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竜騎士  作者: 海星
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チロとミキが牙をむき出し低くうなり声を上げる。


いいぞ、このままタケルを噛み殺してしまえ!・・・と思うがチロのミキがタケルに襲いかかったらそれはローラのせいになるだろうしチロとミキは殺されてしまう。


こんな(キモヲタ)を殺して殺処分になるなんてこの子達が不憫だ。


「あなたがギルド登録に来た少女ですか?


とても可愛らしい!


あなたであればギルド登録料は無料でございます!」とタケル。


しかしこれ考えようによっては凄い失礼な言い草じゃないか?


「アンタは可愛らしいから無料。アンタはそうでもないから半分払って。アンタはブスだから全額払って」


この言い草にフェミニストは怒りで発狂するだろう。


しかしフェミニストこそ美女であるべきだ。


テレビで女性の権利どうこう言っているフェミニストが顔が残念なせいで「男ばっかり、美女ばっかりずるい」とブスがやっかんでいるように感じている人が多いのではないか?


ボクはそんな事ないけどね。


ボクはフェミニストの味方です。


真面目な話、顔で得してる女性はあんまり「女性差別だ!女性に対する冒涜だ!」って目くじら立てて言わないよね。


それは男にだって言える事で「この描写はキモヲタをバカにしてる!ヲタクに対する差別だ!」って騒ぐのはキモヲタなんだよね。


人間は二十歳をすぎたら自分の顔、性別に責任を持たなきゃいけない。


他人は実害がなければ、他人の顔、性別にそんなに興味はないって事なんだろうね。


顔がマズければ小綺麗な恰好をして髪型を整えて、少しでも見れる努力をしなきゃいけない。


マンガだって万人に認められるマンガ家になれば、「キモヲタ」とは言われない。


認められる努力をしないし、結果も出してないからキモヲタなんだ。


「顔がマズいから、生まれもっている物が悪いからキモヲタだ」なんて事は絶対にない。


確かに『人生イージーモード』ってイケメンはいるだろうけど、『人生スーパーハードモード』でもクリアしてる人はいるんだよね。


同級生の田尻君のおじさんは「いい歳して売れないゲームばっかり作ってる」って親戚にバカにされてたって言うけど、作った『パキスタンモンスター(パキモン)』の世界的大ヒットで、一躍『一族の誇りの実業家』扱いされてるらしいし。


