婚約者登場!
えーーーー何ここ。馬鹿でかい家じゃん!!
私は今例の婚約者の家の前にいる。
今から遡ること数時間前。
「お母さん婚約者とか正気で言ってるの?私流石にこんなドッキリには引っかからないよ」
『嘘じゃないわよ・・・』
おいおい、まじかそこまで信じて欲しいのか、娘として心配になるな。
「あの・・・お母さん今度の休み一緒に病院に行こう私も付き添うから」
この時の私は本気だった。それもそのはずだ、母親がいきなり婚約者がいるって言ってきたのだから。
『ふざけたこと言っていないで早く帰ってきなさい!!』
と怒鳴れて、電話をブチっと切られた。
「空音、大丈夫?」
アイスを食べ終わった有希子が心配そうにこちらを見てくる。
「大丈夫だよ。全然問題ない」
笑顔でそう返したが有希子はなお食い下がってくる。
「さっき婚約者とか言っていたけど、あれ何?」
どうやら電話の内容は聞こえていたようだ・・・。
私は帰り道で今の電話の内容をすべて話した。
「婚約者か・・・・なんか非現実だね」
「それな!」
「まぁ辛かったらあたしを呼びな、いつでもあんたの味方だから」
「うん!!」
それだけ言って有希子は帰っていった。
この時私は有希子の言葉を疑っていなかった。
有希子はずっと友達だと思い込んでいた。
だから、あんなことになるなんて想像つかなかった。
「!!!!?」
私は家の前に不審な車を二台発見した。黒い・・・めちゃくちゃ黒い・・・。
絶対光を吸収してボンネットとか熱くなっていると思う。
私は慌てて家に入った。
「ただいま!お母さん家の前に不審な車が・・・・!」
家の中にはもっと恐ろしい光景があった。
いる!!スパイだ。服が黒い。なんか全体的に黒い。お母さんは何を血迷ってこんな奴らを家にいれたのだ。
やっぱり病院に連れていくべきだ。私の決意を新たにしたところで黒服の男が話しかけてくる。
「あなたが小鳥遊空音さんですか?」
「はい・・・そうですけど・・・」
黒服は全く表情を変えずに「そうですか」と言う。その態度が私には気に入らなかった。
「そうですかじゃないです!一体何をしているのですか!」
大きな声で言うと黒服はきょとんとした顔で、
「聞いておられませんか?白鳥裕翔との婚約のことを」
「はぁ・・・?」
婚約は聞いていたが、名前までは聞いていない。第一こんな映画の金持ちキャラのボディガードみたいな黒服が来るなんて知らない。
「どういうことですか?」
私は聞いてみた。すべてを信じたわけではないが、このままだとこの人たちも困るだろうから一応事情だけは聞いておこうと思ったのだ。そうしたら黒服がとんでもないことを言い出した。
「空音様時間がありません、車の中でご説明いたします」
「・・・・・・」
びっくりして固まっている私の背中を押しながら黒服が私を外に出させる。
「ちょ・・・なに・・・!」
さっきの黒い車に放り込まれる。シートがフカフカだ、恐らく高級車なのだろう。誰しもが一度は乗ってみたいと思う高級車、しかしその初乗車がこんな形になるなんて誰が予想した!
「あの~そろそろ教えてもらえますか?私がここにいる理由」
車に乗って十分弱黒服は黙り続けていた。因みに運転しているのは車に放り込まれたときからいた運転手だ。運転手付き高級車なんて初めて見た。
「そうですね、お話ししましょう。」
黒服は漸く話の全貌を明かしてくれた。
黒服曰く、私のおじいちゃんと白鳥さんのお爺さんは仲が良かったらしい。大学の同級生なのだとか。白鳥さんのお爺さんが起業するときもサポートをしてくれたらしい。しかし、おじいちゃんは結婚を機に白鳥さんのお爺さんと会う機会が少なくなった、そこで白鳥さんのお爺さんが提案してきたのは「孫同士を結婚させよう」とのことだった。勿論いくつかの条件は有った。例えば「生まれた孫の年齢が近い」など色々有った。だからとても確率の低い話で叶えばいいな程度だったらしい。しかし今回条件が揃ってしまったので結婚の話は着々と進んでいったという。しかも質の悪いことに私の両親も白鳥さんの両親もこのこと知らなかったという。
「・・・・・なんというか・・・滅茶苦茶な話ですね・・・」
「空音様意外と正直ですね・・」
「思ったことを言っただけです」
黒服に引かれてしまった。まぁ、別にいいけど。
「というか今どこですか?ここ高速道路ですよね・・・」
だんだん不安になっていく。お母さんパートがあるとかで付いてきてくれなかったし、そろそろこれ誘拐事件なのかと思い始めてきた。せめて有希子に小説返しておくんだった。
「ご安心ください。ちゃんと白鳥家に向かっておりますので」
「はい・・・」
その白鳥家が不安って分からないのかな・・・。
まぁ、誘拐だった時のために何か策を考えておこう。
誘拐時の碌な策も浮かばないまま高速道路を降り、少し走ったところに巨大な家があった。何あれ・・・・。
まさかここが婚約者の家とかではないだろう。こんなところ本当に一部の金持ちしか住めないぞ。
そんな私の予想を裏切り車はここで停止した。
「空音様着きました」
「はい」
車を降りて目の前の景色を見る。そこにはまるで花男とかに出てきそうな大きな家があった。
「うわ・・・・」
思わず声が漏れる。私が感心して見ていると黒服が私を中に案内した。
外もすごいが中はもっとすごかった。これは花輪くんのおうちですかと聞きたくなった。
そんなことを考えていたら騒ぎ声が聞こえた。
「裕翔さま・・・!」
「どこだ!俺の婚約者とか名乗っているやつは!!」
怒鳴りながらその男はこちらに近づいてきた。
身長は普通くらいで、顔はいい方の男だった。恐らくこいつが白鳥裕翔私の婚約者なのだろう。
白鳥裕翔は私の顔を見るなりいきなり制服のネクタイを引っ張ってきた。
「!!」
急に首が閉まったのでかなり驚いた。
「何する・・・!」
私が抗議しようとすると、白鳥裕翔は、
「どうせ、金目当て来たんだろ、とっとと家に帰れ!」と言った。
私はこの男に言いたい、人の第一印象は変えるのに一年かかることを。