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竜騎士  作者: 海星
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ギルド

スカッとした。


変態を退治したのだ。


しかし軍部とのコネを失ってしまった。


これからどうしようか?


武器屋からトボトボと家に帰った。


レイの家は貧しくはない。


父親が炭鉱で働き母親が裁縫で内職をしており、裕福ではないが平均以上の生活力はあった。


レイが最近まで女学校に通えていたのも家が貧しくはなかったからだ。


しかしいつまでもレイに無駄飯を喰わせる余裕はない。


なので母親はレイに見合いを勧めたのだ。


別に働いても嫁いでも両親にとってはどちらでもかまわなかったが「結婚は女の幸せ」と信じられている世界なので、娘の幸せを願う両親はマサオとの見合い話を進めたのだ。


今のボクははたから見ると「働きたくない、結婚したくない」という人間のクズだ。


確かに男と結婚はしたくない。


しかしここまで両親を泣かせて心配させるなら、擬装結婚も考えなくてはならないだろう。


地球でもホモ・レズが擬装結婚する事はけっこうあるらしい。


しかし相手がマサオとかヨシオだと話は別だ。


アイツらはヲタクである前に変質者だ。


擬装結婚どころか同じ空気を吸いたくない。


だいたいこの世界ではモテモテなのに良い歳こいて結婚していない理由は「ハーレムを作りたいが結婚しているとハーレムを作るのに都合が悪いから」だ。


嫁さんがハーレムの存在を許す訳がない。


嫁さんを「第一夫人」として、ハーレムメンバーの一員にするしか道はないし、マサオはボクを第一夫人にしようとしていたけれどキモヲタは何故か異常に理想が高い。


第一夫人に見合う人をなかなかみつけられず話が進まないのだ。


なのでキモヲタはモテモテだが童貞ばかりだ。


ある意味「モテモテなのに身持ちが固い」というのは素晴らしい事だが内情を知るとしょーもない。


それはともかく、ボクは無職でお見合いも断った。


岡嶋さんが言っていた『異世界ニート』とはボクのような者の事だろうか?


ボクが落ち込みながら歩いていると一人の少女が話しかけてきた。


「落ち込んでどうしたの?何かあったの?」少女は健康的に日焼けしていて、そして目鼻立ちが整った美少女であった。


少女は二匹大きな犬型のモンスターを連れている。


ステータスを見るとそのモンスターはヘルハウンドというようだ。


「私はローラ。


ジョブは見ての通りビーストテイマーだよ。


この子達はヘルハウンドでチロとミキって言うの」目の前の少女はヘルハウンド二匹を撫でながら言う。


しかしこの子はヘルハウンドに犬っころみたいな名前をつけてるな・・・などと思っていると続けてローラが言った。


「あなた魅力高いでしょ?


ビーストテイマーも魅力は高めじゃないとなれないけど、この子達が私の指示も聞かないであなたに気を取られてばかりいたのよ。


こんな事初めて!


あなたもビーストテイマー?」


「いやボクはドラゴンライダー・・・今は絶賛失職中なんだけどね」ボクは自虐的に答えた。


「そっか・・・ドラゴンさんとの悲しい別れがあって、今は相方であるドラゴンさんがいないんだね」ローラが勝手に勘違いをして検討違いの解釈をした。


岡嶋さんが言っていた事を思い出した。


「普通は『ドラゴンライダー見習い』から始めるんです。


あなたが最初から『ドラゴンライダー』なのは特例中の特例なんです」


普通ドラゴンライダーは相方のドラゴンがいる。


相方のドラゴンがいないのは普通『ドラゴンライダー見習い』であるのだろう。


ボクは相方のドラゴンがいないにも関わらず『ドラゴンライダー』の肩書きを持っている。


つーかドラゴンライダーのクセにドラゴンなんて見た事もない。


ボクは岡嶋さんが「いきなり竜騎士なんてなれる訳ないじゃないですか!?」と言っていた意味をやっと理解した。


「・・・で、どうするつもり?


どうやって新たなドラゴンと出会うつもり?


昔の相方のドラゴンさんと悲しい別れをして、ドラゴンライダーを廃業するつもりはないんでしょ?」ローラはボクに聞いた。


ドラゴンのいないドラゴンライダーなんてクリープの入っていないコーヒーみたいなモンだ。


つまりスジャータ入れればクリープなんて要らない・・・と言う事ではない。


ちなみにスジャータは苦行中の御釈迦様にヤギの乳の粥を差し出した少女の名前だとスジャータの『めいらく』の入社試験を受けた時の会社案内に書かれてた。


『めいらく』はどうだったのかって?


ご丁寧な封書が届いて中に入っていた手紙に『今回はご縁がなかったという事で』と書かれていたよ。


そんな話はどうでも良い。


「どうする・・・って言われてもボクも困ってるんだけど・・・」とボクは答えた。


「ステータスを見れる人なら、竜から降りた時のあなたのジョブを見れるはずなんだけど」ローラが言った。


ステータスは自分で見れる。


つまり、竜から降りた時のボクのジョブは『花嫁見習い』という訳だ。


ファイヤーエンブレムで室内のステージの時、馬や竜に乗っている者は剣士となる。


つまりボクにも竜から降りた時のジョブはある。


しかしよりによって『花嫁見習い』か。


全く戦えなそうだ。


ドラゴンライダーにも固有スキルはあったし、ヨシオも商人の固有スキルを持っていた。


『花嫁見習い』にはどんな固有スキルがあるのだろうか?


