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邂逅、そして未来へ紡ぐ

雑です。勘弁

誤字脱字あったらどぞ!

最初三人称ですが次回から主人公視点に切り替わります。

 共生国家ヴィルドネス王国領のはるか北に位置する辺境の村、ヘブリア。

 辺境というだけあり、あるのは申し訳程度の家が数軒と広大な田畑などである。

 そんな殆ど何も無い村でも、自給自足を営み、村人達には笑顔が絶えない。


「よぉ~しっ!今日も素振りをやるぞぉ!」


 そんな中、幼い少年の一際大きな声が元気よく響く。


 少年はアデルといい、……元捨て子であった。

 それをマリーという女性が見つけ、今の歳まで村人の手助けも借りながら、育てられてきた。


 そんな経歴を持つ少年の1つの趣味は剣術である。

 ヘブリア村の近くには小さな森があり、そこで毎朝素振りなどをするのが少年の日課であった。


「お、アデル~、今日も剣の練習かい?よく飽きないねぇ~?そんなに剣が好きかい?」


 と、ひょっこりと姿を現し声をかけてきたのは、先程言ったアデルを発見し育てたマリーという女性である。


 マリーは一言で言えば、豪快である。

 見た目は身長が高くスタイルも良い、黒髪を短く切り揃え目付きはキツいが、それがまた大人の女性のように見え、とても美しいのだが、それとは裏腹に女性らしからぬ言動や下ネタなど平気でする残念な美女である。しかしこれでも昔は名のある魔法使いで冒険者だったらしい。


「お義母(かあ)さん!うん!飽きないよ、だって大好きだもん!」


 そんな彼女にアデルはそう返す。

 マリーは呆れたように、ため息をつき、苦笑しながらアデルに近づく。


「うわっ!」

「まったく、親が魔法使いなのになんで剣なんかに興味を持っちゃったんだろうねぇ?」


 アデルの正面に立ち、そう言いながら頭をガシッと鷲掴みにするとワシャワシャと撫でる。

 アデルは抵抗できず、なされるがまま撫でられ続ける。


「まぁいいか、お昼には一回帰っておいでよ?じゃあ、いってらしゃい~」


 マリーは満足したのか手を離し言う。


「うん!行ってきます!」

 

 母から解放されたアデルはグシャグシャになった髪の毛を整えながら出発の挨拶をして家の傍にある物置から木刀を取り出し懐に差すと、森に向けて走り出す。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 数分後、森に着き、奥に進んでいくと開けた場所に出る。アデルは早速、懐から木刀を抜き、素振りをする。