何でこんな話をしてるかって言うと、コイツら『異世界転生者協力会』の連中は色々工夫して苦労して今の地位まで上り詰めたんだろうと思う。


タケルにしても『キモヲタ』ってハンディキャップを克服してギルドマスターという地位まで上り詰めたんだろうな、と。


そこには並々ならぬ苦労があったと思う。


そして確立しているシステムを壊して新しいシステムを造り上げる事の大変さも少しは理解しているつもりだ。


ボクの実家のそばにあった『豊島屋』は祖母の代には『段葛(だんかずら)』という和菓子が主力商品の和菓子屋だったらしい。


その和菓子屋が「このままでは時代から取り残されてしまう」と開発したのが『鳩サブレー』らしい。


ボクは高校時代、数少ない友達と何人かで缶に入った割れた『鳩サブレー』を買って食べていた。


高校生が正規の値段で『鳩サブレー』など食べれる訳がない。


だが『鳩サブレー』がアニメとタイアップして宣伝をする上で、高校生が箱入りの『鳩サブレー』を買っていて何もおかしくない。


「麻衣さん、割れの鳩サブレーを買ってきました」


「割れてない鳩サブレーを食べれる高校生なんてブタ野郎だわ」なんてやり取りがあったとしたら豊島屋に対する営業妨害だ。


ボクは冒険者ギルドがタケルの発案で新しい富を産むシステムを造り上げた事は素晴らしいと思う。


思うが・・・


異世界に来る前にどんな冷遇されてたって、異世界に来てから並々ならぬ苦労したからって全くボクはタケルには全く共感は出来ない。


共感が全く出来ない成功者もいる。


たとえば三國志に出てくる董卓・・・そう、タケルからは董卓と同じ『酒池肉林』の匂いがするのだ。


謂わば悪役にしか見えないのだ。


ボクがキモヲタを嫌いな訳ではない。


嫌うとしたらそれは『同族嫌悪』になってしまう。


ボクは判官贔屓で下克上の話が好きだ。


三國志でも劉備玄徳は大好きだ。


ヲタクが異世界に行って無双するラノベも大好きだ。


だけどそれは『善人に限る』のである。


先人の苦労に乗っかって少し工夫をしただけの男が大した苦労も失敗もせずに成功するのは見てて面白くない上に応援する気にならない。


しかも酒池肉林は極悪人の代名詞だ。


ボクはタケルを汚物以下の物を見たような目つきで一瞥すると「具体的に冒険者ギルドに登録してどうなるのか、何をすれば良いのか説明してもらえますか?」と言った。


一応ローラの上司に当たる人物だ。


最低限の礼儀は払いながらボクは言ったつもりだ、多少のトゲトゲしさは残ってしまったとしても。


「あなたは何もする必要はありません。


我々があなたの所属するパーティを見つけます」とタケル。


ふーん、何か派遣会社みたいだね。


「・・・で、派遣したパーティから毎月、クエストの成功報酬の何%かをもらってるんですか?


それとも、数か月派遣したパーティから『紹介派遣成功報酬』として一定額をもらっているんですか?」とボク。


「何で我々の運営手段を知っているんですか!?」とタケルは驚きの声を上げた。


いや、男からしかギルド登録料取らなかったとしたらギルドが成り立つ訳ないし。


つーか、アコギな商売やってやがるな。


クエストの依頼人から金銭をもらう。


クエストをこなしたパーティからマージンをもらう。


パーティに必要な人材を派遣してその派遣費用を徴収する。


これ、何重にもギルドが金を徴収する仕組になってやがるな。


正直ご都合主義を望んだのはボクもタケルも同じだろう。


ボクの望むものは『天下無双の正義の味方』でタケルの望むものは『酒池肉林のハーレム』それだけの違いだろう。


違いはそれだけなのに受け入れ難い。


「ボク日本から転生して来たんですよね。


あなたと同じで」ボクはタケルにネタバラししてみた。


端から見れば「同じヲタク」なのに「ボクはコイツとは違う」と思っている自分が許せない。


ボクはタケルを認めたい。


なのに何故か拒否反応が出てしまうのだ。


「驚きました。


転生者に女性がいたとは!」とタケル。


タケルはまだマサオやヨシオから情報を得てはいないようだ。


良く考えれば当たり前か。


ボクがマサオに会ったのは昨日で、今日ヨシオを模造刀でしばき上げてきたところだ。


ヨシオとマサオには太いパイプがあり、しかもマサオに「軍部とのコネを紹介して欲しい」と頼んだからマサオはヨシオにボクの事を話したんであって、普通に考えればボクの話が『異世界転生者協力会』の会員全体に知られた訳がない。


なのでまだボクの悪評は広まっていないようだ。


何にしてもネコをかぶってでも『協力会』に媚を売ってでも、早くドラゴンを手に入れるべきだろう。


そうしないとメッキが剥がれ「ボクが協力会を良く思っていない事」がバレてしまう。


「ドラゴンを手に入れる」以前にこの異世界で『異世界転生者協力会』を敵に回すととても生きにくそうだ。


ボクがヨシオをシバき上げたとバレなかったとしても『異世界転生者協力会』の面々に長く媚を売り続けるなんて勘弁して欲しい。


しかも連中がボクをいやらしい目で見ているのは自意識過剰じゃないが少しはわかっている。


ヨシオをシバき倒した事にも正当な理由が必要だ。


「服を脱がされそうになったからシバき倒した」というのも理由としては正当だが、協力会がそして何よりヨシオ自身が納得するかどうかとなると話は別だ。


これから『協力会側』とも上手くやっていかなくてはならない。


ならないが、ボクはどうしてもタケルの存在が許せない。


ローラに話を聞くまでもなくタケルがギルド内でやっている事が派遣会社というよりは統一教会のようなのだ。


目の前にギルド内のパーティの帳面が広がっているが、男のパーティの中に後から入ってきた女性は正直美しくない女性で、パーティの中に女性が何人かいるパーティはギルドに高額な寄付をしているパーティでそして女性だらけのパーティの中に男が一人だけいるパーティは『異世界転生者協力会』メンバーのパーティだ。


