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いまだ。


 ○ 2020/07/05


 とうとう患者が出た。知り合いの勤める会社はあわてている。発熱があるそうだが、例の疫病かはまださだかではない。身近にやって来た疫病。思い過ごしならいいが。


 例の疫病ではなかった。とりあえず。空の倉庫にぽつりとある椅子に座る。折り畳み式の安いビーチチェアらしき椅子に。左の肘おきはばきりと音を立てて下部から割れたがぎりぎり分離せず上部の薄皮でつながっている。じめじめして暑い。今日は満月だが天候はすぐれず多分延期になるだろうとの見立て。影々を取り出す予定日。なんと無意義な日々。雲厚くやや風あり。夜中にどうなるか。まあ、出たところで二十九番目の影が出ましたと報告されて終わりなのだろう。何の変わりもない。


 雨が降った。止んだ。雨上がりの夜、風音が良く響くような気がする夜。


 ○ 2020/07/06


 雨。これといった事はない。


 労働を通じた絶滅。


 もうすぐ夜の九時。あいかわらずすっぽかされる。顔をだすって前日に言っていたと記憶しているがこれは記憶違いだったのだろか。まあ来ても大した話があるわけではないだろうけども。


 ○ 2020/07/07


 なし。

あの乳首の金属どうやってくっついているんですかね。紐とかないし。やっぱりファンデルワールス(りょく)が働いているんですかね。


 ○ 2020/07/08


 朝、雨音で目が覚める。太い音だ。風も強い。

昼、雨止む。やや曇り。宝くじを買いに行く。当然パシリだ。雨上がりの湿気が立ち込める。蒸した暑さ。

夕暮れ、すっかり晴れる。いや雲がまだ多いか。


 何でだと言おうとして驚きと困惑で唇があまり動かずに何でやと言ってしまった後、すごく訛ったとさらに困惑した。あの時から何日たったろう。


 ○ 2020/07/09


 100から7ずつ引いてください。

 93。93。93。93。93。


 bačča bāzī,


 肉を食えとマグロの寿司を食わされる。あと鉄火巻き。パックだ。そして小さいトマトとパセリもだ。パセリは目のまで手でちぎりばらばらにされたものをマグロの寿司に付いてる醤油に浸けていただく。肉と野菜が足りないとのお達し。有り難い事だ。きっと。雨雲が通りすぎた倉庫でもさもさと口数も少なく食べる。食べた。終わりだ。

満足かと聞かれたから知らないと答えた。


 ○ 2020/07/10


 誰も責任を知らない。霊媒に吹き込まれる心地好い言葉にこう問えばすぐに分かる。それのどこが良い話なのですか。勿論霊媒は何も答えない。霊媒が霊媒にその良い話持ち込んだ何かに問うても何かは答えなかったそうだ。あるいは沈黙だけが相応しい返答なのだろう。何をもってそれが良いとされるのか知らないのだ。誰も。みな聞いた話を吐き出しているだけなのだ。だから答えられない。考えた事もないのだろう。それが本当に良いことなのか。良いこととして持ち込まれた話を解体し検証し言語として表現する。そうしてこそ安心する。そういう臆病さとは無縁なのだ。心中から沸き上がるありがたさに身を委ねる。それだけが確かな証なのだ。それだけが。