「ていっ!やぁっ!はぁっ!!」


  という、掛け声とともに剣を上下に振るう。

 村には剣を扱える者が居ないので、当然正しい構えなど知る筈もなく、ただそれっぽい構えで振るだけである。


「ふう、一旦休憩っと……」


 暫くして、剣を振るのを止め、大粒の汗を拭いながらアデルは近くにあった大岩に腰を掛ける。


 そして、仰向けに寝転がろうとした時だった、不意に辺りが暗くなったのは……。


「え……?」


 アデルが不思議そうに空を見上げると……。


 そこには、逆光に照らされ煌々と煌めく巨大な影があった。


 アデルは急いで木刀を握り直し、巨大な影を見据える。


 すると、その影は何かをはためかすと辺りに風が吹き荒れた。

 まだ幼いアデルでは耐えられず、その場に尻餅をついてしまう。


 やがて風が収まり、アデルが立ち上がると、今度は影がアデルの居る場所に急降下してくる。


 影がどんどん近づき、もう目と鼻の先といったところでその姿が明らかになる。


 ソレは、細く、しなやかな美しいフォルムであった。しかし全身に鋭利な鱗が鎧のようにびっしりと張り巡らされており、そこに、幾つかの大きな斬り傷がある。

 そしてその顔は爬虫類のよう。


 だがそれは、絶対的覇者の風格を見に纏った、一体の化け物だった。


 つまり、伝説の生き物、大空の支配者、《龍》である。


 龍はゆっくりと着陸する。しかし巨体であるためにどうしても軽い地震が起きてしまう。


 それに再びアデルは尻餅をついてしまう。


 着陸した龍はキョロキョロと首を動かし辺りを見回す。

 すると、とある一点に目が留まる。そこに居るのは、そう。アデルだった。


 龍はまじまじと眺めやがて口を開く。


「ほう、こんなところに人の子に遭うとは。

 そこの人の子よ、少しばかり妾と話をしていかぬか?」


 突然、見下したように龍はそう話を持ちかける。

 龍とは人間と比べるのも烏滸がましいくらいの知力と体躯、そして魔力。

 1体でも目撃されれば国家レベルで動く程の伝説の生き物である。

 普通はその伝説の存在である龍がいきなり現れ、尚且つ突然話し掛けられれば怯える所の話しではない。


 ……そう、普通ならばだ。何にも例外はある。


 生憎、アデルは龍というものを知らない。

 赤子でも知っている一般常識だが、ヘブリア村では知っているのはマリーくらいだが、しかし当の本人も忘れているので教わっていないかった。

 なので………


「……わぁ!格好いい!凄いねぇ、君!僕も君みたくなれるのかなぁ………?」


 という風に、まるで危機感というものを持ち合わせていなかった。


「ふむ、妾を見て恐れない者を見るのは久々じゃな。

 中々どうして、純粋なものだな……」


 龍は呆れたように言う。


「ところで君はここでなにしてるの?」


 と、アデルが問う。


「……休める場所を探していた、といった所かのぉ」


 龍は顎に手を当て遠くを見据えながら言う。


「……?疲れてるの?」

「…あぁ、そうじゃ」


 ため息をつきながら器用に肩を落とし実に人らしい仕草をする。


「ならここは滅多に人が来ないからゆっくり休めると思うよ!」

「そうじゃな」


 アデルは元気いっぱいに言う。

 それに龍は微笑みを浮かべ、前足を折り畳み座る。


「ところで、(ぬし)こそ、ここで一体何をしていたのだ?」


 今度は龍が同じ質問をする。


「うんとね、剣の練習!」

「剣か……、主は剣が好きなのか?」


 アデルは木刀を掲げ、自慢気に言う。

 それに龍は朝の義母と同じように問う。


「うん!大好き!!」

「そうかそうか、大好き……か。

 主なら良い使い手になるじゃろう」

「えへへ……」


 褒められ照れるアデル。


「………………ふむ、主にこそ相応しいか………」


 それを龍はじっと見つめると、やがて小さく呟く。


「主よ、名前をまだ聞いておらんかったな」


「あ、名前!まだ言ってないね!

 僕はアデル!君の名前は?」


 アデルは、まだ名前を言ってないことに気付き名乗る。


「アデル、と言うのか。良い名じゃの。

 では妾もアデルに《真名》を授けようかの」


「わーい!」


 アデルは純粋に喜んでいるが、アデルはまだ知らない。龍が人に《()()()》を授けることの意味を……。


 龍が人に真名を教えると言うことは、それはその龍の力全てを捧げると言うことだ。

 なので、龍はその名を口にすることなく生涯を迎える者が9割以上である。



「妾の名は、エデン=ロード・クウィンティ・ラグナロク。数多の龍を統べる王の中の王、最古にして最強の|龍王《ドラゴンロードとは妾の事である!」




 ましてや、それが遥か昔の、それこそ御伽にされるくらいの最古にして最強の龍の名となればなおさらだ。


帝龍(ティアマト)、そう言えば分かりやすいか?」


 呆けた顔をしているアデルを見て、ピンと来ていないと思ったのか、人の間で言われている通り名を明かす。


 それに対し、アデルは


「え、エデ……?……てぃあ?…ん~、分からないし長いからラグナで良い?」


 と、のほほんと言い返す。


「………ラグナ?……くふ、くくく、…ふははははっ!!妾を知らないと?しかも恐れるばかりか愛称をつけるとはな!

 この場に同胞が居たらまず主は肉塊に成り果てていたぞ?無知は罪じゃのう!ますます気に入った!

 ふふ、ラグナ、……ラグナかぁ、良いではないか!よし、アデルに妾の事をラグナと呼ぶ事を許そう!」


 その龍、いやラグナは口の中でラグナと数回反芻したあと豪快に言い放つ。


 そして、アデル達は時間も忘れ話した。それは端から見ればまるで昔からの親友のようだった。


 ………………………

 ………………

 ……


「む、もうこのような時間か……。

 ………そろそろかのぉ」


 ラグナは空を見上げ、再びアデルに視線を戻し見つめる。


「アデルよ、確か、最初に妾のようになれるのかと言っておったじゃろう?」


「……うん」


「妾のようにはなれぬが、妾と同じ力を手に入れることは出来る……。

 その為の準備はもう既に済ませてある。後は妾の真名を持つアデル、主との誓約だけじゃ」


 そして優しく微笑み、アデルに問う。


「《答えよ。汝、妾の、エデン=ロード・クウィンティ・ラグナロクの力を欲するか》」


 ガラリと雰囲気の変わったラグナにアデルは緊張が走る。


「ふふ、そう固くなるでない。妾の力じゃぞ?世界中の者共が喉から手が出る程、欲する力をアデル、主に授けようとしているのだ」


「もし、嫌だって言ったら?」


「その時は妾はただ消えるだけじゃ。主の記憶からもな……、そんなのは主は望んでいないだろう?だから焦らすな、早くせい。」


 ラグナはそっと手を差し伸べる。


「ッ⁉………僕は、まだ一緒に話したいし、教えて欲しい、離れたくないよ。

 そして、忘れたくないっ!

 だから………、欲しい!僕にください!お願いします!!」


 正直、アデルにはラグナが何を言っているのかよくわからなかったが、ただ忘れてしまうのは嫌だという思いがアデルに覚悟を決めさせ、手をとらせる。


「《今、この場にて妾と汝との誓約が結ばれた。これより妾の力は全てアデルの元へと……》」


 そう高らかに宣言すると、ラグナの体が光始める。

 それは優しく淡い光だった。

 次第に光はラグナの輪郭と混じり合い溶け、そして最後には最早『光』としか認識出来なくなる。


「え?え?ねぇ、ラグナ……?」


 アデルは困惑する。


「そう、心配するでない。言ったであろう?休める場所を探していると。そこに主、アデルを選んだのじゃ」


 そう言い、アデルの胸元にトッと触れる。

 すると光がアデルに吸い込まれるように流れ込み、ものすごい力の奔流がアデルの中に注ぎ込まれ引っ掻き回す。

 しかし苦痛など一切感じない。

 むしろ暖かく、心地好ささえ感じる。


  「ふわぁ」


 それは最古から存在し最強と謳われた龍王の力……。


 その心地好さに浸っているとやがて光は無くなる。

 そこには無情にも龍王の力を授かったアデル一人だけが夜の森に取り残された。


 しかし、


 〝おやすみじゃ、アデル〟


 消えた直後、アデルはラグナの声が聞こえた気がした。


「おやすみなさい、ラグナ……」


 そうだ、今も自分は一人じゃない。と胸に手を当て、ぽつり、アデルは言う。

 そして結局お昼時に帰らず、せっかく昼食を用意してくれたであろうお義母さんにこっぴどく叱られるんだろうなと思いながら帰路につくのだった。




 ………そして、

 この日から、アデルの運命は大きく変わることになるのだった。

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