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鏡写しの幻想世界(ファンタジーワールド)  作者: 蒼榛(あおはる)
雪の里編
13/35

レイミーの理由

どうも、蒼榛です!今回は、会話多めです!ぜひ読んでいってください!

 美玲たちと別れて、ほんの少し経った。ほんとにほんのちょっとだ。


『ねぇ、レイミー。返事してー』


 さっきから、美玲の通信魔法が飛んできている。……いや、確かにいつでも話せるとは言ったけど、さすがに早すぎない?

 ここは、さすがに心を鬼にして、無視を……


『お姉ちゃん』

『ん?何?どうしたの?』

 

 ……あっ


『ああ、やっと反応してくれた……!』

『え、なんのことかなー。私は全然何も聞こえてませんよー』

『いや、それ聞こえてないとありえない反応だから』


 誤魔化そうとすればするほど墓穴を掘る結果になりそうなので、諦めよう。


『で、いきなり早速どうしたのよ?』

『いやぁ、それがその……』

『何よ、早く言いなさいな』

『えと、ルドーさんと何を話せばいいかわからなくて……』

『あー……』


 うん、確かに美玲とルドーが話をするイメージ湧かないな。


『……ファイト!』

『ファイト!じゃないです!』


 全く同じ声と口調で返してくるのは、さすがもう一人の私というところか。


『何か、話題になりそうなこととかないですか?彼が興味を持ってることとか』

『あ、それならあるよ』

『え、何ですか?』

『筋肉だね』

『きん……にく……?』

『そう、筋肉。ルドーはあー見えて筋肉バカでね。隙があれば筋トレしてるような人だよ』

『え、全然見えない、というかどっちかというとグルースの方が体が大きいし、彼の方がそういうタイプかと思ってた』

『ね!私も最初の方はそう思ってた。あいつ着やせするタイプでさー、全然そんな感じに見えないんだよねー』

『なるほど、でも筋肉かぁ……』

 

 そこで、少し会話が途切れる。その間に周囲の確認をすると、気が付いたらだいぶグルースに置いていかれていた。通信魔法をしている間は、どうしても周りを見るのが疎かになるし、動きも鈍くなってしまう。


『あ、じゃあ私はここらへんで。がんばって!』

『え、あ、うん、がんばる!』


 最後に前向きな言葉が聞けたので良かったということにしよう。

 

「おーい、レイミー!どうした?置いてくぞ?」


 前の方からグルースの呼ぶ声が聞こえる。


「はいはい、すぐ行くすぐ行く」


 ちょっと軽く走って、彼に追いつく。


「一体何してたんだ?ずっと考え事してるようにも見えたが」

「うーん、今は内緒」

「今はってことは、後で教えてくれるのか」

「それも気分次第ってとこかな」

「おい」


 そんな感じで、軽く言葉を交わす。別の場所で一緒に歩く美玲とルドーを想像する。ふむ、やはりこんな具合に軽い感じで会話をするイメージは湧かない。あるとすれば、ルドーが自慢げに筋肉の話をし始めて、美玲はそれにただただ頷くって感じだろう。


……多分、今そうなってる気がする。


 前方の方に目線を向けてみると、今通っている草木が刈り取られ整備されている茶色な道がどんどん視線を上げる方向へと向かっていくことに気づく。


「ねぇ、これもしかしなくても結構登る感じ?」

「ああ、こっちの道は山登りコースだ!しっかり足腰鍛えられるぞ」

「……こっちを選んだのは失敗だったかな」


 早くも少し後悔している自分がいる。いやだって、どっちが楽なのかなんて分かりっこないじゃん。てか、前をろくに見ずにすっ飛ばしてきた私が全面的に悪い。

 

 ちなみにだけど、私が美玲と別行動を取ることにした理由は、二つある。一つは、美玲にも言ったけど、五感共有をしてみたかったから。そして、もう一つの理由は、


……う~ん、言いづらい。


 というのも、自分でもうまく言葉で表すことが出来ないんだよね。自分の感情が。

 美玲から助けられて以降、彼女を見ていると胸の鼓動が早くなるようなった。さらに言うと、なんか話そうとしてもうまく話せなかったり、近づかれると逃げたい気分になったりするということもあった。ほんとどうしちゃったんだろう、私。

 ということで、一旦美玲と離れて頭を整理しようと思い立ったのが二つ目の理由。まあ、なんとなくだけどそこら辺美玲も察してくれてると思う。なんとなくだけど。


『ねえ、レイミー!ルドーの筋トレの話が全然終わらないんだけど……!?』


 おっと、噂をすれば美玲からの通信魔法だ。どうやら、予想は的中したようで。


『ああ、もう軽い気持ちで「筋トレとか好きなんですか?」とか聞くんじゃなかった!』


「あはははは!」


 思わず、声に出して笑ってしまう。おっと、いけないいけない。こんなことしてたらグルースに不審がられてしまう。


『ねえ、ねえってば!この話、どうやったら止まるの!?』

『うん、うん、そうだね。とりあえず……がんばっ!』

『ちょっと、それだけ!?なんか他にアドバイスとかは!?』

『そうなったルドーを止める方法なんてないない。諦めて、聞くのが一番の正解だよ』

『えー……。筋トレとか全然興味ないんですけど……』


 意気消沈したかのように聞こえたそれが最後に、美玲からの声が聞こえなくなる。


「……なあ、突然楽しそうに笑い出して、お前ほんとどうしたんだ……??」


 やはり、先ほどの笑い方は相当不気味だったのだろう。グルースが本当に心配した目でこっちを見てる。


「ははは、なんでもないなんでもない」


 笑ってごまかしてみる。


「さっきのはどう考えても何かあっただろ……」


 さすがに誤魔化しきれないかぁ。なら、ゴリ押すしかないね!


「ほんと何でもないって!ちょっとした思い出し笑いだって!」

「いや、思い出し笑いはもっと静かにクスって感じで笑うもんだろ!」

「いやいや、突然爆笑するような思い出し笑いがあっても私はいいと思うよ!」

「いいと思うよって他人事みたいに言いやがって。やっぱり、なんかあったんだな?」

「えー、そんなこと……ないよ?」

「なんでそこで自信失くしてんだ」

「そんなことよりさ、さっさと先進もうよ!急がないと、美玲たち待たせちゃうよ」

「さっきまで、ゆっくり歩いてた癖によく言うな。まあ、その意見には同意するが」


 文句を言いながらも、小走りし始めた私にちゃんと付いてきてくれる。これ以上の追求はなさそうだ。


 太陽が上空の高いところにある中、私はグルースと一緒に少し登り気味になった道を軽くジョギングするかのように登っていく。美玲にもう一つの理由を話すには、まだ時間がかかりそうだ。

読んでいただきありがとうございます!次回も10日後くらいに更新予定です!

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