 ○ 2020/07/11


 湿気があり暑い。雨が降っていると霊媒の話もない。霊は雨がお嫌いなのだ。少なくともその霊媒の所にやって来る霊は。

 痙攣も伸展なし。相も変わらずに続けている。

神社の境内に蝉の音が聞こえる。力強い音だ。鳴き声を今年に入って初めて聞いた様な気がする。


 ○ 2020/07/12


 なし。

痙攣と柔軟を混ぜる。何度目か忘れた試み。二桁は行ってないはず。

どうにも筋がこわばって今のやり方ではうまくない。仕方なく行う。すると思ったよりいい具合だ。明日の調子をみてまたやろう。

頭を床に着けて体重を掛ける。床を向いて。両手を補助として添える。これもいけそうだな。頭髪には悪そうだ。


 ○ 2020/07/13


 我慢できないほどではない。

今日も倉庫は(カラ)。椅子に座る。安い感じの折り畳みのビーチチェア。白い。背もたれと座布は一枚の化繊。わずかな青地にみっしりとした南国な花柄。昨日かその前かに左の肘置きは完全に折れた。じめじめするな。昨日かその前かワラジムシが一匹迷い混んでいた。どこから入ったのか。灰皿にすくって外に出した。触角がわさわさと絶え間なく動いていた。じめじめするな。椅子に丸いテーブルに灰皿。テーブルも折り畳みのビーチ感。白い。灰皿は銀色の軽い金属。丸い。昨日もその前も今日も。


 ○ 2020/07/14


 今日もこれといってなし。

けついたい。痔の調子が悪い。

後頭の随意と胴体の痙攣のどちらか一つだけとなったなら、選ぶなら後頭の随意だろう。穏当な痙攣に後頭の随意は有用であり、他の案を僕は持たないからだ。後頭なき痙攣は歯と首と腰と股関節とその全ての軟骨に悪い。歯には軟骨はないが。歯に軟骨があったならきっと歯の軟骨にも悪いに違いない。教えるなら後頭の随意化から始めた方がいいのかもしれない。


 ○ 2020/07/15


 失敗をするという前提に言及する。すると物事の停滞の原因の如く言われる。穴だらけの楽観の果てに失敗してきたというのに。試して失敗し試して失敗す。何の変わりもなくて。それを無限に繰り返す事に耐えられない。それを止めたい。その思いが何回までと決めようという言葉になった。あるいは何年までにしようという言葉になった。そしてそれはただの気分を害し感謝を知らない言葉と取られた。


 ○ 2020/07/16


 ちりんちりんと風鈴の音が。

どこからか風鈴の音が聞こえる。

夏。倉庫前の自販機をそろそろ撤去するそうな。

空調もなく扇風機もない。暑く湿気があり可哀想。そう言われた。しかし次の言葉が倉庫の前自販機を撤去する。話の繋がりが分からなく混乱した。そこは自販機を使って水分を補給して熱中症とかに気を付けてと言う所なんじゃないのか。何も分からない。分からないが倉庫の前の自販機は撤去される。


 ○ 2020/07/17


 今日も湿気がある。雨か。資源ごみの袋と液体石鹸を買いに行く、行くが倉庫で一息ついてからにしよう。楽しげな多分学生だろうか、声が複数連なって外を通り抜けていく。側溝のコンクリートの蓋ががたつき音を立てている。腿の裏の筋肉痛は慢性化し最後に痛くなかったのはいつだった思い出せない。

後、痔が痛い。昨日近所の内科へ痔の薬を貰いにいったら、検査の時の写真を渡された。何ヵ月くらい前の検査のだろうか。内痔核と外痔核がよく撮れている紙だ。これをどうすればいいのかは分からないがとっておこう。

そろそろ買いに行こう。薬局へ。


 ○ 020/07/18


 晴れたか。

雨が通りすぎた。晴れ間が覗き穏やかな空間が表れる。

神々の無謬性について話をした。失敗は存在しない。それがたとえ実際に失敗が発生した直後でさえ。失敗は存在しない。しかし失敗は確かにあった。確かにあった失敗はなかったとされるのなら失敗の割りをくったモノはどうなる。黙殺され忘れられるしかないのか。弱者はそれを黙って受け入れるのか。それをよしとするなら、何かをする意義はあるのか。生まれた苦しみや嘆きや死者は成功なのか。

埋もれている無数の失敗にむくいる事がそれでできるのか。

失敗がないなら成功もなくそれが何であれ起こったことだけが無上の結果。

起こると言った事が起こらずとも失敗はない。あると言った事がなくとも失敗はない。2020年に行うと言った事が三年延期されても失敗はない。


誠実という言葉はそっちにあるかたずねた。あると言う。

その言葉に恥じるところはないかとたずねた。ないと言う。


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