弟子が弟子だから師匠も師匠でどうしようも無い
「ところでミズハ?」
「どうかしましたか?」
「自分がこういうのもあれだが、どうして男装なんてしているんだ?はっきり言って、その少年のような服装だとしても髪を伸ばせばかなり美少女に見えるぞ?」
「そうですか?あまりそういう認識はないですけど。アマミちゃんの方が魔女の帽子を被った女の子で可愛く思えます。」
「まああれだ。男子が思う可愛さと女子が思う可愛さは違うと言うものだ。ミズハだって、自分が格好良いと思っても他の男子から見ればそうでもないとかよくあるだろう?」
「どうでしょうか。男女問わず友達がまともにいないので聞いたことがないです。」
「ミズハさんは女性として生きた方がいいんです!充分にモテモテになれるんです!」
それはないんじゃないかな。結局ぼこぼこにしてくるやつばっかだし。
「ミズハさんの青い髪の毛は綺麗なんです!絶対売れるんです!」
それはどういう意味かな?アイドルとしてかな?それともかつらとしてかな?!
と言うよりアマミちゃん?あまり僕の髪の毛で遊ばないで!ぐちゃぐちゃになるのも嫌だけど、その前に痛いよ!
「ほら、そろそろ森を抜けるぞ?ミズハ?男装するなら今のうちだぞ?森を抜ければ一気に町に出る。」
「アマミちゃん?そろそろ僕も身支度するから降りて?」
「分かったんです!蛇さんも埋葬するんです!」
了解…って、は?!アマミちゃん、蛇の死体持ってきていたの?!
アマミちゃんが降りると、アマミちゃんが手に下げていた紙袋から普通に蛇が出てきたんだけど!
因みに紙袋は今日色々買うので予め持ってきていたものである。アマミちゃんはさっき冒険者ギルドに物を売ったときに空になった袋をずっと下げていたけど…精々知らないうちにまたどっかで適当に採取するのかなって思っていたんだけど…。
「ミズハ、大分時間がたっている。出来るだけ早く身支度してくれると助かる。」
マジーラさんが半目でアマミちゃんを見ながら言ってきた。もう、何を言っても無駄といった目である。これでもアマミちゃんは良い子なんだよ?
取り敢えず、僕は髪をまとめて帽子に突っ込んで被り直しました。アマミちゃんも簡易的なお墓をつくって蛇を埋めようとしている様子。
「ミズハさん!何か入れ物ないですか!」
入れ物?ないけど?
「どうした?小瓶なら持っているが?」
何で持っているんだよ!
「じゃあそれを使うんです!ちょっと待つんです!」
とかなんとか良いながら半分引ったくる形でマジーラさんから小瓶を取って何かを始めるアマミちゃん。まだ怒ってるよこの幼女。
で、何やってるのかは完全に放置して帽子の微調整中である。
「ミズハ?よくそれほどの長髪を帽子に入れれるな?その帽子の構造はどうなっているんだ?」
「え…うーん、分かりません。そう言うものじゃないんですか?」
「うーむ…確かに出来ないレベルかと言われるとあれだが、にしては帽子が小さいと言うか…」
「なんの話しているんですか!師匠もお姉ちゃんも手を合わせるんです!埋葬したんです!お願いするんです!
殺戮した生き物が全部閻魔様に抹消されるようお願いするんです!」
誰がそんなお願いするんだよ!生き物である限り、普通何かしら殺したことぐらいあるでしょ!皆地獄行きだよ!
とは言え、せっかくお墓…うーん、山になった土に木の棒が立ってるだけだけど…が出来ているので手だけは合わせておきます。
「うーむ、この二人の娘が常識を理解出来る様になるように。」
うるさいわ!大体何処までが常識なのか分からないよ!第一声に漏らさないでよ!と言うよりここ神社じゃないよ?!
「ミズハは何を祈ったんだ?」
「お姉ちゃんは何を祈ったんですか!」
何でどっちも聞いてくるんだよ!因みに形だけで何も考えていません。
「ミズハのことだ。精々アマミと結婚出来ますようにとかだろうな。」
「み、ミズハさん…嬉しすぎるんです!式場はどこですか!」
まてまてまて!!!何でこの二人知らないうちにギャグコンビになってるの?!
「まあ、実際はアマミが自由に暮らせるようにとかそんなところだろう。じゃあ、準備ができたらいくぞ?」
「一回結婚してみたいんです!もう結婚できるんですか?!」
結局冗談かーい。でもアマミちゃんはまだ若干本気にしていない?
と言うより、結局何も考えていなかったけど…マジーラさんの願いが僕の願いなのかもしれない。結婚の方じゃないからね!まあ、毒蛇の墓に向かって何しているんだと言う突っ込みを最優先で入れたい。