉にである。……なぜ、あそこで私は肯定の言葉を言ってしまったのだろう。
私が彼女と別れてここに来るまでの間、考えていたことはと言えばどうやって彼女の要望を断るかについてばかりだった。あらゆるパターンも想定して色々と対策を練っていたはずなのに、咄嗟に出てきた言葉が「うん」の一言だったのだから、もうどうしようもない。それが、勢いに負けて言ってしまった言葉なのか、私の意思が反映された言葉なのか考えれば考えるほどわからなくなってきていて、ほんと頭がどうにかなってしまいそうだった。
「どうしたの?さっきから難しい顔して」
私の腕にしがみつくようにしてくっついて歩いてるレイミーにそう声をかけられる。今は別れる前までの態度が嘘のように私にべったりだ。この感じからするともう吹っ切れたように思われる。……というか、人工呼吸する前でもこんなに距離近かったっけ……?
「もう、私で私がわからないよ……」
彼女の心配そうに私の方を見ている瞳を見て、思わずそう口にしてしまう。
「何言ってんの。あんたは美玲でしょ?」
なんか、初めて出会った時もこんなこと言われた気がする。あの時は、まさかこんなことになるなんて思ってなかった。レイミーとあれからずっと一緒にいることになるなんて。
「なに変なこと考えてるのかわかんないけど、美玲は美玲でしょ?自分は自分でしかないんだから、そこは自信を持っとかないと。この私みたいにね」
そう言って、横で自分を指さして無邪気に笑うレイミーを見て、私はハッとした。
彼女は……初めて見た時、入れ替わりたいと願った彼女は、いつの間にか私の中で憧れであり、理想であり、架け橋となる存在となっていた。今もこうして、私のことを思って言葉をかけてくれている。それに抱く感情は、彼女から感じる好意とは異なり、言葉で言い表すなら敬意というのが正確だろう。現在この状況で、私という存在を肯定してくれる唯一の人。それがレイミーなのだと、ここで私は気づいてしまった。
「自我が強すぎるのも少し問題だけどな。こいつ、会った当初なんて『私は私以外信じないから』って言ってたからな」
私が言葉を失っていると、後ろにいたルドーが話に割って入ってきた。
「私は私以外信じない」か。そんな言葉が彼女の口から発せられたということに違和感を覚える。私が見てきた彼女はそんなことを言いそうな感じを一切感じたことがない。一体彼女がこの家族に引き取られた時はどんな感じだったんだろうか。知りたくないと言うと嘘になる。
「もう、昔のことはいいでしょ。というかいまだに私、あんたらのこと信用しきってないからね?」
「おいおいマジかよ。ってそれにしてはさっきから、美玲にべったりだな。自分以外信用しないんじゃなかったのか?」
「いやいや、美玲は私の一部だから。私以外には含まれないよ」
……レイミーが放った言葉を頭の中で反芻する。そして、その言葉の意味を頭で理解した途端、驚きのあまり私の表情は壊れた。正直、自分でもどんな表情になっているのかわからないが、おかしな表情となっているは確かだと思う。
「私が、レイミーの一部……?」
「そう。だって美玲って別の世界の私なんでしょ?それってつまり私ってことじゃん」
「う……うん?」
「つまり、私も美玲になってた可能性があるってこと。ね、そうでしょ?生まれた世界が違うってだけで」
「まあ、確かにそう言えないこともない……かも……?」
ただ、レイミーが私のような性格になるとは到底思えない。いや、私が生きた環境だと本当にそうなっていた?