何でそんな事がわかるかと言うと、帳面に『容姿』という項目があって『◎、○、△、×』で評価されパーティごとに女性が割り振られているのがわかる。


その分布を見るとその意図がイヤでも見えてくる。


ボクは本気で腹が立った。


パーティの割り当ては生死に関わってくる事だ。


パーティのバランスが悪くてパーティメンバーが全滅してしまったパーティも数多くいるだろう。


タケルはそんなパーティを何組も見ながら、女性をまるでキャバクラのように斡旋しているのだ。


力が欲しい。


別にそこまで「お前は女を何だと思ってるんだ!?」などと言う気もないがタケルが人の命を軽視してるのがたまらなく腹が立った。


タケルはヲタクの風上に置けない。


タケルにお灸を据えたいがボクの今のステータスでは冒険者の荒くれ者を束ねるギルドマスターであるタケルには手も足も出ないし、ギルドには複数用心棒がいるだろう。


彼らにボクが敵う訳がない。


ボクは自分のステータス画面を見た。


名前:レイ

年齢:16歳

ジョブ:ドラゴンライダー(花嫁見習い)

レベル:1→24

身長:142㎝→143㎝

体重:32㎏

HP:14/14→62/62

MP:12/12→53/53

力:6→49

身の守り:14→66

魔力:8→45

素早さ:29→61

かしこさ:42→97

魅力:169→363

器用さ:27→57

所持スキル::思わせ振り、ステータス閲覧、恰好良いポーズ


思わず吹き出した。


何で身長が伸びてるんだよ?


成長期か?


そういや16歳だった、成長期なんだよな。


闘った相手からスキルを盗めるのか・・・しかし盗んだスキルが『恰好良いポーズ』とは・・・。


それよりボクはレベル1だったはずだ。


なのに何故今レベル24なのか?


ボクが経験した戦闘は一度だけだ。


ヨシオと模擬戦闘をした一回だけなのに、レベルが一気に23上がっている。


ボクはドラクエ3でレベルの低いヤツを連れてはぐれメタル狩りをしてレベルが低いヤツらのレベルを上げた事を思い出した。


一つの仮説が成り立つ。


ボクは一回の戦闘で大幅なレベルアップをした。


その一回の戦闘で経験値を沢山くれるヤツを倒した可能性が高い。


つまり「キモヲタは経験値が高い」「キモヲタ=はぐれメタル」という事だ。


現にボクはドラゴンなど見た事もないドラゴンライダーだが、既にレベル24まで成長している。


つまりタケルを倒せば、ボクは更にレベルアップ出来るはずだ。


・・・と、言ってもボクがタケルを倒せる可能性は極めて低い。


ボクはタケルのステータスを見て見る。


名前:タケル

年齢:45歳

ジョブ:ギルド運営(キモヲタ)

レベル:48

身長:158㎝

体重:114㎏

HP:32/32

MP:0/0

力:5

身の守り:3

魔力:0

素早さ:4

かしこさ:3

魅力:0

器用さ:3

所持スキル:仲間を呼ぶ 流し目 つまみ食い


ボクはタケルのステータスを二度見した。


低い、低すぎる。


確かにヨシオよりはステータスは高い。


だが、タケルはヨシオと違って高レベルだ。


あまりステータスの数値はレベルが上がっても伸びないのだろうか?


いや、そんなはずはない。


ボクのステータスはレベルアップと共に大きく上がっている。


どうでも良いが、何故異世界に転生したキモヲタ共は40を越えているんだろうか?


そして何でこんなにコレステロール値が高そうなんだろうか?


