表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜騎士  作者: 海星
1/6

転生

「あなたのいた世界にも乗馬というスポーツがあります」


「あるね」


「実は乗馬はオリンピック競技の中で唯一男女に分かれていないスポーツなのです」


「へー」


「騎手の学校に入るにも体重制限があります」


「それ、何かで聞いた事あるね」


「乗馬は女性である事がデメリットにならない、ともすると女性の体重の軽さは武器になります」


「なるほどねー」


「異世界でも騎士の四人に一人は女性です」


「これだけ前置きしたのに意外に女性の騎士って少ないんだね」


「騎士は軍人ですから絶対数で軍人の割合として男性の方が多いのはしょうがありません。


しかし女性だけの騎士団もあるんですよ?」


「ふーん、まあボクには関係ないし・・・つーか何でそんな話したの?」


「騎士の乗る馬とあなたが乗りたがっている飛竜はおおよそ同じサイズです」


「結構飛竜って小さいんだね」


「竜には種類が沢山います。


海にいる海竜、主に火山に住み着き火を吐く火竜・・・大きい竜は『古代竜』などと呼ばれています。


古代竜は知能が高く人語を解します。


しかしプライドが高く、人間の乗り物には絶対になってくれません。


あなたは最初に『ドラゴンライダー』というクラスになります。


あなたのクラスではワイバーンにしか乗れません。


ワイバーンのサイズは馬より若干小さい・・・羽を広げた状態ならば馬より若干大きくなります。


まあ馬とほぼ同じサイズと考えれば良いでしょう」


「話が全然違う!


ボクは『竜騎士になりたい』と言ったんであって『ドラゴンライダーになりたい』と言った訳じゃない!」


「これでも特別処置なんですよ?


本当であれば『ドラゴンライダー見習い』から始めるんですよ?


『千里の道も一歩から』です。


いきなり『竜騎士』になれる訳がありません。


私はあなたのために竜騎士になれる道を作るだけです。


あなたが竜騎士になれるかなれないかはあなたの今後の努力次第です。


で、何で騎士の話をしたか、でしたね。


先ほど話をした通り騎士の四人に一人は女性です。


そしてドラゴンライダーの全員、その上級職である竜騎士も全員が女性です。


ドラゴンライダーの乗る飛竜は当たり前ですが空を飛びます。


なのでドラゴンライダーには厳しい体重制限があります。


それ以上に竜種は非常に気難しい生き物です。


騎乗に適している身体能力の高い雄の竜は人間の女性にしかなつきません」


「犬なんかでも雌犬は男に雄犬は女になつきやすいっていうのは良く聞く話だね。


でもボクが知っているゲームの『竜騎士』は男性ばっかりだったんだ」


「ゲームの世界と異世界は良く似ているのかも知れません。


でもあなたが今から転生する異世界では『竜騎士』は女性でなくてはなれません。


なので私は何度も確認したはずです。


『本当に竜騎士になりたいのですか?後悔しませんか?』と。


先ほども言いましたが私は『竜騎士』になれる道を作るだけです。


竜騎士になれるかなれないかはあなたの努力次第です」


「・・・わかった。


さっき『竜騎士』になれる道を作った、って言ってたよね?


具体的に何をどうしたの?」


「あなたのステータスを弄って『ドラゴンライダー』になれるように最適化しました。


『ドラゴンライダー』に必要なステータスは何と言っても『体重の軽さ』です。


体重が重ければそれだけ飛竜の動きは遅くなりますし、だいたい飛竜は体重が重い者をその背に乗せるのを嫌がります。


そしてもうひとつ必要なステータスとして『魅力の高さ』があります。


竜種は先ほど話した通りプライドが高い生き物です。


背に乗せる人物が魅力的でないと言う事を聞きません。


なのであなたのステータスを弄って体重を軽くして、『魅力』をある程度上げました。


そして・・・あなたの性別を変えました。


男性には『竜騎士』になれる道が閉ざされていますから、道を作るには女性に性別を変えるしかなかったんです」


「何でそれを先に言ってくれなかったの!?


『女性になるしかないですよ』って言ってくれれば『竜騎士』への道諦めたのに!」


「どのようにステータスが変化するかを前もって教えるのは禁止事項とされています。


『このパラメーターが下がります』『このアビリティが消えます』なんて言われたら『ちょっと待って、良く考えさせて』て言いたくなりますよね?


あなただって『女性に変わります』と言われたら考え直すつもりだったんですよね?