ボクが考えているとローラが言った。


「どうすれば良いか悩んでるなら、とりあえず冒険者ギルドに登録すれば?


そうしたらとりあえず日銭は稼げるし、ドラゴン捕獲を手伝ってくれる冒険者もいるかも知れないよ。


もちろん私は手伝うしね!


この子達がなつく人に悪い人はいないんだよ!」ローラが裏表なくそう言った。


ローラは良い娘なんだろうな。


でもチロとミキがボクになついたのは単にボクの魅力が高いからでボクが『良いヤツ』だからじゃない。


ふと思う。


ヨシオみたいに『魅力0』の人にチロとミキはどういうリアクションをするんだろうか?


噛み殺すんだろうか?


ボクはローラの言う通り冒険者ギルドに登録する事にした。


ボクはローラに冒険者ギルドへ案内してもらっていた。


道すがらボクはローラに冒険者ギルドの説明を軽く受けていた。


「ローラは冒険者ギルドに登録しているの?」


「もちろん。


冒険者ギルドに登録するとパーティとパーティメンバーを紹介してくれるんだ。


ギルドに紹介してもらったパーティとパーティメンバーと一緒に様々なクエストをこなして、報酬を得て、暮らしているんだよ」


見上げたものだ。


見たところ年齢はボクより何歳か若いだろうに既に自立している。


ボクも両親に頼ってばかりいないで自立する事を考えた方が良いだろうか?


しかし両親に「ボクはもう大人だ!もう構うな!子供扱いするな!」という態度を取るのは大人の態度じゃない気がする。


うーん、大人って難しい。


「それに紹介してもらったパーティのリーダーはすごい良い男なんだよ?」


何それ?


すごいイヤな予感。


この世界の良い男は・・・第一、父親があれだけ良い男でも『良い男』扱いではなく、ヨシオとマサオが異世界では『良い男』扱いだ。


「気持ちはありがたいけど、今回は見送りと言う事で・・・」ボクはその場から逃げようとした。


ヨシオは商人で戦闘職じゃないから何とか倒せた。


何か『恰好良いポーズ』にこだわりがあったみたいだし。


しかしパーティリーダーがもしキモヲタでヨシオみたいに襲いかかってきた時にボクにパーティリーダーを倒せると思えない。


相手は熟練の冒険者、戦闘のプロなのだ。


「そう言ってる間に冒険者ギルドについたよ!」とローラ。


どうやらボクが逃げるのは遅すぎたみたいだ。


ローラは受付をしている少女に「冒険者登録をする子を連れて来たよ!」と伝えていた。


・・・思い出した。


色々なゲームやラノベでだいたいギルド登録って無料じゃなかったんだ。


ボクは慌ててポケットの中の小銭を探った。


レイもいつも懐の中に小銭を入れているみたいだけど、レイのもっている小銭は銅貨二枚でギルドの登録料に足りるとは思えなかった。


「ギルド登録料は金貨二枚よ。


だけどギルドマスターの意向で美少女に限り登録料は必要ないわ。


ローラ、あなたもそれでギルド登録料は払わなかったんですものね」受付嬢の少女はそう事務的に言った。


逃げろ!パーティリーダーだけじゃなくてギルドマスターもキモヲタの可能性・・・というか高確率でキモヲタだ。


ギルド登録料無料の条件が『美少女であること』というのが、その根拠だ。


地球、日本で『女性無料、男性有料』というシステムは珍しくない。


結婚相談所、出会い系サイトなどが基本女性無料の事が多い。


しかし『女性無料』でなく『美女無料』でなく『美少女無料』なのだ。


ロリコンが美少女のハーレムを作ろうとしているとしか思えない。


「ローラ、一つ聞いて良い?


君のパーティは女の子ばっかりじゃない?」とボク。


「?


そんな訳ないじゃん。


冒険者は軍部ほどじゃないけど男女比率は7:3で男の方が多いんだよ?


パーティに男だっているよ」とローラ。


良かった。


ボクの思い過ごしだった。


てっきりパーティはパーティリーダーのハーレム状態でそれを斡旋してるのが、ギルドマスターだと思ってた。


そんな訳がないな。


どうも異世界に来てから疑り深くなってるみたいだ。


「パーティリーダーは男だよ?


それ以外は女の子ばっかりだけど」とローラが不穏な事を言った。


「それじゃあボクは今日は用事を思い出したから帰るよ。


ローラまた会えると良いね、百年後くらいに・・・」ボクは兎に角その場から脱兎の如く逃げ出す事にした。


「お待たせしました。


私、ギルドマスターのタケルと申します。


美少女がギルド登録に来たと聞いて馳せ参じたのですが・・・」


間違いない、コイツは転生者(キモヲタ)だ。

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