タケルなどはほぼハンプティダンプティだ。


異世界に成人病というものはないんだろうか?


そしてどいつもこいつも10代の美少女が好き・・・本当に異世界に転生して良かったな。


転生してなきゃ完全な犯罪者予備軍だ。


これだけステータスが低いのに、レベルは48とボクの倍の数値だ。


もしかしたらだけど、キモヲタって本当にはぐれメタル?


もう一つ可能性があるとしたら「実はタケルもヨシオも普通のステータスの高さなんじゃないか?もしかしたらボクは異常にステータスが高いんじゃないか?」と言う事だ。


しかしそれは今、確かめようがないので追々考えるとして・・・キモヲタがはぐれメタルだとして、ドラクエのはぐれメタル狩りを思い出してみる。


はぐれメタルは狩りにくかった。


なぜかと言うと、はぐれメタルは素早さと固さだけが飛び抜けて高くて、あとは逃げ足が速かったのだ。


キモヲタも強さはないが、倒し辛さはあるのだろう。


ヨシオは弱かったが強力な装備に囲まれていた。


もし装備を堅められていたらボクはヨシオには勝てなかった。


しかしキモヲタは底ぬけのバカである可能性が高い。


恐らくタケルは仲間を呼ぶ。


ギルドに所属するパーティ全部を敵に回して、ボク一人に勝ち目はないだろう。


しかしタケルがヨシオと同じ底ぬけのバカならボクにも勝ち目はあるはずだ。


ボクはタケルに「ボクはローラに協力してもらえればそれで良いんだけど。


場合によってはローラのパーティに入れてもらってそれで相方になるドラゴンを探そうと思ってたんだけれども・・・。


ギルドに仕事を依頼出来るし、依頼するパーティを指名する事も出来るんでしょ?」ボクはタケルに言った。


もちろんこれはブラフである。


ローラについて冒険者ギルドまで来たのは冒険者ギルドに所属するためで、冒険者ギルドに仕事を依頼するためではない。


だいたい仕事を依頼出来るだけのお金をボクは持っていない。


しかしタケルの反応を見ているとボクの言った事は間違ってなかったと思う。


タケルはボクをどこかのパーティに送り込もうとしていたのだ。


だからボクが「ローラのパーティに仕事を依頼したい」と言い出した時、タケルは焦ったのだ。


ボクは堪忍袋の緒が切れた。


ボクと送り込むパーティとの戦闘適正、ボクとの相性も見ないで何を決めようと言うのか?


パーティとの相性が悪すぎて全滅してしまうかも知れない。


ボクがタケルの言う通り美少女だとすると、ボクをパーティに斡旋するだけでタケルは銭を得る。


タケルの金儲けにボクを利用しているだけなのだ。


「パーティに所属して、クエストをこなしながら目的を達したらどうですかね?」ハンカチで額の汗をぬぐいながらタケルが言う。


もうダメだ。


これ以上ネコをかぶれない。


「ごめんねローラ。


ボクには3つどうしても許せない事があるんだ。


一つは『おでんをおかずに飯を食べる事』


一つは『ポテトサラダにリンゴを入れる事』


一つは『晩御飯のおかずにオムレツを食べる事』


そして最後の一つは『女を食い物にする事』


この男はね、ボクが絶対に許せない男なんだ」とボク。


「何を言ってるか全くわからなかった上に『3つ』って言ってたのに4つ言ったよね!?」ローラが混乱して叫んだ。


ボクはローラの言う事を無視しタケルに呼び掛けた。


「ボクはあなたに決闘を申し込みます。


もしボクが負けたらボクはあなたの言う事を一つ何でもききます。


もしタケルさんが負けたら、ボクがローラのパーティに手伝ってもらってドラゴンを探す事を了承して下さい」とボク。


「何でも言う事をきくんだよね!?


もし私が勝ったらあなたは私の女になるって事でも良いんだよね!?」とタケル。


アンタ、もう40半ばでボクは16歳だぞ?


ロリコンにも程がある。


消えろ俗物。


こうしてボクとタケルは決闘する事になった。

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