「そ、れ、に、美玲とはほんと特別な繋がりみたいなものを感じるんだよね。あの時のこともそうだし」
あの時のこと……それは多分、私が人工呼吸しようとしたときのことを指すのだろう。大きな怪我が一瞬で治っていく様子は、確かに私とレイミーに他の人の間にはない何かがあることを示しているかのようだった。
「だから、私は美玲のことは信用するよ。たとえどんなことがあってもね」
……ここまで言われると、裏切ろうにも裏切れないじゃないか。いや、裏切るつもりなんてそもそもないけど。というか、彼女がいないと私生きていける自信ないです。
「わ、私も、絶対レイミーのこと裏切らないから……!!」
レイミーが私に向けている熱い視線に私は答えようと出来る限り声を張ってそう言った。すると、レイミーは少し目を丸くして驚いた様子を見せた後、小さく笑みを浮かべた。
「じゃあ、約束ね?」
小さい声で呟くように言ったので、一瞬何を言ったのかわからなかった。
「……え?」
「私は何があっても美玲を裏切らない。そして、美玲も私を何があっても裏切らない。そういう約束、どう?」
ああ、なるほど。そういうことか。
そんな約束、断る理由がない。
「うん!約束!!」
私は大きく何度も頷く。それからしばらくの間お互いに立ち止まって、見つめ合う。そして、レイミーの顔が段々と近づいてきて……
「いや、ここでキスするのはないからね!?」
私は、彼女の顔を両手で抑える。
「えー、今の流れはそういう流れでしょー」
「いやいや、さっきも言ったけどこんなところでキスするの恥ずかしすぎるから!恥ずか死ぬから!」
「わかった、わかった。じゃあ、後でね?」
「あ、後で……うん、後でね……」
唇に人差し指を当てて、優しい笑みを浮かべるレイミーに対して、結局そう返すことしか出来なかった。
その後、時刻も遅く日がもう沈み始めていたのでひとまず宿を探すこととなったのだが、
「もちろん、お前らは同部屋でいいよな?」
「うん!」
「え、」
「じゃあ、そういうことで」
という風な流れで泊まることとなった部屋は、まさかのダブルベッド一つの部屋で、
(いや、なんでそうなるの!?)
と心の中でツッコミを入れざるを得なかった。こんなのキスどころか、それ以上のことが行われてしまってもおかしくないのでは?ってそれ以上って何考えてるの私!?
「どうしたのそんな驚いた顔をして」
自分で自分にツッコミをいれていると、すぐ後ろを歩いてきたレイミーに後ろから顔を覗かれてしまう。
「いや、ベットは二個あると思ってたから……」
「なんかこっちの方が安かったんだって、まあいいじゃん。いっつももっと狭いとこで二人で寝てるわけだし」
受付で何かグルースと話してるとは思っていたが、そういうことだったのか。
って冷静に分析している場合じゃない。確かにいつもはもっと狭いところで二人で寝ているがその時とは場所も状況も違う。
「あ~疲れた。三日三晩歩きっぱなしだよ?そんなの人生初だよ。もう、足がパンパン」
そんな内心あたふたしている私を横目にレイミーは、ベットへと勢いよくダイブするといかにも大きなことをやり遂げた後みたいな感じの声を上げている。
「美玲もこっち来なよ。ふかふかで気持ちいいよ」
体を起こしこっちを向いて、手招きしている。私は、おどけながらも素直にその指示を受け入れて、ベットへとお邪魔する。
「ね、ふかふかでしょ?」
「うん、ふかふか」
ホテルに用意されていたそのベットは、彼女の家で使っている布団とは全然違って、本当に柔らかく弾力があって、まるで体中を雲で包んでいるかのような感触だった。
「こうやって、美玲と一緒に過ごすのもなんか当たり前になってきたね」
私がレイミーの隣まで移動した後に、お互い向き合う感じで会話を始める。
「そうだね」
「もう、美玲と一緒にいないことなんて考えられないよ」
「私もレイミーがいない日常なんて考えられない」
「ねー」
本当に楽しそうに語る彼女は、そこで体を仰向けにし視線を天井に映した。
そして、しばらくの間天井を見つめていた。私はそれを横で何も言わずに見つめる。
静かな時が流れる。すると、おもむろに視線の先にあるレイミーの口が開く。
「……これからも、ずっと一緒にいようね」
と、どこか寂しげに聞こえる声で言う彼女に
「うん、ずっと一緒だよ」
と、強い意思を載せて言葉を返した。
レイミーの瞼がゆっくりと閉じられていく。それからしばらくすると軽く寝息が聞こえ始めた。どうやら相当疲れが溜まっていたようで、寝落ちしてしまったらしい。
私もそれに習って目を閉じる。私も結構疲れているのと、このベットのおかげもあってか意識が直ぐに遠のいていく。
(あ、そういえば結局キスしなかったな……)
遠のいていく意識の中、そう思考を巡らせたところで私の意識は途絶えたのであった。
なんかこのまま二人は安らかに息を引き取ったみたいな流れですが、死んでません!安心してください!
次回は、とりあえず一か月以内には更新する予定です!