ステータスの変化を前以て教えていたら話が進みません。


戦士系の希望者であっても「かしこさが下がります」と言われて「はい、そうですか」と納得される方は皆無でしょう。


こればっかりは決りですので、クレームを出されても応じようがありません。


なので私は何度も確認したはずです。


『本当に竜騎士になりたいのか?考え直した方が良いんじゃないか?』と。


アレは決められたルール内での私なりの引き止めだったのです。


あなたは私の引き止めを一切無視して『竜騎士になりたい』と契約書にサインしました。


ですのでもうすでに変更はききません。


変更出来ない段階だからこそ、あなたの変わったステータスについて説明出来るのです。


ではいくつか疑問に思っているだろう事を説明します。


『よくある質問FAQ』ってヤツです。


『名前はどうなるの?』というよくある質問ですが、基本的に全ての日本語が異世界語に翻訳魔法で翻訳されます。


ですので名乗る名前も『太郎』でしたら異世界で『太郎』に相等する『異世界でよくある名前』に変換して相手に伝わります。


ですが、あなたは日本での名前を名乗る訳にはいきません。


当たり前ですよね?性別が変わっているのですから。


あなたの名前はあなたの器になる娘さんの名前をそのまま名乗る事になります。


あなたは『志垣淳』という名前をここで捨ててもらいます。


ここでゴネるだけ時間の無駄ですよ?


あなたの異世界転生までそれほど時間がありません。


ここでゴネても時間を浪費して説明を受けずに異世界へ行くだけです」


「うぅ・・・わかったよ。


じゃあ質問するね?」


「答えられる範囲内で答えます」


「異世界の文明レベルは?」


「科学や医学はそれほど発展していません。


あなたがいた世界の中世レベルです。


しかしあなたのいた世界の中世よりかなり暮らしやすいでしょう。


何故なら科学や医学のかわりに魔術やスキルが発展しているからです。


解りやすく説明すると医術は未発展ですがあなたの世界で不治の病と言われていた病気を魔術で治す事が出来る世界です。


科学や医学のかわりに別の分野が発展しているのです」


「わかるような、わからないような・・・まあ良いや、これからイヤってくらいその世界を見るんだから。


じゃあもう一つ質問するね。


ボクは転生するらしいけどどういった状態で転生するの?


生まれた時から?


今の記憶を持っていけるの?」


「あなたは転生前の記憶を持って転生します。


あなたは新生児として異世界に転生します。


しかし、あなたに前世の記憶が甦るのはあなたが16歳になったその日です。


新生児で大人の記憶があると多くの場合発狂します。


言葉も話せず自分の意思で歩き回る事も出来ず食べ物も親の与えてくれる乳のみなんですから牢獄に繋がれているようなものですからね」


「つまりボクは異世界で16歳になるまでは、娘さんとして育っている訳だね?


あんまり良い気はしないけど、娘さんこそ不憫だね。


16歳になると同時に体の中にオッサンがいると知る訳だ。


それともう一つどうしても聞きたい事があるんだ」


「なんなりと。


答えられる範囲でお答えします」


「君は誰だ?


君は女神なのか?」


「いいえ、私は女神ではありません。


私は『異世界転生ハローワーク』の職員『岡嶋泰子』と申します。


日本と異世界の橋渡しと職業斡旋を生業としている日本の国家公務員です。


最近異世界転生する方々が爆発的に増えたんですが全員が救世主や勇者になれる訳もなく『異世界ニート』が異世界で社会問題になったんですよ。


ですので異世界転生する人に職業を斡旋して、希望の職種につけるお手伝いをしている訳です。


あなたの場合は『竜騎士になりたい』という希望に添ってステータスを少しいじった訳です」


「純和風な名前だな。


当たり前か、日本人なんだから。


国の上層部は異世界の存在を知ってる訳だ。


つーか弄ろうと思ったら国はボクのステータスを弄れるって事だな。


まあ良いや、どうせ今さら日本の事知ったところでボクは異世界に行くんだから。


しかし聞けば聞くほど娘さんに申し訳ないな。


ボクが『竜騎士になりたい』なんて考えを持たなきゃ心の中にオッサンを一人飼わないで済んだ訳だ」


「それは後にならないとわからないですよ?


あなたのお陰で竜騎士として大成して心の中のオッサンにもしかしたら感謝するかも知れないですよ?」


「そうであってもらいたいな。


あとは・・・今急には思いつかないや」


「あとは徐々に異世界の事を知っていってください。


もう転生まで時間もありませんから説明している時間もありませんし」


目の前が暗転し暗闇に包まれた。


ボクが目を開けると世界は色を取り戻し、ボクはベッドの中にいた。


ボクは「これからどうしようかな?」とベッドの中で考えていた。


すると部屋のドアが開き「いつまで寝ているの?気が進まないのはわかっているけど今日はお見合いの予定があるんですからね」と目の前の女性が言う。


ボクにとって初対面のはずの目の前が女性・・・だが、頭の中で『この女の人は母親だ』と誰かが告げる。


そんな事より見合いだと!?


もしボクが目覚めるのが一日遅かったら、見合いが上手くいって、結婚が決まった後だったりしたのか。


危機一発とはこのことだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